「天狗の中国四方山話」

~中国に関する耳寄りな話~

No.316 ★ 中国EV市場、「新型車を赤字販売」の苛酷な実態 シャオミの攻勢に、ファーウェイが対抗値下げ

2024年05月10日 | 日記

東洋経済オンライン (財新 Biz&Tech)

2024年5月8日

中国のEV市場では、赤字販売が当たり前の過当競争が常態化している。写真はファーウェイと奇瑞汽車が共同開発した「智界S7」(ファーウェイのウェブサイトより)

中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の自動車関連事業部門は4月11日、国有自動車メーカーの奇瑞汽車と共同開発した高級EV(電気自動車)セダン「智界S7」の“2回目”の発表会を開催した。

智界S7はファーウェイと奇瑞汽車の協業による第1号モデルで、2023年11月にデビューした。ところが、量産立ち上げのトラブルなどから予約購入した顧客への納車が遅延。その間に中国EV市場の価格競争がエスカレートし、強力な競合車種も登場したため、ファーウェイは改めて(仕切り直しの)発表会を開くことにした。

購入済みのオーナーに補償金

2回目の発表会の目玉は、ずばり価格の見直しだ。具体的には、(レーザー光を用いた3次元センサーの)LiDAR(ライダー)を搭載する3つのグレードのメーカー希望価格を一律2万元(約42万円)引き下げ、26万9800元(約568万円)からに設定した。

また、LiDARを搭載しないベースグレードは価格を24万9800元(約526万円)からに据え置いたうえで、車載電池をアップグレード。最大航続距離を以前の550キロメートルから705キロメートルに延長した。

それだけではない。ベースグレード以外の智界S7をすでに購入したオーナーに対して、ファーウェイは1台当たり1万3000元(約27万円)相当の補償金を支払うことも明らかにした。

「わが社の高度なスマートドライビング技術を搭載したEVを30万元(約631万円)以下で販売したら、それらは全部赤字だ。今の自動車市場の過当競争は尋常ではない」

ファーウェイの端末事業部門のCEO(最高経営責任者)で自動車関連部門のトップを兼務する余承東氏は発表会でそう述べ、智界S7を赤字販売せざるをえない市場環境に対する複雑な心情を吐露した。

ファーウェイにとって大きな誤算だったのは、中国のスマートフォン大手の小米(シャオミ)がEV参入の第1号モデル「SU7」を3月28日に発売し、自動車業界を震撼させる価格性能比を打ち出したことだ。

EVに新規参入したシャオミの「SU7」は、もともと激しかった価格競争をさらにエスカレートさせた(写真は同社ウェブサイトより)

SU7のメーカー希望価格は、LiDARを搭載しないベースグレードが21万5900元(約454万円)から、LiDARを搭載する中間グレードが24万5900元(約518万円)から、同じく最上級グレードが29万9900元(約631万円)からとなっている。

「販売台数を稼ぐため赤字販売を決めた」。シャオミの創業者で董事長(会長に相当)の雷軍氏は、それが損失覚悟の戦略的値付けであることを認めた。

シャオミの攻勢を受け、競合メーカーは続々と対抗値下げに踏み切った。例えば国有自動車大手の上海汽車集団傘下の智己汽車は、4月8日に新型EVセダン「L6」を発表。その予約販売価格を、LiDARを搭載しながら23万元(約484万円)からに設定した。

量産トラブルで商機逃す

ファーウェイが奇瑞汽車と共同開発した智界S7も、2023年11月の最初の発表時には競合車種に比べて高い価格性能比を売り物にしていた。

ところが量産の立ち上げに手間取り、せっかくの商機を逃してしまった。財新記者が入手したデータによれば、2023年12月の智界S7の納車台数はわずか784台。その後も納車遅延が続く中、シャオミのSU7が登場したことにより、智界S7は値下げを余儀なくされた格好だ。

