高麗青磁の大壷です。
最大径 33.6㎝、口径 14.1㎝、高台径 13.9㎝、高 31.2㎝。重 4.1㎏。高麗時代。
古格を感じる壷です。高台の畳付は非常に滑らかで、長い間使用されてきたことがわかります。
やや失透気味の青磁釉が掛かっています。表面には、全体に細かい貫入がビッシリと入っています。
貫入のシミには色が付いていますが、新しい貫入もいくつか見られ、経年の変化を物語っています。
これまで見てきた青磁象嵌にも見られた、象嵌で地を削った時の歪みによる貫入を、この壷では、非常にはっきりと見ることができます。上の写真で竹をとりかこむ円窓の枠は2本の白象嵌で描かれています。この線上に、二本の貫入が丸く現れています。そして、それに対して直角に、短い貫入が入っています。丁度、鉄道のレールのようです。象嵌に沿った貫入とそれに直角の放射状貫入。この大壷には、そこかしこに、このような貫入が見られます。高麗青磁象嵌に特有のパターンがこれほどはっきりと表れた品も珍しいです。
円窓の外側には、鶴と雲が象嵌で表されています。
この壷には、4個の円窓が描かれています。一番初めの写真を正面として、他の3面を次に示します。
右面:竹に鶴
後面:柳に鶴
左面:竹に鶴
それぞれの円窓を拡大して見ていきます。
正面の円窓:
柳の木を中心に、3羽の鶴。
一羽は地面にいます。柳の下には、ススキが、左、右に一本ずつ描かれています。わかり難いですが、ススキの白い穂が垂れた柳の枝と交錯しています。こういう象嵌は、どうやって行うのかわかりません。高度な技法です。
木のてっぺんにいるのは、子供の鳥でしょう。
右面の円窓:
竹と4羽の鶴が描かれています。
4羽のうち、2羽は地表に、他は空中。
後面の円窓:
正面の円窓とよく似ています。見難いですが、左上に鶴が一羽います。木のてっぺんに、子供もいるようです。
下左に鶴1羽、右にもいる?
見難いですが、柳の木の左右に、ススキが一本ずつ生えています。
左面の円窓:
竹と4羽の鶴。
上に2羽、下に2羽。右面の円窓と同じです。
この壷は長く置いてあったので、ホコリがたまっていました(^^;
今回、布巾で掃除をするうちに、不思議な事に気がつきました(^.^)
肩には菊花紋が11組描かれていますが、それぞれの菊花紋の辺りが扁平なのです。内側から触ってみると、指で押さえられたような凹みがあります。結果として、壷の上部は、11個の軽い面取り状になっています。
同様に調べてみると、雲の象嵌部もすべて押さえられています。鶴模様の部分には、押さえた形跡がありません。
一方、壷の下半分には、雲も含めて、押さえた跡は全くありません。
このような象嵌部の押さえは、先のブログ、青磁象嵌雲鶴紋梅瓶でもみられました。意図的になされた事は間違いありませんが、どのような効果を狙ったのでしょうか。
もう一つ、この青磁壷では、面白いものが見えます。
壷が大きすぎたのでしょうか。青磁釉が掛かっていない所が下半部にあるのです。
素地がむき出しになっていて、青磁象嵌の施し方がわかります。
また、青磁釉の有る無しで、模様の見え方がどのように変わるかもわかります。青磁釉が掛かると、模様が上へ浮き上がって見えます。特に、白象嵌の部分が上がってきたように見えます。
正面の円窓の部分を拡大して見ます。
円窓の右下ススキの穂の部分です。やはり、白い穂の部分が浮き上がって見えます。たくさんの気泡が見えますが、この効果でしょうか。
気泡が少なく、透明度の高い高麗青磁と比較すれば、気泡の効果かどうかがわかると思います。
窓、昔から窓は大きな意味を持っているようですね。
円窓の二重線は白土を入れる(入れた?)はずだったのでしょうが、うまく白色が出なかったようです。
これだけの大きさのものに、バランスよく白黒象嵌を施しているんですね。
見事です(^-^*)
でも、さすがに、途中、力尽きたのか、底のほうに青磁釉がかかってない所があるんですね(~_~;)
朝鮮半島の仕事によくあることで、いい加減というか、アバウトというか、ご愛敬でしょうか(^-^*)
象嵌青磁は朝鮮半島だけの技法です。よくこんなものを考えついたものだと感心します(^.^)