まちづくりはFeel-Do Work!考えるより感じよう、みずから動き、汗をかこう!(旧“まちづくり”便利帳)

まちづくりの支援者から当事者へ。立ち位置の変化に応じて、実践で培った学びの記録。もう一人の自分へのメッセージ。

変わりつつある商店街活性化の手法

2005-09-25 19:00:00 | Personal Views
(▲えっ!これが商店街の喫茶店か!?と目を疑いたくなる『道後の町屋』)

 前回ご紹介した木下斉さんのブログに紹介いただきました。
木下さんの記事「商店(個店)、商店街、活性化施策の関連性」では、これまでの施策の種類と関係性が整理されています。
 ここでは、その記事の特に重要と思われる力点を強調し、何故そのように思うかを示す実例と、その他の商店街活性化の動きを少しばかり紹介します。

1)結果を出す商店街活性化施策

 「商店街活性化の七不思議」を指摘する(有)クオールエイドは、
「商店街活性化とは、自分の店、隣の店、仲間の店が繁盛することだ」
と定義し、商店街活性化に長期的な”共生き(ともいき)精神”が必要であることを強調している。これは、近江商人の”三方よし”の考えにも通じるメッセージだ。この発想は何も商業の世界に留まらない、まさに、まちづくり全般において重要なポイントと言える。
 一たび、この観点を忘れれば、上海のコンビニ戦争(D6さんのブログ”物忘れ帳”より)の如く”過当競争による共倒れ”を招きかねない。
 木下さんのブログには、
「今までの(商店街活性化の)方法論として、「個店」の営業活動などには踏み込まないというスタンスが間違っていて、今後は全体最適に向けたエリアマネジメントにおいても個別の利害関係にどれだけ踏み込めるか、というのも重要なポイントである」
と書かれている。これは非常に重要な指摘である。これが見送られてきた原因には、この問題が個店同士の利害関係・人間関係という、とても神経質で取り扱い難い問題を内包しているからだ。日本人にありがちな”当たらず触らず”で円く治める(*)ことが、互いのクビを絞めることにつながり、活性化自体が中途半端に終わる可能性が高い。
 これまでの活性化は、意識するしないに拘らず、頑張っている人(店・企業)もそうでない人(店・企業)も、一律に引き上げようとして、効果を出せずに収束する取り組みが多かった。行政施策にありがちな妙な公平性が、逆に足枷になっていることにそろそろ気付く必要がある。商店街の支援に限らないが、この問題に既に気付いている自治体では、様々な分野で個別の事業主体を応援し始めている(最もわかり易い例では、自治体HPのバナー広告が挙げられるだろう)。
 松山の懐かしくも新しい喫茶店『道後の町屋』や、鹿児島の個性的なお菓子屋『菓々子横丁』のように、個々の店舗の頑張りが集積されて商店街に人を呼ぶ(**)。このような個店の動きを後押しして、一店舗の頑張りに終わらせず、線や面への発展につなげることこそが、地域力を高められるか否かを左右するのではないだろうか。

2)結果に繋がった2つの事例

 既存のレポートや詳細情報は下記のURLに任せ、ここでは簡単な紹介に留める。

・新潟県村上市の“町屋再生プロジェクト”(賛助会員になってます)
 どこの商店街でもあるようなアーケード化によって、個性の消えてしまっていた町屋を、全国からの市民基金を元手として、概観を改築する事業を開始。個店の概観のみ着手して、商店街全体の景観を長期的に修繕することを目指している。内装には一切出資せず、店の経営者に任せている。どの店から着手するのか、合意形成が難しいところだが、敢えてその困難を乗り越えることで人を呼べる商店街を演出している。
▼ハウジングアンドコミュニティ財団の吉野裕之さんのレポート
http://www.hc-zaidan.or.jp/promotion/kawara/aracult02_8.html#080
http://www.mmsp.info/index.html

