「天狗の中国四方山話」

~中国に関する耳寄りな話~

No.436 ★ 在日中国人の教育熱に「温度差」が出てきたワケ、脱・学歴主義の考えも 子の出生時から計画立てる人、「普通でいい」人

2024年06月30日 | 日記

東洋経済オンライン
2024/06/08

写真:imtmphoto/Getty Images

現在、日本に住む中国人は約78万8000人(2023年6月、法務省の統計)に上る。本国の中国では6月7日、8日に高考(大学入学統一試験)が行われているが、中国人といえば教育熱心というイメージを持つ読者が多いのではないだろうか。しかし実際は在日歴が長い中国人と、近年来日したばかりの中国人では、子どもの教育についての考え方にかなり温度差があるのだ。具体的な事例をもとに見ていこう。

「通いたい小学校」を決めてから不動産を購入

東京・文京区に住む40代の中国人女性は20年以上前に来日し、都内にある有名私立大学の修士号を持つエリート。夫も中国人で、都内で会社経営をしている。夫婦には一人娘がいて、文京区内の有名小学校に通っている。中国人の間で「3S1K」と密かに頭文字で呼ばれている、彼らが憧れている学校の1つだ。

「娘をこの学校に入学させるため、私は娘が生まれたときからコツコツ計画を立て、数年前に文京区に引っ越してきました。文京区にはいい学校が集中しているので、競争率が激しいと思ったのですが、たまたまいい不動産物件が購入でき、その学校の学区に住むことができたのでよかったです。まだ娘は低学年ですが、SAPIX(学習塾)にも通わせていて、中学受験する予定です。娘は日本生まれ、日本育ちなので日本語はネイティブ。成績もつねに上位です」

彼女は満足げな表情でこう語る。中国では「重点学校」と呼ばれる、いい学校がある学区の不動産は「学区房」と呼ばれ、不動産価格が非常に高い。中国で「学区房」の購入は難しいが、日本ではそこまで競争が厳しくないため、「助かった」と思ったそうだ。

この女性と同様のことを考える中国人や外国人が多いせいか、文京区教育委員会のデータによると、区内の公立小学校20校の外国籍の児童数は、2019年には194人だったものの、2023年には389人と倍増している。

「教育に熱心な在日中国人」のコミュニティーが活発

彼女は夫とは別のビジネスを行っているが、中国に住む中国人と同様、子どもの教育について関心が高い。情報交換のため、在日中国人同士で形成している、教育に関するウィーチャット(中国でよく使われるSNS)のグループに入っている。そこでは、「どの学校の評判がいいか、どの学習塾がいいか」といった情報が日々飛び交っており、女性も朝起きてから夜寝る直前まで、グループ内のやり取りをチェックするという。

SNSの利点で、何かわからないことがあってグループに問いかければ、数分後には誰かが返信を書いてくれるので、とても便利だという。中国国内に住む中国人さながら、娘が学校や塾の宿題をするのにも深夜まで二人三脚で付き添っている。

筆者の知る限り、この女性は教育熱心な在日中国人の典型だ。彼らの多くは1990年代後半~2000年代に来日し、現在30~40代。子どもは小学生から中学生くらいで、まさに受験期にある。

この女性もそうだが、彼らはこの先もずっと日本で生活していくつもりで、子どもに高いレベルの教育を受けさせ、日本の有名大学に進学させたいと願っている。

今、そのもう1つ上の世代の在日中国人(50~60代)の子ども(20~30代)が日本の大学を卒業し、日本の大手企業に就職、活躍しているが、それに続く世代といっていいだろう。一部は日本国籍を取得して日本名を名乗っていることもある。読者の同僚や取引先にも、日本生まれ日本育ち、日本語がネイティブで高学歴な中国人が増えてきているのではないだろうか。

一方で、ここ1~2年に来日した中国人は、必ずしも、これまでの在日中国人と同様の考え方を持っている人ばかりではないようだ。

近年来日した富裕層は「日本の有名校」にこだわらない

昨今、ニュースなどでも話題になっているのが富裕層の日本移住だ。2020年から流行した新型コロナウイルスに対して、中国政府はゼロコロナ政策を実施。ロックダウンなどの厳しい措置や政治リスクを憂慮した富裕層が22年の後半ごろから急速に海外に「潤」(ルン=海外移住、海外逃亡などの意味)し始め、その一部が日本にもやってきているのだ。

