抹茶味の珈琲店

ここにあるのはしょうもない戯言・・・それでも来てくれた皆様に感謝。
どうぞ、風変わりな文章をお楽しみください。

小説第9話「朝食」

2009-05-28 22:19:13 | Cynical Knight
最近どうもパソコンに触れません。
受験を意識しろと親がうるさく、あまり細かく書けません。
しばらく受験中は小説だけの更新になりそうです。


~・~・~・~・~

 この3日間、リヒターさんに肉ばかり食べさせられていたせいで僕の胃は完全にもたれてしまっていて食欲が壊滅的に無かった。
 それでも生きていく上では何か食べなければならないので、僕はサラダボウルに適当に野菜をぶち込んだ。
 レタスの葉、輪切りキュウリ、丸ごとトマト。
 シンプル・イズ・ザ・ベスト。

「朝食だ。食え」
 と、僕は野菜でいっぱいのボウルをサヤちゃんの目の前に置いた。サヤちゃんは目が点になっている。
「・・・なんですか、これ?」
「サラダというものだ」
「ああ~なるほど~・・・ってそんなことぐらいわかるよっ」サヤちゃんはテーブルをバシッと叩いた。「何故にサラダ?サラダオンリー?」
「いやなら捨てるぞ」
 僕はもうひとつサラダを運び、それを自分で食べ始めた。
「・・・パンは?肉は?」
「ない。僕は肉を食べたい気分じゃない」
「いや、いーちゃんは食べたくなくっても、このキレイなおねーさんは食べたがっているんだよ」
「そんな人いない」
「がんっ」
「いても作る義理がない」
「ががんっ」
「欲しけりゃ自分で作れ」
「・・・ふええ。いーちゃん、なんで私には厳しいの?」
「厳しくない。キレイなおねーさんは料理がうまいと相場が決まっているんだ」
「ぶへあっ」
 サヤちゃんは血を吐いて倒れた。死んだっぽい・・・。
「おーい、サヤちゃーん」
 ・・・・・・。
 返事がない。ただの屍のようだ。
「・・・しょうがない、サヤちゃんの分のサラダ、僕が食べることにするか」
「待て~~~い!!」
 サヤちゃんが一喝し、立ち上がった。ダメージは深刻なようで、足が震えている。
「肉料理を出せ私の分のサラダを食うな私をちゃん付けで呼ぶな~!!!!」
 一度に3つも命令しやがった。とんでもない能力だ。
 この人にはいろんな意味でかなわないと思った。
「わかったよ、サヤ」
 と言って、僕は調理場に向かった。

「うわーい、持って来てくれたんだー。いーちゃん大好きっ」
 僕がウィンナーを皿に盛って持ってくると、サヤちゃんが抱きついてきたので僕は危うくウィンナーを落としそうになった。
 サヤちゃんはそんなことおかまいなしにぎゅっと抱きしめてくる。小柄なくせに腕力はばかに強いのでかなり苦しい。
「・・・そろそろ放してくれ」
「ふえ、でもいーちゃん、年上のおねーさんに抱きしめられて嬉しいんじゃない?」
「悪いけど僕は君に動悸するほどロリコンじゃない」
「なんですとっ」
 サヤちゃんは僕から手を放し、椅子に座った。表情が暗い。沈んでいる。
「・・・・・・」
 なんだか、いじりがいがあるなあ。
 いつか同じことを僕に対して言った弓使いを思い出した。
 あの人、こんな気持ちだったんだ・・・。
 ちょっぴり、共感。
「さ、落ち込んでないで、ウィンナーでも食べようぜ」
 と言って、僕はウィンナーをフォークにさして、サヤちゃんの目の前に差し出した。
 すると、ヒク、ヒクとサヤちゃんの鼻が動き、
ガバァッ
 と、一口でウィンナーを頬張った。
 頬がウィンナー型に変形している。
 そこからモキュモキュと咀嚼する。ウィンナーが果たしてあのように食べるものだったかどうかは謎だが、とりあえずサヤちゃんは幸せそうに笑っている。
 ・・・僕も見ていておなかがすいてきた。
 そうだ、サラダを食べよう。
 僕がテーブルに視線を落とすと、そこには2つ空のサラダボウルがあった。
 ・・・・・・2つ、あった。
「・・・あの、サヤちゃん?」
「ちゃん付け禁止。いい加減に慣れろバカ野郎」
「えっと、・・・サヤ、サラダは?」
「ああ、食べたよ」
「2つとも?」
「2つとも」
 ・・・・・・。
 まあ、朝は食べるほうじゃないし、いいか。
 僕は牛乳をコップ一杯に注いで飲んだ。今朝の牛乳は格別だった。
「あ、いーちゃん」
「ん」
「私にもオレンジジュース一杯」
「ん」

~・~・~・~・~

さて今回の話はここまでです。当然ながら10話に続きます。
何の変哲もない(?)ウィル君とサヤちゃんの朝食のシーン。
だんだんサヤちゃんがギャグキャラ化しているのは気のせいです。
本当は「うにゃー」と言って暴れだしたり、勢いよく起き上がって椅子の足で頭を打つなどの事をさせたかったのですが、さすがにそんなことはできなかったぜ。
それではまたの機会を御贔屓に。さようなら。

小説第7話「6日目の朝」

2009-02-07 14:45:12 | Cynical Knight

リヒター「さあさあ、3日連続更新3日目だぜ」

ウィル「懲りませんね、リヒターさん。またつっこまれますよ」

リヒター「いーのいーの。そんなもん作者の責任だろうよ」


さて、最近まともにPCの前に座らせてもらえないちゃーみーです。

みんな、この時期の高2は「受験生」っていうらしいぞぉ。

ちょっとしたトリビアかも。

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

バカは風邪を引かない?じゃあ世界中の人間は天才だってか。


 ギルドに入ってから6日目の朝。ぞくりとした寒気で、僕は目を覚ました。

 季節は夏。それもまだ盛りの来てない初夏のことだ。
 地球が上下ひっくり返ったのか、それとも僕の感覚が狂ったのか、いずれにせよ、この時期には不適切な、呼気の白い、真冬の寒さだった。

 しかし今はどうであれ、僕が寝た時は暑かった。しかもマスターが冷房設備に予算を使わないから、僕はパンツ一丁シャツ一枚で寝ていた。
 それだけに、今の気温は寒い。

「・・・・・・降りなきゃ、・・・・・・ベッドから降りなきゃ」
 呟きながら、とりあえず今からすることを確認する。
 かじかむ手足をどうにか制し、僕は二段ベッドの二階からハシゴを使って降りた。

 このギルドの二段ベッドはリビングを中心に囲むように5台設置してあるため、ベッドから降りるとリビングに出る。
 いつもはリビングに誰もいないのだけれど、今日は珍しい人がいた。

 彼女はリビングの中央に陣取り、本を読んでいた。長いさらさらの髪が地面まで伸び、ちょうど彼女が座っている車いすを隠している。白く細い指先でページをめくり、コバルトブルーの瞳で文字を追う姿は、なかなか絵になる光景だった。
 えーっと、この人の名前は・・・・・・。
「グレ・・・・・・グレー・・・・・・・・・・・・グレゴール?」
 だめだ、虫に変身する男の名前になってしまった。

 と、僕が考え込んでいると、彼女は僕に気付いたらしく、小さい、というよりか細い声で言ってきた。

「・・・・・・『呪術師』グレフィオロフ=スフレッサ。・・・・・・あなたにはもう、自己紹介していたと思うけど」

 どこか霧の向こうから聞こえてきそうな澄んだ声だった。ある意味恐い。
 この人とは僕がここに来てから初日にあいさつした。何でも忙しい人だそうで、翌日にはどこかに旅立っていた。こうして会うのは5日ぶりだ。
 車いすに華奢な体躯と、一部の人から支持されそうな体つきだが、その反面人一倍プライドが高い。プライドが高い人は苦手だ。つまり、僕にとってこの人は、そんな感じだ。

