抹茶味の珈琲店

ここにあるのはしょうもない戯言・・・それでも来てくれた皆様に感謝。
どうぞ、風変わりな文章をお楽しみください。

「先生、頭が頭痛です」「それはぜひとも精神科に行ってらっしゃい」

2009-02-18 00:49:22 | ノンジャンル
突然ですが、来週月曜日から僕は、、、



北海道に修学旅行に行きます。



極寒の北国、北海道。

南国宮崎出身の僕には想像もつかない世界です。

宇宙旅行の方がまだイメージが湧きます。

というのも僕、生まれてこの方東京よりも北に行ったことがない。

いったいどう準備すればいいのか、さっぱりです。


旅先ではスキー体験講座を習うそうですが、

スケートも満足に滑れないこの運痴に何をやらせる気なのでしょうか。

スキーなんかする暇があったらホテルに引き籠もってPCで遊んでいた方がよっぽどマシに思えるのですが。


まぁ、スポーツ特待組がカッコつけてケガしないようにしてほしいものです。

スポーツ特待組は本当にああいう場ではでしゃばりますからね。

あそこで一度ケガした方がいいクスリになるんかなぁ?


さて、そんなこんなで北海道に行ってきます。

死ぬほどだるいです。


ずる休みしようかな・・・・・・。

学校の話なんてどれだけぶりだろう?

2009-02-14 22:08:47 | ノンジャンル
今日は先輩の卒業式でした。
この時期にやるのは僕らの学校だけみたいですね。

卒業式っつっても大学の2次試験を受ける先輩方はこのあと補習を受けに学校に来ますし、僕の所属する卓球部には3年の先輩がいないので、蛍の光を歌っても涙なんか少しも出ない。
ただ、カーテンが開くと陽当たり良好で暑かったなぁ。
暑くって暑くってみんなウトウトしてたなぁ。
卒業式という名の睡眠時間だったなぁ。


あ~メンドクセ。


あぁ、この前描いてたウィル君ですが、
ペン入れしているうちに構図を変えたくなって書き直してます。
まーどうせ10分で描いた絵だったから惜しくもないしな。
だいたいマンガ家だって一発勝負で決めれる人は少ないからな。

一発勝負で決めれるマンガ家って新聞4コマの人と手塚治虫しか知らん。

こう考えると手塚先生すごいんだな。

さて、戯れ言はここまで。
じゃ、また今度。

小説第7話「6日目の朝」

2009-02-07 14:45:12 | Cynical Knight

リヒター「さあさあ、3日連続更新3日目だぜ」

ウィル「懲りませんね、リヒターさん。またつっこまれますよ」

リヒター「いーのいーの。そんなもん作者の責任だろうよ」


さて、最近まともにPCの前に座らせてもらえないちゃーみーです。

みんな、この時期の高2は「受験生」っていうらしいぞぉ。

ちょっとしたトリビアかも。

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

バカは風邪を引かない?じゃあ世界中の人間は天才だってか。


 ギルドに入ってから6日目の朝。ぞくりとした寒気で、僕は目を覚ました。

 季節は夏。それもまだ盛りの来てない初夏のことだ。
 地球が上下ひっくり返ったのか、それとも僕の感覚が狂ったのか、いずれにせよ、この時期には不適切な、呼気の白い、真冬の寒さだった。

 しかし今はどうであれ、僕が寝た時は暑かった。しかもマスターが冷房設備に予算を使わないから、僕はパンツ一丁シャツ一枚で寝ていた。
 それだけに、今の気温は寒い。

「・・・・・・降りなきゃ、・・・・・・ベッドから降りなきゃ」
 呟きながら、とりあえず今からすることを確認する。
 かじかむ手足をどうにか制し、僕は二段ベッドの二階からハシゴを使って降りた。

 このギルドの二段ベッドはリビングを中心に囲むように5台設置してあるため、ベッドから降りるとリビングに出る。
 いつもはリビングに誰もいないのだけれど、今日は珍しい人がいた。

 彼女はリビングの中央に陣取り、本を読んでいた。長いさらさらの髪が地面まで伸び、ちょうど彼女が座っている車いすを隠している。白く細い指先でページをめくり、コバルトブルーの瞳で文字を追う姿は、なかなか絵になる光景だった。
 えーっと、この人の名前は・・・・・・。
「グレ・・・・・・グレー・・・・・・・・・・・・グレゴール?」
 だめだ、虫に変身する男の名前になってしまった。

