珍友*ダイアリー

管理人・珍友の書(描)いた詩や日記、絵や小説をご紹介☆

後期授業*開始☆!

2006-09-30 16:24:47 | 今日の出来事☆
今日から後期の授業開始ですしかも、土曜日だというのに、前期と変わらず1限から授業入れちゃってます
通年授業の1限を終え、あぁ学校ってこんな感じだったかなぁ~と、ぼんやり夏休みボケの頭をほぐしていると、2限目の先生が教室に入ってきました。(※後期は偶然にも、土曜1・2限が同じ教室なので、珍友、移動ナッシンです☆)この授業は、後期のみなので、今日が第一回目です。源氏物語についてやるのですが…は、果てしないさわりの部分で説明長すぎっ1限の万葉集に引き続き、終わる頃にはぐったりでした日本文学デーの土曜日、これからどうなることやら…ぼちぼちがんばりますたい

さて、その後は、事務所提出のレポートも出して、一安心気を取り直して、久々にあげぱん食べました(セブンの長いあげぱん)う~ん、やっぱ、うまっ実は、本気で、あげぱんで卒論を書こうと考えている今日この頃です

     (今日の天気:時々)

家に帰ろう

2006-09-30 16:00:50 | 詩…*つれづれ日記系*
流れる車を眺めて
明かりが灯る家を見た
柔らかな日が射す夕暮れ
ゆっくりと時間が過ぎる

おつかれさま
街がみんなに
そう言って 一日の終わりに
ほんの少し温かな 魔法をかける

家に帰ろう
一日の出来事
全て包み込んでくれる場所へ

誰かといても 一人でも
暗闇に光を灯す場所
そこに帰ろう

Tomoky

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『僕たちなりの大人~Our Own Adult~』第六十五話

2006-09-30 15:35:51 | 第八章 旅立ち
8. 旅立ち

 それから少し眠って、おれたちは朝を迎えた。
 せいあと、昼過ぎに荷物を持って、『ガーリック』の前で落ち合う約束をして、いったん別れた。
 おれは、昨晩、この街に帰ってきた時、サラ婆の家に投げ出していったままの荷物を取りにいって、その後、京一の家に向かった。
 彼らは、一ヶ月ぶりのおれの来訪に、心底驚いていた。京一とリズに、「せいあとこの街を出ていく」と告げて、まだベビーベッドで眠っている京太郎に、「元気でな」と声をかけて、頭を撫でて、出ていった。
 ヨースケのバイト先にも顔を出した。京一たちに告げたことと同じことを告げると、彼らと同じように驚いて、「そうか…」と、同じことをつぶやいて、同じように、少し寂しそうな顔をして、それから笑った。
 そして最後に、『ガーリック』に行った。店長に同じことを告げると、彼は、少し驚いて、それから、おれの目を見て、黙ってうなずいた。
 彼らに伝えておけば、他の仲間たちに伝わるのも、そんなに時間はかからないはずだ。
 ちなみにバスは、片づけが面倒臭いので、そのままにして出てきた。

 せいあを待った。
 待ち合わせの時間が来ても、彼女は来なかった。
 
 5分後に、彼女が来た。
「おせー。ちこくー」
 ぶすっとして言った。「自分はダチと待ち合わせしても、いつもさんざん待たすくせに、よく言うよな」と、ちょっと心の中で苦笑した。
 だが、少し離れた所に立っている、せいあの姿をちゃんと見て、顔色が変わった。
「お前…荷物は?…ラウも」
 彼女が持っているはずの荷物も、一緒にいるはずのラウも、そこにはいなかった。
 潮風に髪を少し揺らしながら、彼女はおれの顔を見て、ちょっと困ったように、寂しそうに微笑んで言った。
「あたし、やっぱり行けない。この街にいるよ」
「…っ」
                        ≪つづく≫

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『僕たちなりの大人~Our Own Adult~』第六十六話