「ああ、そうでしたね。えっと、グレ・・・グレ・・・グレーテル」
 森を抜けると、お菓子の家?
「・・・・・・すいません、ソッコーで忘れました」
 僕は相当失礼なことを言った気がしたが、彼女はそんなこと気にしてないようだった。
「・・・・・・覚えにくいなら“フィオ”でいい。変な名前であることは重々承知している」
「ああ、そうでしたか。フィオさん」
「そう。このことも自己紹介の時に話していたと思うけど」
 ・・・・・・。
 ・・・・・・・・・でしたっけ?
「・・・・・・それに、このグレフィオロフ=スフレッサはこんななりだがここの副マスターに就任している。私は君の上司なのだよ?名前ぐらい、覚えて」
「まあ、努力はします」
「そう、それなら上々」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
 重い。空気が重い。っていうかこの人のまわりだけ重力が100倍になっている気がする。
 誰か、どうにかしてくれ。

「あー・・・フィオさん?・・・・・・今朝は寒いですね」
「そうかな。・・・・・・そうかと聞かれると、そうかもしれない」
「いや、異常気象ですよ。真冬ならともかく、この時期には寒いですよ」
「そんなことはない。私は冬が大好きだ」
 ・・・・・・・・・・・・いや、アンタの好みなんか聞いてねえよ。
「それに、わざわざこの気候にするために、“氷結界”を使用した」
 ・・・・・・・・・・・・しかもアンタの仕業だったのかよ。
「君が寒いというのならば、この“術”を解いてもいいんだけど。この“術”は組むのに時間がかかるんだ。・・・・・・それに、この“術”に手頃なサイズの部屋もここ以外にない。この気温が嫌いなら、君の方からこの部屋を出て行って欲しいよ」
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・もはやつっこむポイント多すぎだよ。
 この人といい、リヒターさんといい、どうして僕のまわりはキャラの濃い人ばかりなんだ?

 僕が観念して部屋を出て行こうとした時、フィオさんは後ろから声をかけてきた。
「ところで君、名前は?」
「ウィルです」
「そうか、ウィルデスと言うのか。なかなかかっこいい名前だ」
「いえ、ウィルという名前です。本名はウィリアム・ミディアムと言います」
「どっちでもいいよ。ウィルデス君。君はやさ男に見えて結構弱そうだね」
 ・・・・・・。あれ?
 何か言葉を間違えている気がする。名前が違うとか、そういう問題じゃなくて。
「そしてキャラが薄いように見えて存在が希薄だ。どうだい?私の見解に間違いはあるかい?」
 ・・・・・・・・・・・・いろいろと間違えている気がする。
「・・・・・・見解的には間違っていないんでしょうけど」
「そう、それなら上々」
「・・・・・・・・・・・・」
 この人はギャグで言ってるんだよな?だれか、ギャグだと言ってくれ。

「あー・・・・・・・・・・・・僕、朝がまだなので、食べてきますね」
「そう、それは残念。ウィルデス君とはまだ話がしたかった」
「そうですか?」
「リヒター君から聞いたとおり、君はおもしろい」
「・・・・・・そうですか」
 リヒターさん、何を言いふらしているんですか。
「でも君が行くというのなら、私に止める権限はないよ。行ってらっしゃい」
「・・・・・・・・・・・・行ってきます」

 どうにもこうにも、つかみどころのない人だった。


小説第6話「過去」

2009-02-06 10:33:34 | Cynical Knight

リヒター「さあて、3日連続更新二日目だ」

ウィル「・・・連続ですか?間が空いたような」

リヒター「何を言っている。前回の記事の日付を見てみろ」

ウィル「・・・偽装はいけませんよ」


・・・・・・さて、3日連続更新の二日目です。
前回までの話は、まぁ言っちゃえば第一章みたいな、いや、「一章」と呼ぶにはあまりにも短い一節です。
一応ゲーム的なハラハラした展開とかもできることはできるのですが、まぁ、しばらくだらだらした小噺が続きます。

そんなわけで第二章。いや第一章第二節。第六話。
リヒターさんの本当の強さとは?初戦闘、サヤちゃんの能力とは?
新登場の呪術師、ギルド壊滅の危機!?
上記の煽り文句には一部嘘がありますが、ま、原稿もできてねーのに予告なんて無理に決まってんだろということで、ご愛嬌ご愛嬌。

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

「いーちゃん、いーちゃんって、実は消したい過去とかある人?」
 少女が僕に訊いてきた。背が僕より低いので、僕を見上げる形になる。
「消したい過去なんてないよ」僕は両手を広げて答える。「過去が積み重なっての現在だろ?過去を消すことはできないんだよ、僕が現在時制にいる限り」
「ふうん?哲学的なことを言うね」
 少女は金髪のツインテール頭を傾けた。どうも僕の言っていることは通じていないらしい。

 僕は続ける。
「でも、現在の僕が現在の僕を抹消するのは簡単だ。たとえば、爆弾で自分を吹き飛ばす。自分の手首を切り落とす。死ぬまで柱に頭を打ち付ける。方法なんていくらでもあるさ。それで、僕は現在の僕を消したいと思っている」
「・・・・・・? ひょっとしていーちゃん、自殺願望者?」
「そうかもしれない」
 僕は少し間を空けて続けた。
「それでもきみなんかよりずっとずっとマシさ。きみは過去と自分を切り離して現在を生きようとしている。だから家出なんてしたんだろ?でも、そんなことはできない。そんなことはできないんだ。過去を消して生きるだなんて、そんなの生きているうちに入らない。生きながらにして、死んでいる。健常にして、病んでいる。廃人だ。『過去の自分と今の自分は違います』ってか?勝手なことを言うんじゃない。そうやって、埋め合わせだの、罪滅ぼしだの、自己満足で自己免罪して、自己免罪で自己満足して、そして過去とはオサラバ。すばらしいキレイゴトだね。どうやったらそんな傲慢な思想を持てるのか、不思議なぐらいさ。そうして過去から逃げて壊れてしまった人間を、僕はたくさん見てきた」
「・・・・・・・・・・・・」
「消したい過去なんてないけど・・・・・・嫌な過去ならあった。僕もそこから逃げ出した。そして・・・・・・今ここに欠陥製品がいる」
「・・・・・・・・・・・・」
「自分で自分を免罪しても、まわりが赦してくれないのさ。僕は今でも赦してもらえない。今でも追われ続けている。この状態を解決するには、過去を消すことよりも、現在を消すことが、いいんだ。」
「・・・・・・・・・・・・」
「だから、過去を消そうだなんて、思うな。僕のような欠陥製品になりたくなかったら、過去を引きずれ。過去のおもりを載せたまま、精一杯生きろ。そう簡単に赦されるほど、世の中甘くない」
「・・・・・・勝手なこと、言うな」
 少女は反論した。予測していなかった反論に、僕は少し戸惑う。
 少女は眉間にしわを寄せて、怒りに全身を震わせ、怒鳴る。
「・・・・・・何にも分かってねえ癖に、悟った振りして他人の人生に口出しすんな!分かった振りして他人の行動にダメ出しすんな!!どうせお前は欠陥製品なんだろうが。てめえなんざと一緒にすんな!」
 僕は、黙った。

 そうさ、僕は世の中を諦観してきた。
 世の中を傍観してきた。
 すべてに対し、他人事と考え、安全地帯から観察し、面倒ごとから逃避し、人間関係を放棄し、
 適当に生きてきた。
 適当な人生に、不満はなかった。
 適当な人生は、退屈だった。
 退屈は、大好きだった。

 過去と自分を切り離し、すべてをあざ笑ってきた。
 戯言。冷笑。ニヒリズム。
 その意味で僕は、
 リヒターさんと似ているのかもしれない。

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

はい、第六話はここらで終了です。いつもより短めの、1500字。
・・・・・・え?文章の意味が分からない?