彼らは経営管理ビザなどを取得して日本に居を構えており、年齢は30~50代が多い。彼らが従来の在日中国人と大きく異なるのは、日本語が不自由という点だ。2000年代に留学や就職を目的として来日した前述の在日中国人とは異なり、「中国から逃げる」ことが目的のため、もともと日本にはあまり関心がなかったからだ。

こうした富裕層たちは、必ずしも子どもを日本の有名校に進学させたいと考えてはいない。

その理由は、彼ら自身、日本語がほとんどできず、日本事情に疎いということもあるが、それだけではない。22年に来日して1年半になる男性は、2人の子どもを都内のある区立小学校に入学させた。有名校ではなく、自宅の近所にある、ごく普通の学校だ。

一緒に来日した子どもたちも日本語はほとんどできなかったが、小学校が無料で行う日本語の補習授業などを受け、最近ではメキメキと上達し、「飲食店に行くと、子どもが流暢な日本語で料理を注文してくれるので、ホッとしているんです」とうれしそうに話していた。

この男性曰く、「日本移住を決めた理由は中国の政治リスクや財産管理の問題だけでなく、中国の習近平思想や愛国教育を我が子に受けさせたくなかったからです。それに近年は国民の国防意識を高めるためといって、小学校の授業でも軍事訓練まで行われているところもあります。私は子どもには政治の影響を受けさせたくない。政治と関係なく、伸び伸びと育ってほしいと思っています。

勉強はもちろん大事ですが、まずは日本の生活に慣れて、日本語をしっかり勉強すること。その上で本人が中学受験したいと言うのであれば、すればいいと思っています。だから、普通の学校でいいと考えました」。

この男性のように語る富裕層は、筆者が知るかぎり、ほかにも何人もいる。中国では「高考」(ガオカオ)と呼ばれる大学統一入学試験が非常に有名だが、その受験のために中国の子どもは多大な犠牲を払って受験勉強を行う。「人生を懸けた一発勝負」ともいわれるが、そのために親も子も必死になることに嫌気が差して、子どもを高校から海外の学校に進学させる人も増えている。

そのため、日本移住した人の中には、この男性のように「普通の学校でいい」という人や、「中国にいるときにインターナショナルスクールに通わせていたので、その延長で、日本でもインターナショナルスクールに通わせ、大学は欧米へ行かせたい」という考え方の人が増えている。経済的に豊かになり、無理やり勉強させなくても、人生にはさまざまな選択肢があると考えているのだ。

このように、同じ「在日中国人」といっても、さまざまだ。日本では来日時期や学歴などに関係なく、彼らを1つの塊として十把一絡げに見てしまいがちだが、実際は異なる。近年来日した人などを含めて在日中国人社会では多様化が進んでおり、教育熱1つとっても温度差がかなり出てきているのだ。

中島 恵(なかじま・けい)
1967年、山梨県生まれ。北京大学、香港中文大学に留学。新聞記者を経てフリージャーナリスト。中国、香港など主に東アジアの社会事情、ビジネス事情についてネットや書籍などに執筆している。主な著書に『中国人エリートは日本人をこう見る』『中国人の誤解 日本人の誤解』『なぜ中国人は財布を持たないのか』『日本の「中国人」社会』(いずれも日経BPマーケティング)、『「爆買い」後、彼らはどこに向かうのか』(プレジデント社)、『中国人のお金の使い道』(PHP研究所)、『中国人は見ている。』『いま中国人は中国をこう見る』『中国人が日本を買う理由』(いずれも日本経済新聞出版)などがある。

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No.435 ★ 中国、再び世界最大の国際観光支出国に 世界観光業の全面回復に寄与

2024年06月30日 | 日記

36Kr Japan

2024628

国連世界観光機関(UNWTO)が発表した最新統計「ツーリズムバロメーター」によると、2023年の中国人旅行者の海外での消費額は1965億ドル(1ドル=約159円)に上り、米国とドイツを追い越し、中国が再び世界最大の国際観光支出国となった。