・大阪市空堀地区の“からほり倶楽部”(直木倶楽部の賛助会員です)
 商店街にある老朽化して危険な長屋を優先的に、古さを活かしながらモダンに改築することで、建物の防災面の強化を図るだけでなく、新たにテナントを誘致してコミュニティの活性化を支援している。改築の実力と魅せ方が見事なだけでなく、学生の巻き込み方などプロデュース能力が秀逸。
▼長屋ストックバンクネットワーク
http://www.eonet.ne.jp/~karahoriclub/nsbn/chiiki/index.html
http://www.eonet.ne.jp/~karahoriclub/naoki/naokiclub/naokiclub1.html

3)商売環境整備による後方支援

 個店の支援というよりも、従来のような商店街全体のバックアップとなる商売環境の整備に相当するが、商店のうち特にヤル気のある個店の能力を引き出している例が、エフエム那覇がプロデュースする『みせpasha』。この取り組みは、今では那覇市内の商店街だけでなく、島全体のプロデュースにも広がっている。
▼エフエム那覇関連レポート
http://compus.seesaa.net/article/2254587.html
▼しまpashaのコンテンツを含む島全体の情報発信基地「URUMAX」
http://uruma.jp/whats.php#
⇒ここに示される“五つの指針”のうち、特に忘れがちなのが一番目「内外のニーズに応えること」。常識のように思われるかも知れないが、意外と内側のニーズしか見ていないことが多い。特に観光客の多い地域では、住民投票などの自己満足に終わらせず、是非とも外部の声の吸い上げに注意したいところである。もはや“税金を払っていないから関係ない”では済まされない。日本国憲法の改正が、国内だけの問題ではないことと同様である。

* 円く治めること自体が悪いということではない。和をもって尊しと成すための”手法に問題”があるのかもしれない。よほど上手なファシリテーターが存在しない限り、同じ地域に暮らす当事者間(商店街や商工会、TMOなど)だけで進めることい限界があるのではないだろうか。と言うのも、個店の長所・短所などを話し合う場合には、個人的感情を排すことが非常に難しいからだ。しかも皆、自分の立場でしか物を言わない。
 では、どうしたら良いのか?
 以前「会議革命」の記事でも触れているが、意見・アイデアと発言者を分離することだ。さらに言えば、お互いの立場の理解を深めるために、ロール・プレイングすることが最も有効となる。これを解決するためには、多少のお金を投じても、外部のまちづくりNPO等(ComPusや東京ランポなどのまちづくり団体)に協力依頼するのが、結果を出す早道かもしれない。

** 以下の拙稿にて紹介。
道後の町屋
http://compus.seesaa.net/article/2055051.html
菓々子横丁
http://compus.seesaa.net/category/422394.html

<参考:商店街活性化における観光カリスマ一覧>
http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/kanko/karisuma202.htm#syoten
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3 コメント

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既存ストック (まっちゃん)
2005-10-03 23:34:55
町屋を改造した地域のコミュニティースペースづくりって、いいですね。まちづくりのテーマ“既存ストック”の有効活用ってとこでしょうか。
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公平 (マヨルカ)
2005-10-04 23:49:18
はじめてコメントします。

商店街の活性化は、地域にとって死活問題ですね。

松山の道後は、家から近いので、機会があれば『道後の町屋』に行ってみようと思います。



何が公平なのかを考えさせられます。

行政の施策は、公平と言いながら一部の人にのみ利益を与えるものがほとんどだと思います。公平と思わせることが必要なのかもしれません。
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行政も悩んでいますよ (まっちゃん)
2005-10-05 00:42:05
斉藤様



たくさんのコメント、ありがとうございます。意見、情報交換、楽しみにしております。私が取り組むこと、また友人が直面していること…いろいろと難しい局面がありますが、行政も悩んでいることは事実です。いいかたちで橋渡し役ができればいいなぁーって思います。何よりも楽しむことが一番かと思い、気楽にやってます。



これからもよろしくお願いします。
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