「天狗の中国四方山話」

~中国に関する耳寄りな話~

No.330 ★ 米マスターカードの合弁会社、中国で決済業務開始、外資系で2社目

2024年05月16日 | 日記

JETRO上海事務所

2024年5月14日

米国クレジットカード大手のマスターカードは5月9日、傘下の万事網聯信息技術(北京)が正式に開業したと発表した。万事網聯は中国でマスターカードブランドによる決済業務を始めるほか、加盟機関と連携して中国内外で使える同ブランドのクレジットカードやデビットカードを発行する。また、世界で約1億3,000万店を超えるマスターカードの加盟店ネットワークを基盤としながら、中国で新たに数百万カ所の取扱拠点を増やし、アクワイアリング業務(注)を拡大する。

外資系企業との合弁会社による銀行カード決済業務の開業は、米アメリカン・エキスプレス傘下の合弁会社の連通(杭州)技術服務に続いて2社目(「北京商報」5月9日)。

万事網聯は、マスターカードと中国のオンライン決済システム会社の網聯清算が共同で設立した合弁会社で、2023年11月17日に中国人民銀行(中央銀行)から銀行カード決済ライセンスを取得した。企業信用調査を行う天眼査のデータベースによると、同社の登録資本10億元(約220億円、1元=約22円)のうち、マスターカードが51%、網聯清算が49%をそれぞれ出資している(5月13日調査時点)。

中国では2023年7月に、オンライン決済アプリの「アリペイ(支付宝))と、メッセンジャーアプリ「WeChat(微信)」のQRコード決済機能「WeChatペイ」が海外クレジットカードとのひもづけが可能となったと発表していた(2023年7月27日記事参照)。また、国務院は2024年3月7日、「決済サービスの最適化と支払いの利便性向上に関する意見」を発表。海外クレジットカードの利用環境の改善やモバイル決済の利便性向上をはじめ、外国人向けなどに効率的かつ利便性の高い決済サービスの提供を図るとしていた(2024年4月9日付地域・分析レポート参照)。

(注)クレジットカードやデビットカードでの取引を受け入れ、処理する業務を指す。

(劉元森)

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No.329 ★ ホンダが中国で希望退職募集、生産能力適正化へ中長期的取り組み

2024年05月16日 | 日記

Bloomberg

2024年5月15日

Bloomberg

 

(ブルームバーグ): ホンダは15日、中国において電動化を進める中で生産能力適正化のための中長期的な取り組みとして現地で希望退職を募集していることを明らかにした。

 

広報担当者が電子メールでの取材に回答した。募集の対象となるのは生産領域に従事する正規従業員で、対象者については法律に則した経済補償を提供する。このほか、第一回目の契約満了を迎える従業員について契約を更新しない対応も取るという。

 

ホンダの中国での現地正社員の希望退職の募集については日本経済新聞が先に報じていた。すでに現地合弁会社の14%にあたる約1700人が応募したとしている。

(c)2024 Bloomberg L.P.

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No.328 ★ 中国、吠えまくりの「戦狼外交」から微笑みの「パンダ外交」へ急旋回の真意 東アジア「深層取材ノート」(第234回)

2024年05月16日 | 日記

JBpress (近藤 大介:ジャーナリスト)

2024年5月14日

5月6日、訪仏しフランスのマクロン大統領から歓迎を受け、笑顔を見せる中国の習近平主席(写真:Best Image/アフロ)

「恫喝」から「微笑み」へ

 全国人民代表大会(3月5日~11日)を終えた後、習近平政権が、外交を活発化させている。その主なものは、以下の通りだ。

<アメリカ>
3月27日 北京で習近平主席がアメリカ企業の約20人のCEOらと面会
4月2日 習近平主席がジョー・バイデン米大統領と電話会談
4月7日 北京で李強首相がジャネット・イエレン米財務長官と会談
4月26日 北京で習近平主席がアントニー・ブリンケン米国務長官と会談

<ヨーロッパ>
4月16日 北京で習近平主席がオラフ・ショルツ独首相と会談
5月6日 パリで習近平主席がウルズラ・フォンデアライエンEU委員長、エマニュエル・マクロン仏大統領と三者会談
5月6日 パリで習近平主席がマクロン仏大統領と会談
5月8日 ベオグラードで習近平主席がアレクサンダル・ブチッチ・セルビア大統領と会談
5月9日 ブタペストで習近平主席がオルバン・ヴィクトル・ハンガリー首相と会談

<ロシア>(予定)
5月15日 北京で習近平主席がウラジーミル・プーチン・ロシア大統領と会談予定

<アジア>(予定)
5月26日、27日 ソウルで李強首相が岸田文雄日本国首相、尹錫悦(ユン・ソンニョル)韓国大統領と会談予定

 このように、これまで「戦狼外交」(狼のように戦う外交)と揶揄(やゆ)されてきた習近平政権が、突然、微笑みの「パンダ外交」を始めたのだ。

中国の「戦狼外交」を象徴する人物の一人、中国外交部報道官だった趙立堅氏(写真:ロイター/アフロ)

