大阪のまちづくりぶろぐ

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大阪らしい都市の緑化とは?~「大阪大学21世紀懐徳堂」レポート~

2012年07月10日 | その他
 7月5日の午後6時30分から淀屋橋odona2階「アイ・スポット」で大阪大学21世紀懐徳堂i-spot講座が開催されました。「大阪らしい都市の緑化とは?」をテーマに大阪大学大学院工学研究科の柴田先生からお話がありました。30人の定員を相当超える方が聴講され、今日のテーマに対する関心の高さがうかがえました。

(講座の様子)
 市政モニター報告書「大阪市の緑と公園について」のアンケート調査では、大阪市内全体の緑についておよそ60%の回答者が不満・やや不満を感じているようです。都市化により都市周辺の農地や自然が消失し、過密化とともに様々な都市環境問題が発生しています。都市の緑化がもたらす機能としては、生態系の形成・都市気象の調節・大気の浄化などの都市環境の維持・改善、災害時の避難地・延焼防止などの都市防災、美しいまちなみ・快適な環境などの都市景観、休養・散策・余暇活動などの健康・レクレーション空間、心の安らぎ・季節感などの精神的充足などがあります。大阪市内には緑が少なく、都市の緑の多面的機能を十分に受けられるようにして欲しいと感じている人が多いということがアンケートの結果に反映されているようです。
 それでは、どうして大阪は緑地が少ないのでしょうか。それは、都市の成り立ちの違いによるところが大きいそうです。かつて江戸の町は、7~8割にあたる広さが大名屋敷だったそうで、東京に緑が多いのはこの跡地がうまく活用されたためです。大阪には大名屋敷などはなく、大きな広さを占めていた町屋はそのほとんどが焼失しました。大阪で緑の多く残された地域は、大阪城公園、かつての飛行場跡地である靭公園、上町台地の崖沿いのごく限られたエリアとなっています。
 ここで先ほどのアンケート調査に戻りまして、今後、大阪市内の緑に望むことに関する質問では、「ヒートアイランド現象や地球温暖化現象の緩和などに寄与する緑をつくる」という選択が最も多くありました。大阪は、昨年、最高気温が30℃を越える真夏日が76日、最低気温が25℃以上ある熱帯夜が51日あり、日本で最も暑い都市であり、そういったことがアンケート結果につながっているのかも知れません。大阪が熱いのは、緑が少ないといったことのほか、かつて発達した東西方向の通りより、近年、南北方向の筋の方が発達し、東西方向の海陸風の流れの恩恵を十分に受けるのがむずかしくなってきていることや多くの堀川が埋め立てられたことなども一因のようです。
 では、緑化の技術は豊富にあり、お金さえ出せばどこでも緑化することは可能である状況下、「大阪らしさ」をどのように創造することができるのでしょうか。まず、上町台地の崖の緑地を守るということです。はるか昔には、大阪市内は海の底でしたが、上町台地は海に沈むことはありませんでした。歴史の観点からも大切なことだと思います。次に、小さな緑の積み重ねによる都市構造を形成していくことです。例えば、大阪市内ではあちらこちらで小規模な駐車場が散見されますが、このような場所の一部でもいいですから緑化を推進していきたいものです。そして、道頓堀の開削、新田開発、町橋の建設など大阪の発展には、商人が多大な貢献をしてきました。そういったDNAを受け継いで、民間企業が英知を結集し、金を生む緑化の方法を何とか考え出して実行してもらいたいものです。いずれにせよ、忘れてはならないのは「緑は生き物」であり、維持管理が不可欠だということです。そういった意味において、市民とのつながりも極めて大切な要素です。