2006-09-30 15:35:33 | 第八章 旅立ち
 息を詰めてうつむいた。
 そうか…。だけど。
「やだよ」
 うつむいたまま、つぶやいた。けれど声は、震えない。
「え…」
 彼女が小さな声をあげた。
 顔をあげた。
 少し離れた場所の彼女の顔を、彼女の瞳を、真っすぐに見て言った。
「おれは、お前を連れていく」
「…っ」
 今度は、彼女が息を呑んだ。
 見つめ合ったまま、少しの沈黙。
 彼女は、さっきのおれと同じようにうつむいた。
 が、すぐに顔をあげると、
「うん」
 とっておきの笑顔。
 おれたちが互いの所へ歩み寄ろうと、足を踏み出した、その時、
 ワーーーッという歓声や拍手や口笛の音とともに、頭上から、まるでパレードのような、色とりどりの紙吹雪が降ってきた。おれも彼女も驚いて、頭上を見上げた。そこには、
 みんながいた。『ガーリック』の二階のテラスや、一階の入り口や窓から、身を乗り出して、こっちを見ている。
 二階のテラスに、空っぽのカゴを逆さまにして振っている、ヨースケと太一と刃がいた。どうやら、彼らが紙吹雪を降らしたようだ。
 ヨースケ、京一、リズ、京太郎、店長、サラ婆、太一、刃、マサキ、空音、樹里、ヒトデ、鉄平とゆかいな仲間たち、凛花、凪、茂さん、深夜さん、慎吾さん、そしてラウ…………おれたちがこの街で出逢った全ての人たちが、そこにはいた。数えきれないほどの人たちの中で、たった1人、マナだけを除いて。でもマナは今、中央の病院で、必死に病気と闘っている。
 舞い落ちる紙吹雪の中、みんなが次々に入り口から出てきた。
                           ≪つづく≫

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『僕たちなりの大人~Our Own Adult~』第六十七話

2006-09-30 15:35:13 | 第八章 旅立ち
「せいあ、おめでとーーーっ」
 リズがそう言って、せいあに抱きついて、持っていた、せいあの荷物を渡した。すぐそばには、サラ婆、空音、樹里、ヒトデもいる。樹里はラウを腕に抱いていて、空音とヒトデは、はた目にも分かるほど泣いていた。樹里とリズ、サラ婆も涙ぐんでいた。
「よかったじゃん、フラれないで」
 京一に後ろから声をかけられた。振り返ろうとすると、
「一回、フラれてんじゃーん」
 と、横から飛んできたヨースケにどつかれた。
「うっせーよ」
 と、少しよろけて、ムキになって彼らを振り向いた途端、あっと声をあげた。
「それ…」
 京一の腕に抱かれた京太郎を、思わず指差した。京太郎は、おれがあげた、だぶだぶの白い『鮭』のTシャツを着ていた。
「ばぷーーーっ」
 京太郎が元気に両手をあげた。
 はしゃぐ京太郎を落とさないように、慌ててお尻を押さえて抱え直した京一が言った。
「それがさぁ、こいつ、この服、なんかミョーに気に入っちゃってて」
 くやしそうに、照れ臭そうに。
「マジで?」
 素直に嬉しかった。
 京一が、京太郎をおれに抱かせてくれた。京太郎を抱くのは2回目だった。壊れてしまいそうなほど、小さくて柔らかい京太郎の体を、そっと京一の見よう見まねで抱いた。京太郎は、おれの腕の中でも、嬉しそうに、両手をあげてはしゃいでくれた。
「お前、やっぱ、いー奴じゃんか。センスいーなー。分かってっし」
 京太郎の頬に、自分の頬をすり寄せて言った。心地よい肌の温もりと、かすかな優しい匂いを感じた。
「武蔵――――っ!お前、オレのせがれに、じょりじょりすんなーーー!」
 すぐそばで、京一が両手をわなわな震わせて叫んだ。
「なんだよ、いーじゃん、な、太郎」
 ねぇ。朝剃ったもん、ちゃんと。が、京一は、
「よくねぇーーーーっ!やりたかったら、今すぐ剃ってこい!ついでに、変なトコロで省略すんな!」
 と叫ぶなり、おれの手から京太郎を、ばっととり上げた。
 なんですと。
 思わず自分の顎に手を触れると、短いヒゲの感触がした。
 …ここまで来たらもう、自分のヒゲ発育細胞が、恐ろしい以外のなにものでもない。
 ぐったりしているおれとは逆に、京一は怒ってるけど、顔は笑ってた。
                            ≪つづく≫

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『僕たちなりの大人~Our Own Adult~』第六十八話

