「天狗の中国四方山話」

~中国に関する耳寄りな話~

No.461 ★ 中国不況の余波が「地球の裏側」まで…世界経済に「大ショック」を もたらす「銅価格」のヤバい現状

2024年07月09日 | 日記

現代ビジネス (真壁 昭夫:多摩大学特別招聘教授)

2024年7月8日

鉱物価格は中国の景気に相関

photo by gettyimages

このところ、商品市況で銅やアルミなどの鉱物の価格が不安定だ。 6月、銅、鉄鉱石、ニッケルなどの価格は前月末の水準を下回った。その背景に、中国経済の低迷で世界的な需要が盛り上がらないとの思惑があるようだ。

リーマンショック後、中国がインフラ投資やマンション建設のため“爆買い”し価格が急上昇したのだが、足元ではまさにその逆のことが起きている。 世界における主要資源の供給はかなり中国に依存しているため、主要資源の市況は中国の景気動向に影響されやすい。5月中旬まで、銅などの価格は中国の経済対策の期待感から持ち直していた。 しかし、中国の景気低迷で、期待されたほど中国の金属需要は回復しきっていない。中国でEVなどの生産能力が急増し、車載用バッテリーの需要が踊り場を迎えたとの見方もある。

中国が世界経済の足を引っ張る

長めの目線で考えると、世界的な脱炭素の流れで、銅やニッケルなどの需要は増加すると予想されるものの、短期的には最大の需要国である中国経済の先行きが最大の不透明要因になっている。 世界最大の銅生産国であるチリの通貨(チリ・ペソ)が不安定な展開になるなど、その影響は小さくない。中国が世界経済の足を引っ張る構図が続きそうだ。

2008年9月15日、リーマンショックが発生し、世界的に需要が瞬間蒸発し経済成長率は急速に低下した。その状況下、世界経済の下支えの役割を果たしたのが、中国の4兆元(当時の為替レートで57兆円程度)の経済対策だった。 対策の発動で、中国は銅などの金属資源を世界から“爆買い”し、世界経済の一段の落ち込みを救った。 当時、中国政府は内需を喚起するために大規模な公共事業を打った。鉄道や道路の建設は増えた。それと同時に実施されたのが、家電や自動車の販売新興策である。

オーストラリアと中国の意外な関係

地方政府は大手の不動産デベロッパーに優先的に土地を供与して歳入を確保し、マンション建設など不動産開発を行った。電線などの需要が急増し、銅、鉄鉱石、アルミ、亜鉛、ニッケルなどを中国は大量に消費した。

 世界の銅消費量に占めるシェアの推移を確認すると、中国の需要の大きさが確認できる。2007年、中国の銅消費量シェアは25%程度だったとの推計がある。 それがリーマンショック後、中国のシェアは急上昇し、現在銅の消費の6割は中国とみられる。ニッケルやアルミも6割程度を中国が占めているようだ。

 世界の海上貿易で取引される鉄鉱石の70%近くを中国が消費しているとされる。オーストラリアは鉄鉱石の主要生産国だが、その80%程度が中国向けだ。2019年まで28年続けてオーストラリアのGDPがプラス成長を遂げたのは、中国による鉄鉱石の旺盛な需要に支えられた部分が大きいのだろう。

中国の需要が大きいため、銅やアルミなどの市況は中国の景気動向に影響を受けやすい。2024年初以降、5月中旬まで銅などの価格は上向いた。 また、中国政府は不動産市況の悪化を食い止めるため、優先的に建設を支援する案件をリストアップした。そうした政策は、金属資源需要の回復期待を支えていた。

地球の裏側でも…

ところが、3月に入ると、中国政府と銅製錬大手19社は減産の実施を発表した。過剰な生産能力の蓄積から、減産実施の工場は赤字に陥ったようだ。リーマンショック後の生産能力の拡大に、需要が追い付かなかったとみられる。 国家統計局が発表した5月の製造業購買担当者景況感指数(PMI)は、景気の境目である50を下回る49.5に下落した。そのあたりから、世界的に銅価格は調整局面に入った。

 現在、地方政府の支援策にもかかわらず、住宅価格も下落傾向にある。今後、「銅やアルミなどの需要は高まりづらい」との警戒感は高まることも懸念される。 わが国の大手鉱山開発企業によると、2024年、2025年と銅の供給は需要を上回るようだ。脱炭素を背景に需要増加の期待がある、ニッケルに関しても供給の超過が続くとの予想はある。

南米では、銅生産シェアで世界トップのチリの景気不透明感が高まった。6月、中銀は8会合連続の利下げを実施した。地球の反対側にまで、中国経済の先行き不透明さが影響している。

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