掛軸ではなく、短冊に書かれた自作和歌です。
短冊:6.0㎝x36.4㎝。明治。
『春き多可 をやミし庭を ひとり見て
ゐ可んとすれは 薫流梅ヵ香 常貞』
「春来たか 親見し庭を 一人見て
行かんとすれば 薫る梅が香 常貞」
「春き(幾)多可」か「春さ(左)多可」か、随分迷いました。字からすると、どちらでもOK。でも、「春定か」では、句が薄っぺらくなるので、ここは「春来たか」でしょう、と判断しました(^.^)
「常貞」は、米山の本名です。日常的な文章や作品の落款には、名を用いたようです。
伊予松山郊外の片田舎、中央で活躍する弟たちを想い、神官として一人、神社を守りながら、平凡な毎日を送っている米山の心のうちがわかります。
先回の自作俳句『とんぼうや』とともに、私が好きな米山作品です。
米山の本拠地「日尾八幡神社」。この句で詠まれた庭が、麓のこの辺りをさすのか、階段を上がった本社周りを指すのかはわかりません。