2006-09-30 15:34:47 | 第八章 旅立ち
 その時、後ろの方で、チャリンと小銭の音がして、思わず振り返った。小銭の姿を追うおれの眼光は、多分鋭かったと思う。見ると、何人かのダチがくやしそうな顔で、舌打ち混じりに、マサキの掌に小銭を落としているところだった。マサキの顔は、彼らとは反対に、ニヤニヤ得意げに笑っていた。小銭を握りしめて、軽い声で「どーもねー」とか言っている。おいおい。まさかさぁ。
「マサキ、テメー、何、人のこと、カケのダシにしてんだよ」
 マサキの後ろ頭を、冗談の力で片手でガッと掴んで言った。
「げっ、武蔵さん!」
 案の定、ヤツは、おれの顔を見上げて慌てている。
「げっ、じゃねーよ、ったく、信じらんねぇ」
 そう吐き捨ててから、マサキの頭を掴んでいた手を離し、小さなため息を1つついた。呆れた。でも、よくこんなこと思いつくな、と、ある意味、ちょっと感心した。マサキは小銭を握りしめたまま、へヘッと笑っている。ムカつくから言ってやった。
「ふざけんな、金よこせっ」
「ぎゃははっ。ちょっ、武蔵さん、やめッ、マジでっ、くっ、ふへへへ…」
 こちょぐりまわしてしばらく暴れた後、マサキの首根っこを捕らえると、ヤツは、ひーひー言いながら、笑いすぎで、少し潤んだ目を上げた。その瞬間、あっと声をあげて、小銭を掴んでいない方の手で、その視線の先を指差した。格好の逃げ道が見つかったとばかりに、おれを見上げてニヤニヤ笑いながら、
「ダンナァ、奥さんがとられてまうでぇ」
 と、すっとぼけた声で言った。
「あ?」
 何、言ってんだ、こいつ。
 不審に思って、マサキの指差す先を見ると、
「あ゛――――――っ」
 せいあが男友達と話しているところだった。マサキの首根っこをほっぽり出して、ずかずか踏み出した。
 オメエら、なれなれしく触んじゃねぇよ。…つっても、せいあの肩に手ぇ置いてるくらいなんだけど。いやいや。てやんでぇ。待ちやがれ。
 するとその時、後ろから、
「オレは、武蔵さんたちがくっつく方に、カケたんだけどね」
 という、ぼそぼそっとした早口の声が聞こえた。え、と思って、思わず振り返ると、声の主のマサキは、ポケットに入れかけていた小銭の最後の一枚を空高く放り投げて、受け損ねて、慌てたふりで追いかけた。
「…」
 そういえばそうだよな、マサキが金もらってんだから。悪いことしたな。でも、似合わねーことすんじゃねーよ。大体、ヒトの恋愛、カケに使うこと自体、ひねくれてんだよ、テメエは。…。シタタカニンゲンマサキめっ。まぁ、いいか。ベッド譲ってくれた礼と、掃除してくれた礼だと思えば。
 …もう、もはや自分が何を考えてるのか分からない。つまりは、マサキと同じぐらい照れていた。
                            ≪つづく≫

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『僕たちなりの大人~Our Own Adult~』第六十九話

2006-09-30 15:34:27 | 第八章 旅立ち
 そんなもんだから、せいあにかけ寄ろうとすると、
「ぶっ!」
 …こけた。よりによって、何もない所で。周りのみんなが笑う。
「…」
 さっさと起き上がって立ち上がろうとすると、こけた時にくっついたっぽい小さい黄色の紙が、手の腹からひらりと地面に落ちた。そこら中に散らばっている、紙吹雪のうちの1枚のようだ。
「?」
 よく見ると、活字で印刷された文字で、何か書いてある。その紙を拾い上げて、読んでみた。そこには、こう書いてあった。
『さまよえる武士(ぶし)を導(みちび)く星(ひかり)。 その星(ほし)を守(まも)るべき、たったひとりの武士(ゆうしゃ)。』
 ブーーーーッ。思わず吹き出した。
 なんだコレ。わけわかんねぇ。サムイし、クサイし、ムリありすぎだろ、ヨースケさんよ。おれのためにご丁寧に、全部ふりがなふってあるし。でも『星』って、ひかりって読むんだっけ。『武士』って、ゆうしゃ?って、さすがにそれはないか。
 またしても、ごちゃごちゃ思いながら、おれは結局、その紙をジーンズのポケットに入れた。どうやら本格的に漢字に目覚めたらしいヨースケは、今は、せいあたちと一緒に騒いでいた。
 …キライなんだよね、おれ。こーゆーの。
 夏祭りの日に読みかけた、ベストセラーの詩の本を思い出した。
 でも、一生に一度くらいなら、こんな風に祝われてもいいかも。マジ。

