「天狗の中国四方山話」

~中国に関する耳寄りな話~

No.429 ★ BYDが日本で「シール」発売、年末90店へ

2024年06月27日 | 日記

NNA ASIA

2024年6月26日

「新エネルギー車(NEV)」中国最大手の比亜迪(広東省深セン市、BYD)は25日、世界展開を進めるセダン「シール(中国名:海豹)」を同日から日本で販売開始すると発表した。BYDが日本に投入する3車種目の電気自動車(EV)。販売店は今年末までに90店へと増やし、日本での販売を伸ばしていく考えだ。

BYDは、世界展開を進めるセダン「シール」を25日から日本で販売開始すると発表した。日本に投入する3車種目。販売店は年末までに90店へと増やす考えだ=25日、東京都

日本では後輪駆動と四輪駆動の2グレードを投入。価格は後輪駆動が528万円、四輪駆動が605万円だが、日本導入の記念特別価格として、合わせて限定1,000台でそれぞれ495万円と572万円で売り出す。現在審査中の政府の「クリーンエネルギー自動車(CEV)補助金」制度の適用を受ければさらに35万円下がり、後輪駆動は460万円、四輪駆動は537万円になるという。

販促活動の一環として、今月末から東京2カ所と名古屋、大阪、福岡で体験試乗のイベントを実施。福岡以外の会場は既に定員に達しており、手応えを感じているという。

BYDは23年1月に、日本投入の1車種目となるスポーツタイプ多目的車(SUV)の「ATTO3(アットスリー、中国名:元プラス)」を発売。9月には小型車「ドルフィン(中国名:海豚)」を売り出した。日本での受注台数は今年6月20日までの累計で2車種合わせて2,521台。ただ、足元では販売の勢いが落ちているという。

これについて、BYD日本法人のBYDオートジャパンの東福寺厚樹社長は「4月からの補助金減額と、シールの投入が予定より遅れたことが影響した」と説明。ただBYDのテクノロジーを結集したシールは「BYDの潮目を変えるフラッグシップモデル」だと強調し、これを足がかりに下半期(7~12月)は反転攻勢を進めていく考えを示した。

シールの販売台数目標は明らかにしなかったが、「まずは特別価格の対象となる1,000台を売りたい」と意気込んだ。

販売戦略を支えるため、全国の販売網も強化。BYDは現在、日本全国に55の販売店を持つが、今年末までに90店、25年末までには100店体制へと増やす。今後も毎年1車種以上の新型車を投入し、日本の輸入EV市場でトップの地位を確立していく考えだ。

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No.428 ★ 【ルポ】中国で「サイゼリヤ」に行列ができる秘密 節約志向が追い風に、現地限定のメニューも

2024年06月27日 | 日記

東洋経済オンライン (阿生 : ライター / 浦上 早苗 : 経済ジャーナリスト)

2024年6月26日

上海にあるサイゼリヤ店舗のメニュー。日本でもおなじみのミラノ風ドリアもある(写真:阿生撮影)

1杯100円のワインに、300円のミラノ風ドリア。とにかく安くてコスパがいい。ファミリーレストランのサイゼリヤは、子ども連れの家族や、学生など、いつも幅広い世代の人々で店内が賑わっている。

そんなサイゼリヤだが、実は足元では日本国内よりも中国が同社の稼ぎ頭になっていることは、意外と知られていない。

そこで今回は中国現地のサイゼリヤに実際に足を運び、その人気の理由の秘密に迫った。

白と黒を基調にした上海サイゼの看板

川沿いに光ったビル群の夜景で知られる上海の外灘地区。そこから12分ほど地下鉄に揺られると、日本人駐在員が集まる中山公園駅に到着する。この駅の近くのショッピングモールに、サイゼリヤが入っている。

店舗の看板はいつも日本で見かける「赤・白・緑」ではなく、白と黒を基調としたシックな雰囲気。店内もどこか高級感が漂う。

上海のサイゼリヤ外観(写真:阿生撮影)

しかしメニューを開くと、そこは日本のサイゼリヤと変わらない。やっぱり安いのだ。

ミラノ風ドリアは15元(約300円)、ミートソーススパゲッティは14元(約280円)、グリルムール貝は12元(約240円)といった具合だ(マルゲリータやハンバーグはなかった)

上海のサイゼリヤメニュー。日本でもおなじみの料理が並ぶ(写真:阿生撮影)

円安の状況でありながら、日本円で換算してもなお日本のサイゼリヤとほぼ同じ価格帯であることは、異常にも思えるほどだ。

上海で「洋食」を食べようとすると高い

上海のサイゼリヤ、店舗の内観(写真:阿生撮影)

この日筆者(※阿生)と一緒にサイゼリヤに同行した上海在住の日本人Tさんは「上海で洋食を食べようとすると高いですが、サイゼリヤは日本とほぼ同じ値段でかなりリーズナブルなので、月に1回ペースで食べにきています」と話してくれた。

今回上海のサイゼリヤで頼んだのは、ガーリックエスカルゴに、ロゼワイン、ティラミスと、中国本土限定メニューの麻辣(マーラー)スパゲッティに、フルーツカクテルバニラアイスだ。

麻辣スパゲッティ。日本人でも食べやすい辛さだ(写真:阿生撮影)

エスカルゴは19元(約380円)、ロゼのグラスは1杯6元(約120円)と、イタリアンで手軽な一品と一緒にワインをリーズナブルに楽しめる。

麻辣スパゲッティも14元(約280円)と、こちらもお手頃価格。四川料理のような激辛の麻辣ではなく、ピリリとした麻辣風味がきいていて美味しかったが、Tさんは「わざわざサイゼリヤに来たら普通のイタリアンを頼んでしまうかも」という感想だった。

