次の日。おれ達はマナを見送るために、病院を訪れていた。
「本当に、みんなありがとう。花火すっごくきれいだった」
マナが、ニコニコしながら言った。
マナの花火のすぐ後に、茂さんに電話をした時、彼が電話口で、『あれは俺たちからのはなむけだ』と、照れ臭そうに言っていた8番目の花火のことや、おれ達が花火を準備したことについては、太一がマナに説明していた。
「茂さんたちにもよろしく伝えておいてね」
「ああ」
うなずいた。
「マナちゃん、早く元気になってね」
「マナ、お見舞い行くからね」
子供たちが口々に、マナに声をかけた。その時、ちょっと怒ったような、ピンと張りつめた声がした。
「お前、死んだらゆるさねーからな」
その声の中の『死』という言葉に、その場の空気が、シン、と静まりかえった。 声の主の鉄平は、真剣なまなざしで、マナを見つめている。すると、
「死なないよ」
同じくらい真剣な声が、その静寂を破った。マナだった。彼女の瞳には、力強い光が宿っている。
「絶対。私、がんばるから」
同じ声でそう言うと、マナはふふっと笑って、鉄平に向かって言った。
「鉄平も昨日、花火の準備してくれたんだよね。ありがとー」
「べ、別に…」
その瞬間、誰もが、あ、と思った。マナが突然、鉄平の頬にキスしたのだ。
「マッ…」
鉄平と太一の声が、キレイに重なった。
「ありがとね」
マナは少しだけ寂しそうに、でもニッコリと笑った。
とてもかわいかった。
「またね!」
マナがタクシーの窓から顔を出して、手を振った。横には、太一と彼らの母親も乗っている。
おれたちは走り出したタクシーが、見えなくなるまで見送っていた。
≪つづく≫
★最後まで読んでくれて、ありがとうございます!★
人気blogランキングへ←ランキング、参加してます♪よかったら、応援クリック、お願いします☆