遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

金工21 法隆寺什器? 雲龍紋稜花三足古銅菓子器 

2020年05月21日 | 金工

先回のブログで、獅子牡丹紋古銅菓子器を紹介しました。

この品物を入手して、一年程後、別の場所で、同じような物を見つけました。

先の品より、もっと地味で真黒でした。

見込みの模様もはっきりしない。

しかし、この雰囲気は、先の品物と同手の物だと、すぐにピンときました。

                  径 24.4㎝、高 8.0㎝、重 423g

4枚の稜花型で2段の胴、3足の獣脚をもった銅器です。口縁の覆輪を4個の金具で止めてあります。

左側が、先回の獅子牡丹紋菓子器、右が今回の品です。

 

少し拭いてやると、ツヤが出てきました。

 

器肌は、先回の品よりも凸凹が多いです。

 

脚の顔も先回の品とほぼ同じです。

胴は先回と同様、2段ですが、下段の方が大きくなっています。

 

見込みの彫りは、はっきりしませんが、光線の当て具合で、浮かび上がります。

 

やはり、蹴彫りで、雲龍紋が表されています。

 

ダイナミックな龍です。

 

内側の上段には、雲が彫られています。

 

 

 

外側の下段にも、雲が彫られています。

 

骨董の本に、今回の雲龍紋菓子器とよく似た品が載っていました。

やはり雲龍紋ですが、私の物と同じかどうかは、写真では判断できません。

胴が1段であるところが、私の品と異なります。

李朝物として売られていることもあるとか。

さらに、『法隆寺秘宝展』(平成2年)で、非常によく似た品が出品されていたとも書かれています。

 

そこでさっそく、『法隆寺秘宝展』の図録を求めました。

 古銅大香炉(法隆寺蔵) 径 23.7㎝、高 8.2㎝

獣脚3足の稜花形容器です。口縁の覆輪を、花形の金具で止めてあります。

見込みには、大きな雲龍紋が線刻されています。

やはり胴は2段です。

内側の上段に雲龍紋、外側の下段にも雲龍紋。

ここまでは、私の品と全く同じです。

雲龍紋のデザインは、少し違うかもしれません。

線刻の方法については、蹴彫りかどうかはわかりません。

胴の上下2段の比率が同じで、私の品とは少し異なります。

明時代の品で、当初は、菓子盤などとして用いられただろうと記されています。

 

私の品を、もう一度ながめてみました。

法隆寺の品と非常によく似ています。

 

はっきりとしませんが、内側の上段の雲には、鍍金(鍍銀?)がほどこされているようです。

外側、下段には、鍍金はみられません。

 

それにしても、時代を感じる器肌です。

最初は、長年の間に、銅器の風化がすすんだためと考えていました。

しかし、よく観察して見ると、どうもそれだけではないようです。

念のため、しっかりと磨いてみました。

 

非常に硬い表面で、銅器の硬さではありませんでした。

一日かけて、必死に磨いてみると・・・・

だんだん、ツヤと輝きを増してきました。

銅器ではありえない質感です。

 

まるで、湖面から登り立つ龍のようです。

 

蹴彫りの模様もはっきりしてきました。

これは漆ですね。黒漆が、銅器の全面に塗ってあるのです。

いつの段階で塗られたかは不明ですが、非常に古い漆です。銅器と一体化しています。経年の表面の劣化も、通常の漆の剥げ方ではなく、長期間のうちに自然な剥離が起こってできた凸凹のようです。丁度、数百年たった古い木製漆器にみられる断紋に相当するでしょうか。

せっかくきれいにしたので、果物をのせてみました。

ぴったりときます。

これは、やっぱり香炉ではなく、菓子器ですね(^.^)

 

先回の獅子牡丹紋古銅菓子器も、よく見ると、うっすらと漆が塗ってあります。ただし、磨いてもあまり光りませんでした。

こうなったら、法隆寺の銅器も磨いてみたいのですが・・・(^.^)

 

今回のブログで、金工は一区切りとします。

 

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金工20 獅子紋古銅三足菓子器(香炉?)