ま、第一話の前のプロローグもなんだかカオスでしたし、大丈夫なんじゃないですか?
そんな感じで毎日をゆったりと過ごす俺様ちゃーみーがお送りしました。

・・・・・・・・・・・・ダイジョウブ、多分第十話までに複線回収してる。うん、きっとしてる。


小説第5話「出来損ないの後始末」

2009-02-05 01:26:27 | Cynical Knight

正月絵を描かなかったということで、

3日連続更新開始~

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

 僕が次に目を覚ましたのは夜のことだった。いや、より正鵠を期すならば“夜”ではなく“早朝”なのだが、いずれにせよ真っ暗なのでその時の僕には判別できなかった。
 体を起こすとめまいがし、身体の節々が痛んだ。はて何かあったかなと自分の腕を見ると、腕には包帯が巻いてあり、その包帯の下には点滴の管が通っていた。
「……そういや、僕は爆弾で吹っ飛んだんだっけ?」
 誰に言うともなく、他人事のように呟いた。
 実感がわかなかった。

 他人事かもしれなかった。
 よくあるSF物語よろしく、気絶している間に誰かと体が入れ替わったのかもしれない。だとしたら、僕は誰か分からない一個人として、新しく人間関係を築かなければならない。面倒な話だった。
 しかし、それにしてはこの体は体格から姿勢まで、僕の体に非常に似ていた。低い身長、細い腕。「あ~」と声を出してみると、僕とそっくりな声がした。
 オーケイ。妄想はこの程度にしておこう。
 この体は僕の体だ。

 僕は『救護用』とのタグのついたベッドから降り、眠い目をこすりつつふらふらとロビーに向かった。

 ロビーでは小さなランプが薄明るく部屋を照らしていた。そして、受付にはリヒターさんが、ブラックコーヒーをマグカップに盛って(この表現は間違いではない。彼は表面張力ギリギリにまでコーヒーを『盛って』いたのだから)、いつも通りのうすら笑いで座っていた。
「やあ、少年」リヒターさんはマグカップを器用に振りながら言った。「オハヨウゴザイマス」
「おはようございますって……今は夜でしょう?」
「早朝だよ」
「さいですか」
 どうでもいいことだった。
 本当にどうでもいいことだった。

「あー…ところでリヒターさん、ひとつ伺ってもいいでしょうか」
「だめだ」
「…………」
「……冗談。いいさ。何でも聞きたまへ」
 相変わらず冗談に聞こえない冗談を言うリヒターさんだった。
「………あの後、どうなったのですか?僕が倒れた後、です。」
「おまえは気絶してた」
「………いや、それ以外で」
「冗談」
「…………」
 いや、だから冗談に聞こえねえって。

「はっはっは、やっぱお前の困った顔って最っ高に面白れーわ。いじり甲斐があるゥ~。大好きだよ、少年。」
 リヒターさんは楽しそうに両手を広げて言った。
 そんなに僕の困り顔は楽しいか……?
 しかし、僕には別に特殊な趣味はないので、男に「大好き♪」などと言われてもうざったいだけだった。
 あー、やっぱこの人面倒くせえ。

「ま、冗談はさておき。アホな顔して瀕死の重傷を負った情けねえ顔の少年を慈悲深き俺様が拾い上げて背負って帰ったってことだ」
 リヒターさんの話にはものすごい誇張があるように感じた。
 敢えてつっこむようなところではないのでスルーするが。
「しかしお前、何も爆弾を使うことはなかったろ。あんな狭い路地でニトロを爆発させようなんて、よほどのバカか死にたがりじゃないとやらねえぜ。それが成功しようと失敗しようと、手前に当たるのは小学生が考えてもわかることじゃねーか」
「まるで見てたかのように言いますね」
「『見えて』いたんだ」

 そうだった。この人は≪不可視の可視(アンチイビジブル)≫と名をつけられるような男だった。
 かつて世界中を敵に、暴れまわったチーム「砂塵の一群」に雇われていた傭兵。個性の強い「チーム」の中でも抜群の強さを持った実力者。半径30キロメートルまでの範囲を常に把握し、近づく者を近づく前に始末する天下無双の始末屋。当時のことを本人は話したがらないが、リヒター=L=マルクルの噂は僕だって知っている。≪不可視の可視(アンチイビジブル)≫、≪抹殺の使徒(キラ・ザ・キラ)≫、≪闇夜(スクープ)≫、≪虚無の悪魔(ヴァニティーデヴィル)≫など、この人につけられた二つ名は枚挙に暇がない。「その姿を見たものは失明する」「地球を爆発させることができる」等と、言われのない噂も流れているが、さすがにそれほどの力をもつ人間はいないだろう。とはいえ、火のない所に煙は立たぬ。それ相応の実力はあるということだ。

 そんなすごい人がなぜこんなところにいるのかというと、簡単なことである。「砂塵の一群」のリーダーが捕まり、チームが解散してフリーになったところを、僕らのギルドのマスターが拾ったのだそうだ。ちなみに余談だが、「砂塵の一群」のリーダーを捕まえたのはマスターである。

 ・・・・・・リヒターさんとマスターの話を進めると、自分が本当に小さい人間に見えてしまうからもうやめよう。
 あ、朝焼けだ。空をあさぎ色に染める太陽。きれいだなあ。

「・・・・・・どうした?少年」
 リヒターさんの声で僕は現実に引き戻された。
「いや、なんでも」僕はチャンネルを回想モードから対話モードへと切り替える。「ところで、僕はどうやって助かったんですか?とても無事では済まない傷を負ったような・・・」
「ああ、お前、ニトロですっ飛ばされたんだったな。・・・・・・たしか夕べ、俺がお前を連れ帰ったとき、マリアの奴が治療してたんだっけな。よく覚えてないけど」
「夕べ・・・・・・?」

 つまり僕は一晩だけ気絶したのか。
 たいした回復力だった。

「・・・・・・いや、治療って言うとちょっとずれるな。・・・・・・あれだよ、えっと、ピッキング?」
 ・・・・・・傷口をこじ開ける?
「治癒術(ヒーリング)ですね
「そうそれ」
 そうだ、マリアさんってたしかヒーラーだ。
 ていうか、ヒーリングとピッキングって間違えないと思うんだけど。

「それで、そのヒーリングってやつはすごいもんでな、お前の体の傷をたちどころに塞いじまうんだ。あれは見ていて興味深かったね。神秘的、とでも言おうか」
「そうですか・・・・・・・・・・・・そのわりには体の節々が痛いんですけど」
「おいおい、おいおいおいおい。ビーピングは万能治療法じゃないんだぜ」・・・・・・ビーピングって何よ?「ビーピングで治せるのは外傷だけだ。打ち身や筋肉痛は治らないし、流した血液だって戻ることはない。お前は今、極度の貧血状態のはずだ」
「・・・・・・ああ道理で。さっきから頭が重いんですよ」
「そういうことだ」

 リヒターさんはそう話を切って立ち上がり、食料庫を開けて何やらいろいろと持ってきた。
 卵、茄子、豚肉、鶏肉、牛肉、羊肉、馬肉、肉、肉、肉、肉。
「・・・・・・なにやってんすか?」
 スルーしたかったができなかった。僕は思わずつっこんでしまった。

 リヒターさんは構わず話し始める。
「さて、ここにある食品の共通点は?そう、タンパク質だ。さっきも言ったとおり、お前は相当量の血を失っている。このままじゃ最悪、死んでしまう。ではどうするか?そこで、お前にこれら全てを食べてもらうことにした。血の素になるタンパク質が豊富な―――」

「ちょっと待ってください」僕は話を遮った「血が足りないからってタンパク質ばかり摂ればいいってわけじゃないし、それに―――それになすびが入ってるじゃないですか!」
「んあ?別にいいんじゃね?茄子は英語でエッグプラントと言うんだぞ」
「だからってエッグというわけではないでしょうが!」

 ああもうこの人は。本当にあの悪名高いリヒター=L=マルクルなんだろうか。
 このやりとりを楽しんでいるという意味ではたしかに悪だが。

「・・・・・・ところで少年、お前が助かったのはマリアのイーティングが適切だったというのもあるが、もうひとつ理由があるんだぜ」・・・・・・イーティング?何を食べる気だ。「お前の体、爆弾で飛ばされたのに全くやけどの跡がないんだ」
「ああ、それについては言ってませんでしたっけ?僕は生まれつきやけどを負わない体質なんですよ」
「ふーん」
 うげ。
 まるきり信じてない目で見られた。
 その道ばたで行き倒れたハ虫類を見るような目で見るのはやめてくれ。

「まぁいいや。それより少年」
「・・・・・・・・・・・・何でしょう?」
「20万ヘペル、全部俺様がいただいたからな」
 そう言ってリヒターさんはコーヒーを飲み干した。

 逃げ回っていた人に報酬を持ってかれるのはなんだか理不尽だが、20万の使い道はこれからのギルドの運営資金として、(今現在マスターも副マスターも不在なので一応)最高責任者のリヒターさんが預かるという形で受け取っていたので、まあ今回は信じるとしよう。リヒターさんを信じて報われたことは、ないこともなかった気もしないでもないわけではない。

 ちなみに、後日、ダランテ公爵家から郵便が届いた。
 それにはこう書かれていた。
『請求書:リヒター殿  爆弾で壊した塀の修理代 20万ヘペル』
 ―――そんなオチ。


小説第三話「獅子狩り」

2008-11-11 00:40:22 | Cynical Knight
気付けば第二話って8月に書いたんだよなぁ・・・
みんな忘れてるんじゃね?

