「天狗の中国四方山話」

~中国に関する耳寄りな話~

No.368 ★ 中国・北京で見聞きした、中国のEV化が想像以上のスビートで進み、 日本を含む外資系を駆逐している現実

2024年05月31日 | 日記

DIAMOND online (橘玲:作家) 

2024年5月30日

 

 北京冬季五輪のフリースタイルスキーやビッグエアの会場となったのは、大手鉄鋼会社「首都鉄鋼」の閉鎖された巨大製鉄所の跡地だ。1910年代に設立され、北京の経済発展を支えたが、重工業からデジタル経済への変貌を象徴するように、現在は再開発で巨大なショッピングモールがつくられ、その1階はNEV(New Energy Vehicle:新エネルギー車)の展示場になっている。

 そこには最大手のBYD(比亜迪汽車)などだけでなく、通信機器メーカーHuawei(華為)の店舗もあって驚いた。

首都遺跡公園のショッピングモール1階にあるEV展示場 Photo:@Alt Invest Com

EV最大手BYDの店舗  Photo:@Alt Invest Com

 この首都遺跡公園では、自動運転のEV(電気自動車)を無料で体験することができる。それも、道路に停車している車に貼られたQRコードを読み取って開錠し、後部座席に乗り込むだけだ。

EVの自動運転車。誰でも無料で試乗できる Photo:@Alt Invest Com

 ここであらかじめいっておくと、「ガソリン車は早晩、すべてEVに置き換えられる」とか、「中国のEVメーカーが世界を席巻する」という話をすると、「EU(欧州連合)はすでにEV義務化を見直している」とか、「中国でEV墓場ができていることを知らないのか」という反論がたちまち出てくる。

 だが私は、こうした議論にはあまり意味がないと思う。中国のEV化はとてつもない勢いで進んでおり、それが成功するにせよ、失敗するにせよ、5年もすれば決着がつくからだ。

 そこでここでは、私が北京で聞いた話と、その後の新聞報道、およびみずほ銀行法人推進部主任研究員・湯進氏による『2030 中国自動車強国への戦略 世界を席巻するメガEVメーカーの誕生』(日本経済新聞出版社)、長岡技術科学大学大学院教授・李志東氏による『中国の自動車強国戦略』(エネルギーフォーラム)に基づいて、これからなにが起きるかを考えてみたい。

「中国系自動車メーカーが外資系を駆逐している」

 日本に帰国してから1カ月後、ホンダが中国で希望退職の募集を始めたことが報じられた(「ホンダ、中国で希望退職募集」日本経済新聞2024年5月15日)。記事によると、中国での販売低迷を受けて、ホンダと中国国有大手・広州汽車集団との合併会社「広汽ホンダ」が5月から希望退職の募集を始め、すでに従業員の14%にあたる約1700人が応募したという。

「中国では電気自動車(EV)を中心に価格競争が激化している。日本勢は苦戦しており、立て直しに向けてリストラに踏み込む動きまで広がってきた」と記事は指摘する。4月の新車販売はホンダが前年同月比22.2%減、トヨタが27.3%減、日産が10.4%減と、大手3社がすべて前年同月を大きく下回ったのだ。

 ホンダの場合、24年度の販売計画は前年度実績比13%減の106万台で、過去最高だった20年度から4割も減っている。これでは工場の稼働日を減らすだけでは対処できず、大規模なリストラに手をつけざるを得なくなったのだろう。

 この報道に驚きがなかったのは、北京の日本人社会では、日本の自動車メーカーはEVの開発競争から脱落し、いずれ中国市場からの撤退を余儀なくされると囁かれていたからだ(三菱自動車はすでに23年に中国の自動車生産から撤退を決めた)。

 中国は年間の新車販売3000万台という巨大市場(日本の新車販売は約500万台)だが、日系ブランドのシェアは、20年の23.1%から24年1~4月期の12.2%へと、わずか4年で半減してしまった。だがこれは日本車だけではなく、2020年には外資系と中国系の販売比率が6対4だったのが、24年には4対6へと逆転している。中国で起きているのは、「中国系自動車メーカーが外資系を駆逐している」という事態で、その煽りをもっとも大きく受けているのが日本の自動車メーカーなのだ。

 北京では、4月の新車販売ではじめてEVがガソリン車を上回って5割を超えたことが話題になっていた。中国政府が2017年4月に発表した、「2025年に世界自動車強国入り」するとの目標を掲げた「自動車産業中長期発展計画」では、2030年に新車販売全体の約5割にあたる1700万台をEVにするとしたが、単月とはいえ、この“強気の目標”を6年も前に達成してしまった。

