遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

敗戦特集。 3.防水マッチ箱

2019年08月15日 | 敗戦特集

これは何でしょう?

火の用心とあります。

 

 

裏面には、勇ましいスローガンが。「護れ大空」

 

 

穴があいています。

磁器でできた品です。大きさ、4x6.3㎝。片手にすっぽりと収まります。

 

 

どうやら、マッチ入れの様です。

 

 

マッチ棒を入れて、振れば出てきます。

防水マッチ入れですね。

 

側面はザラザラした磁器の面。そこを擦ってみると・・・

 

 

ちゃんと火がつきました。



これは、軍事用でしょうか。

調べてみると、昭和18年、軍命令により防水マッチの量産が開始されました。防水マッチは、マッチの頭部を蝋で覆った製品です。マッチ自身を防水加工した品です。軍では、兵士のタバコや野営用に、防水マッチを配布していました。

それに対して、この品は、ただマッチ棒を入れておくだけの物です。防水の効果は蝋に劣ります。が、使うときに蝋を取り除く必要がなく、簡便です。たぶん、民生用に作られたのだと思います。

日本では、すでに、明治初期からマッチが製造され、以来、戦争中、そして戦後も、マッチは日常生活になくてはならない品でした。

ところが、20年ほど前に、私はあることに気がついて愕然としました。20歳くらいの若者のうちのかなりの人たちが、男女を問わず、マッチを擦れないのです。聞くと、マッチを使ったことがない、マッチをするのが怖い、と言うのです。

考えてみれば、彼らが生まれたころから、日常で、マッチをする機会がなくなってきたのです。マッチを擦れなくても困ることはない。キャンプファイヤーもチャッカマンでOK。

 

当然、マッチ棒で遊んだこともありません。

彼らには、マッチ棒のパズル、新鮮だったようです。

 

小学生の頃、よく遊んだパズル:

 

マッチ棒2本を動かして、豚を振り向かせる・・・・・

 

 

 

正解は・・・

 

 

マッチ棒2本を動かして、豚さんをペチャンコに・・・・

 

 

大人の仲間入りする頃によく遊んだパズル:

彼女を誘ったら、その返事は・・・・

 

 

マッチ棒2本を動かして・・・

 

 

たあいもない遊びです。

スマホ時代に、何とアナログな!?

ちょっと待って下さい。時代は目まぐるしく変わりますが、人間はそう簡単には変わらない。DNAレベルの変化が起こるには、数万年の時間が必要です。科学技術により生活は激変していきますが、人間の方はほとんど変わらないのです。

 

たかがマッチ、されどマッチ。

マッチをすって、ほのかな光で、先の戦争や今の日本を照らしてみると、ある芸術家の青春の歌が浮かんできます。


「マッチ擦る つかのま海に霧ふかし 身捨つるほどの祖国はありや」

                           寺山修司


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4 コメント

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マッチ箱 (ことじ)
2019-08-15 22:18:41
磁気のマッチ箱なんですね。
これは使い捨てではなく長く使えるものですね。
確かに今の生活ではマッチを使うことはありませんね。
私もマッチを使っていた世代です。100円ライターが
出る前までは。
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ことじさんへ (遅生)
2019-08-16 01:01:47
戦時中、磁器でできた奇妙な物、沢山ありました。磁器の仏具や磁器の缶詰、磁器の手榴弾まで。これらは、金属の代用品です。金属不足を補うため苦肉の策。で磁器の出番。それに対して今回の品は、磁器だからこその物なのです。その点、陶磁器を少々集めている者としては、ホッとする品です(^_^;)
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遅生さんへ (Dr.K)
2019-08-16 09:57:01
磁器のコインや手榴弾は見たことがありますが、マッチ入れは見たことがありません。
珍しいですね。


パズルの、「HOTEL」から「I HOPE」への展開に苦慮しました(><)
これでは、彼女に愛想つかされそうです(笑)。
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Dr.kさん (遅生)
2019-08-16 12:47:20
戦時中の品物ですが、例外的に、これは代用品ではないんです。今は屋外活動用に、金属でできた類似品がありますが、陶磁器というところがミソだと思います。これを考え、作った人に拍手です。水滴作りからヒントを得たんでしょうか。
HOTEL、 I HOPEも誰が考えたんでしょうね。こんなんでワーワー言ってよろこんでいた頃・・・・のどかで平和な時代でしたね。今よりはるかに余裕がありました、世の中も(^\^)
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