23年の国際観光客数は2019年の89%にまで回復した。旺盛な需要と輸送力の増強、中国とアジアのその他主要市場の持続的な回復に支えられ、24年の世界観光業は全面的に回復すると見られる。

中国政府はインバウンド観光に関して、外国人旅行者が直面する主な障壁に焦点を合わせ、ビザ(査証)手続きやモバイル決済、観光地入場チケット予約などの面で一連の措置を打ち出している。

今年3月には中国が「さらなる決済サービスの改善と決済の利便性向上に関する意見」を発表し、高齢者や外国人などの決済サービスに対する多様なニーズを一層満たす方針を明確にした。

多くの外国人旅行者にとって、陝西省西安市臨潼区の秦始皇帝陵博物院を訪れ、秦兵馬俑を見学することが中国旅行で外せないコースとなっている。周萍副院長の紹介によると、同博物院は4月3日に境外(外国と中国香港・マカオ・台湾地区)からの旅行者向けサービスプラットフォームを開設した。39カ国・地域の24種類の言語、29種類の通貨に対応し、境外旅行者がオンラインでチケットを予約することが可能となっている。端午節連休期間(8~10日)の来場者数は延べ12万2千人、うち境外からの旅行者は前年同期の2.5倍に増えた。

多くの都市でモバイル決済の利便性向上に向けた新たな措置が打ち出されている。上海市は外国人を念頭に多用途のプリペイドカード「Shanghai Pass(上海パス)」を導入した。市内の一部文化・観光スポットやデパート、スーパーマーケット、コンビニエンスストアなどで使えるほか、上海を含む全国の330以上の都市の公共交通機関でも使用できる。

 中国国家移民管理局のデータによると、今年第1四半期(1~3月)に中国を訪れた外国人の数は前年同期比4倍強、外国人へのビザ発給数は2.2倍の46万6千、ビザなしで入国した外国人は3.7倍の198万8千人だった。

西北大学観光管理学部の梁学成教授は国際観光について、国際的な交流・往来という機能を備え、民間の往来と交流・相互学習を実現する重要な手段だと説明した。出入境需要が増え続ける中、利便性向上に向けた関連政策は国際観光の回復をさらに促すとの見解を示した。

(新華社北京)

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No.434 ★ 中国での日本人母子刺傷事件は本当に「偶発」か?弱腰日本は格好の ターゲット、反日高揚の危険な周期に 当局は「中国は世界で一番安全な国」と主張

2024年06月29日 | 日記

JBpress (福島 香織:ジャーナリスト)

2024.6.28

中国は監視社会だが…(写真:Zapp2Photo/Shutterstock)

  • 江蘇省蘇州市で6月24日、日本人の母親と男児が中国人男性に切りつけられた。スクールバスを待っていたという。
  • 当局は「偶発事件」と説明するが、2週間前には吉林省吉林市の公園で米国人4人が襲撃されており、外国人排斥の機運が高まっているのではないか。
  • そもそも日本はこうした事件に対して弱腰で狙われやすい。数年おきに反日機運が高まる周期にいま突入しており、警戒が必要だ。(JBpress)

  江蘇省蘇州市で6月24日、スクールバスの停留所で待っている日本人の母親と男児が中国人男に突然切りつけられ負傷した。男はスクールバスに乗り込もうとしたが、バス案内係の中国人女性が体を張って阻止。女性も刺されて意識不明の重体という。

 日本人母子には生命の危険はないという。日本の子供たちを守るために大けがを負った中国人女性の早い回復を祈るばかりだ。

 犯人はすぐ捕まったが、動機はまだ明らかにされていない。容疑者は52歳の蘇州に出稼ぎにきていた現在無職の男。2週間前に、吉林省吉林市の北山公園で米国人4人を含む5人がやはり失業中の55歳の男に突然切りつけられて負傷した。わずか2週間の間に、外国人が被害者となる襲撃事件がかさなり、中国社会に蔓延する排外的感情からくる現代版義和団事件ではないか、という見方も広がった。