まぁ、前回までのあらすじをかくのもだるいので
これでも読んでやがれ
ずいぶんとタイムラグがあったなぁ・・・

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

 僕が最後に猫を見たのはいつだったっけか。
 僕は憶えていない。
 本物の猫を、僕は久しく見ていない。
 あるいは、見たことがないのか。残念なことに、僕の微弱な記憶力はその真偽を憶えていない。
 しかし、僕にとってそんなことはどうでもいい。
 そんなこと、ここではまったく重要でない。
 ここで重要なのは、
 僕が猫を知っているってことさ。



「カロロロロ・・・・・・」
 ミーちゃんは一歩一歩と間合いを詰めてくる。このペースでいけばあと100歩分ぐらいのスペースがあるけれど、仮にでも百獣の王が、何の加速もなしに100歩歩くとも思えない。
 恐らく、あと2・3歩踏み込まないうちに突進してくるだろう。それまでのあとわずかな猶予で、僕は次の手を考えなくてはならない。

 と、考え事をしている僕の肩に、リヒターさんがぽんと手をのせた。
「考え事かい?少年」相も変わらずニヒルな笑いを見せつけながら、リヒターさんが言う。「それで、何か思いついた?」
「いいえ」僕は率直に答える。っていうか、僕にどうしろというのだ?「リヒターさんは、何か思いつきましたか?」
「ああ。この状況から抜け出すための、いい作戦がね。」
「それは、興味がありますね。」
「そうだろうそうだろう。だから俺は、今からそれを実行に移そうと思う。」

 ぐい、と。
 リヒターさんは僕の肩を前に押した。急なことだったので、僕はそれに抵抗することができずに、なすがままに倒れてしまう。
 そして、リヒターさんは自分の背中のマグロ肉をはずし、力一杯投げた。伏した僕の目の前に、肉がドサリと落ちる。
 なるほど。僕とマグロを犠牲に、自分は助かろうというアイデアか。なるほど。
「って、感心している場合かよ、僕。」
 っていうか、肉と同列に扱われたぞ、僕。

 いやいや、文句を言っている場合じゃない。このままではライオンからマウントタックルをくらって一巻の終わりである。なにがなんでもそれだけは避けたい。
 とりあえず視野を確保するため、僕は頭を上げる。真っ先に見えたのは、マグロだった。おお、なんとうまそうな大トロだ。絶食後のライオンでなくとも食べたくなる。うーん、一口つまんでおけばよかった。
 と、マグロを観賞してみたが、やはり危機的な状況に変わりなかった。というのも、マグロの向こうからミーちゃんが覗いていたからだ。


(・・・・・・ひょっとして、ピンチ?)
 と、僕が気付くのと同時に、ミーちゃんは右手(いや右前足か)を僕の頭めがけて振り下ろした。
 まったく無駄のない、おそらくは生物最速にして最強の動作。食物連鎖の頂点に立つ者として身についた、隙のない動き。
 僕は避ける術(スベ)もなく、地面に頭を押しつけられてしまう。
「ぐぇ。」
 情けない声を出して、情けなく右頬を地面にこすりつける僕。それだけならいいのだが、僕の頭にすこしずつ体重がかけられていく。それに合わせるように、僕の頭が悲鳴を上げる。
 みしみしみしっ。
 人の頭は100キロ程度まで耐えられるそうだけど、このライオンの体重はどう見ても100キロの4倍以上はある。このままだと僕は本格的にヤバいのかもしれない。
 しかし。
 しかし、僕は不思議と冷静でいられた。当然と言えば当然かもしれない。僕には旧知の友なんていないし、両親だって僕は会ったことがない。今のギルドのみんなともあまり知り合っていないし、すると僕ひとりが死んだところで誰も悲しまない。
 それよりも、なんと強い力だろうか。僕の頭は動きそうもないし(動かそうとも思わないが)、手足で抵抗しようにも、右手は僕の体の下。左手一本でどうにかなるものでもなし、足なんか届くわけがない。
 なんだ、わざわざマウントタックルなんぞくらわなくとも、僕はもうこれだけで立派に行動不能じゃないか。僕はどうやら百獣の王を見くびっていたようだ。

 などと考えながら、僕がいよいよ死を覚悟したとき、急に頭が軽くなった。
「・・・・・・?」
 僕は鈍った頭で何が起こったのかを理解しようとした。感覚がなくなったわけではないようだ。その証拠に、僕の頭はまだずきずきと痛い。
 すると、何だろう。僕は必至に考える。
 そういえば、ミーちゃんが僕の頭を踏んだのは僕の頭が上がってからだった。とするとアレか。動くものを見ると捕まえたくなるっていうネコの習性か。
 とすれば、僕は失敗をした。
 僕はミーちゃんを見上げるために、頭を動かしてしまったからである。

「ゴガァアッ!!」
 ミーちゃんは僕の頭めがけて、今度は左足を振り下ろした。それは一発目同様、全く無駄のない素早い攻撃だった。
 だが僕は、たとえ時速100キロでトラックが走ってきても、それを10秒前に知らされていたら、避けることができる自信がある。
 いかに速い打撃も、それを一瞬早く見切れば、避けられる。
 僕は、その攻撃を生まれる前から知っていた。

 頭を右に振り、その一撃をかわす。
 目の前に振ってきた足に驚くまもなく、僕は右手右足で地面を押し、後ろに転がる。
 一瞬前に僕のあったところに、ミーちゃんの爪が空振った。

 そのまま一回転して、僕はなんとか起き上がる。たかが体一回転分だが、背負っているマグロの分もあって、十分な間合いを稼ぐことができた。
 問題はこれからだ。
 僕はこれからこのライオンを殺さずに、極力無傷で捕まえなくてはならない。
 そうなると武器を使うわけにはいくまい。
 つまり素手か・・・・・・?

「・・・・・・・・・・・・いや、ナンセンスだ。」
 ヒトが素手で闘って勝てる動物は体重60キロまでだそうです。
 そして僕は男としては小柄で力もあまりなく、相手は腹を空かせたライオンです。
 さて、そのココロとは・・・・・・?
「勝てるわけがねぇ。」

 ―――いや待て僕。あきらめるなよ僕。頭が痛くて出血してるけど、あきらめたら終わりだぞ僕。
 頭がくらくらする。視界がはっきりしない。それでも、思考することはできる。
 1+1=2 2+2=4 ほら、論理的思考もばっちりさ。
 だから、考えるんだ。
 この状況を打破する方法を。

「・・・・・・リヒターさん」
 僕はたったひとつ可能性が残っているのを思い出す。「助けてください、リヒターさん」
 返事はない。あるいは、もうこの場にいないのかもしれない。
 いや、たとえそうだとしても。
「聞こえてるんでしょう・・・?≪不可視の可視アンチイビジブル≫リヒター・L・マルクルさん?」

 僕は、待つ。
 あの男を信じて、待つ。
 だから、次のミーちゃんの突進を、僕は避けない。
 百獣の王が放つ威圧。生物最強が匂わす重圧。
 それを、全身で感じながら、待つ。

「フシャアアーーーッ!」
 ミーちゃんが僕に向かってくる。今度こそ、死ぬのかもしれない。まだずきずきと痛むこの頭が、次の一撃を耐えきれるとは思えない。
 それでも、僕は動かない。

