「天狗の中国四方山話」

~中国に関する耳寄りな話~

No.340 ★ パクリ格安店も…スターバックス中国進出の苦悩 テスラ、アップル、 ナイキほか撤退できない米国企業が窮地に陥っている

2024年05月20日 | 日記

MONEY VOICE (鈴木傾城)

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中国は大きなカントリーリスクとなる国だ。アップルも、ナイキも、スターバックスも、テスラも、中国市場でモノを売っている企業は早く中国から撤退して、他の国に活路を見いだしたほうが将来のためになるだろう。中国と一緒に沈没するアメリカ企業は見たくない。(『 鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編 』鈴木傾城)

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中国市場から足抜けできない企業が苦しんでいる

アメリカにとって中国は、すでに「敵国」扱いとなっている。アメリカ政府は粛々と中国との経済関係を切っており、最終的には中国そのものをグローバル経済から切り離そうと画策しているのが見て取れる。

2019年9月にはトランプ大統領が中国株の上場廃止を検討し、バイデン大統領も2020年5月には米国の上院が中国企業の米国上場を禁止する法案を可決した。中国企業はアメリカの株式市場から次々と退場させられている。

さらに2022年10月、アメリカ政府は中国への半導体の輸出規制を強化し、世界各地の中国企業の子会社や事業所への輸出を事実上禁止し、2023年3月には、サーバー製造のインスパー・グループや遺伝子企業BGIリサーチなど、数十社の中国企業を「エンティティーリスト」に追加した。

そして、2024年4月にはAIや半導体製造装置の対中輸出規制をさらに強化しており、着々と中国を経済的に排除している。最近では、国家安全保障の脅威としてTikTok禁止法案が通って、親会社バイトダンスは1年以内にアメリカ撤退か、売却かを選択しないといけなくなった。

こうした動きを受けて、アメリカ企業も中国からの足抜けを模索しており、アメリカの金融企業はほぼ中国から引き揚げている。

しかし、中国市場に食い込んでビジネスを行っている企業は簡単に足抜けできず、今後の展開に苦しんでいる。

たとえば、アップルもiPhoneの売り上げの20%近くが中国市場であるし、ナイキも売り上げの16%近くがやはり中国市場である。スターバックスはどれくらい中国に依存しているのか正確な数値は不明だが、かなり重要な市場として中国がある。

これらの企業がいま、中国から簡単に足抜けできずに苦しんでいるのだ。2024年5月2日、スターバックスは第二四半期決算を発表したのだが、悲惨な決算となって一時は17%を越える株価大暴落となった。

STARBUCKS CORP(SBUX) 日足(SBI証券提供)

中国にすがるように、中国拡大路線に走る

今回のスターバックスの決算を見ると、利益と売上高は2期連続で予想を下回っている。第2四半期の調整後1株当たり利益(EPS)は68セントとなり、予想の79セントを13.9%も下回ったのだ。

四半期の売上高は85億6,300万ドルで、予想の91億4,000万ドルに届かなかった。世界の既存店売上高は前年比4%減となった。

アメリカではインフレと人件費の高騰に苦しんでいるのだが、問題は、中国でスターバックスの売り上げは急激に減少していることにある。

アメリカ政府は最終的には中国をグローバル社会から切り捨てて中国を最貧国にしようと考えているのだが、スターバックスは売上を何とか維持するために、すでに足がかりを作った中国を捨てることができない。

中国を捨てるどころか、売上が落ちてしまった中国にすがるように、むしろ拡大路線に走ろうとしている。

その中国ではスターバックスのパクリ格安店もできて、価格に敏感な中国人はスターバックスよりもそのパクリ店のほうに入るようになってきている。かといって、スターバックスがパクり店なみに価格を引き下げたらブランド力が低下してしまうので、それもできない。

そこで、スターバックスの経営者は、中国でもっと店を増やしてとにかく売上を上げることを決断したようだ。しかし、それをすればするほど、スターバックスは中国に捉えられていくようになり、中国敵視をするアメリカ政府との乖離も生まれることになる。

このまま中国依存が続いていくと、米中に決定的な亀裂が起きたときスターバックスも株価17%では済まないことになってしまうだろう。

スターバックスとテスラは中国依存を鮮明に

2024年現在、アメリカは大統領選挙のまっただ中で、バイデン大統領とトランプ前大統領が激しく支持争いをしている。バイデン大統領はあまりの高齢で、あと4年も大統領職をまっとうできるのかどうかわからないような体調だ。アメリカ人の多くがそれを懸念している。

そのため、もしかしたらアメリカ人の多くはふたたびトランプ前大統領を選択する可能性も見えてきている。

かりにトランプ前大統領が今回の大統領選挙で勝ちあがったら、中国との軋轢はふたたび激しいものとなり、中国切り捨て政策は過激に進んで、思ったよりも中国排除は早く進むかもしれない。

そうなったとき、いつまでもグズグズと中国に居残っている米国企業が大きなダメージを受けることにあるのは自明の理だ。スターバックスは、さしずめそうした企業のひとつでもある。

最近では、テスラのイーロン・マスクが中国に電撃訪問している。そして、マッピングとナビゲーション機能においては、中国大手の百度と提供し、中国のデータセキュリティーとプライバシーの対応に配慮することを約束している。

これによって、テスラは中国でEV車を販売し続けることが可能になった。テスラにとって中国はアメリカに次ぐ第二の市場であり、ここを落としたらもうテスラの未来はない。そのため、テスラもスターバックスと同様に、中国に「もっと」深入りすることを決断したようだ。