 吉林省の事件については私もこのコラムで紹介したが、その時に感じた、次に被害者になるのは日本人ではないかという嫌な予感が的中してしまった。

 外交部報道官の毛寧は、この事件について記者から質問を受けて、「偶発事件」であると強調。日本人が狙われた事件なのか、という質問に対して「世界中どこでも起こっている事件だ」と正面からの回答をさけた。そして「中国は世界で一番外国人にとって安全な国の一つ」と主張した。

 だが、私はこれは、起こるべくして起きた必然的事件だと思う。注意喚起の意味もこめて、改めてその根拠を説明したい。

中国は「世界一安全な国」はある意味正しいが…

 中国が外国人にとって世界で最も安全な国の一つである、という主張はある意味正しい。だがそれは過去の話になりつつある。

 中国は世界有数の監視国家。AI監視カメラは全国津々浦々に配置され、犯罪者の検挙率は格段に上がった。また外国人記者や駐在員の行動、言動は特に緻密に監視されているので、その分、犯罪に巻き込まれにくいともいえる。

江蘇省蘇州市で日本人の母子が切り付けられた。現場と見られるバス停(写真:共同通信社)

 私が北京に駐在していた2000年代の初めは、まだ監視カメラはそんなになかったが、当局の尾行などが普通にあり、おかげで夜道も安心だった。ときに「あなたの安全のために」という理由で、あそこに行くな、ここに近づくなと注意を受けたことも度々あった。

 軍事管制区内の友人宅に行こうとすると、突然携帯電話が鳴って、当局の監視員らしい人が、「君は自分がどこにいるのかわかっているのか」と注意された。だが、そのおかげで、スパイ容疑をかけられて身柄を拘束されることもなかった。

「あなたの安全のため」というのは、半分くらい本音だろう。2008年夏季五輪を控えた当時の中国は国際社会の新たな大国として台頭しはじめていたころであり、国際社会に対する大国の責任を果たし、メンツを守ることに非常なこだわりを持っていた。当時は確かに、外国人の安全は中国人の安全より重視されていたと実感できた。

 だが、中国における「外国人の安全」は国際社会に対するメンツから、やがて外交駆け引きのカードになっていった。

習近平政権で「外国人はスパイ」に

 それがはっきり可視化されたのは、尖閣諸島周辺海域で起きた日本の海上保安庁巡視船と中国漁船が衝突したときだ。中国人船長が逮捕された報復に、日本のゼネコン・フジタ社員がスパイ容疑で拘束された事件が起きた。

 この時、中国のやり方は「人質外交」と非難されたが、船長釈放という目的をかなえることができ「人質外交」は成功体験となった。中国は国内の外国人駐在者らを保護しつつ、外交カード、人質予備軍とみなすようになった。

習近平政権で排外主義は強まった(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 さらに習近平政権になってイデオロギー統制が強化されると、西側の価値観、文化を批判、否定、攻撃することで中国の伝統的価値観、文化を持ち上げるというゆがんだ愛国教育が強化されていく。習近平政権は2014年にあらゆる分野で国家安全を最重視する総体的国家安全保障観を打ち出し、国家安全教育日を制定。幼稚園児や小学生にまで外国人をスパイと疑えと教えるような排外主義的な洗脳教育が導入されていった。

 こうした習近平政権のイデオロギー教育の中で、「小粉紅(ぴんくちゃん)」と呼ばれる民族主義的愛国的若者がネット上で活動するようになっていく。彼らは、文化大革命時代の毛沢東の紅衛兵のように習近平の指示に忠実で、またヒステリックに外国を批判するので、ネット紅衛兵などと呼ばれることもある。

 こうした習近平政権の10年のイデオロギー教育のたまものとして、外国人に敵意をもつ「仇外情緒」の強い中国人民が増えていった。同時に、習近平政権下で、中国社会の中国人の生活環境がどんどん悪化した。

 経済は悪化し、生活物価は上昇し、賃金はカットされ、失業者があふれた。言論統制や行動規制が強化され、贅沢が戒められ、不当に搾取され、社会の底辺に未来に希望が持てず、怒りや不満が常にくすぶる状況が発生した。