内情に詳しい関係者によれば、智界S7の量産がスムーズに立ち上がらなかった背景には複数の要因があった。

そのうちの1つは、プロジェクトの推進を急ぐファーウェイの要求が厳しすぎ、一部の部品の供給が(量産に)間に合わなかったことだ。供給不足の部品のなかには、ファーウェイ製のものも含まれていたという。

(財新記者:張而弛)
※原文の配信は4月11日

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No,315 ★ 中国 製造業の海外直接投資、23年は19年水準回復

2024年05月10日 | 日記

NNA ASIA

2024年5月9日

大手国際会計事務所のKPMGによると、中国製造業による2023年の海外直接投資は201億3,000万米ドル(約3兆1,200億円)だった。新型コロナウイルス流行前の19年の水準を回復した。一方、合併・買収(M&A)向けの投資は回復途上にある。

直接投資は21年以降右肩上がりで推移。23年は前年比で少なくとも50億米ドル増えた。自動車関連や機械設備、電子・電器、インフラ建設が全体額を押し上げた。

中国製造業企業による海外でのM&A投資(金額を公開した案件の合計)は23年に約42億米ドルとなった。M&A投資は18年の約275億米ドルをピークに、以降は100億米ドルを下回る水準が続いている。

中国製造業企業が23年に設立した海外拠点の内訳を見ると、販売・サービス拠点が140社を超え最多だった。製造拠点は約90社、研究開発(R&D)拠点は約50社、物流拠点は約20社だった。

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No.314 ★ マクドナルドが中国事業加速、米企業の苦戦続く中 18億ドルを投じて中国事業への出資比率を再び高め、店舗数をほぼ倍増させる計画

2024年05月10日 | 日記

DIAMOND online (The Wall Street Journal)

2024年5月8日

Photo:Future Publishing/gettyimages

【香港】中国では米国の消費者ブランドの一部が消費需要の低迷やナショナリズム的な購買傾向によって苦戦を強いられている。だが、米ファストフード大手マクドナルドは中国事業に重心を傾けつつある。

 マクドナルドは中国での店舗数を2028年末までに現在の2倍近い1万店余りに増やす計画だ。同社は最近、中国事業の株式の一部を18億ドル(約2844億円)で買い戻し、同事業への出資比率を高めると発表した。

マクドナルドに立ちはだかるハードルの一つは、急成長している中国のライバル企業タスティン(塔斯汀)だ。同社は牛肉に加え、北京ダック、麻婆豆腐、魚風味の豚肉を使った低価格のハンバーガーで現地の食欲に応えている。赤を基調とした店内には「中国産」や「中国人の胃袋は中国のハンバーガーが好き」といったスローガンが掲げられている。

 シカゴを本拠とするマクドナルドも負けじと、チキンとメンマを包んだラップサンドや、コカ・コーラ味の手羽先、スパムのランチョンミートと砕いたオレオクッキーを挟んだサンドなどの新商品を提供している。

 マクドナルドは若い客層にアピールする風変わりなプロモーションを展開し、それがソーシャルメディアで拡散されている。その一つは、ネコが遊べるように作られた「キャットボックス」に入ったコンボミールだ。また、一部の店舗にテーブル付きのエクササイズバイクを設置し、客がペダルをこいで携帯電話をワイヤレス充電しながら食事をとれるようにした。

 マクドナルドは昨年11月、中国は現在、同社にとって最も急成長している市場であると発表した。店舗数では2位で、5500店を超えているという。マクドナルドのイアン・ボーデンCFO(最高財務責任者)は2月の決算説明会で、昨年の中国での新規出店数は1000店を超え、自社記録を更新したと述べた。