 北京でもうひとつの話題は、スマートフォンメーカーの小米(シャオミ)が初のEV「SU7」を発売し、発売からわずか27分で予約注文が5万台を超えたことだった。

 SU7の高性能モデル「MAX」の航続距離は800キロメートル、最高速度は時速265キロメートル、停止から時速100キロメートルまでのタイムは2.87秒で、いずれも競合のポルシェの「タイカン」やテスラの「モデルS」を超える。しかも価格は破格の安さで、SU7MAXは29万9900元(約630万円)と、テスラの69万8900元(約1465万円)の半額以下、ポルシェの151万8000元(約3180万円)の5分の1だ(「小米がEV、テスラの半値」日本経済新聞2024年4月1日)。

 小米の雷軍CEO(最高経営責任者)は、2013年に高級スマートカー事業の提案と融資の申し込みを受けたとき、「これは昨今よくあるIT企業による融資詐欺ではないか」と疑ったという。その当時、中国の新車販売台数2198万台に対して、EVはわずか1万4000台に過ぎなかったからだ。

 だがそれから10年で、このスマホメーカーはテスラに匹敵する(あるいは超える)EVを開発したのだ。

巨大鉄工所の跡地を利用した五輪競技場。旧製鉄所の冷却塔の隣にビッグエアのジャンプ台 Photo:@Alt Invest Com

2014年から中国政府は国策としてNEV産業の発展を推進しはじめた

 ここでEVの種類について簡単に整理しておこう。BEV(Battery Electric Vehicle)はバッテリーに充電した電力でモーターを動かして走行するタイプだ。テスラが典型で、エンジンがないため、これまでガソリン車(内燃機関車)で不可欠だったトランスミッション(変速機)のようなコア部品や、タンク、マフラー、ラジエーターといった高度な製造技術が求められる部品を必要としない。

 それに対してHEV(Hybrid Electric Vehicle)はトヨタが開発したプリウスが典型で、エンジンで発電した電力でモーターを駆動させる。ガソリンで動くエンジンと、電気で動くモーターの2つの動力をもつハイブリッド車で、外部からの蓄電が必要ない。

 一方、PHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)は、エンジンとモーターの2つの動力をもつのはハイブリッド車と同じだが、充電スタンドなどの外部電源も利用できるようになっている。

 HEVとPHEVは一見よく似ているが、製造技術に大きなちがいがあり、HEVは「モーターが付いたガソリン車」、PHEVは「エンジンで補助するBEV」と考えればいいだろう。――もうひとつはFCEV(Fuel Cell Electric Vehicle)で、水素を燃料とするEVだが、これはまだ商用開発されていないのでここでは触れない。

 HEVとPHEVの区別が重要になるのは、中国では(そして欧州でも)PHEVはNEV(新エネ車)に含まれるが、HEVはガソリン車と見なされることだ。これにはいろんな理屈がつけられているが、ハイブリッド車の技術では日本が先行していて、それをNEVに加えてしまうと自国の自動車メーカーが不利になるからだろう。――日本で「NEV」という用語が使われないのは、ハイブリッド車もEVと見なしているからだ。

 後述するように、中国の政策ではNEVに分類されるかどうかで天と地ほどのちがいがある。日本の自動車メーカーの苦境の原因は、中国がHEVの開発をあきらめ、BEVとPHEVを国をあげて育成しようとしていることにある。

 湯進氏は『2030 中国自動車強国への戦略』で、中国のEV化への大きな転機は2014年4月22日、テスラのイーロン・マスクが北京ではじめて開催した納車式で、8台の「モデルS」を披露したときだと述べている。購入者は中国IT企業のトップたちで、「自動運転機能が備わったEV史上初の高級セダンは中国IT業界の経営者に大きな衝撃を与えた」という。

 その翌月、習近平国家主席は「NEV(新エネ車)シフトが中国自動車強国への唯一の道だ」と宣言し、中国政府は国策としてNEV産業の発展を推進しはじめた。こうして多くのIT企業が、「100年に一度」といわれるビジネスチャンスをつかむために、スマートカー事業に殺到することになった(それに対して李志東氏は、あらゆる政策資源を投入してEV普及に乗り出した2012年が転機だとしている)。

「中国メーカーが世界の自動車市場を支配する」

 中国は石油の輸出国だったが、経済成長と消費拡大とともに輸入国に転じ、2022年の石油消費量は6億6000万トンまで増大した(アメリカは8億2000万トン、日本は1億5000万トン)。石油資源の海外依存は安全保障上の大きな問題になり、国内消費の約半分を占めるガソリン車(内燃機関車)から脱却しなければならないことは2000年代から強く意識されていたようだ。

 もうひとつの要因が排気ガスによる大気汚染で、とりわけ2008年の北京五輪の頃からPM2.5が問題になり、世界から批判されたこともEV化を急がせることになった。

 文化大革命で両親が「反革命分子」とされ、16歳のときに東北地方の吉林省延辺市の農村に下放された万鋼は、23歳で村の推薦で東北林業大学に進み、同済大学大学院を経て東ドイツに留学、省エネルギー技術を学んだあと、ドイツのアウディで研究を続けた。万鋼の夢は、中国でクリーンエネルギー車をつくることだった。