 習近平政権は、こうした怒りや不満の矛先を党や政府、習近平自身に向かうことを恐れ、あたかも、今の中国の不幸のすべてが米国や西側社会のせいであるような宣伝をした。

日本人は攻撃ターゲットにうってつけ

 中国経済が悪化するのは米国の制裁のせいであり、米国は中国の大国化を妨害しようとしているのだ、というわけだ。中国の知的な人民はそれを鵜呑みにしているわけではない。だが反論するような政治的リスクを犯すことはできない。

 信じているふりをすることで身を守ろうとするだろう。こうして今の中国の排外主義的情緒は、改革開放以来最高潮となった。それが現代版義和団事件と呼ばれるような事件が起こりうる下地をつくっていた。

 外国人に向けられる敵意の中で、日本に向けられるものはやはりちょっと特殊だ。日中の歴史解釈を利用した反日教育は江沢民時代からすでに強化されていた。反米意識より反日意識の方が、幅広い世代にわたって強烈に植え付けられている。

 少なからぬ中国人が日本人のお人よしさと表裏一体の弱腰ぶりを知っているが、だからこそ、攻撃を受けやすい。中国人はよくケンカするが、相手を選ぶ。自分より強い人間にはあまり歯向かわない。今の中国で一番の強者は中国共産党だ。

 なので、今の中国社会の問題の根源が中国共産党政治にあるとわかっていても、共産党に刃向かう人民はほとんどいない。ごくまれにいるが、たいてい、跡形もなく消されてしまう。その共産党が敵はあちらだ、と指さす方に、まさに因縁をつけて攻撃するにうってつけの日本と日本人がいるのだ。

反日が盛り上がる周期に入った

 反日デモで、日本企業を焼き討ちしても、あまり怒られない。米国なら、報復や制裁という手段をとるようなことでも、日本政府なら遺憾を述べるだけだ。そういう日本の「弱腰」が攻撃を誘導する。

 そもそも日本人自身の中に、自虐史観で中国に対して罪悪感をもつ人たちが一定数いる。中国人から仇恨をぶつけられても、怒るより謝る人がいるから、中国人としては安心して日本人に悪意を向けられるのだ。

 中国人民の悪意が日本に向かうタイミングは数年ごとに周期的にやってくるが、今がまさにその周期に入ってきている。

 今回、事件が起きた蘇州は日系企業が600社近く進出する日本企業集積地の親日都市だ。蘇州市高新区の淮海区は「日本人風情街」と呼ばれる日本料理レストランや居酒屋の並ぶ通りで、観光スポットにもなっている。日本のアニメ好きやコスプレイヤーたちがインスタ映え写真を狙って自撮りにくる。

 そんな親日都市で2022年8月、この日本人風情街で、アニメコスプレの浴衣姿で撮影をしていた中国人女性が警察官から「挑発罪」で身柄拘束される事件があった。この事件はネットで広く議論のテーマになったが、声の大きいネット紅衛兵に言わせれば、中国人のくせに日本の民族衣装をきて屋外を歩き回る奴は売国奴、という。

 親日的中国人の声は小さくなり、政治的安全のために自分の親日趣味を表面に出さないようになる。そして民族主義的愛国者の声がさらに大きくなって、それが世論を代表するかのようなムードになっていく。

日本人襲撃事件はまた起きる

 今回、日本人が襲撃される事件があの親日都市蘇州で起きたことは、多くの人にショックを与えただろう。私は、日本人が狙われる事件は、また起きると思っている。

 今回、過去におきた反日デモ・反日暴動の時の日本人攻撃とはかなり違う。

 中国の経済状況、社会状況の悪さが過去の反日ムーブのときと比べものにならないほど悪い。また抖音(ドウイン)などのSNSの影響力が過去と比較できないほど強い。

 靖国神社を冒涜した中国人インフルエンサーが一夜のうちに数百万イイネを受けたり、広島で日本人サラリマーンを殴って土下座させ逮捕された中国人男が抖音のショート動画ニュースで報じられるや大バズリして「好漢」と英雄扱いされたり、中国人をいじめる日本人がぼこぼこにやっつけられるショートストーリが大拡散されたりしている。