それと同時にイーロン・マスクは、インドのモディ首相との会談をキャンセルしているので、イーロン・マスクはあからさまにインドよりも中国を取ったことになる。

中国市場に依存して売上を上げているアメリカ企業は、アメリカ政府が中国を敵視する中でも、こうした動きをとめることができないので、彼らは今度はアメリカ政府とも対立することにもなりかねない。

他の国に活路を見いだしたほうが将来のため

スターバックスも、テスラも、現在は株価下落が鮮明であり、どちらも経営的に追い込まれている企業であるのがわかる。しかし、今後の米中対立はもっと激しいものになるわけで、両国の国民感情は悪化して、最終的には衝突が避けられなくなる。

そんな状況の中で、まともな協力関係が築けるはずもない。すべてのアメリカ企業にとって、中国は巨大なカントリーリスクを擁した危険地帯になっている。どこかで撤退を考えるのは当然のことなのだ。

中国はこれまで外資を呼び込んで、そこで膨大な数の国民を働かせて雇用を確保すると同時に、技術を「盗んで」から外資を追い出すという方法を使って成長を続けてきた。日本企業もまたそうやって技術を盗まれ続けてきたのだが、中国に依存する限り、アップルもスターバックスもテスラも同じ結果となるだろう。

中国が何か新しいものを産み出したり、革新的な技術を発見したりすることはない。安い労働力と大量の人口を生かして安いモノを作って作って作りまくり、外国の技術を盗んで盗んで盗みまくってビジネスをしてきた。

しかし、こうした中国のやり方は警戒され、半導体を筆頭とする最先端技術は、もうアメリカ政府によって厳しく規制されるようになってきている。これが厳格化していくと、当然、中国は新しい技術を移植できない。

外から盗むこともできなくなり、発展性がなくなると、最後には中国経済そのものが崩壊してしまう。

すでに中国の人口も頭打ちになり、高齢者が増え、さらに中国を動かしていた不動産セクターもバブルが崩壊してしまった。そんな中で、独裁化が進む習近平政権は、アメリカと敵対化して徐々に打つ手を失いつつあるのが今の現状だ。

アップルも、ナイキも、スターバックスも、テスラも、中国市場でモノを売っている企業は早く中国から撤退して、他の国に活路を見いだしたほうが将来のためになるだろう。

中国と一緒に沈没するアメリカ企業は見たくない。スターバックスのコーヒーを飲みながら、そう思う。

鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営している。

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No.339 ★ 中国の住宅買い換えキャンペーン、中古物件売れず苦戦

2024年05月20日 | 日記

ロイター (By Liangping Gao Clare Jim)

2024年5月18日

 5月16日、中国当局は低迷する不動産市場のてこ入れ策として、市民に新しい住宅への買い換えを促すキャンペーンに乗り出し、関心も集まっている。写真は2月、上海の集合住宅の建設現場でドローンから撮影(2024年 ロイター/Xihao Jiang)

[北京/香港 16日 ロイター] - 中国当局は低迷する不動産市場のてこ入れ策として、市民に新しい住宅への買い換えを促すキャンペーンに乗り出し、関心も集まっている。しかし中古住宅の売れ行きが悪く、政策推進の大きな壁になっている。

キャンペーンは政府が先月打ち出したもので、全国の都市で増える新築アパートの売れ残り在庫を一掃するとともに、経営難にあえぐデベロッパーにキャッシュを提供する狙いがある。中国指数研究院の調べでは「以旧換新(買い換え)」制度を導入した都市は5月6日時点で50余りに上った。

しかしアナリストや不動産代理店、デベロッパーによると、中古住宅購入への関心は非常に限定的で、政策の成功は疑問視されている。従って中国の不動産市況は今後も悪化が続きそうだ。

上海で不動産代理店業を営むチン・イー氏は「このキャンペーンへの問い合わせはいくらかあるが、今のところ一件も成約していない。最大の問題は中古物件の売却だ」と語った。

中国当局は2022年以来、利下げや頭金比率の引き下げなど、次々と不動産市場の支援策を打ち出してきたが、不発に終わっている。

新旧いずれの不動産でも需要が減っており、特に小規模な都市でその傾向が顕著だ。住宅購入を検討する人々は、価格がさらに下がったり、デベロッパーがプロジェクトを完成できなかったりする可能性を懸念している。

新旧ともに、住宅の売り出し件数も増えている。

最新の公式データによると、1─3月に売り出された新築住宅の総床面積は3億9500万平米と、前年同期比で24%増えた。一方、同期に売れた新築住宅は1億8942万平米と、前年同期比28%減少している。

<崖から急落>

Zhuge Real Estate Data Research Centreが14都市を調査したところ、4月は中古住宅の売り出し件数が成約件数の20倍に上った。深センでは売り出し件数が前年同月比294%、上海では39%、それぞれ増えている。

その上、未完工の新築アパートも中国全土に数千万軒ある。

GDDCEリサーチ・インスティテュート(上海)のシニアアナリスト、マー・ホン氏は「販売は崖から転げ落ちている。あえて住宅を買おうという人はほとんどいない」と語る。「不動産安定化基金を設けるなど、もっと革新的な手段を使わなければ市況の悪化は続きそうだ」と述べ、買い換えキャンペーンの効果は限られると予想した。

中国の家庭の約96%は既に、少なくとも1つ住宅を所有している。市況が悪化する前の数十年間、中国市民はアパートを最も安全な貯蓄手段と見なしており、特にモダンな新築アパートがその対象となっていた。

買い換えキャンペーンに参加している都市の大半は、新築アパートの購入者に手付金を入れてもらった上で、数カ月たっても既存住宅が売れなければ手付金を全額返すことにしている。成約した場合には税率や手数料の引き下げも提供している。

しかし深センの不動産代理店業者は、十数人から手付金をもらっているが既存の住宅が「売れた形跡はない」と語った。

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