こちらも戦狼外交の担い手の一人、華春瑩・中国外交部部長助理(写真:VCG/アフロ )

 この背景には、一体何があるのか? 考えられるのは、以下の2点だ。

中国人は「中国経済の好調」を信じていない

(1)に関しては、中国の官製ニュースだけを見ていると、中国経済はいつも絶好調だ。だが、来日する中国人に話を聞くと、「経済がよくなってきた」「景気が上向き始めた」と言う人は皆無である。

 国家統計局などが発表している「公式統計」を見ても、以下のように、とてもほめられるものではない。

・第1四半期(1月~3月)の主力の国有企業の全国規模以上工業企業利潤は、前年同期比(以下同)-2.6%。
・3月の貿易額は-5.1%(輸出-7.5%、輸入-1.9%)。
・3月の住民消費価格(CPI)は+0.1%。
・2月の若年層(16~24歳)失業率は15.3%。
・第1四半期の全国不動産開発投資は-9.5%。うち住宅投資は-10.5%。
・第1四半期の商品家屋販売額は-27.6%。うち住宅販売額は-30.7%。
・第1四半期の不動産開発企業の手元資金は-26.0%。
・3月の70大中都市中古住宅販売価格は、前月比で+1都市、-69都市。

このように、中国経済には、いまだ「晴れ間」が見えない。もしもこの先も、「ほしいがままの戦狼外交」を強引に推し進めたなら、習近平政権のスローガンである「中華民族の偉大なる復興という中国の夢の実現」は、さらに遠のいてしまうに違いない。

 そこで、微笑みの「パンダ外交」に転じたことが考えられる。日本にとっても世界にとっても、ベターな選択だ。

中国にとって望ましいのは「バイデン大統領」

(2)に関しては、11月5日のアメリカ大統領選挙まで半年を切った現在、世界は「マチトラ」(トランプを待っている)の国と、「コワトラ」(トランプを恐がっている)の国に二分されてきているように思える。

「マチトラ」の指導者の筆頭は、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長や、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相、ハンガリーのオルバン首相らだ。強権的な指導者に多い。

 逆に、「コワトラ」の筆頭は、ドイツのショルツ首相、フランスのマクロン大統領、そしておそらくは、日本の岸田文雄首相もそうだろう。先月の岸田首相の訪米は、「トランプ対策」をバイデン大統領と練る一面もあった。こちらは先進国や、民主国家のリーダーに多いのが特徴だ。

 こうした分類に従うなら、中国は強権的な国なので、一見すると「マチトラ」かと思える。ところが中国人の誰に聞いても、「それは『老いぼれバイデン』がこのまま続けてくれた方がいい」と言う。

トランプ復権は「悪夢」

 思えば習近平政権は、多分に予定調和的な社会主義政権である。年間のGDP成長率も、3月に全国人民代表大会で決めて、そのラインに沿って実行していく。もっと長い5カ年計画もある。

2019年6月、大阪で開催されたG20サミットの際に首脳会談を行ったトランプ大統領(当時)と習近平主席(写真:AP/アフロ)

 そんな習近平政権にとって、「予測不可能」なことでは他に例を見ないトランプ大統領の復権は、「悪夢」と言えるだろう。サイコロはいまよりもいい方向に振られるかもしれないが、悪い方向に振られるかもしれない。そんなロシアンルーレットのような国際環境は、まっぴらごめんなのだ。

 もしも悪い方向に振られた場合(かつその方が確率は高そうだが)、いまの脆弱な中国経済では、ぺシャンとなってしまうかもしれない。

 というわけで、今月下旬に日中韓サミットが開かれたなら、ヒンヤリした日中関係も、少しは「雪解け」になるかもしれない。日本の経済界は、「中国へのビザなし渡航解禁」に期待をかけている。

近藤 大介

ジャーナリスト。東京大学卒、国際情報学修士。中国、朝鮮半島を中心に東アジアでの豊富な取材経験を持つ。近著に『進撃の「ガチ中華」-中国を超えた?激ウマ中華料理店・探訪記』(講談社)『ふしぎな中国』(講談社現代新書)『未来の中国年表ー超高齢大国でこれから起こること』(講談社現代新書)『二〇二五年、日中企業格差ー日本は中国の下請けになるか?』(PHP新書)『習近平と米中衝突―「中華帝国」2021年の野望 』(NHK出版新書)『ファーウェイと米中5G戦争』(講談社+α新書)『中国人は日本の何に魅かれているのか』(秀和システム)『アジア燃ゆ』(MdN新書)など。

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