2020年05月19日 | 金工

唐物と思われる、古い銅器です。

     径 25.5㎝、高 7.4㎝、重 486g

三足の銅器で、打ち出しで成型されています。

胴は2段になっています。

 

4枚稜花の形です。

 

非常に端正な形です。

覆輪を、内外の金具で止めています。

 

 

 

3本の脚は、獣足です。

 

見込み中央には、何かが彫られています。

 

獅子が一匹、蹴彫で表されています。

蹴彫(けりぼり)は、毛彫り(けぼり)とは異なり、鏨を一打ちごとに抜いて形を作っていきます。楔形の点々が模様をつくります。古い技法で、大変手間がかかります。

 

かなりダイナミックに彫られています。

 

 

よく見ると、金色に輝いている部分があります。

もともとは、獅子全面に鍍金が施されていたようです。

 

稜の下に、2段の胴部の上側には、牡丹紋が4個、やはり蹴彫で表されています。

 

外側の胴の下段にも、牡丹紋が3個、彫られています。

昔から、獅子には牡丹だったのですね。

 

今回の品には、かなりの時代が感じられます。

チマチマした遅生の金工物の中では、異色の品です(^^;

知り合いの骨董屋が故玩館へ来て、まず最初に目をつけ、譲ってくれと言った品でもあります。業者の折紙付き?(^.^)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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金工19 水滴たち

2020年05月17日 | 金工

金属の水滴、5個です。

黄銅器が4個、銅器は1個です。

金属の水滴は数多くあったのですが、値が付く(かろうじて)物は処分しました。

残った物のいくつかです。

いずれも取り立てての品というほどの物ではありませんので、まとめて紹介します。

水滴は、墨をするとき、硯に水を注ぐ容器です。

私は書は全くダメですので、水滴を実際に使ったことはないのですが、今回、使う立場で、5個の水滴を評価してみました。

形や大きさは様々ですが、片手で操作する関係上、大きさ(6-11㎝)と重さ(95-300g)は、そこそこの範囲におさまっています。

 

 

 

鍔型の水滴です。黄銅製。

8.2㎝x7.7㎝x高 2.0㎝、重さ 283g

七宝で色紅葉が表されています。

鍔の向きはこちらでしょう。

大型ですが、水がなかなか入りません。また、どういう訳か、注ぎ口から、水がなかなか出てきません。重いので、そのうちに手首が疲れてきます(^^;)

 

兜型の水滴です。黄銅製。

8.0㎝x8.0㎝x高 5.6㎝、重さ 276 g

 

水は、武将の口から出るのですが、出が悪い。強く傾けるとドッと一気に出てしまいます。そこで、指で兜の頭にある注入穴をふさごうとすると、兜の前立にあたって痛い(^^;)

 

オーソドックスな水注型水滴です。青銅製。

11.2㎝x7.6㎝x高 2.3(5.4)㎝、重さ  300g

安定感のある形の水滴です。上側全面に唐草模様。

水の入れ口も大きく機能的に思えるのですが、いざ使ってみると、水がなかなか出てきません(^^;

 

唐物とおもわれる水滴です。銅製。

8.0㎝x4.6㎝x高 6.5㎝、重さ 115 g

デザインがしゃれています。

側面には雰囲気のある文字が彫られています。

 

蓋をとると、穴が2つ。真ん中の穴は・・・

裏まで続いています。蓋のピンはそこへ収まります。

水を入れるのは、その横の小さな穴。ずいぶん時間がかかります。

そして、いざ、水注ぎとなっても、肝心の水がなかなか出てこない。

これはもともと別用途の物だったのでしょうか。

飾っておくには格好の品です(^^;

 

瓢箪形の小さな水滴です。

6.0㎝x3.9㎝x高 2.1㎝、重さ 115 g

瓢箪とマサカリに、紅葉があしらわれています。

養老の滝でしょうか。

 

裏側はかなり擦れていて、よく使われていたことがわかります。

水は、上の口からなんなく入ります。

肝心の水注ぎですが、片手で、すんなりと水が出ます。しかも、上の口も、親指で調整自在。さらに、瓢箪の口が少し手前を向いているので、わずかの手首の動きで、微妙に注水をコントロールすることができます。点、点、点・・・と水を落とすことも可能です。