 中国は「自動車大国」を目指したものの、中国の消費者はドイツ車や日本車が一流で、中国車は値段が安いだけの粗悪品だと思っていた。高度な製造技術が求められる内燃機関車では、中国メーカーの技術競争力は圧倒的に不足していた。

 だが万鋼には、モーターで駆動するEVなら中国のメーカーにも製造可能で、勃興しつつあるITメーカーの技術と自動車を融合すれば、「カエル跳び(leapfrogging)」によって自動車市場のゲームチェンジャーになれることがわかっていた。

 2001年から始まったNEV開発プロジェクト5カ年計画の総責任者になった万鋼は、2007年に科学技術部部長(科学技術大臣)の要職に就任し、その後、18年まで11年間にわたってNEV開発の陣頭指揮をとった。2013年に習近平政権が発足(中国共産党総書記への就任は2012年)したが、習近平は胡錦濤前政権に任命された万鋼を交代しなかった。

 習近平は短期間で“独裁”の地位を固めたが、それを維持するには、中国の人民が納得するだけの実績をあげなければならない。そんな習近平にとって、「中国メーカーが世界の自動車市場を支配する」という万鋼の提案はおそろしく魅力的だったのだろう。こうして、なりふりかまわぬ国家ぐるみの「EV化」が始まった。

巨大な鉄工所の跡地が再開発でEVテーマパークになった Photo:@Alt Invest Com

中国はすでに、補助金を出さなくてもEVの販売数が拡大する局面に入っている

 イタリア北部ストレーザで開かれたG7(先進7カ国)財務相・中央銀行総裁会議で、アメリカのイエレン財務長官は、「中国が巨額の補助金で自国企業を優遇し、電気自動車(EV)など脱炭素製品をつくりすぎている」として、G7として「反対の壁」をつくることを訴えた。アメリカはすでに、中国製EVに対して制裁関税を4倍の最大100%にするなどの対策をとっている。

 イエレンが指摘するように、中国はEV化を進めるためにさまざまな政策をとっており、それによって民族系メーカーが優遇され、外資系メーカーが排除されたのは間違いない。だが“不都合な事実”は、2009年に始まった購入時補助金によるNEVの利用促進事業が2023年に廃止されたことだ。中国はすでに、補助金を出さなくてもEVの販売数が拡大する局面に入っているのだ。――後述するように税優遇などの措置は継続している。

 李志東氏は、それに対して、2023年7月時点において、EU加盟国のうち26カ国がEV購入時の負担軽減策を講じ、20カ国が購入支援金を負担していると指摘している。たとえばフランスでは、BEVに上限5000ユーロ(約78万円)を、スペインでは内燃機関車からBEVへの買い替えに上限7000ユーロ(約109万円)の補助金を給付している。

 アメリカにとってなんとも都合が悪いのは、バイデン政権が北米で生産されるBEVに最大7500ドル(約110万円)の販売補助金を出していることだ。これでは、「巨額の補助金で自国産業を優遇している」のは中国ではなくアメリカになってしまう。――イエレンが中国の補助金を批判する一方で、その「不公正」の詳細を明らかにしようとしないのはこれが理由だろう。

 中国のEV推進政策は、補助金からクレジット取引制度に移っている。これは経済学のゲーム理論に基づく政策で、CAFC(平均燃費)規制とNEV規制の両輪(ダブルクレジット)からなる。

 CAFC規制ではガソリン車のリッターあたりの平均走行距離を2018年に16キロメートル、20年に20キロメートル、25年に25キロメートルまで引き上げ、目標未達成分が不足燃費クレジットとして計算される。それに対してNEVクレジットでは、各メーカーの生産・輸入台数に対し、2019年に10%、20年に12%、25年には38%のNEV販売比率規制を課す。

 CAFC規制もNEV規制も、基準を達成できなければ、市場から他社のクレジットを購入して賄うしかない。この「ダブルクレジット」によって、補助金に頼らなくても、ガソリン車の燃費を向上させ、同時にNEVの比率を上げることができる。

 この場合の“不都合な事実”は、クレジット取引が経済学(ゲーム理論)の知見に裏づけられているだけでなく、カリフォルニアでの実証実験でその効果が確認されていることだ。欧米諸国が国内自動車メーカーへの影響を考慮して躊躇するなか、中国はこの「経済学的に正しい政策」を率先して導入した。これについて李志東氏は次のように書いている。

 NEV造りが得意なら、内燃機関造りが不得意でもNEV規制もCAFC規制も達成可能であるが、逆に、内燃機関造りがどんなに得意でも(3年間有効のCAFCクレジットをいくら貯めても)、NEVを自前で生産・販売しない限り、自前でNEV規制の達成は不可能となり、中国市場でのビジネスが困難であることを意味する。

