「天狗の中国四方山話」

~中国に関する耳寄りな話~

No.386 ★ 中国で“習近平政権”から脱出する学生が増えていた…大学受験に起きた「衝撃の変化」

2024年06月08日 | 日記

現代ビジネス

2024年6月7日

 今年も中国の「高考(ガオカオ=大学入学統一試験)」の季節がやってきた。全国各地で6月7日、8日(一部地域は9日まで)に実施される。「人生をかけた一発勝負」と呼ばれ、試験勉強の過酷さが日本でも知られており、今年は昨年より約51万人多い、過去最多の約1342万人が受験する。

  今年(2024年)の受験者数を省別でみると、最多は河南省で約136万人、続いて山東省(約100万人)、河北省(約88万人)、四川省 (約83万人)の順となっている。河南省が「激戦省」なのは例年有名で、毎年「河南省に生まれた受験生は地獄」などといわれている。

 逆に受験者数が最も少ないのはチベット自治区で、約3万9000人。ほかに、上海市は約5万8000人、北京市は約6万8000人、天津市は約7万4000人などとなっている。  

前編『じつはいま中国で“仮面浪人生”が増えていた…「受験戦争」に格差が広がる衝撃の現状』で見たように、ここ数年の傾向を見てみると、いくつか特筆すべき点がある。その一つは「復読生」と呼ばれる再受験生が増えていることだ。

少しでも学歴を上げる必要がある

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 今年の復読生は約413万人で全体の3分の1近くを占める。日本の浪人生は中国では一般的ではなく、いったん、希望ではない大学に入学し、再受験する人が多い。現在、大学の合格率は70%を超えており、大学を選ばなければ、どこかの大学に入学すること自体は可能になった。

 しかし、中国国家統計局のデータで若者(16~24歳)の失業率は14.7%(24年4月)と高く、就職難が続いている。そのため、少しでも自身の学歴を上げたいという学生が多いことが背景にある。

 また、それと関連して、大学院に進学する学生も増えている。有名大学卒というだけでは就職が有利にならないからだ。23年の教育省(日本の文科省)の発表では、大学院受験者は約400万人で、合格者は約130万人。  修士課程、博士課程の両方ともに前年より伸びていた。中国の保護者の中には、最初から子どもが大学だけでなく、大学院まで進学することを想定している人も多い。

大都市では海外に進学する受験者が増加

 もう一つ、ここ数年の傾向だが、大都市の受験者数は、今年は昨年より増えてはいるものの、他省と比較して伸び率はそれほど高くない。その背景について、北京市で高校教師として働く知人の男性は次のように説明する。  

「北京市内の有名高校の多くに国際部(高校の国際部門)があります。そこは、同じ高校の敷地内にあり、分校のような別組織ですが、最初から海外の大学に進学することを前提としており、そこの学生は、中国の大学はほとんど受験しません。また、高校の一学年、たとえば、10クラスあるとしたら、そのうちの2~3クラスが国際班(国際クラス)という高校も多い。

 国際班に入ったら、欧米の高校を目指す生徒がほとんどです。必死になって勉強し、高考を勝ち抜いて国内の大学に入るより、欧米の一流の大学に入るほうが、将来の選択肢が多い、希少価値がある、国内の熾烈な競争に巻き込まれないで済む、というのが理由です」  上海市なども同様で、北京市、上海市などでは、保護者が子どもに「厳しすぎる高考を受験させたくない。英語も身に着けさせたい」との理由から、小学校からインターナショナルに通わせるという選択も増えている。

地方都市の学生にとって、受験は負担が大きい

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 そこには、『じつはいま「日本に移住を望む中国人」が激増している…富裕層がこぞって日本を絶賛するワケ』に書いたように、習近平政権下の思想教育(政治教育)を我が子に受けさせたくないという別の理由もある。

 一方、内陸部の地方都市では、受験者が大幅に増えており、それが全体の受験者数の伸びにも影響している。地方都市も経済的に豊かになり、進学率が上がっていることが理由だ。地方都市から北京市や上海市の大学に合格することは、北京市や上海市の学生が同じ市内の大学に合格することよりも難しい。

 さらに、地元を離れ、大都市の大学に進学すれば、保護者の経済的な負担も大きい。 中国の大学は全国ほとんどの大学が全寮制を取っており、住居は安く済むが、都市での生活は地方よりお金がかかる。

 だが、国際部や国際班の数がまだそれほど多くなく、海外留学のハードルが高い地方都市の学生にとって、高考が「人生をかける一発勝負」「人生の突破口」であることは変わりないのだ。今年も一年に一度きり、高考の熱い戦いがまもなく始まろうとしている。

解説】中島恵

今日から中国各地で「高考(ガオカオ)」が始まります。受験生の保護者だけでなく、多くの人々が見守っている一大行事です。10年にわたる文革の終了後、高考が再開された70年代の合格率は10%以下、80年代も20%台で非常に狭き門でしたが、現在の合格率は90%を超えています。