「ガァアアアアッッッッ!!」
 ミーちゃんが地面を蹴る。巨体が勢いをつけて接近してくる。圧巻にして壮観。激しい風圧が僕の体を押し、僕はよろめきそうになる。
 僕は動かない。
 ミーちゃんが牙をむく。びっしりと生えそろった鋭い歯。こいつらが僕の肉をかじるのだ。冷笑ではすまない恐怖感。ひしひしとこみ上げてくる絶望感。なぜか感じる悲壮感。諦観。
 僕は動かない。
 なぜ動かないかって?
―――必要がないからさ。


 ミーちゃんの動きがぴたりと止まる。ほんの一瞬だけ、止まる。まるで、ビデオの一時停止のように。
 そして、ミーちゃんは大きく飛び退いた。刹那、ミーちゃんのいた所に矢が刺さる。
 僕は驚かない。
 僕は動じない。
 なぜって、それはもとから予定されていたことだから。

「来てくれたんですね、≪不可視の可視≫さん。」
「その呼び方はやめてくれ。」不機嫌そうな声が後ろからした。「助けに来てやったんだ。お礼ぐらいしろよ。」
「僕を置いて逃げた人に、お礼なんて言いませんよ。」
「逃げたんじゃねぇよ。・・・武器を取りに帰っただけさ。この≪最強の弓使い≫リヒター様の愛弓をな!」
 そう言ってリヒターさんは、黄金に輝く弓を前につき出し、ビシッとキメた。
 いや、ポーズが古いんですけど。
「って、さっきまで置いてきてたんですか。」
「・・・・・・だってほら、猫ってのがどんなのか知らなかったしさぁ。もし凶暴なやつだったらこの≪黄鷹~サンダー・イーグル~≫が傷つきかねんからな。しかし、思ったよりもおとなしそうだな、猫ってのは。」
 ・・・・・・助けてもらったのでツッコミは無し。

 ちなみに、≪黄鷹≫ってのはリヒターさんが持っている弓で、鉄製の型に金箔が貼ってあるシロモノだ。そして随所に黒いスジを入れることで、虎のような縞模様をつけている。弓の中心部分には名前通り鷹が彫金してあって、リアルにくちばしまでつけてある。これで殴られたら相当痛いだろうが、リヒターさん曰く、愛弓を傷つけるわけにはいかないので、やらないそうだ。この人はどうも弓使いらしくない。
 ・・・・・・この人が来てくれたところで、勝てるのか?これ。

<続く^p^>

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

・・・・・・長い。

長すぎるよこれ。みんな読み飛ばすよこれ。
っていうか4000文字超えてるよこれ。原稿用紙10枚ってどんだけだよこれ。

コメ返

●BE

>来ちゃった(*´・ω・`*)ふふふ
>とか言ってみたり^p^


今日キシケイから「BEって誰?」みたいなことを聞かれたので一応。

BEは僕のチャット友達です。チャットでは僕の名前は「抹茶」なのでBEは僕のことを抹茶と呼びます。
関東在住の女子大生。。。ということしか分かってませんが。。。

まぁ、そんなところで次。

>ちゃっかりコメ返期待して書き
>きちゃってる人が一名←笑


期待に応えて書いてますよー^p^

>抹茶のブログ好きですねw

光栄です^^
来年になったらゆきさんも呼びたいもんです
逆流は・・・放置で。。。(ヒド
あいつあまりこういうのは好きそうじゃない気が。。。

>ここってタグ使えるようになってるん?
>たぶんこの顔文字使ったから消えたと思うb
>ちなみにこれw→(*ノω


はい、しっかり消えております。

よくわかんないんですよね。。。ブログと同じようにタグを書いてもフォント変わらなかったし。。。

まぁ、(*ノω<*)こんなのでしたよね?
半角だとやはり消えるので全角の不等号を代用してます。

うん。。。その顔文字使わない方がええわ。。。


んじゃま、そう言うことで。

明日は6時おきなのに夜更かしして更新してるちゃーみーがお送りいたしました。

小説第二話「ネコサガシ(後編)」

2008-07-27 01:45:25 | Cynical Knight
いや~、とりあえず今年度はスキャナー帰ってこないということが確定しましたわw

絵は・・・とりあえずペイントで作成中。

まぁ、そんなこんなの今日この頃、小説第二話を書きました。

ああ、タイトル決まりましたよ。

“Cynical-Knight”です。

和訳すると「冷笑的な騎士」。本編との関連性は特にありません。

主人公が皮肉屋だから、なんとなく「シニカル」ってつけてみたかったんですよ。

はい・・・適当な作者ですみません。

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
「・・・・・・でっけぇ~」
 僕とリヒターさんは、あんぐりと口をあけていた。
 場所は、ダランテ公爵家別荘前。
 目の前には、僕とリヒターさんと二人で肩車しても背が届くか届かないかというぐらいの高さの門が立っていた。
「・・・公爵様はキリンかゾウでも飼ってらっしゃるのか?」
 リヒターさんがヘラヘラ笑いも忘れて、あきれた顔で呟いた。

 僕は絵でしかキリンとゾウを見たことがないが、門の大きさからそれは大きな動物なのだろうと推測した。
 ギルドに入る前は特殊な境遇だったので、僕は少し世界に疎い。猫ならいつだったか見たことがあるが、大型動物や希少動物などは話に聞く程度で、直接的に見たことがない。


―――と、話がそれかけたところで、屋敷の中から白髪をオールバックにした、いかにも執事のような人が声をかけてきた。
「不審者ですか?」
 初対面の人に対してその質問をするのはどうかと思ったけれども、こんなでかいお屋敷の住民に常識を求めること自体が、子猫をキーボードの上で歩かせて「吾輩は猫である」と書くことを期待するぐらい不毛なことなので、とりあえずスルーしておいた。
「いえ、今朝依頼を請けたギルドの者です」
 僕がそう言って胸についたギルドのエンブレムを見せると、
「それなら、今お開けいたします」
 といって、その老執事は屋敷の奥へと駆けていった。

 しばらくして、老執事はカギを一本だけ持ってきた。
 なんちゅうこっちゃ、と僕は声に出しかけた。
 こういう大邸宅では、カギがでかいリングにじゃらじゃらとひとまとめにさがっているものではないのか。アレをひそかに期待していた僕にとってこの光景は、あまり面白くなかった。思えば、マンガや小説に出てくる豪邸のお約束なんて、実際にはあまりないのかもしれない。
 老執事は「今お開けいたします」と息切れしながら、門の中央にしゃがみこんで、下に目立たないように作られた鍵穴にカギを差し込んでまわした。かちゃんと閂(かんぬき)が外れる音がした。それは、門には不釣り合いなぐらい小さな閂だった。
 こんなちゃっちい閂でこのサイズの門を閉じるには何本必要なのだろうというのが疑問だが、意外にも執事は閂を一個外しただけで門の取っ手をつかんだ。
 他人事だが、老人一人の力でこの門が動くかどうか、心配した。


 ギギギギギと、厳かな音を立てて、門が開く。
 人間が一人、通れるぐらいの小さな門が、開く。
「へ?」
 僕は思わず、間抜けな声を出した。
 今まで門だと思っていた格子の一部が外れ、幅1メートルぐらいの狭い門が観音開きに(なぜ観音開きに作る必要があったのだろう・・・)開いた。
「どうぞ、お入りくだされ」
 執事は僕たちを招いていたが、僕たちは呆然(ぼうぜん)としてしばらく動けなかった。
「・・・これだけですか?」
 僕の問いに、老執事はうなずき、
「ご主人様は、見栄っ張りにございます」
「・・・猫を飼う金があって、こんな粗末な門しか作らなかったんですか?」
「・・・猫を飼うから、粗末な門を作ったのでございます」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
 まぁ、入れるからいっか。


 しかし、門をくぐれば、広い“お屋敷”だった。
 庭はそんなに広くなかったが、『お客様専用入り口』なる所から屋内に入り、延々と回廊を歩かされた。同じ所をぐるぐる回っているようにも思ったが、分岐点のない一本道だったのでそれは違うと分かった。
 壁の絵を除けば、ほとんど代わり映えのしない廊下だった。床には長い赤い絨毯(じゅうたん)、天井には電気の明かりが規則的に並んでいた。
 まぁ、一本道だから迷う心配もないのだけれど。

