江戸後期、瀬戸で焼かれた行燈皿です。
径 22.2㎝、高 1.3㎝。 江戸後期。
高台はありません。
裏面は全面施釉され、丸く釉剥ぎした所に、8つの目跡があります。
器形はフラットな円盤状です。
行燈皿は、行燈の灯火器から落ちる油を下で受ける皿です。
江戸時代には必需品でしたから、各地の窯で作られました。そのなかでも、瀬戸の行燈皿が最も多く使われました。
石皿、馬の目皿、絵瀬戸などの瀬戸の絵皿の中で、行燈皿は上手の造りです。素地も、他の皿に比べて磁器分が多く、硬い焼き上がりです。
今回の行燈皿の見どころは、やはり絵付けです。
杜若と
蝙蝠。
なかなか洒落た杜若です。
杜若と蝙蝠の取り合わせは珍しいです。何か謂われがあるのでしょうか?
考えられるのは吉祥模様です。杜若は、古来から縁起の良い植物とされてきました。また、蝙蝠は、中国の吉祥紋です。福の字に似ているからだそうです(^^;
この花、最初のブログでは『菖蒲蝙蝠紋行燈皿』のタイトルだったのですが、いずれがアヤメか杜若、と言われるように、私には両者の区別がつきません。ならば最初にうかんだ菖蒲で、と実にいい加減に決めたわけです(^^; ところが、その後、自閑さんから、水の流れからカキツバタではないか、との指摘をいただきました。確かにそうです。在原業平の八つ橋の杜若を思い出しました(実際の八つ橋は渦巻く流れではなく単なる池と小川(^^;)。
そんなわけで、今回のタイトルを、『杜若蝙蝠紋行燈皿』と訂正させていただきました(^.^)
もう一つの見どころは、経年の地肌です。
この薄黒い部分は、油のシミです。単なる汚れなのですが、細かい地カンニュウと組み合わさって、何ともいえない味が出ています。
先回紹介した絵瀬戸皿に比べ、行燈皿は人気があります。その理由は、やはり、長年の使用が作りだす味わいでしょう。茶道具と似ています。行燈皿は育つ日用雑器なのです。ただ、茶道具と違って、我々が使い込んで育てることはできません(^.^)