しかし、相変わらず、トップ校への合格は非常に難しいものとなっています。 現在は多様化が進み、海外留学組も多く、高考だけしか選択肢がない時代ではなくなりました。しかし、国内では「大学は出たけれど」理想的な就職に結びつかず、多くの若者が人生に悩み、もがき苦しんでいます。

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No.385 ★ 台湾・鴻海のAI集中で子会社シャープの運命激変 液晶パネル工場を  データセンターに転換の必然

2024年06月08日 | 日記

東洋経済オンライン (山田 周平 : 桜美林大学大学院特任教授)

2024年6月7日

5月31日に株主総会を終え記者団の取材に応じる鴻海精密工業の劉揚偉董事長(会長)。就任後の5年で鴻海の経営を大きく変えた(写真:筆者撮影)

台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業が就任から5年が経過した劉揚偉董事長(会長)のもと、人工知能(AI)を軸とした収益構造の改革を加速している。世界最大手である電子機器の受託製造サービス(EMS)で生成AI向けサーバーの受注・供給を拡大するほか、AIを活用して電気自動車(EV)やロボットの付加価値も上げる戦略だ。

大型液晶パネルで巨額の赤字を計上し、生産撤退を決めた子会社シャープもこの戦略に沿って再建を目指すもようだ。

「AIサーバーの売り上げが今年は4割以上増える見通しだ。2025年には売上高1兆台湾ドル(約4兆8000億円)超のビジネスに育つだろう」。劉氏は5月31日、台湾・新北市の鴻海本社で開いた株主総会でこうぶち上げた。冒頭の40分間を使って10種類の経営テーマを株主に説明したが、AIサーバーにそのうち12分間を割く力の入れようだった。

鴻海は前董事長の郭台銘(テリー・ゴウ)氏が1974年にテレビ部品メーカーとして創業し、パソコンや一般的なサーバーのEMSへと事業を拡大した。近年はアメリカのアップルの「iPhone」の約6割を受託製造するスマートフォンが売上高で2兆5000億台湾ドル(約12兆円)規模の主力製品となっている。

しかし、スマホ市場は成長が鈍化しており、新たな製品領域の開拓が課題となっていた。

エヌビディアとの蜜月を強調

「皆さんも私が昨晩、ジェンスン・フアン氏の宴会に参加したニュースを見たでしょう」。劉氏は株主に対し、台湾滞在中だったアメリカ半導体大手エヌビディアのフアン最高経営責任者(CEO)との蜜月ぶりも訴えた。鴻海は3月、エヌビディアがアメリカで開いた開発者会議に最新のAIサーバーを出展していたが、総会でも会場の近くに実機を展示していた。

台湾のIT(情報技術)製造業は現在、「AI特需」に沸いている。半導体最大手の台湾積体電路製造(TSMC)がエヌビディアなどのAI向け半導体のチップ製造を一手に受託していることは有名だが、実はAIサーバーにも恩恵が来ている。サーバーメーカーは中国などにも存在するものの、特に台湾EMSに発注が集中しているのだ。理由は大きく2つある。

1つは生成AIの学習・推論に特化したAIサーバーが強力な画像処理半導体(GPU)や高速メモリーを搭載していることだ。データ保管やネットワーク管理にも使う一般のサーバーに比べて消費電力が多いうえ、発熱量も大きい。台湾にはサーバーの電源管理や冷却に使う周辺機器の優秀なサプライヤーがそろっている。

2025年には売上高1兆台湾ドル(約4兆8000億円)超のビジネスに育つという鴻海のAIサーバー(写真:筆者撮影)

もう1つは米中ハイテク摩擦の影響だ。エヌビディアのAI半導体はアメリカ政府による対中輸出の規制対象となっている。AIサーバーの発注者である「GAFA」などアメリカIT大手が情報セキュリティーの観点から中国以外での製造を望む例も増えている。EMS最大手の鴻海は現在、これらの追い風をフルに享受できる位置にいる。

劉氏はこの日の総会で、別の新規事業であるEVや工業用ロボットの受託製造の運営状況も説明した。これらのハードウエアもAI化で付加価値を高め、受注拡大を目指す方針を強調していた。鴻海は従来、パソコンやスマホなど汎用ハードウエアを大量に受託製造するビジネスモデルで成長してきたが、AIを軸に収益力を向上させる姿勢を鮮明にしている。

「リリーフ経営者」が化けた

鴻海で半導体事業の責任者などを務めた劉氏は2019年6月、「3+3」と呼ぶ経営戦略を掲げて董事長に就任した。「EV」「ロボット」「デジタルヘルス」という3つの成長産業を「AI」「半導体」「次世代通信」の3つの新技術で開拓するという意味だ。