 やがて、その長い廊下もようやく終わりが見え、広い部屋に出た。執事が言うには、どうやらここが客間らしい。そして入り口から最も遠い部屋らしい。もうちょっと玄関に近い設計にしたらどうかと言ったら、どうしてそのような必要があるのですと逆に訊かれた。つくづくこの人には常識を求めない方がいい。


 しばらくその客間で待っていると、奥の扉からいかにも“貴婦人”という感じの女性がでてきた。どうやらこの人が依頼人らしい。しかし、この暑い時期に長袖の服を着て、毛皮のストールを羽織るというのは、暑苦しいのではないか。
 金持ちのオシャレというものはよく分からない。

「あなた方がギルドのお方ざますか?」
 ダランテ夫人とおぼしき人物が言った。
「はい」
「よくお越しあそばせました。私(ワタクシ)が依頼したアマリス・フォン・ダランテざます」
 そう言って、ダランテ夫人は深々とお辞儀してみせた。僕とリヒターさんもそれに合わせて頭を下げた。
 だが僕は、貴族って本当に「ざます」とか「あそばす」とか言うのか、と少しずれたことを気にしていた。
 文面と口調が違うが、書く時と話す時とで言い回しが替わる人も多いし、だいたい貴族が自分から依頼におもむくとも思えない。たぶんあの文書は代理が書いたのだろう。
 僕は話を切り出した。
「それで、依頼についてですが・・・」
「あンら、あなた方は立ったままお話しなさるざますか?これだから無粋な平民のやることはわからないざます。高貴な私はこのイスに座らせていただきますわ」
「・・・・・・」
 貴族って・・・・・・・・・


「---ということで、つまり僕たちはこの“ミーちゃん”を探してくればいいんですね?」
 僕はさっきもらった写真を手に、確認した。
 生後数週間というような黄色い子猫が写っている。話によれば少し昔のもので、今は大きく成長しているらしい。
「そうざます」
「そして、こちらがミーちゃん用の餌ですね?」
 僕は僕の傍にある肉塊を指した。1キロあるらしい。ただの猫にそんなに餌がいるのか。
「そうざます。最高級のマグロざます。つまみ食いはだめざますよ」
 これだけあったら少しぐらい減っていても気付かれない気がする。あとでこっそり刺身にするか。


 リヒターさんはどうでもよさそうにいすに座って、僕たちのやりとりを片肘をついて傍聴していた。


 そして依頼内容の確認が終わったあと、ダランテ夫人が笑いながら言った。
「しかし、あなたたちも物好きですことねぇ」
 なんのこっちゃ、と僕が思っていると、
「こんな安値で依頼を引き受けてくださるなんて」
 どうにも同意しがたいことを言ってきた。
 僕は問う。
「・・・どういうことです?」
「だって、10万ヘペルなんて、あなたが今座っている椅子のほうが高いじゃないざますの」
 普段からどういう家具を使ってるんだこの人は。

 僕は立ち上がり、リヒターさんに言った。
「行きましょう。リヒターさん。この人と話すと脳内のアルファ波がかき消される」
※アルファ波とは人がリラックスしている時に出てくる脳波の一種。なぜ僕が知っているのかはオフレコということで。
 しかし、腕をぐいっとひっぱってもリヒターさんは動かなかった。
「・・・・・・どうしたんです?リヒターさん」
「なあ少年、10万って安いよな?な?」
「・・・・・・値上げの交渉ならしませんよ」
「ええっ?少年、俺の考えてることが分かったのか?おまえ、まさかサイキッカーか?超能力者か?」
「・・・・・・あなたの性格は僕が一番よく分かっています」
「くーっ、ウレシイこと言ってくれるなぁ、少年。なら分かるだろ?なぁ?これはまたとないチャンスだぜ」
「・・・・・・行きますよ、リヒターさん」
「ちょ、ちょっと待てよおまえ。考えてみろ、10万は大金だろ?それが倍増するかもしれないんだぜ?それも少なくとも減る心配はなく、そのレートは未知数だ。ローリスクハイリターンだぜ、少年?おい、ちょっと待てよおまえ。勝手に部屋から出て行くなよおまえ。分かった。俺が悪かったからちょっと戻ってこいって。ああ、どうしても出るんだな?チクショウ、しかたない、俺も出るしかないな。ああ、さらば10万ヘペル。おまえのことは一生忘れないからな・・・」
「・・・リヒターさん、初めて話に興味を持ちましたね・・・」



 豪邸の近くの公園で、僕とリヒターさんはベンチに座っていた。
「・・・リヒターさん、本当にここに猫が来るんですか?」
「ああ、俺はちゃんと猫の喉鳴らしを聞いた。俺の予想が正しければ、ミーちゃんはここに来る」
「確かなんですね?」
「当たり前だろ。俺を誰だと思っているんだ」
 僕はリヒターさんを連れてきて正解だと思った。

 異常に発達した聴力。それがリヒターさんの武器だ。標的がどんな所に隠れていようと、彼は音でその場所を知る。相手がいかに音を立てずして隠れようと、リヒターさんは心音で場所を探る。だからたとえIQ180の軍人がダンボールの中に潜んでいても、彼にかかればすぐに見つかってしまうのだ。

「カロロロロ・・・・・・」
 おお、なんと、僕にも喉鳴らしが聞こえてきた。うーん、カロロロロって擬音語だったっけか。
「ハルルルル・・・・・・」
 猫の喉鳴らしはここまで大きかったっけ。小さい頃の曖昧な記憶しかないので確認のしようがないが、多分このぐらいの大きさだったのだろう。
「コロロロロ・・・・・・」
 ボールを蹴っていた子ども達が、散る。仲良く手をつないでいたカップルが、手を離して逃げる。公園の隅を陣取って経営していた果物屋が、商品を置いて走る。
「グルルルル・・・・・・」
 僕とリヒターさんは路地から現れたミーちゃんであろう猫と視線を合わせた。
 公園には僕とリヒターさんしかいない。あ、あとミーちゃんも。
「ゴロロロロ・・・・・・」
 僕とリヒターさんはベンチを立った。背中には、高級マグロの肉塊を背負っている。
「少年・・・」
「なんです?」
「猫を見たのは俺、10年前に旅行して以来なんだが、猫って案外、大きいんだな・・・」
「ははは、そういう種なんですよ・・・」

 否。
 僕は目の前のミーちゃんが猫でないことを知っている。
 つやのある黄金色の毛並み。大きな体に鋭い爪牙(そうが)。顔を囲む、立派な鬣(たてがみ)。
 それは、すべての獣の頂点に立つと言われている、百獣の王。
―――そう、ミーちゃんは、ライオンだったのだ。

「・・・さて、どうしますかね、リヒターさん」
「そうだな、猫のあやし方は知らないからな。ここはお約束の手でいくか」
「お約束の手?それはなんです?」
「―――“次回に続く”だ」
「ええっっ?この話『後編』なんですよ?これで『次回に続く』なんて言われても読者が納得するわけが――――――――」
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

なっはっは☆グッダグダだ~♪どーしよ~
OTL

まぁ、納得してくださいな。


コメ返答

○守護(っち)

あ、しつこい?
すいません。
代案としては、しゅごたん、しゅごにゃん、しゅごちゃんの3つがありますが・・・
あ、呼び名は守護ですよねそうですよねすいませんごめんなさい
ああっ、お願いだから石とかナイフとか投げてこないで・・・

>スマXはナナだけ死ぬ事が増えたと思います。
>この前ストック3機戦で3回ともナナが先に逝きました。


僕はスマブラの腕が弱いのでレベル9のコンピュータを倒しまくって練習してるのですが、
いつだったか相手がアイスクライマーだったとき、
5機すべてがナナから死にました。
しかもなぜかポポだけになってから妙に強かったのが印象深いです。
まぁそれはともかく、実質10機倒さなきゃいけなかったので、
スマッシュ入力で左親指が・・・っっ!!

