今回の書は、やはり楷書的草書ですが、文字数が多いです。
『萬事不如杯在手百年幾見月當空』 全体 : 53.2㎝ x192.5㎝、本紙(紙本):40.5㎝ x 108.9㎝。明治。
『萬事不如杯在手
百年幾見月當空』
萬事如かず、杯の手に在るに。
百年幾たびぞ見る、月の空に当たるを。
どんな事だってかなわない、杯がこの手の中にあることに。
百年のうち何度だろう、月が空に光輝くこんな夜は。
『萬事不如杯在手・・・』は、明の『三岡識畧』卷一「福王淫昏」に載っている句です。オリジナルは、『萬事不如杯在手百年幾見月當頭』です。それを、『萬事不如杯在手百年幾見月當空』としたのは、米山の創意でしょうか。それとも、記憶違い?私は、「頭」より「空」の方が雄大で、この詩には合っていると思います。
この句が載っている『三岡識畧』は、日本人にはあまりなじみのない本でした。米山が、当時、大家の詩書や警句ではなく、このようなマイナー資料まで目を通していたとは驚きです。
『萬事不如杯在手、百年幾見月當空』は手放しの酒飲賛歌です。酒豪の三輪田米山が書くとなおさらリアリティがましますね(^.^)