2012年3月10日(土)に平成23年度大阪市まちづくり担い手育成講座(第3回)を開催しました。
会場は前回に続きマイドームおおさかでした。
今回が今年度の担い手育成講座の最終回となるので、前半は、受講者の方々にこれまでの講座を振り返っていただくとともに、これからの活動への活かし方を考えていただきました。
そして、後半は、東京を中心にまちづくりのNPOで活動されている林泰義先生によるミニ講演会、さらには、林先生を囲んでまちづくりについての意見交換・討議を行いました。
はじめに、コーディネーターである近畿大学建築学部の脇田教授から、講座の流れや趣旨の説明がありました。
続いて、脇田研究室の学生により、前回までの講座におけるまち歩きを通じて気付いたこと、感じたことをまとめた模造紙を確認しながら、講座の振り返りが行われました。
第1回目は3週間前のことですが、私にも遠い昔のことのように感じられたので、この振り返りは、皆さんの記憶を呼び起こす良い時間になったと思います。
(これまでのまち歩きを振り返る)
続いて、これまでの講座で何を学んだのか、どのようなことを感じ取ったのか、受講者同士での話し合いを行いました。学んだことや気付いたことをポストイットに記入して発表し、それをグループリーダーが分類していきます。このような作業を通じて、これまでのまち歩きとグループ討議により、お互いに刺激し合いながら学ばれた様々なことをみなさんで再確認されていました。
(各自感じたことをポストイットに綴る)
今回の講座は3回連続講座となっているので、この機会にできるだけ多くの方と顔見知りになっていただくことを目的に、毎回、異なるグループでまち歩きや討議を行うとともに、懇親会も開催しました。そのおかげもあってか、何となくそれぞれの個性、人柄もわかってきたようで、リラックスした雰囲気の中、話し合いが行われているのが印象的でした。
続いて、模造紙に整理して貼り付けられたポストイットを見ながら、各自のこれからのまちづくりに対する意気込みやまちづくりに携わる際に気を付けたいことなどを、まちづくりへの『はじめの一歩』として、短いフレーズで表現していただきました。
「まちを歩き続けたい」
「まちを知ることの大切さ」
「問題をまちの人と共有したい」
「情報発信の大切さ、難しさ」
「人との交流でいろんなアイデアが生まれる」
「外からの目でまちの魅力を発見」
などなど…。
受講者の方々の立場や熟練度はバラバラですし、まだまだ自分の考えを思うように言葉にできない方もいらっしゃいましたが、みなさん、この講座のなかで感じたこと、学んだことをもとに、それぞれの思いを語っておられたのが印象的でした。
(まちづくりの「はじめの一歩」を発表)
休憩をはさんだ後、後半は林先生による講演会で始まりました。
瀬戸内国際芸術祭に出展された宇野港にある魚のオブジェ(写真を見るとかなり巨大なもののようにも見えますが、ワンボックスカーくらいの大きさのようで、瀬戸内海沿岸で拾ったゴミで作られているそうです。)、震災の被災地である岩手県住田町の仮設住宅の方がつくられた人形などの手芸作品の写真や、温泉で有名な湯布院での「牛一頭牧場」「牛喰い絶叫大会」※などのユニークな取り組みを紹介されました。
※詳細は以下のURL参照してください
http://www.yufuin.gr.jp/roots_of_yufu/october/eating_beef_screaming_competition.php
(宇野港にある魚のオブジェ)
(住田町仮設住宅の手づくり人形)
また、これも湯布院でのお話らしいのですが、ある電気屋さんが川沿いに花の種を撒いたところ、台風で種が流され、突然まちのあちこちに花が咲き、まちの人が驚いたという話(先生は「花ゲリラ」と呼んでいました。)や、ある方が黙々と独りでごみ拾いを続けられたところ、その地区では道にごみを捨てる人がいなくなった、などのお話をされました。
先生いわく、「まちづくりにはいろんな形がある。決して行政が定義するものでもなく、市民が進んで自分たちのまちのために活動することはどんなものであれ『まちづくり』。また、他の人が一緒でないとできないというものでもない。独りでもまちづくりは始めることができる。」とのことでした。
(「まちづくりはいろいろ」と語る林先生)
その後、受講者から事前に集めた質問をもとに、先生と受講者、さらには、主催者や見学に来ていた方も巻き込んでの対話形式による意見交換、討論が行われました。
受講者からの質問は大きく分けて以下の5つでした。
・まちづくりに関心のない人に関心を持ってもらうには・・・?
・日本と海外のまちづくりの違いは?
・成功するまちづくりの共通点は?
・まちづくりに対する行政の関わり方は?行政との協議の裏技は?
・合意形成のあり方は?反対する人に対してどう説得するのか?