 と、僕が考え込んでいると、彼女は僕に気付いたらしく、小さい、というよりか細い声で言ってきた。

「・・・・・・『呪術師』グレフィオロフ=スフレッサ。・・・・・・あなたにはもう、自己紹介していたと思うけど」

 どこか霧の向こうから聞こえてきそうな澄んだ声だった。ある意味恐い。
 この人とは僕がここに来てから初日にあいさつした。何でも忙しい人だそうで、翌日にはどこかに旅立っていた。こうして会うのは5日ぶりだ。
 車いすに華奢な体躯と、一部の人から支持されそうな体つきだが、その反面人一倍プライドが高い。プライドが高い人は苦手だ。つまり、僕にとってこの人は、そんな感じだ。

「ああ、そうでしたね。えっと、グレ・・・グレ・・・グレーテル」
 森を抜けると、お菓子の家?
「・・・・・・すいません、ソッコーで忘れました」
 僕は相当失礼なことを言った気がしたが、彼女はそんなこと気にしてないようだった。
「・・・・・・覚えにくいなら“フィオ”でいい。変な名前であることは重々承知している」
「ああ、そうでしたか。フィオさん」
「そう。このことも自己紹介の時に話していたと思うけど」
 ・・・・・・。
 ・・・・・・・・・でしたっけ?
「・・・・・・それに、このグレフィオロフ=スフレッサはこんななりだがここの副マスターに就任している。私は君の上司なのだよ?名前ぐらい、覚えて」
「まあ、努力はします」
「そう、それなら上々」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
 重い。空気が重い。っていうかこの人のまわりだけ重力が100倍になっている気がする。
 誰か、どうにかしてくれ。

「あー・・・フィオさん?・・・・・・今朝は寒いですね」
「そうかな。・・・・・・そうかと聞かれると、そうかもしれない」
「いや、異常気象ですよ。真冬ならともかく、この時期には寒いですよ」
「そんなことはない。私は冬が大好きだ」
 ・・・・・・・・・・・・いや、アンタの好みなんか聞いてねえよ。
「それに、わざわざこの気候にするために、“氷結界”を使用した」
 ・・・・・・・・・・・・しかもアンタの仕業だったのかよ。
「君が寒いというのならば、この“術”を解いてもいいんだけど。この“術”は組むのに時間がかかるんだ。・・・・・・それに、この“術”に手頃なサイズの部屋もここ以外にない。この気温が嫌いなら、君の方からこの部屋を出て行って欲しいよ」
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・もはやつっこむポイント多すぎだよ。
 この人といい、リヒターさんといい、どうして僕のまわりはキャラの濃い人ばかりなんだ?

 僕が観念して部屋を出て行こうとした時、フィオさんは後ろから声をかけてきた。
「ところで君、名前は?」
「ウィルです」
「そうか、ウィルデスと言うのか。なかなかかっこいい名前だ」
「いえ、ウィルという名前です。本名はウィリアム・ミディアムと言います」
「どっちでもいいよ。ウィルデス君。君はやさ男に見えて結構弱そうだね」
 ・・・・・・。あれ?
 何か言葉を間違えている気がする。名前が違うとか、そういう問題じゃなくて。
「そしてキャラが薄いように見えて存在が希薄だ。どうだい?私の見解に間違いはあるかい?」
 ・・・・・・・・・・・・いろいろと間違えている気がする。
「・・・・・・見解的には間違っていないんでしょうけど」
「そう、それなら上々」
「・・・・・・・・・・・・」
 この人はギャグで言ってるんだよな?だれか、ギャグだと言ってくれ。

「あー・・・・・・・・・・・・僕、朝がまだなので、食べてきますね」
「そう、それは残念。ウィルデス君とはまだ話がしたかった」
「そうですか?」
「リヒター君から聞いたとおり、君はおもしろい」
「・・・・・・そうですか」
 リヒターさん、何を言いふらしているんですか。
「でも君が行くというのなら、私に止める権限はないよ。行ってらっしゃい」
「・・・・・・・・・・・・行ってきます」

 どうにもこうにも、つかみどころのない人だった。


小説第6話「過去」

2009-02-06 10:33:34 | Cynical Knight

リヒター「さあて、3日連続更新二日目だ」

ウィル「・・・連続ですか?間が空いたような」

リヒター「何を言っている。前回の記事の日付を見てみろ」

ウィル「・・・偽装はいけませんよ」


・・・・・・さて、3日連続更新の二日目です。
前回までの話は、まぁ言っちゃえば第一章みたいな、いや、「一章」と呼ぶにはあまりにも短い一節です。
一応ゲーム的なハラハラした展開とかもできることはできるのですが、まぁ、しばらくだらだらした小噺が続きます。