上海のサイゼリヤで隣の家族連れが頼んでいた料理の数々※写真は許可を取って撮影させてもらった(写真:阿生撮影)

中国本土では、398店舗を展開中(2024年4月時点)。景気が停滞気味の中国では、やはりコスパよくイタリアンが食べられるというのはありがたいようで、筆者らが店を出る昼の12時半ごろには店内は満席。店の外にまで行列ができているという盛況ぶりだった。隣の席に座る家族も頼みたい料理を好きなだけ頼んでテーブルはたくさんの料理で溢れかえっていた。

かなりリーズナブルに感じる価格設定

せっかくなので、筆者が住む香港にある香港島側の北角(ノースポイント)のサイゼリヤにも足を運んでみたところ、こちらは店内の装飾も日本とほぼ同じようなつくりになっていた。香港にいながら日本のサイゼリヤにいるような気分にさせてくれるところも(日本人的には)嬉しいポイントだ。

香港サイゼリヤの店内の装飾は日本とあまり変わらない(写真:阿生撮影)

ミラノ風ドリアが30香港ドル(約600円)、マルゲリータも30香港ドル、黒胡椒ハンバーグは35香港ドル(約700円)。中国本土や日本のサイゼリヤと比べると一見高く感じるが、そもそも香港は生野菜や、輸入に頼る乳製品など、なにかと食材費が高い。香港在住者からするとかなりリーズナブルに感じる価格設定だ。

サイゼリヤが上海に中国1号店をオープンしたのは2003年12月。1990年代に中国進出した吉野家、味千ラーメンの成功に加え、2001年12月にWTO(世界貿易機関)に加盟したことで中国市場の潜在力が注目され、日本の外食企業の最初の中国進出ラッシュが起きた時期だ。

2000年代前半はリンガーハット(2002年)、カレーハウスCoCo壱番屋(2004年)、ワタミ(2005年)、ペッパーランチ(同)などが進出したが、中国人消費者の食文化が今ほど多様化していなかったことや、安いローカルフードを提供する現地チェーンの急成長もあって、いずれも思うようには店舗を増やせなかった。

サイゼリヤも例外ではなかった。洋食文化が根付いておらず、知名度もゼロ。苦戦を強いられた同社は、大半のメニューを半額程度に値下げした。

その結果、価格競争力が一気に向上し、新しもの好きの若者がこぞって訪れるようになった。この“英断”が功を奏し、サイゼリヤの中国本土の店舗は2013年8月期末までに150店舗を超え、吉野家、味千に続く成功例となった。

新規出店と並行し、広州に自社工場を設立したり、比較的テナント料の安いエリアに店舗を出すなど、コスト削減の取り組みも進めた。

大学生だった2000年代後半に北京のサイゼリヤに通っていた30代中国人女性は、「首都の北京でも洋食の料理店は少なかったし高かった。高級料理のイメージがあるイタリア料理を、学生のお小遣いで食べられるサイゼリヤに行くのは新鮮な体験だった」と懐かしむ。

景気低迷による節約志向が追い風に

コロナ禍が収束した2023年春以降、中国本土のサイゼリヤは再び上昇気流に乗っている。景気低迷による節約志向を追い風に、圧倒的なコスパの高さが改めて注目されているからだ。

同じ「大衆イタリアン」のセグメントに属するピザハットと比べても、ピザやサラダ、パスタの価格はおおむね3分の1と、値頃感が際立つ。

サイゼリヤの安さの秘密を解説する動画の拡散などを機に、初めて同社が日本企業だと知る人も少なくない。

「敵がいない」と言われる安さの一方、利益はしっかり確保している。サイゼリヤの2024年8月期の中間決算(2023年9月~2024年2月期)で、営業利益は前年同期の9億円から約6.5倍増え59億円に達した。中国本土市場の売上高と店舗数は全体の約25%だが、営業利益は40億7400万円と70%弱を占める。

同社は円安や物価高の逆風を受け、日本ではほとんど利益が出ていないにもかかわらず、値上げを我慢している。

だが、経済成長が長く続いた中国本土では価格転嫁に対する消費者の許容度が大きく、景気悪化が言われるこの1、2年も値上げができている。

ニールセンIQが中国人消費者を対象に2023年7月に実施した調査では「今後、支出全体を厳しく管理する」との回答が43%、「最もお得な価格、より低価格の消費を目指す」との回答が37%に上った。

トリドールやワタミも中国再進出

コロナ禍に中国本土から撤退した丸亀製麺の運営会社であるトリドールホールディングスとワタミはこの春、相次いで再進出した。消費者の節約志向を意識し、トリドールは豚骨ラーメン「ずんどう屋」、ワタミは居酒屋店「三代目鳥メロ」と、グループの中で値頃なブランドを出店した(過去記事:丸亀製麺のトリドール「ラーメン」で中国に再挑戦)。

サイゼリヤは競争が激しい中国でも、デフレの日本で培った低価格と品質のバランスで客を引き付けている。ワタミとトリドールは後に続けるだろうか。

香港のサイゼリヤでは、モバイルオーダーで注文してみた(写真:阿生撮影)

店内を見渡すと、やはり高校生のような若者から家族連れ、年配層まで満遍なくさまざまな客層が訪れており、香港でも幅広い層にリーズナブルにイタリアンを楽しめる場所として認知されているようだった。

さてここまで、中国本土の現地の様子を中心に紹介してきた。今度は戦略面から、人気の秘密を分析してみよう。

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