 また過去の反日デモなどに日本人への攻撃は、ある程度、きっかけを当局がつくり誘導していた感があり、最終的にコントロールを失うことはあってもある程度当局の想定内に収めることができた。だが、今回の蘇州の日本人母子襲撃事件は、おそらく中国当局も予想していなかった。

 国内で報道統制を敷いたのは、報道によって当局がコントロールできない形の犯行の連鎖が起こりかねないと心配したのかもしれない。

 もう一つ重要なのは、今の日本の岸田政権に、いざというとき中国と水面下で交渉して、日本人の安全を確保できるようなパイプを持つ政治家がいないことだ。

 吉林市の米国人事件襲撃も、蘇州市の日本人母子襲撃も外国人被害者をまもろうとした中国人が負傷した。排外主義的イデオロギーの蔓延する中でも、外国人のために身を挺してかばってくる中国人もたくさんいることは間違いない。中国人と日本人の間の不信と仇恨を煽動しようというつもりは毛頭ない。

 だが、今の中国の状況は、過去の反日ムードの盛り上がった時期に比しても、とても不確実性が高く危うい。

 日本政府はきちんと危機感と責任をもって、はっきりとこの危うさを在中国日本人にアナウンスすべきだし、なによりも本気の怒りをもって、これまでの反日誘導のイデオロギー教育に対して抗議すべきではないだろうか。

福島 香織(ふくしま・かおり)

ジャーナリスト。大阪大学文学部卒業後産経新聞に入社。上海・復旦大学で語学留学を経て2001年に香港、2002~08年に北京で産経新聞特派員として取材活動に従事。2009年に産経新聞を退社後フリーに。おもに中国の政治経済社会をテーマに取材。主な著書に『なぜ中国は台湾を併合できないのか』(PHP研究所、2023)、『習近平「独裁新時代」崩壊のカウントダウン』(かや書房、2023)など。

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No.433 ★ 日産が中国の工場停止、BYDの猛攻に日系車陥落 世界最大の中国市場で日系の「リストラドミノ」

2024年06月29日 | 日記

東洋経済オンライン (秦 卓弥 : 東洋経済 記者) 著

2024年6月28日

4月の北京モーターショーで日産の内田誠社長は「中国市場向けに最適化した戦略に取り組む」と語った(写真:日産自動車)

 

中国市場で劣勢に立つ日本車の「合理化ドミノ」が、ついに日産自動車にも押し寄せた。

日産の現地合弁企業が6月、中国江蘇州にある常州工場の生産を停止した。同工場の年間生産能力は13万台。中国全体の生産能力160万台のうち約8%に相当する。

中国市場ではトヨタ自動車やホンダを抑えて日系ブランドのトップだったこともある日産。だが、現地での販売台数はピークだった2018年の156万台から、2023年には79万台まで大きく落としている。

中国市場での苦戦は日産だけではない。中国汽車工業協会によると、2020年に23%あった日本車のシェアは、2024年1~5月に12%へ低下。一方、中国メーカーのシェアは38%から61%に上昇している。

政府の後押しを受ける現地資本の新エネルギー車(NEV、電気自動車〈EV〉やプラグインハイブリッド車〈PHV〉などの総称)が価格攻勢を強める中、日系を含む外資系が得意としてきたガソリン車の販売が急減している構図だ。

三菱自は撤退、トヨタやホンダは人員削減

2023年には、三菱自動車工業が中国市場の生産・販売からの撤退を表明、トヨタやホンダは合弁会社で一部社員について前倒しでの契約終了を行った。今年に入ってもホンダが、合弁会社での希望退職を実施。約1700人の応募があったことが明らかになった。日産はこれまで目立ったリストラ策を打ち出していなかったが、生産能力の削減に踏み切った。

常州工場は、日産と中国国営の東風汽車集団の合弁企業・東風日産が、2020年11月に稼働を開始。主にSUV(スポーツ用多目的車)の「逍客(キャシュカイ)」を生産する最新鋭工場として設立された。中国市場での需要拡大を取り込む狙いだった。

だが、コロナ禍や中国市場での急速なEVシフトを受けて、2023年の日産の中国での販売台数は79万台まで急落。対して中国での生産能力は160万台もあり、稼働率の低迷が深刻化していた。