そんなわけで第二章。いや第一章第二節。第六話。
リヒターさんの本当の強さとは?初戦闘、サヤちゃんの能力とは?
新登場の呪術師、ギルド壊滅の危機!?
上記の煽り文句には一部嘘がありますが、ま、原稿もできてねーのに予告なんて無理に決まってんだろということで、ご愛嬌ご愛嬌。

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

「いーちゃん、いーちゃんって、実は消したい過去とかある人?」
 少女が僕に訊いてきた。背が僕より低いので、僕を見上げる形になる。
「消したい過去なんてないよ」僕は両手を広げて答える。「過去が積み重なっての現在だろ?過去を消すことはできないんだよ、僕が現在時制にいる限り」
「ふうん?哲学的なことを言うね」
 少女は金髪のツインテール頭を傾けた。どうも僕の言っていることは通じていないらしい。

 僕は続ける。
「でも、現在の僕が現在の僕を抹消するのは簡単だ。たとえば、爆弾で自分を吹き飛ばす。自分の手首を切り落とす。死ぬまで柱に頭を打ち付ける。方法なんていくらでもあるさ。それで、僕は現在の僕を消したいと思っている」
「・・・・・・? ひょっとしていーちゃん、自殺願望者?」
「そうかもしれない」
 僕は少し間を空けて続けた。
「それでもきみなんかよりずっとずっとマシさ。きみは過去と自分を切り離して現在を生きようとしている。だから家出なんてしたんだろ?でも、そんなことはできない。そんなことはできないんだ。過去を消して生きるだなんて、そんなの生きているうちに入らない。生きながらにして、死んでいる。健常にして、病んでいる。廃人だ。『過去の自分と今の自分は違います』ってか?勝手なことを言うんじゃない。そうやって、埋め合わせだの、罪滅ぼしだの、自己満足で自己免罪して、自己免罪で自己満足して、そして過去とはオサラバ。すばらしいキレイゴトだね。どうやったらそんな傲慢な思想を持てるのか、不思議なぐらいさ。そうして過去から逃げて壊れてしまった人間を、僕はたくさん見てきた」
「・・・・・・・・・・・・」
「消したい過去なんてないけど・・・・・・嫌な過去ならあった。僕もそこから逃げ出した。そして・・・・・・今ここに欠陥製品がいる」
「・・・・・・・・・・・・」
「自分で自分を免罪しても、まわりが赦してくれないのさ。僕は今でも赦してもらえない。今でも追われ続けている。この状態を解決するには、過去を消すことよりも、現在を消すことが、いいんだ。」
「・・・・・・・・・・・・」
「だから、過去を消そうだなんて、思うな。僕のような欠陥製品になりたくなかったら、過去を引きずれ。過去のおもりを載せたまま、精一杯生きろ。そう簡単に赦されるほど、世の中甘くない」
「・・・・・・勝手なこと、言うな」
 少女は反論した。予測していなかった反論に、僕は少し戸惑う。
 少女は眉間にしわを寄せて、怒りに全身を震わせ、怒鳴る。
「・・・・・・何にも分かってねえ癖に、悟った振りして他人の人生に口出しすんな!分かった振りして他人の行動にダメ出しすんな!!どうせお前は欠陥製品なんだろうが。てめえなんざと一緒にすんな!」
 僕は、黙った。

 そうさ、僕は世の中を諦観してきた。
 世の中を傍観してきた。
 すべてに対し、他人事と考え、安全地帯から観察し、面倒ごとから逃避し、人間関係を放棄し、
 適当に生きてきた。
 適当な人生に、不満はなかった。
 適当な人生は、退屈だった。
 退屈は、大好きだった。

 過去と自分を切り離し、すべてをあざ笑ってきた。
 戯言。冷笑。ニヒリズム。
 その意味で僕は、
 リヒターさんと似ているのかもしれない。

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

はい、第六話はここらで終了です。いつもより短めの、1500字。
・・・・・・え?文章の意味が分からない?