 このようにして、ガソリン車(すり合わせによる車づくり)で世界のトップに立った日本の自動車メーカーは、中国市場で苦しい立場に追い込まれていった。

中国では、目標を前倒しする勢いでガソリン車のEVへの置き換えが進んでいる

 国家をあげての中国のEV推進政策を「不公正」と決めつけるのが難しいのは、ガソリン車からEVへの転換が地球温暖化対策の中心に据えられているからだ。そのため欧米は、中国がEVの普及拡大を「国家事業」にしていることを表立って批判することができない。

 中国政府は購入時補助金を廃止したものの、NEVについては、排気量に応じて課税される自動車税と、取得価格の10%を納める自動車取得税を免除している。これらの(補助金以外の)優遇策を考慮すると、消費者は同じ金額でガソリン車よりも3割スペックの高いNEVを手に入れられると李志東氏は試算している。

 北京や上海などの都市部ではガソリン車のナンバープレートは抽選制で、オークションで取得しようとすると100万円以上かかることもあるが、EVの緑のナンバープレートは、一定の条件を満たせば1人につき1枚が無料で発行される(ただし北京では、EVのナンバープレートも抽選制になったという)。

 それに加えて中国では、ロシアのウクライナ侵攻でガソリン代が高騰しても日本のように補助金で価格を引き下げようとはせず、その代わりに電気料金の価格を抑える政策をとった。これによって、NEVの1キロメートルあたりのコストはガソリン車の6分の1になったといわれる。

 中国政府はEV購入にさまざまな優遇を行なうだけでなく、地方自治体に充電向け電力網など関連施設の整備を義務づけた。国家電網公司は、北京と香港・マカオを結ぶ全長2285キロメートルの高速道路に38キロメートル間隔で急速充電ステーションを設置することを目指している。私は新疆で他省ナンバーのEVを見て驚いたが、いまでは地方まで遠出してもバッテリーが切れる心配をする必要がなくなった。

 日本では経済産業省が補助した充電器が更新期に入り、採算難で撤去する事業者が少なくないと報じられたが、これはEVの普及率が低く利用者が少ないからだ。それに対して中国では、充電器設置数が2022年末で521万基と前年から259万基も増えた。日本とは逆に、「NEVの販売・保有台数と充電インフラの設置・稼働基数が共に増える好循環」が生まれているのだ。

 EVの欠点として走行距離と充電時間があげられるが、電池の性能が急速に向上したことでいまや走行距離は1000キロメートルを超え、PHEVでは2000キロメートルに達する車種も登場した。さらに車載電池メーカー大手の国軒高科が、9.8分でEVの充電量を10%から80%にできる電池を開発したとも報じられた。

 日本は欧米と足並みをそろえ、2035年までにガソリン車の新車販売を禁止し、(HEVを含む)100%の電動化を達成すると2020年に決めたが、あと10年でこの「国際公約」を達成できるとは思えない。それに対して中国では、目標を前倒しする勢いでガソリン車のEVへの置き換えが進んでいる。このままではいずれ中国から、「日本は地球温暖化の元凶」と批判されるのではないか。

中国の「格安EV」は、アメリカ、欧州や日本・韓国の自動車メーカーよりも高い競争力をもっている

 中国ではかつての携帯電話やスマートフォンと同じように、EVメーカーが乱立するカオスのような状況になっている。湯進氏によれば、2018年末時点で乗用車メーカーは99社あり、そのうち生産台数4万台以下のメーカーが43社もあった。これに加えて、ライセンスを取得することなく「スマートカー」を開発するメーカーが相次いで参入している(小米もライセンスが取得できず、北京汽車との合併からスタートした)。さらに電池メーカーは、2016年に約150社もあり急速に淘汰が進んでいるという。

 ここからわかるのは、いまやEVは家電製品と同じになってきたということだ。そうなれば、液晶パネルで日本のメーカーが体験したように、性能が上がり、価格が下がるという体力勝負になっていく。EVの価格競争に耐えきれず、テスラが低価格EVからの撤退を検討していることが報じられたが、このシェア争奪戦(生き残り競争)は今後、さらに激しくなっていくだろう。

 その結果、中国の自動車メーカーはEVの膨大な供給余力を抱えることになった。日経新聞(「新車販売、中国勢10位に」2024年5月26日)には、「自動車各社や地方政府の計画を合算した中国のEVなどの生産能力は、25年に3600万台の規模に達する。25年の国内販売は1700万台前後にとどまる見通しで、需給ギャップが大きい」とある。

 これが正しいとすると、中国では1年間に2000万台ちかいEVが過剰生産され、それが今後、さらに増えていくことになる。2023年の日本の新車販売台数は478万台だから、日本市場の5倍のEVが市場に溢れることになるのだ。

 中国EVに競争力がなければ(海外のユーザーにとってなんの魅力もなければ)、どこにも行き場がないのだから、EV墓場に積み上げられるだけになるだろう。だがもしそうなら、アメリカが中国のEVに対する関税を大幅に引き上げたり、イエレンが中国の過剰生産をことあるごとに批判する理由はないはずだ。

