珍友*ダイアリー

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『僕たちなりの大人~Our Own Adult~』第六十三話

2006-09-30 15:29:22 | 第七章 海に こだまする
「え…」
 彼女が動揺を隠せない瞳でおれを見る。おれは彼女の瞳から、ちょっと目を逸らして続けた。
「おれ、この3年間、いろんな街に行ったの」
 3年間の思い出が、目の前に甦ってきていた。
 だがすぐに、ぶっと吹き出した。
「すげー安くてうまい居酒屋とか、メチャクチャ気前のいい宿屋とかがあったの。ここの夏祭りとは、比べもんになんないほどの人出で賑わってる屋台の通りとかもあってさ」
 なんだよ、おれ。
 思わず笑った。
「いきなり食べ物の話?」
 彼女も呆れたように笑った。
 図星だ。でも、キンチョー解けた。
「ほっとけ。あ、そーそー、夏祭りって言ったらさ、ここの夏祭りよりさぁ、もっとこう、ほら。なんつーんだっけ、あれ。…そう、“浴衣ビジン”っつの?そんなのが、うじゃうじゃいる夏祭りもあってさ。ヘッヘッ。…かわいかったぁ。目の保養になったわ」
「スケベおやじ」
 ついでに、「何、この人」とでもつけ加えたげに、彼女がしらけた表情(かお)と声で言い放つ。
 …ダブルで来たか。スケベとおやじ。
「浴衣、今度着てみせてよ。お前、ぜってー似合いそう」
 機嫌をとるように、そう言ったら、
「気が向いたらね」
 と、あっさり。
 …彼女は相変わらずそっけない。でもこれが、いつもどおり。
 そう思った時、心の中の一番奥に眠っていた景色が、甦った。
「…夕日がすげーキレイに見えて、ヒマワリが目の前にいっぱい咲いてる丘があった」
「…うん」
 彼女が、その丘を想像しているのか、うっとりとした瞳で、おれを見ていた。
 …キレイだった、マジ。
「おれさぁ、そーゆーの、全部一回見ちゃったとこばっかなんだけど」
 その瞳を見つめながら、わざとそっけない声で。だけど。
 ちょっとだけ息を吸った。
 彼女の顔を、真っすぐに見て言った。
「おれ、お前となら、もっかい見たいかも」
「…っ」
 彼女が息を呑んだ表情(かお)をした。…だけどすぐに、くすっと笑って、
「それってプロポーズ?」
 と、聞いた。
「…っ。どう受けとってもらってもいいけど」
 恥ずかしいんだってば。
「うん」
 彼女は、おれの動揺を見透かしたように、笑いながらそう言った。
 そして、おれの唇にそっと、触れるだけのキスをした。
 顔が離れて、少し見つめ合う。
 やがて、互いに強く引き寄せられるような、深い口づけを、した。
 互いの服に手をかけた。
 
 おれたちは
 きっと、永遠に違う4つの心と体で
 だけど、今だけは、それを1つに繋ぎ合わせたくて
 そう、強く願うから
 激しく触れ合い、繋いでいく
 
 繋ぎ目も感じたくないほど
 
 …好きなんて言葉じゃ、足りない。
                            ≪つづく≫

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