 マクドナルドの展開について、タスティンはコメント要請に応じなかった。

 世界の2大経済大国間の地政学的緊張が高まる中、米国の食品・飲料企業の中国での業績は、他の消費者向け企業に比べて良好だ。

 米アップルや米電気自動車(EV)大手テスラの中国での販売は最近落ち込んでおり、米化粧品大手エスティローダーは、価格に敏感な消費者に合わせた商品展開をする競合他社からの圧力に直面している。中国では若年層の失業率が2桁で推移し、景気回復は一様でないため、個人消費が低迷している。

 マクドナルドのもう一つの競合相手である中国のファストフードチェーン運営大手ヤム・チャイナ・ホールディングスは、同国で「KFC」、「ピザハット」、「タコベル」の店舗を1万4000店余り運営している。米ケンタッキー州ルイビルに本社を置くヤム・ブランズは2016年に中国部門を分離し、独立企業として上場させた。競争激化と食品の安全性への懸念が業績に響いたためだ。ヤム・ブランズはヤム・チャイナの売上高の一定割合を徴収している。

 米スターバックスも、多少苦戦しているとはいえ、中国で大きな計画を持っている。同社は2022年、中国でさらに数千店の新規出店を予定していると発表した。中国企業のラッキンコーヒー(瑞幸珈琲)は最近、世界最大のコーヒーチェーンであるスターバックスを上回り、売上高と店舗数で中国最大となった。ラッキンコーヒーは現在、スターバックスの2倍以上の約7000店舗を中国で展開している。

 市場調査会社ユーロモニター・インターナショナルのアナリスト、エミール・ファジラ氏によると、中国はハンバーガー・ファストフード店の売上高で世界第5位の市場であり、年間およそ6%の成長を遂げている。これは米国、カナダ、フランス、ドイツを上回るペースだ。ハンバーガー・ファストフード店は中国のファストフード市場全体の5%に過ぎないため、成長余地は大きいとファジラ氏は言う。

 マクドナルドはハンバーガー市場で圧倒的なシェアを占める。ビーフバーガーを提供する中国のファストフード店におけるマクドナルドの市場シェアは2023年に74.6%となり、18年の71.5%から上昇した(ユーロモニター・インターナショナル調べ)。

 中国のマクドナルドは、ダブルチーズバーガーとチキンナゲットといった二つの商品を1.92ドルで購入できるメニューが人気だ。

 マクドナルドは2017年、中国・香港・マカオ事業の株式80%を、中国国営複合企業の中国中信集団(CITIC)や米投資会社カーライル・グループなどで構成するグループに21億ドルで売却。その結果、同事業の株式保有比率はCITICが52%、カーライルが28%となり、マクドナルドは20%に低下した。

 現在、マクドナルドはカーライルが保有する株式28%を買い戻し、中国事業への出資比率を48%に高めようとしている。マクドナルドは昨年11月、この買い戻しは「慣例的な規制当局の承認」を得ることが条件となると述べた。ボーデン氏は2月、同社は「市場の長期的な可能性からさらに利益を得る」ことができるとの見方を示した。

 マクドナルドとカーライルはコメントを控えた。

 マクドナルドが中国へのエクスポージャーを高めることを決めたのは、巨大な人口を抱え、同社が成長する余地があるからだろう。金融サービス会社スティーブンスのマネジングディレクターで、外食産業を専門とするアナリストも務めるジョシュア・ロング氏はそう語る。

 ロング氏は「地政学的な緊張状態にもかかわらず、マクドナルドはこれを機に投資を拡大しようとしている」とし、同社の一貫性と利便性というイメージに顧客は魅力を感じていると述べた。「確かに競争はあるが、いくつかのブランドが好業績を上げる余地も大きい」

 マクドナルドは中国での売上高を定期的に公表しているわけではない。同社は昨年11月、2022年の中国および香港での売上高が世界売上高の5%近くを占めたと明らかにした。

 今年2月には、フランチャイズをライセンス供与している国際セグメント(中国含む)の売上高が昨年9.4%増加したと報告した。

(The Wall Street Journal/Newley Purnell)

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