 その答えは、もはや明らかだろう。中国の「格安EV」は、アメリカの(そして欧州や日本・韓国の)自動車メーカーよりも高い競争力をもっているのだ。だからこそ、アメリカはそれが自国市場を「破壊」するのを防ぐために「保護主義」をとらざるを得なくなり、それを正当化するためにG7の会議で「国際協調」を求めているのだろう。

 だがすでに述べたように、中国は補助金なしでもEV化が進む段階に達している。EUはもともとEVを強力に推進してきており、中国の「安くて性能のいいEV」の輸入を禁じて国内のガソリン車を守る政策は正当化が難しい。中国からの経済的な報復措置を考えれば、安易にアメリカの提案に乗るわけにはいかないだろう。

 しかしそれでも、欧米や日本・韓国は中国のEVメーカーの「ゲームチェンジ」から国産車を保護せざるを得ないだろう。だが東南アジアや中南米、ロシア、中東・アフリカのような「自動車大国」でない国は、充電向け電力網さえ整備されれば(これは今後、中国が“開発支援”の名の下に積極的に行なうだろう)急速にEV化が進むことが考えられる。

 そうなれば、白物家電や液晶パネル、スマートフォンや太陽光パネルで起きたのと同じことが、(家電製品となった)自動車でも起きるのではないだろうか。そのとき、日本の自動車メーカーがどのような姿になっているかは、ちょっと想像がつかないが。
 

 橘玲(たちばな あきら)

 作家。2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部の大ヒット。著書に『国家破産はこわくない』(講談社+α文庫)、『幸福の「資本」論 -あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」』(ダイヤモンド社刊)『橘玲の中国私論』の改訂文庫本『言ってはいけない中国の真実』(新潮文庫)、『シンプルで合理的な人生設計』(ダイヤモンド社)など。最新刊は『世界はなぜ地獄になるのか』(小学館新書)。

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No.367 ★ 対中国「デリスキング」で乱れるEUの足並み――習近平訪欧とショルツ独首相訪中が示すもの

2024年05月31日 | 日記

JBpress (新潮社フォーサイト:熊谷徹)

2024年5月30日

新潮社の会員制国際情報サイト「新潮社フォーサイト」から選りすぐりの記事をお届けします。

訪仏しマクロン大統領と会談した習主席(2024年5月6日、写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

中国経済への依存度を減らすデリスキング(リスク低減)政策をめぐり、自国経済優先のドイツとフランス・欧州委員会の間に足並みの乱れが目立っている。欧州連合(EU)の不協和音は、中国を利しかねない。

 5月5日、中国の習近平国家主席が5年ぶりに欧州を訪れたが、この訪問は対中政策をめぐる欧州内の亀裂を改めて浮かび上がらせた。そのことは訪問国の選択に表れている。最初の訪問国は、対中強硬派フランス。次いで習主席は、中国と友好的な関係にあるセルビアとハンガリーを訪れた。この両国を選んだことは、「欧州の全ての国が中国に対して厳しい態度を取っているわけではない」という中国のメッセージだ。

EUが打ち出した対中強硬姿勢

 まず習主席はパリのエリゼー宮でエマニュエル・マクロン仏大統領と、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長と会談した。中心的なテーマの一つは、貿易摩擦である。マクロン大統領とフォン・デア・ライエン委員長は、習主席に対し、割安の電気自動車(EV)や太陽光発電モジュール、鉄鋼などの欧州への輸出量を減らすよう求めた。

 特にフォン・デア・ライエン委員長の舌鋒は鋭かった。同氏は、「我々は自由競争を阻害する輸出政策を見過ごすことはできない。集中豪雨的な輸出は、欧州の製造業界を荒廃させる。世界は中国の生産過剰によって作られた大量の製品を吸収することはできない」と語った。そして同委員長は、「中国の生産過剰と集中豪雨的輸出が終わらない場合は、EUは必要な措置を取らざるを得ない」と述べ、制裁措置を取るという方針を明確に打ち出した。

 焦点は、中国からのEVである。フォン・デア・ライエン委員長は2023年9月13日、「中国が欧州に輸出するEVの価格が、政府補助金により不当に安くされている疑いがある」として、調査を開始したことを明らかにした。欧州委員会の調査の結果が「クロ」となれば、中国で生産されて欧州に輸出されるEVについて、EUが制裁関税を課す可能性が大きい。

 EUによると、中国のEVの平均価格は欧州企業のEVの平均価格よりも約20%低い。EUは「欧州のEV市場で中国車のシェアは現在約8%だが、2年後には15%になる可能性がある」と指摘する。中国のBYDなどは、ドイツを中心に販売体制の構築を着々と進めている。

