遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

古伊万里染付幾何学紋そば猪口

2021年05月20日 | 古陶磁ー全般

典型的な古伊万里のそば猪口です。

故玩館で、そば猪口でございます、と言えるのはこれくらい(^^;

しかも、無疵完品5客は、例外中の例外(^^;

 

2種類の幾何学紋が、ペアーで3つ、ぐるっと回っています。

 

 

 

径 7.0㎝、底径 4.7㎝、高 5.9㎝。江戸中後期。

 

 

少々小ぶりで、薄作り。底も全体に釉掛け。

てらいのない造りです。たしかに、標準的なそば猪口と言えるかも知れません。

伊万里のそば猪口には、ほとんど興味がなかったのですが、まあ話しの種に1組おいておいてもいいか、と求めました・・・・というのは表向き、

実は値段が安かったのです(^^;

古い着物を主とする女主人の店で、確か8K。伊万里物が値崩れし始めた頃とはいえ、かなりお値打ちでした。

 

もう一度、この猪口を眺めてみます。

いかにもありふれた幾何学紋です。

でも、考えてみれば、こういう模様も、伊万里の陶工たちがあみ出したものであることは間違いありません。現代にも通用するセンスのこんな模様をどうやって??

素朴な疑問です。

手元の骨董本をひっくり返しても、そんなことを書いているものなどあるはずがありません。

ところが、一度も開いていなかったそば猪口の本の中に、興味深い記述をみつけました。

料治熊太『そば猪口』河出書房新社、1993年

まだ誰も注目していなかった頃に、庶民の雑器や民芸品を蒐集した古コレクターです。

この本では、膨大な量のそば猪口を整理し、様々な角度から光を当てています。

その一つが幾何学紋です。彼によれば、幾何学紋を中心とした図案の多くは、「寒暖」を象徴しているのだそうです。

たとえば、氷裂紋は「寒」、花紋は「暖」です。そして、斜線つぶしは、氷裂紋が簡略されたデザイン、四ツ割花菱紋は四弁花をもとにしたデザインと考えられ、それぞれ、「寒」と「暖」を表しているというのです。

この説に従えば、私のそば猪口は、斜線つぶし紋と四ツ割花菱紋が交互に配置され、まさに、「寒暖」を表しています。

また、斜線つぶし紋を小さく切り取ったような丸紋が点々と4個描かれています。これを花の形とみなせば、斜線つぶしの「寒」と花の「暖」が同居して、「寒暖」を表すとみなせます。

このような考えは、荒唐無稽な妄想にすぎない、と一刀両断されそうです。

しかし、「寒暖」を「陰陽」と置き換えてみたらどうでしょうか。

江戸時代には、安倍晴明以来の陰陽道の精神があちこちにいきていました。しかも、「陰陽」は、物事のバランスをとるのにきわめて有効です。

これを機会に、月なみな幾何学デザインの器を、もう一度見直してみることにします(^.^)

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PCR検査キットを買ってみた

2021年05月18日 | 故玩館日記

大きな封筒が届きました。

 

 

中に入っていたのは・・・・

新型コロナウィルスのPCR検査キットです。

 

いろいろとキャッチコピーが書いてあります。

 

肝心の中身はというと・・・・

 

ロートに唾液をいれ、溜まった下の容器に、保存液(青蓋容器)をいれ、赤のキャップをしめて、送る。そして、結果を待つ。

これだけです(^.^)

パッケージの表には、「唾液採取後キットを郵送」と大書きされているのですが・・・

今月から、回収サービスに変わったとの重要なお知らせの訂正紙が。

要するに、郵便でこういう物を送るのはまかりならんということになったのでしょう。

こんな簡単なキットなら、今時、結構なビジネスになるだろなあ、と思いました・・・が、パッケージの裏、右下に小さく「MADE IN CHINA」の文字が(^^;

こんな物まで外注!

政治が酷いのにはもううんざりですが、日本の科学技術や製造業もどうなっているんでしょう!?

恐ろしいほど遅れたPCR検査体制やワクチン接種を考えると、世界の中の位置がおのずと知れます。

このPCR検査キット、定価4100円、購入価格3880円、

とりあえず2組購入しました。

おまじないかお守りのつもりで(^.^)

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内海焼そば猪口

2021年05月16日 | 古陶磁ー国焼

うつみ(内海)焼のそば猪口です。

 

5客あったはずですが、一個、見あたりません(^^;

 

底は無釉。

 

いたってシンプルな器です。

 

 

