翌日。昨日の家づくりと、昨夜の疲れのせいで、おれは昼すぎまでぐっすり眠っていた。
床に転がったまま眠りこんでいたので、起きたとき、体が痛かった。
のそのそと起き上がって、バスの窓を開けると、潮風が入り込んできた。汗ばんだ体には気持ちよく、目を細めて海を見る。
今日も日差しは暑そうだけど、いい天気だ。
ふと、昨夜の出来事を思い出し、サイフを開けてみた。
小銭しかなかった。
どうしよう。バイトでも探そーかな…。
とりあえず昼食を済ませ、海沿いの道を歩いていると、波打ち際の方で何かしている、4,5人の子供たちが見えた。その中に1人、少し年上の少女がいる。ストレートの長い髪。おれは彼女達に近づいていった。
「何やってんの」
その集団に声をかけると、皆、一斉におれを見上げた。子供たちはみんな、手に小枝の棒きれを持っている。
「武蔵」
少女がちょっと驚いたように言った。せいあだ。ストレートの髪が潮風に揺れる。
「漢字の練習してるの」
「せいあちゃんに教えてもらってんだ」
子供たちが口々に言う。
「へ?」
彼らの足元をよく見ると、確かに、砂の上にいくつかの漢字が書かれていた。
「武蔵、ちょうどよかった。ちょっと待って」
せいあはそう言うと、砂の上に置いてあるバッグの側にしゃがみこんだ。サイフから千円札を1枚取り出すと立ち上がって、「ハイ」と、おれに向かって差し出した。
「え…なに?コレ」
ちょっと戸惑った。すると彼女は、
「昨日のお金。後でよく見たら、1万円札の下にもう1枚コレがくっついてたの」
と、さらりと言った。
「え!?…なに、お前、そんなんわざわざ返してくれんの?」
驚いた。変わったやつ。
昨夜の彼女のふるまいとのギャップに、思わずぷっと吹き出した。
彼女は不思議そうな顔をしている。
「いらないんだったらいーわよ」
少しツンとして、サイフに札を戻そうとする。まだ笑っていたおれは、
「わーっ、いりますいります」
と、慌てて彼女の手を止めた。
「ラッキー、おれ今、超金欠でさぁ。助かったわ」
千円札を受けとって笑う。
あー、昨日ぼーっとしてたから、二枚くっついてんの気づかなかったんだ。
「別に。もともとあんたのだし」
彼女は、相変わらず無愛想。
「せいあ…」
話しかけようとすると、いきなり背後から何かがどんっとぶつかってきて、思わず前につんのめってしまった。
「ぶっ、何だコレ!?」
振り向くと、腰に、白くて長い毛のかたまりが吸いついていた。よく見ると…犬?
「ラウ!」
せいあが声をあげた。
「ワンッ!」
その犬がおれの腰にぶら下がったまま、彼女の顔を見て元気よく吠えた。
「これ、あんたの犬?」
長い毛に、青い、きれいな色の首輪が見え隠れしている。
「うん」
彼女は答えて、ラウを抱え上げようとした。だが、ラウはおれの腰にしがみついたまま離れない。
「ちょっとラウ、どーしたの?」
彼女がラウをひっぱった。
「イデデデデデデ」
まじ、いてーよ。
子供たちが、ざわざわしはじめた。その時、
「わっ!」
「ぶっ!」
急にラウが腰からはがれた。その反動で、おれは砂に足をとられて、不様(ぶざま)に前にこけてしまう。子供たちが笑った。
「ごめん、大丈夫!?」
頭の上で、せいあの慌てた声がする。
「…」
温(ぬく)い砂の上にうつぶせになったまま思う。
おれ、こいつに痛い目にあわされてばっか。
釈然としないまま、顎についた砂を手で払って起き上がった。
「あ」
振り向いて、見上げて、小さな声をあげた。せいあの腕に抱かれたラウが、タバコの箱をくわえて、こちらを見ている。おれが、ジーンズの後ろのポケットに入れていたやつだ。
目が合うと、ヤツは、せいあの腕をすりぬけて砂浜に飛び降りた。
「あっ、待てコラ、返せっ」
おれは子供たちを掻き分けて、ラウを追いかけた。
だが、波打ち際で、はねるようにして走るラウは、すばしっこくてなかなか捕まえられない。
「くあ、このやろっ」
ようやくラウの体を捕まえた。ラウはおれの手から逃れようとして、ジタバタ暴れた。
「タバコ返せ、コラっ、…あ``――――っ!」
隙をつかれて、タバコが、ぺっと吐き捨てられた。
タバコの箱は、ぽちゃん、と海に落ちて、波打ち際で漂った。
「あーあー、テメー、何すんだよ」
おれはラウを砂浜に放り投げて、水浸しになった箱をつまみ上げた。
中身もぐしょぐしょ。使いもんにならない。
うぅ。ねぇ、今日、厄日?
恨めしそうにラウを見ると、ラウはブルブルッと体を振るわせ、おれを見て、へっへっと笑った。
かっ、ムカつく犬。
「オメー、べんしょーしろよ」
ラウの傍らに立つせいあを、軽く睨んで言った。
「は!?なんであたしが」
「お前、飼い主だろ」
「ラウ、男の子だからヤキモチやいてんだー」
子供の1人が茶化すように言った。
オスか、あいつ。
「おにーちゃん」
別の子供が、恐る恐る、声をかけてきた。
《つづく》
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料理は手間かかりますもんねぇ…。たくさんのおかずをお弁当に入れる時には、いかに効率よく仕上げていくかがミソだと思うんで、チンも強い味方ですよ
でも、あのm@ximさんのお弁当なら、きっと、心もおなかも満足ですねm@ximさんの愛とおかずが詰まってるようでした
お久しぶりでっす♪♪
またまたコメントありがとうございます!ヾ(●´□`●)
でも私は決して料理上手じゃないですよ!
ほとんどがチンで済ませてしまいます…。
ははw
カボチャ私も好きなんですけど、時間かかるのが厄介ですよねぇ。
でも今度は珍友さんの願いを叶えるため、ぜひ入れまーす
子供は。。。実は武蔵に衝撃の真実を…!
最後のよってきた子供は今後の展開になにかを与えそうな気が。。。