 ドイツでEV販売数が伸び悩んでいる最大の理由は、高価格だ。現在ドイツでは約150車種のEVが売られているが、価格が3万ユーロ(510万円・1ユーロ=170円換算)未満の製品は3車種しかない。高い人件費や他社から電池を調達しなくてはならないことが原因だ。BYDはそこに着目して、割安のEVで欧州市場に斬り込むことを狙う。

 ドイツの日刊紙フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)によると中国政府は2022年までに、バッテリー電気自動車(BEV)を購入する市民のために2000億人民元(約260億ユーロ)の税制上の優遇措置を実施した。ドイツ自動車工業会(VDA)によると、中国の自動車業界は2023年、約1464万台のEVを生産した。だが中国でのEV販売台数は655万台に留まっている。中国のEV市場では、生産能力過剰のために、激しい価格競争が起きてメーカーの収益性が下がっている。このためEUは、中国のEVメーカーが国内でだぶついたEVを将来欧州に輸出することを恐れている。

しかしEUの制裁関税は両刃の剣だ。中国がEU加盟国からの輸出品に報復関税をかけたり、同国内での欧州企業の活動に何らかの制限を加えたりする可能性があるからだ。

 習主席は、EU側の非難に反駁した。彼は中国国営新華社通信によれば、「中国の生産過剰問題は存在しない。割安の製品は欧州におけるインフレ圧力を引き下げることに役立つ。中国とEUは、貿易によって互恵関係にある」と述べた。したがって中国政府がEVや太陽光発電パネルなどの対欧輸出にブレーキをかけるとは考えにくい。EU・中国の前途には本格的な貿易紛争の暗雲がたちこめつつある。

中国の欧州における橋頭堡セルビアとハンガリー

 実際、習主席がパリ訪問の後に、セルビアとハンガリーに向かったことは象徴的である。中国の一帯一路構想に参加している両国は、いわば中国が欧州に構築した橋頭堡だ。習主席がセルビアを訪れた5月7日は、1999年のコソボ戦争において、米軍が首都ベオグラードで中国大使館を誤爆した事件から25年目にあたった。この訪問には、中国の米国および北大西洋条約機構(NATO)に対する非難と不信感が表れている。セルビアはアルバニア系住民が多いコソボの独立を今も承認していないが、習主席はセルビアの立場を支持する姿勢を表明した。

 またハンガリーは、EU加盟国の中で、欧州委員会の難民政策や対ロシア政策について最も批判的な姿勢をとっているほか、中国寄りの立場を最も鮮明にしている。ハンガリーはEUで最初に一帯一路構想に参加した国だ。BYDは2023年12月、ハンガリー南部のセゲドにEV工場を建設する計画を発表した。同社はこの工場で2026年以降、欧州諸国向けに毎年20万台のEVを生産する方針だ。このことは、中国の自動車業界がEUによる制裁関税の導入に備えていることを示す。EU域内に生産拠点を持てば、EUの制裁関税の影響を受けないからだ。

 この戦略的に重要な工場の建設地として、中国がハンガリーに白羽の矢を立てたことは象徴的である。つまり親中派ビクトル・オルバン首相は、EUの対中制裁が始まる前から、その効果を減衰させることに協力している。ある意味でハンガリーは、フォン・デア・ライエン委員長にとって獅子身中の虫だ。

 EUが中国に対して厳しい姿勢をとっているのは、EVだけではない。EUは、2022年のロシアのウクライナ侵攻によって、重要な資源の輸入について特定の国に依存することの危険を学んだ。このためフォン・デア・ライエン委員長は、中国などEU域外国への依存度を減らすために、2023年に「グリーン・ディール産業計画(GDIP)」を公表。欧州理事会は今年3月にその一環である重要資源法案(CRMA)を承認した。この法案は、EVや太陽光発電設備、風力発電設備などの生産に必要な、レアアース(希土)やコバルト、銅など17の物質を戦略的資源(SRM)と位置づけ、域外の特定の国への依存度を2030年までに65%未満に減らすことを加盟国に義務付ける。

 また今年2月に欧州議会と経済閣僚理事会が合意したネットゼロ産業法案(NZIA)によって、EUは太陽光発電、原子力、風力発電、水素生産、蓄電などに関する設備の域内調達率を、2030年までに少なくとも40%に引き上げることを目指している。EUはこの2つの法案によって、中国からの製品や原材料に対する依存度を下げようとしている。いわばデリスキング戦略の一環である。

ショルツ首相訪中が示すドイツの苦しい事情

 ところがEUのデリスキング政策に水を差すかのような態度を取る国が現れた。それがドイツだ。マクロン大統領とフォン・デア・ライエン委員長が習主席に対し厳しい態度を示したのに対し、EU最大の経済パワーの首相が、中国に対して宥和的な態度を見せた。