ただ、劉氏は当時、翌年の台湾総統選挙への出馬を目指して退任したカリスマ経営者である郭氏の「単なるリリーフ」という印象が強かった。郭氏が院政を敷くことや、総統選の行方次第では短期間で董事長に復帰する可能性が噂され、劉氏の経営手腕への期待が大きかったとは言いにくい。

しかし5年を経て、劉氏の改革は一定の成果を上げている。総会で承認した2023年12月期決算は売上高が前の期比7%減の6兆1622億台湾ドル(約29兆5800億円)で、純利益は1420億台湾ドル(約6800億円)と微増だった。新型コロナウイルス禍に伴う特需の反動が響いた。

ただし、収益力を示す1株当たり純利益(EPS)は10.25台湾ドル(約49.2円)に増え、2008年12月期以降で最も高くなった。

鴻海の株価はAI特需への期待で3カ月前から約7割も上昇(5月31日終値は172台湾ドル=約825.6円)しており、総会では株主から劉氏の手腕を評価する声が相次いだ。一方で、2016年に買収したシャープに関する質問もあった。劉氏は「6月に開く株主総会で発足するシャープの新たな経営陣に説明してもらいたい」と詳細を避けた。

ただ、劉氏は5月下旬発売の台湾の経済誌『商業周刊』のインタビューで、シャープ再建について赤裸々に述べている。シャープの業績は一時回復したものの、「鴻海はメーカー(製造に特化したEMS)であり、製造業のコストダウン文化で(シャープという)ブランド会社を経営してしまった。これは間違いだった」と反省を明言している。

シャープの不振が改めて鮮明になった2023年7月以降、合計で8回来日し、毎回1週間ほど滞在して300人以上の社員と対話したことも語った。こんな過程を経て、液晶子会社の堺ディスプレイプロダクト(SDP、堺市)の工場をAIデータセンターに転用し、シャープ本体は家電などブランド事業が中心の資産規模の小さな会社にする方針を固めたという。

「軍隊式」の経営手法と決別

鴻海はEVなどの新規事業もAIの活用によって加速させる構えだ(写真:筆者撮影)

劉氏はインタビューで「最も変えたいのは鴻海の力任せ(中国語で鉄腕的)の管理文化だ」とも話している。名指しは避けているが、軍隊式といわれた郭氏の経営手法を否定する発言だ。

郭氏は依然として鴻海に12.56%出資する筆頭株主だが、2023年9月に董事(取締役)を辞任している。少なくとも今回の総会では、郭氏の影響力はまったく感じられなかった。

日本の産業界ではシャープについて、郭氏が剛腕を発揮して官民ファンドの産業革新機構との争奪戦を制し、鴻海傘下に収めた会社との印象が根強い。日本の総合電機メーカーという業態や液晶パネル産業の衰退という視点で語る向きも多い。

しかし、劉氏が率いる鴻海はすでにAIやEVなど郭氏の時代とは違う事業でシャープを活用する姿を描いている。実際にシャープは3日、KDDIなどと共同で、SDPの工場をAIデータセンターに転用する計画を発表した。日本側は鴻海が8年前とは違う行動様式の会社になったことを理解したうえで、今回のシャープ再建の行方を見守る必要がありそうだ。

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No384 ★ 台湾 イノベックス、日本勢も協業先など求め出展

2024年06月08日 | 日記

NNA ASIA

2024年6月7日

ユニキャストは、イノベックスでアバターを介する遠隔接客のウェブサービスなどを紹介した=5日、台北(NNA撮影)

台北市南港区の南港展覧館で7日まで開かれているスタートアップ関連のイベント「イノベックス」に、日本からはIT企業や産業支援機関などが出展し、台湾内外の企業に協業などを呼びかけている。

ロボットに組み込むアプリケーションの開発などを手がけるユニキャスト(茨城県日立市)は、アバターをデジタルデバイス上に映し、遠隔で接客サービスを行うことができるウェブサービス「KSIN(けしん)」を来場者にアピールしている。

ユニキャストのブースを訪れていた米国でIT関連企業を経営するインド人起業家は、ユニキャストが提供するサービスは、銀行やレストランなどの業界で労働力を生み出すことができると指摘。「米国やインドのIT関連企業に紹介するつもりだ」と話した。

沖縄県の経済振興に取り組む産業支援機関、沖縄ITイノベーション戦略センター(那覇市)は沖縄県に拠点を持つ企業の協業先や同県に進出する企業を探すために参加した。

同センターの担当者は、台湾企業には台湾と沖縄県は距離が近いこと、県民の平均年齢が低いことなどがPRできるといい、開幕日の4日にはおよそ400人がブースを訪れたと説明した。

イノベックスは、台湾最大のIT見本市「台北国際電脳展(コンピューテックス台北)」と同時開催。「人工知能(AI)」や「半導体の応用」などをテーマに、台湾内外の約30カ国・地域からおよそ400社が出展。製品やサービスを紹介している。

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