 せいあたちのところに行くと、空音と樹里が茶化すように言ってきた。
「武蔵――。あんた、せいあのこと泣かすんじゃないわよ」
「うっせ」
『分かってるよ』は、胸の中でだけつぶやいた。
 横のサラ婆と目が合うと、彼女は静かにこう言った。
「武蔵、せいあを頼んだぞ」
 その顔は真剣そのものだった。祈るように見つめられて、おれもそれに応えた。
「ああ」
 傍らのせいあを見た。彼女もおれを見上げた。彼女の足元には、ラウがちょこんと座っている。
 せいあが、ヒトデの顔を真っすぐに見て言った。
「ヒトデ、あんたは娼婦には向いてないよ。何か、別の仕事探しな」
「え…」
 ヒトデが、ちょっと寂しそうな瞳をした。
「でも、ずっとあの家にいていいんだからね」
 せいあが笑った。
「…はい」
 ヒトデも、澄んだ瞳で笑った。
                           ≪つづく≫

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『僕たちなりの大人~Our Own Adult~』第七十話

2006-09-30 15:34:08 | 第八章 旅立ち
「武蔵さん」
 太一に呼びかけられて、振り向いた。彼は嬉しそうに、こう言った。
「マナがね、武蔵さんとせいあのこと伝えたら、すごく喜んでたんスよ。『いつかこの街に帰ってきたら、いろんな話聞かせてね。あ、でも、今度はお土産買ってきてね』って」
 思わず笑った。太一は続けた。でも彼は、今はもう、真面目な顔だった。
「あいつ、あの手術のとき…本当にヤバかったんです」
 “ヤバい”。その言葉の重みが、おれたちが普段使っているそれとは、全く違うのだと分かる。おれの笑顔も、すっと引いた。
「…うん」
「あいつ、ほんとは、『今年は、花火見れないね』って言ったんじゃないんです」
「え?」
 太一の声が震えていた。
「あいつ、あの時、ほんとは…『最後の花火、見たかった』って言ったんです」
「……っ」
 言葉に詰まった。見舞いに行った時の、マナの無邪気な笑顔を思い出して、胸が痛んだ。
 だけど太一は、瞳に涙を滲ませながら、明るく言った。
「だから、あの打ち上げ花火見たとき、あいつ、ほんとに嬉しかったんだと思います。マナが中央に移る日、鉄平に言った言葉、あれ、きっと本心だから」
 “死なないよ。絶対。私、がんばるから。”マナの言葉と、その時の、力強い光が宿った瞳を思い出した。
「うん」
「あいつがそんな風に思える元気が出たの、武蔵さんのおかげっス」
「え」
 太一は少し照れ臭そうに言った。
「武蔵さんが、花火用意しようと、がんばってくれたから」
「んなことねぇよ」
 ちょっと照れたけど、いや。マジで、そんなことない。だってあの花火には、たくさんの人の、マナへの思いが詰まっていた。それが夜空で弾けて、マナに光を、降らせたんだ。
「いや、マジで。武蔵さんが一番最初に茂さんにかけ合ってくれなかったら、おれたち、あいつに花火見せること、できなかった。だから…」
 太一は『本当に、ありがとうございました』と言って、頭を深く下げた。顔を上げた時の太一の笑顔は、目が赤かった。
 …。『こいつ、すごいな』と思った。人に面と向かって『ありがとう』って言えるやつ、すげーよ。太一って、妹思いで、涙もろくて、素直で。昔から、こーゆー奴なんだよな。
「ズビーーーーッ」
「!?」
 おれたちの横で、太一と同じように赤い目をした刃が、鼻を啜っていた。彼は、おれたちの視線に気づくと、くるっと後ろを振り向いて、黙った。
 …。刃。お前、花粉症だったっけ。
 思わず苦笑した。
 素直じゃねぇな、おれは。
                      ≪つづく≫

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『僕たちなりの大人~Our Own Adult~』第七十一話

2006-09-30 15:33:53 | 第八章 旅立ち
 そんなこんなで結局、出発は、当初の予定よりだいぶ遅れてしまった。
 でも、とてもすがすがしい気分だった。
「じゃあな!」
「またね!」
「ワンッ!」
 おれたちにこだまするように、みんなが笑って手を振る。
「おう!」
「元気でね!」
「じゃあな。もう、こけんなよ!」
「まーーたなーーぁっ」 (※『たーまやー』の響きで)
 みんながいる。笑っている。
 故郷(ふるさと)、なんて言うとクサいけど。故郷は、優しかった。
 おれの、胸を張って誇れる、たった一つの場所。