 ドイツのオラフ・ショルツ首相(社会民主党=SPD)は今年4月14日から16日まで、中国を訪問した。彼は1年半前にも北京を訪れ、G7加盟国としてはコロナ禍発生後初めて中国の土を踏んだ。実はショルツ首相が、一国に3日間続けて滞在したのは、中国が初めて。これらの事実には、彼がいかに中国との関係を重視しているかが表れている。

 ショルツ首相は今回の訪中にBMWやメルセデスベンツなどドイツの大手メーカーの社長たちを同行させた。そして習主席や李強首相との会談では、両国間の経済関係を拡大させることに力点を置いた。デリスキング政策や人権問題にはほとんど触れなかった。

 彼の態度は、中国との貿易や投資を重視したゲアハルト・シュレーダー元首相やアンゲラ・メルケル前首相と極めて似ていた。ドイツ政府は2023年に中国戦略を初めて公表し、中国を「パートナー、競争相手、そして社会システムをめぐるライバル」と位置付けて、戦略的に重要な製品や原材料については中国への過度な依存を減らすデリスキング政策をとると明記した。ショルツ首相が北京で見せた態度は、この中国戦略と矛盾する。

 実はドイツの自動車メーカーは、EUが中国からのEVに制裁関税をかけることを警戒している。世界の自動車業界で、ドイツのメーカーは世界で最も中国への依存度が高い。フォルクスワーゲン・グループなど大手メーカーが世界で売る車のほぼ3台に1台は中国で売られている。彼らは、EUが中国製EVに制裁関税をかけた場合、中国での生産活動などに悪影響が出ることを恐れている。このためショルツ首相もEUが中国製EVに制裁関税をかけることに反対している。

 ドイツ連邦統計局によると、独中間の2023年の貿易額(輸出額と輸入額の合計)は2544億ユーロ(約43兆円)。中国は8年連続でドイツにとって最大の貿易相手国だったことになる。ドイツで直接的・間接的に中国ビジネスに依存している就業者の数は、約100万人にのぼる。

 ドイツはロシアのウクライナ侵攻以来深刻な景気後退に悩んでいる。2023年のドイツの実質GDP(国内総生産)成長率はマイナス0.3%と、G7で最低だった。このためショルツ首相は、「自国経済ファースト」を打ち出さざるを得なかったのだ。

ショルツ訪中で減殺された対中国の「梃子」

 ドイツの論壇では、「ショルツ首相は今回の訪中で、中国ビジネスを重視するドイツの大手企業の意向を代弁した」という見方が有力だ。つまり習主席は、ショルツ氏の訪中を通じて、EU最大の経済パワー・ドイツがデリスキングについて真剣でないことを確信したはずだ。その意味で、パリでマクロン大統領とフォン・デア・ライエン委員長が習主席に対して示した対中強硬姿勢は、会談が始まる前から効果を削がれていた。

 実はマクロン大統領は、ショルツ首相をパリでの習主席との会談に招待していた。しかしショルツ首相は「他の日程との兼ね合いで困難」として断った。中国で宥和的態度を見せたショルツ首相は、マクロン大統領とフォン・デア・ライエン委員長とともに習主席と顔を合わせることを避けたのだろう。エリゼー宮で習主席から、「あなたは北京で私に対し、独中経済関係を深めたいと言ったではないか」と指摘されると、ショルツ首相の面目はつぶれる。ショルツ首相がパリでの会談に参加しなかったことも、ドイツとフランス・EUの間の歩調の乱れを示唆する。

 不動産不況や若年失業率の増加、内需の減退に悩む中国は、約5億人の人口を持つEU市場を必要としている。その意味でEU加盟国がもしも団結すれば、中国の行動に影響を与えるための「梃子(レバレッジ)」を持つことができる。だがドイツの態度は、EUが一枚岩ではないことを世界中に示した。今回ドイツ政府が自国経済を優先して、中国に宥和的な態度を示したことは、EUがこの梃子を利用する可能性が減ったことを意味する。習主席にとって、今回の訪欧は「EU与し易し」という印象を与えたに違いない。

熊谷徹(くまがいとおる)

1959(昭和34)年東京都生まれ。ドイツ在住。早稲田大学政経学部卒業後、NHKに入局。ワシントン特派員を経て1990年、フリーに。以来ドイツから欧州の政治、経済、安全保障問題を中心に取材を行う。『イスラエルがすごい マネーを呼ぶイノベーション大国』(新潮新書)、『ドイツ人はなぜ年290万円でも生活が「豊か」なのか』(青春出版社)など著書多数。近著に『欧州分裂クライシス ポピュリズム革命はどこへ向かうか 』(NHK出版新書)、『パンデミックが露わにした「国のかたち」 欧州コロナ150日間の攻防』 (NHK出版新書)、『ドイツ人はなぜ、毎日出社しなくても世界一成果を出せるのか 』(SB新書)がある。

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No.366 ★ 中国、主要産業のCO2排出量を23年比1%削減の計画