ま、第一話の前のプロローグもなんだかカオスでしたし、大丈夫なんじゃないですか?
そんな感じで毎日をゆったりと過ごす俺様ちゃーみーがお送りしました。

・・・・・・・・・・・・ダイジョウブ、多分第十話までに複線回収してる。うん、きっとしてる。


小説第5話「出来損ないの後始末」

2009-02-05 01:26:27 | Cynical Knight

正月絵を描かなかったということで、

3日連続更新開始~

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

 僕が次に目を覚ましたのは夜のことだった。いや、より正鵠を期すならば“夜”ではなく“早朝”なのだが、いずれにせよ真っ暗なのでその時の僕には判別できなかった。
 体を起こすとめまいがし、身体の節々が痛んだ。はて何かあったかなと自分の腕を見ると、腕には包帯が巻いてあり、その包帯の下には点滴の管が通っていた。
「……そういや、僕は爆弾で吹っ飛んだんだっけ?」
 誰に言うともなく、他人事のように呟いた。
 実感がわかなかった。

 他人事かもしれなかった。
 よくあるSF物語よろしく、気絶している間に誰かと体が入れ替わったのかもしれない。だとしたら、僕は誰か分からない一個人として、新しく人間関係を築かなければならない。面倒な話だった。
 しかし、それにしてはこの体は体格から姿勢まで、僕の体に非常に似ていた。低い身長、細い腕。「あ~」と声を出してみると、僕とそっくりな声がした。
 オーケイ。妄想はこの程度にしておこう。
 この体は僕の体だ。

 僕は『救護用』とのタグのついたベッドから降り、眠い目をこすりつつふらふらとロビーに向かった。

 ロビーでは小さなランプが薄明るく部屋を照らしていた。そして、受付にはリヒターさんが、ブラックコーヒーをマグカップに盛って(この表現は間違いではない。彼は表面張力ギリギリにまでコーヒーを『盛って』いたのだから)、いつも通りのうすら笑いで座っていた。
「やあ、少年」リヒターさんはマグカップを器用に振りながら言った。「オハヨウゴザイマス」
「おはようございますって……今は夜でしょう?」
「早朝だよ」
「さいですか」
 どうでもいいことだった。
 本当にどうでもいいことだった。

「あー…ところでリヒターさん、ひとつ伺ってもいいでしょうか」
「だめだ」
「…………」
「……冗談。いいさ。何でも聞きたまへ」
 相変わらず冗談に聞こえない冗談を言うリヒターさんだった。
「………あの後、どうなったのですか?僕が倒れた後、です。」
「おまえは気絶してた」
「………いや、それ以外で」
「冗談」
「…………」
 いや、だから冗談に聞こえねえって。

「はっはっは、やっぱお前の困った顔って最っ高に面白れーわ。いじり甲斐があるゥ~。大好きだよ、少年。」
 リヒターさんは楽しそうに両手を広げて言った。
 そんなに僕の困り顔は楽しいか……?
 しかし、僕には別に特殊な趣味はないので、男に「大好き♪」などと言われてもうざったいだけだった。
 あー、やっぱこの人面倒くせえ。

「ま、冗談はさておき。アホな顔して瀕死の重傷を負った情けねえ顔の少年を慈悲深き俺様が拾い上げて背負って帰ったってことだ」
 リヒターさんの話にはものすごい誇張があるように感じた。
 敢えてつっこむようなところではないのでスルーするが。
「しかしお前、何も爆弾を使うことはなかったろ。あんな狭い路地でニトロを爆発させようなんて、よほどのバカか死にたがりじゃないとやらねえぜ。それが成功しようと失敗しようと、手前に当たるのは小学生が考えてもわかることじゃねーか」
「まるで見てたかのように言いますね」
「『見えて』いたんだ」

 そうだった。この人は≪不可視の可視(アンチイビジブル)≫と名をつけられるような男だった。
 かつて世界中を敵に、暴れまわったチーム「砂塵の一群」に雇われていた傭兵。個性の強い「チーム」の中でも抜群の強さを持った実力者。半径30キロメートルまでの範囲を常に把握し、近づく者を近づく前に始末する天下無双の始末屋。当時のことを本人は話したがらないが、リヒター=L=マルクルの噂は僕だって知っている。≪不可視の可視(アンチイビジブル)≫、≪抹殺の使徒(キラ・ザ・キラ)≫、≪闇夜(スクープ)≫、≪虚無の悪魔(ヴァニティーデヴィル)≫など、この人につけられた二つ名は枚挙に暇がない。「その姿を見たものは失明する」「地球を爆発させることができる」等と、言われのない噂も流れているが、さすがにそれほどの力をもつ人間はいないだろう。とはいえ、火のない所に煙は立たぬ。それ相応の実力はあるということだ。

 そんなすごい人がなぜこんなところにいるのかというと、簡単なことである。「砂塵の一群」のリーダーが捕まり、チームが解散してフリーになったところを、僕らのギルドのマスターが拾ったのだそうだ。ちなみに余談だが、「砂塵の一群」のリーダーを捕まえたのはマスターである。