 ―――余談だが、おれたちが道の向こうに消えた、少し後のオハナシ。
「せいあさんたち、行っちゃった…」
 ヒトデが道の向こうを見つめたまま、寂しそうにつぶやいた。
 すると、そばでその様子を見ていたヨースケが、ヒトデに声をかけた。
「…ヒトデちゃん。君の名前って、漢字でどう書くか知ってる?」
 出たっ。お得意の漢字攻撃。
「え…?」
 ヒトデがヨースケを見上げた。
「“海の星”って書くんだよ。それで『海星(ひとで)』。武蔵やせいあちゃんや…オレたちが大好きな『海』と、せいあちゃんの名前と同じ『星』。だから、その…きっといつかヒトデちゃんも、誰かの“星”になれるよ」
「………っ」
 クサっ。クサすぎる。言ってて恥ずかしくねーのか、ヨースケ。だけど、
「ヨースケさん…」
 ヒトデは、キラキラした瞳でヨースケを見つめている。
 …。2人が幸せそうだから、もう、いい。

 2人と1匹で…もとい、3人で一緒に道を歩きつづけながら、傍らのせいあに、ぶすっとして言った。
「お前、あんなまどろっこしいこと、するんじゃねぇよ」
「え、何のこと」
 彼女は少し驚いて、おれの顔を見上げた。どうやら、本当に分かっていないようだ。
「わざわざリズや樹里に、荷物やラウ持たせといて、あんなこと言いやがって。お前、おれのこと試したんか」
「ああ」
 ようやく彼女は、ピンときたようだった。だが彼女は、いつもどおりの無愛想な表情(かお)で、平然と続ける。
「武蔵。あんた、3年前、あの街出ていくとき、リズさんにも、『おれと、この街出ないか』って言ったんだよ」
「へぁ!?」
 すごいヘンな声が出た。彼女は、少しウンザリした様子で言った。
                        ≪つづく≫

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『僕たちなりの大人~Our Own Adult~』最終話

2006-09-30 15:33:22 | 第八章 旅立ち
「でもリズさん、そん時、武蔵、困らせよーと思って、『あたし行かない』って、答えたらしいのよ。…そしたらあんた、口ポカンと開けて、すぐ、『あっ、そう。じゃー、おれ1人で行くわ』って、答えたんだって。リズさん、そんなあんたにゲンメツして、フッてやったって言ってたよ。憶えてないの?」
「…」
 そんなことあったっけ。…。ごめん、リズ。もう忘れた。でも、京太郎がこの世に生まれてきたから、いいじゃん。
 すると彼女は、そんなおれの思いを見透かすように、
「ま、リズさん、『どーせ、武蔵のことだから、全然憶えてないだろーけどね』って、大笑いしてたけど」
 と、皮肉をこめて言った。
 おれは図星で、ちょっとくやしかったから、彼女に聞いてみた。
「お前さぁ、あの時もしも、おれが口ポカンと開けて、『あっ、そう。じゃー、おれ1人で行くわ』って言ってたら、どうしたよ」
 すると彼女はそれには答えずに、いたずらっぽく笑うと、かわりに、彼女の大好きな歌を口ずさみはじめた。そこにすぐに、おれの野太い歌声が重なる。
「へたくそ」
 彼女はズバッと言い放った。
「うっせ」
 おれは彼女の頭を、ドアをノックするように、1回軽く小突いた。
 どうせ、ここまでしか、まだ歌えないんだけど。
 …つーか、おそらく、こいつには一生かなうまい。
 ウンザリするけど、まあ、いいや。
 ちなみに、断じてマゾのMではない。
 …誰かがつけてくれた大切な名前。
 彼女に聞いた。
「これから、どこ行こうか」
 すると彼女は、少し考えて、
「ヒマワリ、見たいな」
 と、答えた。
「よし」
 見に行こう。夏の終わりは近づいているけれど、きっとまだ咲いている。そんな気がする。
「ワンッ!」
 おれたちのすぐそばをトコトコ歩いてついてきているラウが、おれと彼女の足の間に割り込んできて、元気な声で吠えた。でも、尻尾、振っている。
 2人で顔を見合わせて笑った。
 そして
 おれたちはそっと、手を繋いだ。

 握りしめた彼女の手は、やっぱり小さくて。
 でも
 ―――なあ、せいあ。
 お前の手、今、あったかいよ。
                          ≪完≫

ご愛読、ありがとうございましたm(_ _)m
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