径8.8㎝、底径5.8㎝、高6.2㎝。明治~昭和。

半陶半磁の素地ですが、陶器質が勝っています。

黒っぽい呉須で圏線が引かれ、間をグラデーションに塗っています。上釉にも、ほんのわずかに呉須が含まれているようで、全体が少し藍色がかっています。

底の外周が少し厚くなっていて、高台を兼ねています。内側は無釉です。

 

うつみ焼は、愛知県知多半島の内海で焼かれていた陶磁器ですが、今では地元でも知る人は少ないようです。

加藤藤九郎の『原色陶器大辞典』では、「愛知県知多半島の内海(知多郡南知多町)で焼かれた陶器。「うつみ」の印銘がある。」と書かれているのみです。

南知多町の教育委員会によれば、

「内海焼は、明治19年(1886年)から昭和26年(1951年)までの六十数年間にわたり、南知多町内海に作られた四っつの窯で焼かれていた製品です。大量生産されていなかったため、現存する内海焼は多くありません・・・」とあります。

なるほど、底には「うつみ」の印銘があります。

でも、4客の内の3客は、印は、無釉の広い場所ではなく、底の端、わずか数㎜幅の狭い所に押されています。

渋い焼物を焼いていた内海焼ですが、こんな場所に押された印をみると、「どうだ俺達の技は」と陶工がつぶやいているような気がします(^.^)

 

このそば猪口は、大きさ、形からして、珈琲碗にピッタリです。

陶器質ですから、磁器と違って、熱さが手にチーンときません。口あたりもやさしい。

ということで、ここ何年かは、このそば猪口をMyコーヒーカップとして使っています。

陶器なので、布コースターにも合います。

 

 

 

敷物はまだいくらでもあるので、日替わりチョイス(^.^)

 

しばし、世の雑事をわすれて(^.^)

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染付龍紋そば猪口

2021年05月14日 | 古陶磁ー全般

古伊万里のそば猪口です。

故玩館には古伊万里は少ないのですが、その中でもそば猪口は数えるほどしかありません。

あちこち探して、やっと見つかりました。

径 7.1㎝、底径 5.2㎝、高 5.8㎝。江戸後期。

やや小ぶりのそば猪口です。

 

谷岡ヤスジのマンガのような龍が描かれています。

少しずつ回してみると・・

 

もう一匹の龍。

 

見事なニュウ、丹下左膳?(^^;

 

見込みには、怪人二十面相?(^^;

 

この時代にはポピュラーな底面。

 

実は、この品は、故玩館を改修するとき、縁の下にころがっていたのを拾いあげた物です。

時代からすると、3、4代前の人が使っていたのでしょう。

ユーモアや洒落のわかる人物だったのですね(^.^)

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陶胎七宝窓蝶花紋花瓶

2021年05月12日 | 陶磁胎七宝

陶胎七宝の花瓶です。

最大径 19.7㎝、底径 5.7㎝、高 13.5㎝。 明治初期。

これまで紹介してきた陶胎七宝は、いずれも日本的な器で、主として茶の湯用と思われる物でした。それで、陶胎七宝は、明治期、輸出向けの華美な近代七宝に対して、国内向けに造られた七宝、それが陶胎七宝ではないかとの考えにいたりました。

反対側:

これまで紹介した陶胎七宝と類似の模様です。

窓が前後に二つあり、その中に蝶と花が描かれています。

 

左側面:

右側面:

ハート形の地模様に蝶、花があしらわれているのも、これまでの陶胎七宝と同じです。

 

注目されるのは口元です。

 

口縁部に、ぐるッと金属のリングが嵌めてあります。

どうやらこの陶胎七宝は、里帰り品のようです。

陶胎七宝は国内向けの製品だけではなかったのです。

 

窓絵はなかなかのものですが、表面の荒れがひどい。

 

あちこちに色釉の剥げがあります。

これを見ると、色釉の厚さは非常に薄いです。

その下には、やはり白い粉状の物がぬられています。

針でつつくと、ぼろぼろと剥がれます。

右上のハート部分を拡大して見ると・・・・・

白粉の下に、ピンク紫の色釉が見えます。これは、陶胎の上に塗って焼かれた色ガラスでしょう。ポツポツと穴があいています。陶器の素地の吸い込みですね。

陶器質の器の上に釉薬を厚く塗って焼いても、それだけで平滑な表面を得るのは困難です。そこで、白粉(砥粉?)を塗り、その上に色釉を薄く塗って、模様を描いたと推定されます。

 

底には、「錦光山造」とかすかに読める文字が書かれています。

京薩摩の中心、錦光山窯で焼かれた陶胎七宝です。それが海を渡って外国で愛玩され、再び日本に帰ってきたと思うと感慨深いものがあります。

毀れやすい陶胎七宝さん。肌は荒れながらも、よく戻ってきました(^.^)

コメント (2)
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