常州工場は日産が中国に展開する8つの生産拠点の中で最も小さく、工場の従業員は350人程度。最新鋭工場ではあるものの小規模であることが「合理化の決め手となったのでは」とみる業界関係者もいる。

今後、キャシュカイの生産は、大規模な生産能力を持つ大連工場が受け持つとみられる。

日産は中国市場での挽回策を打ってはいる。

常州工場の生産停止が明らかになる直前、東風日産は2003年からの累計販売台数が1600万台を突破したことを発表。今後3カ年にわたる「新奮闘100」の行動計画を策定した。

今年3月からは、北米で主力のSUV「パスファインダー」を中国向けに展開。このほか2026年度までに日産ブランドでNEV5車種の新型車を投入する。こうした施策で3年後に20万台増の100万台回復を目指す。

今年1~5月の累計販売台数は前年同期比1%減。ここ数年、年2桁減が続いてきたことを思えば、ようやく底が見えてきた。ただし、これも「値下げによる効果が大きい」(みずほ銀行上席主任研究員の湯進氏)。実態はむしろ厳しさを増している可能性がある。

BYDの攻勢で顧客を奪われる

日産の中国事業は、販売台数の約半数を小型セダン「軒逸(シルフィ)」が占める一本足打法。シルフィは長年、中国の乗用車市場でトップを守ってきたベストセラーカーでもあった。そのシルフィの市場を狙って、2023年に現地EV最大手のBYD(比亜迪)がPHVの小型セダン「秦PLUS」の価格を下げてきたのだ。

日産は多くの顧客を奪われ、シルフィは秦PLUSに販売台数で抜かれた。競合に対抗するためか、シルフィの小売価格は少し前の10万元(約220万円)から、ディーラーによって足元は7万元(約150万円)に値下げされている。

湯氏は、「日産の生産体制はまだ過剰である可能性が高い」とも指摘する。例えば、高級車ブランド「インフィニティ」は、年間販売台数が2017年の4.8万台から、2023年は6691台に激減。2024年は月に200台程度しか売れていない。

2014年からインフィニティを生産する襄陽工場(湖北省)は、インフィニティだけで年6万台以上の生産能力を持つとみられる。

BYDの王伝福会長は、今年3月の投資家向け決算説明会で、「(日系を含む)外資系ブランドのシェアは現在の4割から、今後3~5年で1割に低下する」という予測を語っている。

販売減少と価格競争の激化という2つの難題に直面しているのは日系ブランドに共通している。日産にとっても、日系合弁にとっても、中国での生産能力適正化は始まったばかりだ。

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No.432 ★ 中国のEV生産、今年1千万台突破=識者

2024年06月29日 | 日記

NNA ASIA

2024年6月28日

中国科学技術協会の万鋼主席(元中国人民政治協商会議全国委員会副主席)は26日、遼寧省大連市で開催されている夏季ダボス会議で、中国の今年の電気自動車(EV)生産台数が1,000万台を突破するとの見方を示した。前年から少なくとも49%増える計算。EVの発展には国が長期的な目標を示し、科学研究とイノベーションで先頭に立つ必要があり、長期的な支援が欠かせないと強調した。ネットメディアの澎湃新聞が伝えた。

中国自動車工業協会によると、EVの2023年の生産台数は前年比22.6%増の670万4,000台。EVとプラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)を合わせた「新エネルギー車(NEV)」の生産は35.8%増の958万7,000台だった。

万氏は、「EV市場の競争は常に健全であるべきで、目標は顧客のさまざまなニーズを満たすことにある」と述べ、メーカーはシェアを奪い合うのではなく、品質をより重視すべきだと強調した。自動車各社が低価格ではなく高品質な発展に競争を集中すれば、EVの発展はより高い段階に入る可能性があると呼びかけた。

欧州連合(EU)と米国の中国製EVに対する追加の輸入関税については、「海外市場が中国のEVに驚き、パニックになっているのは貿易と投資がまだ統合されていないためだ」と指摘。中国企業は投資を通じて現地の産業チェーンに参入し、グローバル化を進めることができるとの見方を示した。

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