可愛いで選んでもいいと思いますよ。
ピカチュウのほうが可愛いとも思いますけど。


・・・・・・そうすか?
僕の“可愛い”の基準はずれてるんでしょうか?
えっと・・・

僕にとって可愛いのは、(あ、元ネタがわかりにくいのも多いので分かるものだけ共感してくれればけっこうです)
・アイスクライマー(スマブラX)
・ディーディーコング(スマブラX)
・プリン(スマブラX)
・こどもリンク(スマブラDX)
・椿(ソウルイーター)
・ファイアー&サンダー(ソウルイーター)
・烈海王(バキ)
・あかねちゃん(魔人探偵脳噛ネウロ)
・竜宮レナ(ひぐらしのなく頃に)
・ガチャピンとムック(ポンキッキーズ)
・ユウ&レイ(ぷよぷよフィーバー)
・スライム(ドラゴンクエスト)
・はじめ虫(金田一少年の事件簿)
・長門有希(涼宮ハルヒの憂鬱)
・クラッシュバンディクー(クラッシュバンディクー)
・(正式名称無し)小さい悪魔(Xi)
・ジェリー(トムとジェリー)
・ミニドラ(ドラえもん)
・リナリー・リー(D.Gray-man)
・スペランカー(スペランカー)
・キノピオ(マリオシリーズ)
・ロール(ロックマン)
・ロールパンナちゃん(アンパンマン)
・風来坊錬金術師(メイプルストーリー)
・ナヤトレイ(テイルズウィーバー)
・アルフォンス=エルリック(鋼の錬金術師)
・オヤジ(すみれ16歳)
・ミュウ(テイルズ・オブ・ジアビス)
・ジーニアス(テイルズ・オブ・シンフォニア)
・チェスター(テイルズ・オブ・ファンタジア)
・アーチェ(テイルズ・オブ・ファンタジア)

・・・ゼイ、ゼイ以上だ!

○キシケイ

たしかにアイスクライマーは2人そろってナンボ、Wi-Faiで略してアイクの片方が散ってもう片方にやられたことはないですもん。

ポポだけだと↑Bの復帰力がほぼゼロ、メテオ攻撃なし、攻撃力半減(実際にはナナが高めなので半分以下)の雑魚キャラになりますからね。
緊回するたびにナナが死ぬのでタブー戦には使えないのです(あの即死攻撃)。

もち、片方がやられてたら親切心から倒してあげますけどね。
だってカモだもん☆(殴


キシケイGJ ><b
アイスクライマーはナナが死んだ時点で一機減ったも同然なのです


今日はこんなところで。
それじゃあまた。

小説第一話「ネコサガシ(前編)」

2008-07-13 00:45:25 | Cynical Knight
えっと、
更新が遅れた言い訳というか、なんというか。

火曜日の会話。
僕「ちょっと~、母さん、ここにあったスキャナーは?」
母「ああ、職場でいるから持ってっちゃった」
母さ~~~~んッッッ!!!

まぁ、そんなこんなで。今手元にスキャナがないのです。
週末は兄ちゃんが帰ってくるので、今日はちょっと携帯借りて写真撮ったわけですが、
いかんせん携帯画像は画質が悪い。
いつか直します。今日の所はコレで我慢しといてください。

僕。主人公。名前は未設定。いや本当は設定あるんだけど結局小説内に出てこないから非公開。
性格は面倒くさがりで皮肉屋。目上の人には敬語を使う。

まぁ・・・本っ当に写り悪いな・・・

なにはともあれ、小説でも楽しんどいてくださいな。


~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
 朝、ひんやりとした冷気で目を覚ました。

 僕がギルドに入ってから3日目の朝。日除けのカーテンの隙間から、細い光の線が伸びている。僕はその光をぼんやりと眺めながら、今まで見ていた夢とこれからの現実に、区切りを付けていた。
「・・・起きるか」
 なかば自分に言い聞かせるように呟き、僕は起きた。

 カーテンを開いて、ベッドから飛び降りた。
 ベッドから飛び降りたというのは、別に言葉のアヤではない。二段ベッドの二階から、ハシゴをおりるのが面倒くさかっただけだ。僕は、面倒くさいことが大嫌いだ。
 といっても、まわりに何もない広い部屋だからできることだ。よい子はまねしてはいけない。

 だが、少しばかり寝ぼけていたようだ。
 僕は空中でバランスを崩してしまったのだ。それでもなんとか頭から落ちるのだけは避けようと手足をばたつかせてたら、まっさかさまに落ちるのだけはなんとか免れた。
 僕は、思いっきり尻もちをついた。


 幸い、下が硬い地面だったのと、僕の体重が軽かったのとで、マンガみたいに「ズシーン」とかいった音が鳴ることはなかった。もしも音がたっていたら、騒音でみんなが目を覚まして、面倒くさいことになっていたことだろう。
 尻が痛いが、そこはガマンすべきところだ。

 いや、ひとつ面倒くさいことがあった。僕の尻もちを見ていた者がいたのである。
 このギルドのアジトは、まず、ロビー兼外来クエスト受付のまるい部屋があって、それを取り囲むように二段ベッドが設置されている。逆を言えば、ベッドから出たらそのままロビーに直結している。24時間対応を売りにしているこのギルドのロビーに出たら、誰かいることぐらい、よく考えたら分かることだった。
「やあ、少年。朝早くから座り込んでどうしたんだい?」
 ロビーから男の声が聞こえた。男性としては高い爽やかなテノールで、僕はその人の顔を見ずに誰だか分かった。
「あ、なんでもありませんよ、リヒターさん」
 とっさに僕が応答すると、リヒターさんは受付用のイスに座ったまま、にやりと笑った。
「おはよう、少年」

 リヒター・L・マルクル。自称、副々マスター。僕がこのギルドの中でもっとも朝早くに話し、そしてもっとも面倒くさいと思っている人物である。
 リヒターさんは表に感情を出さず、いつも薄笑いを浮かべている。しかも、そこには演技のようなそぶりはなく、本心から楽しそうに笑う。僕は、その不気味な笑いを見ただけで、どうも嫌な気分になってしまう。
 なにか、心の中を隠されているようで。
 逆に、僕の心の中を読んでいるようで。
 必要もなく、気を遣ってしまう。
 本当に、面倒くさい人だ。

 僕は、リヒターさんの前に書類が置いてあるのに気づいた。僕はあわてて訊く。
「リヒターさん、それ、何かの依頼ですか?」
 リヒターさんは相変わらず気味悪く微笑んで答えた。
「ああ。俺が起きる前からあったやつだ。中身は知らん」
 リヒターさんより早く起きるとは、そうとう早起きな依頼人なんだろうな、とか考えつつ、書類に目を通す。
 内容は次のようなものだった。

<名前>アマリス・フォン・ダランテ
<依頼概要>飼い猫探し
<詳細>別荘で放し飼いにしていたペットが逃げ出した。町のどこかにいると思うので、探してきてください。

 ふむ。
 正直、すごく読みにくかった。何度も消した跡があって、全体的に黒ずんでいた。それに、どんな猫かもまったく書かれていない。
 ただ分かることは、この人が貴族の生まれで、金持ちだということだ。

 貴族の名前には「フォン」が付いている。この人もそれからすると貴族なのだろう。もっとも、ダランテ公爵家はこの町の真ん中に別荘を持つ貴族として有名なのだが、それはともかく。
 「金持ち」については、猫を飼っていることから分かる。気候のせいだか何のせいだか知らないが、このあたりにはネズミがいない。海も川も近くにないから、魚も無い。したがって、このあたりには猫がいない。だから猫は遠くから輸入することになる。えさも輸入しなくてはならないので、金持ちでもない限り、とても飼えない。
 まったく、ブルジョアめ。