 ・・・・・・リヒターさんとマスターの話を進めると、自分が本当に小さい人間に見えてしまうからもうやめよう。
 あ、朝焼けだ。空をあさぎ色に染める太陽。きれいだなあ。

「・・・・・・どうした?少年」
 リヒターさんの声で僕は現実に引き戻された。
「いや、なんでも」僕はチャンネルを回想モードから対話モードへと切り替える。「ところで、僕はどうやって助かったんですか?とても無事では済まない傷を負ったような・・・」
「ああ、お前、ニトロですっ飛ばされたんだったな。・・・・・・たしか夕べ、俺がお前を連れ帰ったとき、マリアの奴が治療してたんだっけな。よく覚えてないけど」
「夕べ・・・・・・?」

 つまり僕は一晩だけ気絶したのか。
 たいした回復力だった。

「・・・・・・いや、治療って言うとちょっとずれるな。・・・・・・あれだよ、えっと、ピッキング?」
 ・・・・・・傷口をこじ開ける?
「治癒術(ヒーリング)ですね
「そうそれ」
 そうだ、マリアさんってたしかヒーラーだ。
 ていうか、ヒーリングとピッキングって間違えないと思うんだけど。

「それで、そのヒーリングってやつはすごいもんでな、お前の体の傷をたちどころに塞いじまうんだ。あれは見ていて興味深かったね。神秘的、とでも言おうか」
「そうですか・・・・・・・・・・・・そのわりには体の節々が痛いんですけど」
「おいおい、おいおいおいおい。ビーピングは万能治療法じゃないんだぜ」・・・・・・ビーピングって何よ?「ビーピングで治せるのは外傷だけだ。打ち身や筋肉痛は治らないし、流した血液だって戻ることはない。お前は今、極度の貧血状態のはずだ」
「・・・・・・ああ道理で。さっきから頭が重いんですよ」
「そういうことだ」

 リヒターさんはそう話を切って立ち上がり、食料庫を開けて何やらいろいろと持ってきた。
 卵、茄子、豚肉、鶏肉、牛肉、羊肉、馬肉、肉、肉、肉、肉。
「・・・・・・なにやってんすか?」
 スルーしたかったができなかった。僕は思わずつっこんでしまった。

 リヒターさんは構わず話し始める。
「さて、ここにある食品の共通点は?そう、タンパク質だ。さっきも言ったとおり、お前は相当量の血を失っている。このままじゃ最悪、死んでしまう。ではどうするか?そこで、お前にこれら全てを食べてもらうことにした。血の素になるタンパク質が豊富な―――」

「ちょっと待ってください」僕は話を遮った「血が足りないからってタンパク質ばかり摂ればいいってわけじゃないし、それに―――それになすびが入ってるじゃないですか!」
「んあ?別にいいんじゃね?茄子は英語でエッグプラントと言うんだぞ」
「だからってエッグというわけではないでしょうが!」

 ああもうこの人は。本当にあの悪名高いリヒター=L=マルクルなんだろうか。
 このやりとりを楽しんでいるという意味ではたしかに悪だが。

「・・・・・・ところで少年、お前が助かったのはマリアのイーティングが適切だったというのもあるが、もうひとつ理由があるんだぜ」・・・・・・イーティング?何を食べる気だ。「お前の体、爆弾で飛ばされたのに全くやけどの跡がないんだ」
「ああ、それについては言ってませんでしたっけ?僕は生まれつきやけどを負わない体質なんですよ」
「ふーん」
 うげ。
 まるきり信じてない目で見られた。
 その道ばたで行き倒れたハ虫類を見るような目で見るのはやめてくれ。

「まぁいいや。それより少年」
「・・・・・・・・・・・・何でしょう?」
「20万ヘペル、全部俺様がいただいたからな」
 そう言ってリヒターさんはコーヒーを飲み干した。

 逃げ回っていた人に報酬を持ってかれるのはなんだか理不尽だが、20万の使い道はこれからのギルドの運営資金として、(今現在マスターも副マスターも不在なので一応)最高責任者のリヒターさんが預かるという形で受け取っていたので、まあ今回は信じるとしよう。リヒターさんを信じて報われたことは、ないこともなかった気もしないでもないわけではない。

 ちなみに、後日、ダランテ公爵家から郵便が届いた。
 それにはこう書かれていた。
『請求書:リヒター殿  爆弾で壊した塀の修理代 20万ヘペル』
 ―――そんなオチ。