抹茶味の珈琲店

ここにあるのはしょうもない戯言・・・それでも来てくれた皆様に感謝。
どうぞ、風変わりな文章をお楽しみください。

小説第7話「6日目の朝」

2009-02-07 14:45:12 | Cynical Knight

リヒター「さあさあ、3日連続更新3日目だぜ」

ウィル「懲りませんね、リヒターさん。またつっこまれますよ」

リヒター「いーのいーの。そんなもん作者の責任だろうよ」


さて、最近まともにPCの前に座らせてもらえないちゃーみーです。

みんな、この時期の高2は「受験生」っていうらしいぞぉ。

ちょっとしたトリビアかも。

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

バカは風邪を引かない?じゃあ世界中の人間は天才だってか。


 ギルドに入ってから6日目の朝。ぞくりとした寒気で、僕は目を覚ました。

 季節は夏。それもまだ盛りの来てない初夏のことだ。
 地球が上下ひっくり返ったのか、それとも僕の感覚が狂ったのか、いずれにせよ、この時期には不適切な、呼気の白い、真冬の寒さだった。

 しかし今はどうであれ、僕が寝た時は暑かった。しかもマスターが冷房設備に予算を使わないから、僕はパンツ一丁シャツ一枚で寝ていた。
 それだけに、今の気温は寒い。

「・・・・・・降りなきゃ、・・・・・・ベッドから降りなきゃ」
 呟きながら、とりあえず今からすることを確認する。
 かじかむ手足をどうにか制し、僕は二段ベッドの二階からハシゴを使って降りた。

 このギルドの二段ベッドはリビングを中心に囲むように5台設置してあるため、ベッドから降りるとリビングに出る。
 いつもはリビングに誰もいないのだけれど、今日は珍しい人がいた。

 彼女はリビングの中央に陣取り、本を読んでいた。長いさらさらの髪が地面まで伸び、ちょうど彼女が座っている車いすを隠している。白く細い指先でページをめくり、コバルトブルーの瞳で文字を追う姿は、なかなか絵になる光景だった。
 えーっと、この人の名前は・・・・・・。
「グレ・・・・・・グレー・・・・・・・・・・・・グレゴール?」
 だめだ、虫に変身する男の名前になってしまった。

 と、僕が考え込んでいると、彼女は僕に気付いたらしく、小さい、というよりか細い声で言ってきた。

「・・・・・・『呪術師』グレフィオロフ=スフレッサ。・・・・・・あなたにはもう、自己紹介していたと思うけど」

 どこか霧の向こうから聞こえてきそうな澄んだ声だった。ある意味恐い。
 この人とは僕がここに来てから初日にあいさつした。何でも忙しい人だそうで、翌日にはどこかに旅立っていた。こうして会うのは5日ぶりだ。
 車いすに華奢な体躯と、一部の人から支持されそうな体つきだが、その反面人一倍プライドが高い。プライドが高い人は苦手だ。つまり、僕にとってこの人は、そんな感じだ。

「ああ、そうでしたね。えっと、グレ・・・グレ・・・グレーテル」
 森を抜けると、お菓子の家?
「・・・・・・すいません、ソッコーで忘れました」
 僕は相当失礼なことを言った気がしたが、彼女はそんなこと気にしてないようだった。
「・・・・・・覚えにくいなら“フィオ”でいい。変な名前であることは重々承知している」
「ああ、そうでしたか。フィオさん」
「そう。このことも自己紹介の時に話していたと思うけど」
 ・・・・・・。
 ・・・・・・・・・でしたっけ?
「・・・・・・それに、このグレフィオロフ=スフレッサはこんななりだがここの副マスターに就任している。私は君の上司なのだよ?名前ぐらい、覚えて」
「まあ、努力はします」
「そう、それなら上々」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
 重い。空気が重い。っていうかこの人のまわりだけ重力が100倍になっている気がする。
 誰か、どうにかしてくれ。

「あー・・・フィオさん?・・・・・・今朝は寒いですね」
「そうかな。・・・・・・そうかと聞かれると、そうかもしれない」
「いや、異常気象ですよ。真冬ならともかく、この時期には寒いですよ」
「そんなことはない。私は冬が大好きだ」
 ・・・・・・・・・・・・いや、アンタの好みなんか聞いてねえよ。
「それに、わざわざこの気候にするために、“氷結界”を使用した」
 ・・・・・・・・・・・・しかもアンタの仕業だったのかよ。
「君が寒いというのならば、この“術”を解いてもいいんだけど。この“術”は組むのに時間がかかるんだ。・・・・・・それに、この“術”に手頃なサイズの部屋もここ以外にない。この気温が嫌いなら、君の方からこの部屋を出て行って欲しいよ」
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・もはやつっこむポイント多すぎだよ。
 この人といい、リヒターさんといい、どうして僕のまわりはキャラの濃い人ばかりなんだ?

 僕が観念して部屋を出て行こうとした時、フィオさんは後ろから声をかけてきた。
「ところで君、名前は?」
「ウィルです」
「そうか、ウィルデスと言うのか。なかなかかっこいい名前だ」
「いえ、ウィルという名前です。本名はウィリアム・ミディアムと言います」
「どっちでもいいよ。ウィルデス君。君はやさ男に見えて結構弱そうだね」
 ・・・・・・。あれ?
 何か言葉を間違えている気がする。名前が違うとか、そういう問題じゃなくて。
「そしてキャラが薄いように見えて存在が希薄だ。どうだい?私の見解に間違いはあるかい?」
 ・・・・・・・・・・・・いろいろと間違えている気がする。
「・・・・・・見解的には間違っていないんでしょうけど」
「そう、それなら上々」
「・・・・・・・・・・・・」
 この人はギャグで言ってるんだよな?だれか、ギャグだと言ってくれ。

「あー・・・・・・・・・・・・僕、朝がまだなので、食べてきますね」
「そう、それは残念。ウィルデス君とはまだ話がしたかった」
「そうですか?」
「リヒター君から聞いたとおり、君はおもしろい」
「・・・・・・そうですか」
 リヒターさん、何を言いふらしているんですか。
「でも君が行くというのなら、私に止める権限はないよ。行ってらっしゃい」
「・・・・・・・・・・・・行ってきます」

 どうにもこうにも、つかみどころのない人だった。


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