「リヒターさん、これ一緒にやりませんか?」
 僕の呼びかけに、リヒターさんはフッと小さく笑った。
「なんで俺まで行くんだよ。少年、おまえ一人で十分だろう?」
「しかし、動物を探すのは、あなたの得意分野のはずです」
「そしたら、ここに来た依頼は誰が受け付けるんだ?俺はただここに座ってるんじゃないぜ」
「それは・・・」
 僕は答えに詰まった。
 まったく、この男はただ受付やってるだけで偉そうに。こっちがせっかく誘っているのに反発しやがる。そんなにその心地良さそうな受付のイスに座っていたいか。そんなら僕がそのイスから立たなくていいようにしてやろうか。いいぜ、ボランティアでやってやる。全身複雑骨折がいいか、両足切断がいいか、いや頭蓋骨を陥没させて両足を麻痺させてやろうか。いや、ちょっと待て。そこまでやると警察沙汰だ。もう少しゆるく、そうだ、こいつの食う飯に少しずつアブナイ薬品を混ぜてやろうか。コカイン、モルヒネ、いやいや違法行為は良くないな。うん。合法的にやるとしたら水銀か。あれ、油絵の具も麻痺効果があったよな。うん、油絵の具だ。あれなら大量に手に入るし、量を調節すれば死にもしない。おお、なんと完璧な計画だ。これならあの男はもう足腰を立てることもままならず、万年受付として生きることになるんだ。あは、想像しただけで楽しいや。あはははははは、あはははは、あひゃひゃひゃひゃ、苦怪怪怪怪(クケケケケ)、奇死死死死(キシシシシ)、氷氷氷氷氷(ヒョヒョヒョヒョヒョ)。


 と、ここまで妄想が進んだとき、僕はわれにかえった。後ろから女性の声がした。
「アタシがやる」
 いきなりの声に、ぼくは驚き、振り返った。ギルドメンバーのサヤさんがそこに立っていた。
 サヤさんについての詳細はここではあまり関係がないのでいつか説明するとして、もとの筋に話を戻す。
「さ・・・サヤさん、起きてたんですか・・・?」
「今起きたところだよ・・・ふぁ・・・ねーむぃ」
 サヤさんは、腫れぼったい目をかきながら大きくあくびをした。
 正直、こんな人に受付の代理を頼んで大丈夫なのか少し不安になったが、僕としてはいい方向に話が進んでいるので、反論する気はしなかった。


 僕はリヒターさんに向かって、言った。
「―――だそうですよ。いい代役が見つかって、良かったですね」
「あーあ、俺はもうちょっとのんびりしていたかったんだけどな」
 まだダルそうにしているリヒターさんに対して、僕は書類の一番下を読み上げた。
「『<報酬>10万ヘペル』・・・か」
 リヒターさんは、急にニヒルな笑いをやめて立ち上がり、いそいそと出発の準備を始めた。
「ああ、疲れもとれたし、行くとするか。うん?なんでそんな目で俺を見るんだね、少年。誤解の無いように言っておくが、俺は金が目当てで行くんじゃないぞ。聞くところによると、何か動物を探すんだって?おう、やってやろうじゃないか。動物探しは俺の得意分野だからな。いやなに、別に無理はしてないさ。俺は、困ってる人間を放っておけるほど冷血ではない・・・」
 僕は、自分の表情筋が痙攣(けいれん)を起こすのを感じた。

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

まァ、例のごとくわかりにくい文でサーセン。
あと、更新が遅れた事も含めてサーセン。

罰ゲームについて。
実行しようと思ったのですが、猥褻物陳列罪で警察行きになるのが怖かったのでやめました。あと守護っちにも言われたしね。
まぁ、そんなこんなで、
罰ゲームは違うものをやろうと思ってます。
↓何かいい案があったらこちらまで
charmingcharmy@excite.co.jp

小説、書いてみました。

2008-06-24 23:02:54 | Cynical Knight
いや~、タイトル通りですわw
僕としてはこのブログを立ち上げる前から、小説を書くつもりでしたけれども。
実際書いてみると、難しいですね。小説って。

書き始めたら、なんか定期的に更新しなくちゃいけなくなるじゃないですか。
アレが辛いんですよね。特に筆の遅い僕にとっては。

んで、今回書く小説についてですが、
僕は小説のタイトルを、全部書いた後に決めるんですね。
よってタイトルも決まってません('A

まぁ、あれですよ。こうやって公開したら筆が進むんじゃないかって期待してるんですよ。
進むわけないのにね( ゜∀゜)<アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \

OTL

えっと、とりあえず大まかに説明しますと、、、
RPGっぽい世界で、あるギルドに属する主人公が、個性的なギルドメンバーと過ごす日々をだらだらと描写する感じのストーリーです。まさにヤマ無し、オチ無し、笑いは・・・少々って感じの。。。
RPGといっても、ドラクエでも、FFでも、メイプルストーリーでもない、どれにも属しない、独自の世界・・・というのを意識しました。
その方がいろいろと都合いい設定ができますからね♪
まぁ、主人公の名前もギルド名も、ギルドのマスターの名前も設定されてないんですけどね。
ん?これって大丈夫なのか?

むぅ~。。。まぁ、何はともあれ、プロローグのはじまりです。


~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

「人間、才能を持っていても、それをどう使うかによっては、凡人以下になっちまうんだよな」
 これは、ぼくがはじめてマスターに言われたことだ。
 あれはぼくがギルドに入った日のこと。たしか、マスターに食事をおごってもらったんだ。
 首をかしげるぼくに、マスターは怪訝な顔をして聞いてきた。
「わからないかい?俺の言っている意味が」
 あのとき、ぼくはどう答えたっけ。
 わかります。わかりますが、わかりません。そんなことを言っていたと思う。今思うと、相当にキテレツな文句だ。
 そしたら、マスターはニッと笑ってみせて、
「お前、おもしれーこと言うな」
 ぼくは、なぜマスターが笑ったのか、あの時はわからなかった。

 今ならわかる、そんな気がする。
 わかるというのは、マスターがなぜ笑ったのかという些細な疑問の解ではなく、マスターが最初に言った、あの言葉の意味だ。
<<人は、たとえ才能を持っていても、それの使い方次第で、凡人以下に成り下がる>>
 それは、一見して浅いようで、そして実は深い言葉だった。ぼくはそれの意味を知るまでにはあまり時間がかからなかった。だが、それがわかる原因が現在の環境にあるのに気づくのはそうとう後になってからだった。
 ここには、『有能にして無能な人』がたくさんいる。
 たとえば、遠くの人の痛みがわかる治癒師。
 たとえば、敵の力量を見た目で測れる盗賊。
 たとえば、見えぬところも把握できる狩人。
 たとえば、他人のために自身を挺せる戦士。
 ここまで揃うと、ぼくも『有能な無能』であるかのような気がする。ぼくには何も心当たりはないのに。ひとつ幸いなことは、ぼくが才能を持つかどうかが、この話にはまったく関係がないということだ。
 話を戻そう。
 ぼくは、マスターの言葉の意味を理解した。『正しく』理解したのかどうかは確認のしようがないので、深く考えないようにする。
 しかし、ひとつだけわからないことがある。
 どうしてマスターは、あの時、ぼくに、その話をしたのだろう。

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

プロローグ終わり。
ナレーション多いな~というのは僕も感じているところです。
まぁ本編になったらなんか修正がきくんでしょw

コメ回答(23:31追記)
いや~、このブログにコメ回答という単語を使うとは思わなかったわw
でもなんかリア友以外の人からコメントもらうとしなきゃいけない使命感が!!

近所の横断歩道編
キシケイsより
>ほんっと、何でだろうね?

他に書くことなかったんだろうか・・・( ゜д゜)
それだけだったら書いていただかなくても・・・

つめかえ。編
キシケイsより
>まぁ、アイロンの詰め替え用のアレよりましっしょ?
>なわけないか・・・


何?アイロンの詰め替え?
なんのこっちゃ。

生徒総会でした。編
キシケイsより
>え~っと、これを見ている皆さん。
>この記事の内容は真実87%、妄想10%悪ふざけ2%その他1%で構成されております。
>俺も居合わせていたからねb

その他1%は優しさと愛と友情でできております。

スマブラXバトン編
守護sより
>そういえば消えたキャラ一杯いますね
>まぁピットkばっか使ってる俺には関係(ry

ピット派ですか( ´_ゝ`)ニヤリッ
俺も好きですけどね。決定打がないのがちょっと・・・

>あ、俺になってますが気にしないで下さい。世の中そういうもんです。

そうですか。世の中そういうもんですか。


キシケイsより
>ロイの消滅はロイ使いの俺には痛かったな~・・・

ですよねー。彼のカウンターは炎がでてカッコ良かったですもんね。

>これを見たのは実は夜中なんだが声を出して笑ってしまったんだよ。
>どうしてくれるんだ!?(何

しるかよ。