多数決で議論のテーマとする質問の優先順位を決めました。①が一番多く、④と⑤が次点で、基本的にはその順に議論されましたが、あまりそれに縛られず、林先生の自由な進行で和やかな雰囲気で進められました。
林先生は、ご自分の体験や考えを少しずつはさみながら、質問をしている立場の受講者(ときには主催者や見学者にも!)に逆に質問をして、それに対し自分の言葉で答えさせることで、まちづくりに対する認識を深めてもらおうとしておられるようでした。
(林先生からの逆質問攻撃!)
①や④の議論のときにも、林先生は、「必ずしも、合意形成や関心のない人を無理に引きずり込むことは必要ない。やる気があれば独りでもまちづくりはできる。」と先ほどの主張を繰り返されていました。それに対して、①の質問を出された受講者の方が「無関心な人はどこまで行っても無関心。無関心の人に無理やりまちづくりをやってほしいとは思っていない。私もたまたまインターネットで検索をして、この講座の存在を知り参加しているが、来てみたら楽しかったし、勉強にもなった。私でも何かできるのではないかと思った。私のようなまちづくりを知らない人に、おもしろさを知ってもらうことが必要だと思う。」と発言されました。
今回の講座はまちづくりの初心者の方々にまちづくりの楽しさを感じてもらうことが目的のひとつであり、この取り組みに携わる一人として、とてもうれしい言葉でした。
この後、急遽、脇田研究室での東日本大震災関連の取り組みについてご報告がありました。
「東日本大震災復旧プロジェクト」として、「立ち話ワークショップ」と題し、被災地である気仙沼市の仮設住宅に居住する方々に今困っていることはないかなどをヒアリングし、その声をもとに課題を整理して、その解決に向けた提案をされたそうです。それらのうち、コミュニティづくりを目的とした仮設住宅でのもちつき大会や「こども新聞」など、いくつかの提案が実現されたそうです。
また、近畿大学の地元、東大阪市での「減災まちづくりワークショップ」の取り組みも紹介されました。この取り組みにより、減災意識が強まり、地域コミュニティや災害訓練などの重要性が認識され、減災に向けての活動を行っていくきっかけとなったそうです。
(学生による震災関連の報告)
現在でも、気仙沼市の仮設市場について、単にモノを売り買いするだけの場所ではなく、コミュニティの拠点、みんなが集まれる場所にしようという取り組みをお手伝いされているそうで、第1回の講座をお手伝いしてくれた学生の一人が、現地に留まってお手伝いされています。
この講座の当日、仮設市場は待望のグランドオープンを迎えるそうで、脇田先生も講座後の交流会を途中で抜けられ、教え子の勇姿をご自分の目で確かめるために、夜遅くの飛行機で現地に向かわれました。
脇田先生は、「明日は3月11日。その前日にあたる日に震災について触れないわけにはいかない。ここで学んでいただいたワークショップという手法が被災地や震災を教訓としたまちづくりの取り組みに生かされていることを知ってもらいたい。」と話しておられました。
そして、講座の締めくくりとして、「まちづくりは楽しいもの。楽しくまちづくりをしている姿を見せることで、他の人を巻き込むこともできる。一方で、被災地のように、やらなければならないまちづくりもある。また、地域のみんなで協力する、または外の人にも助けてもらうことが必要なものもある。まちづくりは様々で、いろいろなやり方がある。みなさんもそれぞれのフィールドでまちづくりを頑張ってください。」と脇田先生が総括されました。
(脇田先生による総括)
続いて、講座の主催者である大阪市計画調整局の辰巳課長から、「まちづくり活動支援制度」の概要や実績、制度を活用した地元の取り組み事例などのご紹介があり、最後に、3回の講座にすべて出席された方を対象に、修了証の授与が行われ、3日間、計約12時間に及ぶ講座は修了しました。
(制度の説明をする辰巳課長)
(修了証の授与)
最後に…、
ちょっとしたトラブルはありましたが、なんとか無事、講座を終えることができました。これも、脇田先生をはじめ、サポートいただいた学生の皆さん(皆さんの力強さ、熱心さには頭が下がります。自分の学生時代のことを考えると・・・・)、田辺地区の吉村さん、e-よこ会の杉本さん、東京から来ていただいた林先生、そして、熱心に講義を受け続けてくださった受講生の皆さんのお陰だと思います。本当にありがとうございました。
まち歩きはまちづくりをする上での基本であり、重要なステップでありますが、そこからまちの空気を感じ取り、課題を拾い上げることは、本当に難しい!そのことを改めて認識しつつ、「何でこんなことになってんの!」「こうしたらいい空間になるんちゃうかな~」なんて思いながら、受講者の方々と楽しくまちを歩かせてもらいました。ありがとうございました。
なお、第1回、第2回の講座の様子についてもこのブログでレポートしていますので、是非ご覧ください。
平成23年度大阪市まちづくり担い手育成講座(第1回)を開催しました
平成23年度大阪市まちづくり担い手育成講座(第2回)を開催しました