まちづくりはFeel-Do Work!考えるより感じよう、みずから動き、汗をかこう!(旧“まちづくり”便利帳)

まちづくりの支援者から当事者へ。立ち位置の変化に応じて、実践で培った学びの記録。もう一人の自分へのメッセージ。

地域が生き残るための戦略とは何か?

2005-10-14 02:30:00 | Personal Views

10月13日付け朝日新聞朝刊に「美しい村」関連のニュースが掲載されていた(下記web版参照)。

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 「日本で最も美しい村」連合設立 美瑛町など全国7町村

 全国の7町村が4日、「日本で最も美しい村」連合を設立した。フランスの「最も美しい村」運動を手本に、景観や環境、文化を守りながら、情報発信し観光客を呼んで、地域活性化につなげるのが狙いだ。  参加するのは、「丘の町」として知られる北海道美瑛町のほか、北海道赤井川村(カルデラ盆地)、山形県大蔵村(棚田)、長野県大鹿村(農村歌舞伎)、岐阜県白川村(合掌造り)、徳島県上勝町(棚田)、熊本県南小国町(阿蘇山麓(さんろく)の草原)。  同連合は今後、(1)人口1万人以下(2)人口密度が1平方キロ当たり50人以下(3)地域資源(景観、環境、文化)が二つ以上あること――などを条件に、参加自治体を募る。来年1月にはNPO法人の認証を取得する予定という。  (2005年10月04日19時18分)


この手本となった「フランスの最も美しい村々協会」を私が知ったのは、旅行会社に在籍していた頃のこと。当時、フランス政府観光局に訪ねたところ、フランスではこの「美しい村々協会」のガイドブック(ミシュランガイドと同じサイズの薄い小冊子)が発行されていた。そこには、美しい村に認定された村(100~200村)の紹介が出ている(全部フランス語だったので、パリに赴任するM氏に寄贈)。

本場フランスの認定制度については、下にリンクした酒井和也氏のレポートを読むとわかるが、5年ごとに認定の見直しが行われる。一方、冒頭に紹介した日本版では、文化以外ほぼ外的環境に委ねる条件以上のことは、文面からは判断できない。
しかし、ここで最も肝心なことは、認定条件(1)~(3)に続く、「など」の中身である。
フランスでは、この「など」に表現される細かな条件が、「新たに認定される地域」と「認定を剥奪される地域」を生み、認定制度自体が活力をもたらす戦略となっている。
「まちづくりというのは、その地域に関わる人々(外部の人間も含む)の意識の集積であり、その意識の具現化の積み重ねが、結果として『景観』などの見た目の美しさとなって表出する」と私は考えるが、フランスの認定見直しの激しさから察するに、認定条件が「地域の人々の努力」という自主性に力点がおかれていることは想像に難くない。認定されたことに甘んじ、努力をしなくなった地域には、認定の剥奪が待っている。

地方のネットワークを活用した類似した取組みとしては、1999年に、全国で村名の頭に「美」のつく村10村を集めた『美し村(うましさと)連邦』というのが結成された経緯がある。しかしながら、平成の大合併による名称変更の影響もあって、2003年の美和大会宣言を最後に解散している。

美麻村ホームページより『美し村(うましさと)連邦』の紹介記事
http://www.vill.miasa.nagano.jp/mura2.html

なぜ『美し村(うましさと)連邦』が継続できなかったのか?これは市町村合併という外的環境や、10村に限定したという最初の枠組みばかりが理由ではないはずだ。この事実を省みた時、少なくとも以下の2点が必要ではないだろうか。

①住民に益があることをきちんと視覚化し、内容の伴った住民の努力を促す仕組みとすること
②一定の質を確保するため、外部評価を導入し、連合組織の硬直を避ける策を講ずること


これを実行できるか否かが、新しい連合の成功を大きく左右することになるだろう。
地方が元気にならねば日本は衰退する。特定地域の一人勝ちは、その他大勢の敗者を生み、日本全体の活力には繋がらない。それどころか、活力を増す中国を脇目に、観光に関する国際収支(2001年で約3.5兆円の赤字)が悪化しかねない。
逆に、今回のような認定制度の活用によって、地域同士が智恵を分かち、互いに切磋琢磨する活動が盛んになれば、地方全体の底上げとなり、世界基準で評価される活力ある国土ができあがると私は信じている。以前、『見える社会、変わる仕組み』でも書いたが、持続可能で健全な地域社会を作るには、循環の輪を小さくすることで長所短所を視覚化し、情報と人脈のネットワークは外に向けて世界規模で進めることが肝要である。様々な事例や先人達の言葉に接する機会が増すほど、この思いは強まるばかりだ。

フランスの美しき村―コンプリート・ガイドブック

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※TGVの車窓から見える田園風景は素晴らしい。

「フランスの最も美しい村を訪ねて」ガサン(CLAIRパリの酒井和也氏のレポート)pdf版は画像付
http://www.clair.or.jp/j/forum/forum/jititai/180/index.html
http://www.clair.or.jp/j/forum/forum/pdf_180/07_jimusyo.pdf
「美しい村づくりは、人づくりから」フランス・アヴェロン県の紹介(CLAIRパリのレポート)
http://www.clair.or.jp/j/forum/forum/jititai/149/INDEX.HTM
山岳地域振興の国際的な取り組み(CLAIRパリの酒井氏のレポート)
http://www.clair.or.jp/j/forum/forum/jimusyo/171PARI/index.html
「最も美しい村々協会」の公式サイト(画面左上の六角マークが認定の印)
http://www.villagesdefrance.free.fr/
「日本で最も美しい村」連合の公式サイト
http://www.utsukushii-mura.jp/modules/news/
「日本で最も美しい村」連合について(美瑛町の広報より)
http://town.biei.hokkaido.jp/biei/d_soumu/s_kouho/0505P03.pdf

        ★ 参 考 ★

フランスの農村ツーリズム(CLAIRパリ1997/2/26)
http://www.clair.or.jp/j/forum/other/pdf/13.pdf
英国の田園地域(CLAIRロンドン1995/1/31)
http://www.clair.or.jp/j/forum/other/pdf/08.pdf

新潮社の季刊誌『考える人』は、海外の魅力的な暮らしの情報が豊富に紹介。
http://www.shinchosha.co.jp/kangaeruhito/plain/2004natsu.html
http://www.shinchosha.co.jp/kangaeruhito/plain/plain31.html

地方の生きる道標となる日本の『スロータウン連盟』の加盟村一覧とスロータウンの基本理念。
http://www.slowtown.jp/slow-town/meibo.html
http://www.slowtown.jp/slow-town/rinen.html

農文協の「増刊 現代農業」は、豊富な事例紹介と示唆に富む内容。
http://www.ruralnet.or.jp/zoukan/
(かつて長野県美麻村で地域づくりインターンをしていた青年が、この「現代農業」の営業マンとして各地を回ってます。)

※まちづくりの手法として革新を起こしたスリランカの地域開発運動について、別の機会に紹介したいと思います(以前、宣言したテーマも必ず書きます)。

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