 

手のひらにすっぽりと収まる大きさと形です。

このまま、手の上でころがしたくなります。

実際、数限りなく手の中で遊ばれてきたのでしょう。

まろやかな手触りです。

根付けに似ていますね。

 

結局、道具として、評価に値するのは、1個でした(^.^)

 

 

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金工18 使い勝手の良い鉄香炉

2020年05月15日 | 金工

鉄製の香炉です。

      幅 7.9㎝x高 6.4㎝、重 507g

 

それほど古い品ではありませんが、よく使われています。

全体に、香の匂いがしみついています。

 

裏も、いたって簡素。

銘がありますが、読めません。

 

この香炉の最大の特徴は、煙の出る穴です。

香炉の煙出しの形式は、2つに大別されます。

一つは、今回の香炉のように、蓋があって、そこから煙が出るもの、もう一つは、先に紹介した寿老人のったり香炉のように、本体のどこかに穴をあけてあるものです。

陶磁器の香炉では、銀蓋をしつらえてある物が多いですが、これは前者の形式です。

いずれにしても、この形式では、蓋に力をいれます。

この鉄香炉の蓋も、溶岩が沸騰しているような形をしています。

不思議な造形です。

鋳造であることは間違いないのですが、この炎のような部分は、どうやって作るのでしょうか。後で、この部分だけ加熱して熔かすのでしょうか。

 

いつのまにやら香炉もあれこれと数集めてしまいましたが、実際に私が使っているのは、もっぱら今回の品です。

鉄ですから当然重いです。この安定感が、火をつかう香炉では重要です。ちなみに、寿老人香炉はすぐ倒れます(^^;

それから、手でふれた時の感触。鉄の冷たさを感じさせないまろやさです。

 

みかけはパッとしないが、安心して事を任せられる。

朴訥だけれども、そこはかとしたあたたかさが。

そんな香炉に私はなりたい(^_^)

 

 

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奇妙な落とし物

2020年05月14日 | 故玩館日記

畑の端にあるスモモの木です。

あまりにも大きくなりすぎたので、2年前、8割がた伐採しました。太い幹は切れないので、そのうち枯れて朽ちるだろうとの算段でした。

 

ところが、枯れるどころか、新しい枝をどんどん伸ばし、びっしりと実をつけています。

すごい生命力です。

 

この手の木には、毛虫がつきもの。

20匹ほど退治しました。

 

ふと下を見ると・・・・

白いビニールホースがあるではありませんか。

この場所は、雨が激しく降ると、すぐに小川が増水し、水が引いた後、流れてきた物がこんな感じで残ります。

 

近寄ってみると・・・

ビニールではなく、蛇の抜け殻でした。

 

長いです。相当の大物。

頭、尻尾が見あたりませんが、ゆうに1mはこえています。

おそらく、1m20‐30㎝の大蛇でしょう。

かつては、うじゃうじゃいた蛇も、最近ではめったに見かけません。今年は、蛇の当たり年か?

 

蛇の抜け殻を財布に入れておくと金が貯まるとか。ネット通販でも蛇殻を売っています。

ダメもとで、これまで数回試してみましたが、財布の中は軽いままでした(^^;

あたりには、何やら生臭い匂いもたちこめていて、本体はまだ近くにいるかもしれません。

長居は無用。

蛇の落し物はそのままにして、道路側へ退散しました。

 

で、道路(中山道)脇の草むらをふと見ると、何かがあります。

 

拾い上げてみると、これは古伊万里のはぐれ。

 

幕末頃の奈良茶碗の蓋でした。

どうしてこんなところにポツンと落ちていたのでしょうか。

もちろん私の物ではありません。

近くの誰かが?

こんな田舎に、幕末とはいえ、古伊万里の茶碗で茶漬けを味わう粋人がいるはずもありません(^^;

 

蛇殻と茶碗の蓋。

奇妙な落とし物を2つも見つけた不思議な一日でした。

 

 

コメント (14)
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