2024年05月31日 | 日記

By ロイター編集

2024年5月30日

中国政府は29日、主要産業の二酸化炭素(CO2)排出量を2023年の国内総排出量の約1%相当削減することを目指すとする行動計画を発表した。2023年11月撮影(2024年 ロイター/Colleen Howe)

[北京 29日 ロイター] - 中国政府は29日、主要産業の二酸化炭素(CO2)排出量を2023年の国内総排出量の約1%相当削減することを目指すとする行動計画を発表した。

中国は世界最大のエネルギー消費国で、CO2排出国。鉄鋼生産や運輸といった分野のエネルギー効率を高めることで削減する計画だ。

行動計画によると、24年に国内総生産(GDP)成長単位当たりに必要なエネルギー量を2.5%引き下げることを掲げた。

目標達成のため、建設資材や石油化学などの分野で効率化に取り組むことを提示した。昨年はこうした目標を達成できなかった。

25年には中国の総エネルギー使用量に占める非化石燃料のエネルギーの割合を約20%に高めるという目標も改めて示した。24年目標の約18.9%から引き上げる。

計画によると、中国は石炭消費を「厳しく」管理する一方、バイオ燃料や持続可能な航空燃料の使用を促進する。石油消費については「適度に」管理するとした。

また、大規模な再生可能エネルギー発電所の建設と洋上風力発電の開発を推進し、25年までに非化石燃料のエネルギー源の割合を総発電量の約39%に引き上げるとした。20年の33.9%から比率を高める内容となった。

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No.365 ★ 中国自動車大手、独自開発「HV技術」を外資に供与 上海汽車集団、VWやGMとの共同開発車に搭載へ

2024年05月31日 | 日記

東洋経済オンライン (財新 Biz&Tech)

2024年5月29日

かつてVWやGMからの技術導入で成長した上汽集団が、今や技術を供与する側に転じつつある(写真は同社ウェブサイトより)

中国の国有自動車最大手の上海汽車集団(上汽集団)は、同社が独自開発したHV(ハイブリッド車)の関連技術を、中国で合弁を組むドイツのフォルクスワーゲン(VW)やアメリカのゼネラルモーターズ(GM)などの外資系自動車メーカーに供与する。

上汽集団が5月10日、同社にとって第4世代のHVシステム「DMH超級混動系統(DMHスーパー・ハイブリッド・システム)」の技術発表会で明らかにした。

中国市場でPHVやEREVに勢い

中国の自動車市場では、2023年からEV(電気自動車)の販売の伸びが鈍化する一方、PHV(プラグインハイブリッド車)やレンジエクステンダー型EV(EREV)の販売が大きく伸びている。

(訳注:EREVは航続距離を延長するための発電専用エンジンを搭載したEVを指す。中国の販売統計上はPHVに分類される)

中国汽車工業協会のデータによれば、中国市場における2023年のEV販売台数は668万5000台と、前年比24.6%増加した。それに対し、同年のPHV(EREVを含む)の販売台数は280万4000台と絶対数ではまだEVの半分以下だが、前年比の増加率は84.7%と大幅に上回った。

上海汽車の新型HVシステムの発表に先立つ4月17日、VW中国法人のラルフ・ブランドステッターCEO(最高経営責任者)は財新を含む複数メディアの取材に応じた際、次のように述べた。

「VWは(合弁パートナーの)上汽集団および第一汽車集団とPHVの共同開発に合意した。わが社は中国の合弁パートナーとともに、現地化のレベルを高めたPHVの設計や生産に関する新たな可能性を探っていく」

VWは中国の合弁会社で現地開発するPHVやEREVに、上汽集団の新型HVシステムを搭載するとみられる。写真は上汽集団の独自ブランドPHV「栄威D5 XDMH」(同社ウェブサイトより)

また、VWと上汽集団の合弁会社である上汽VWの賈健旭(か・けんきょく)・総経理(社長に相当)は4月23日、メディアの取材に対して「EV用のプラットフォーム(車台)をベースに、PHVとEREVを開発する計画だ。製造コストはエンジン車と同水準(の低さ)を目指している」と述べていた。

独自ブランドHVも輸出へ

上汽VWが開発するPHVとEREVは、上汽集団が今回発表したDMHスーパー・ハイブリッド・システムをもとに設計される可能性が濃厚だ。

それだけではない。上汽集団は近い将来、DMHスーパー・ハイブリッド・システムを搭載した自社ブランドHVをヨーロッパ市場に輸出する。その先兵となるのが、傘下の「MG」ブランドの新型コンパクトカー「MG3 Hybrid+」だ。

「このモデルは(新型HVシステムの搭載により)走行1キロメートル当たりの二酸化炭素(CO2)排出量を100g未満に抑えられる」。上汽集団の創新研究開発総院の副院長を務める仇傑氏はそう述べ、環境保護への意識が高いヨーロッパ市場での成功に自信を示した。

(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は5月11日

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