「天狗の中国四方山話」

~中国に関する耳寄りな話~

No.314 ★ マクドナルドが中国事業加速、米企業の苦戦続く中 18億ドルを投じて中国事業への出資比率を再び高め、店舗数をほぼ倍増させる計画

2024年05月10日 | 日記

DIAMOND online (The Wall Street Journal)

2024年5月8日

Photo:Future Publishing/gettyimages

【香港】中国では米国の消費者ブランドの一部が消費需要の低迷やナショナリズム的な購買傾向によって苦戦を強いられている。だが、米ファストフード大手マクドナルドは中国事業に重心を傾けつつある。

 マクドナルドは中国での店舗数を2028年末までに現在の2倍近い1万店余りに増やす計画だ。同社は最近、中国事業の株式の一部を18億ドル(約2844億円)で買い戻し、同事業への出資比率を高めると発表した。

マクドナルドに立ちはだかるハードルの一つは、急成長している中国のライバル企業タスティン(塔斯汀)だ。同社は牛肉に加え、北京ダック、麻婆豆腐、魚風味の豚肉を使った低価格のハンバーガーで現地の食欲に応えている。赤を基調とした店内には「中国産」や「中国人の胃袋は中国のハンバーガーが好き」といったスローガンが掲げられている。

 シカゴを本拠とするマクドナルドも負けじと、チキンとメンマを包んだラップサンドや、コカ・コーラ味の手羽先、スパムのランチョンミートと砕いたオレオクッキーを挟んだサンドなどの新商品を提供している。

 マクドナルドは若い客層にアピールする風変わりなプロモーションを展開し、それがソーシャルメディアで拡散されている。その一つは、ネコが遊べるように作られた「キャットボックス」に入ったコンボミールだ。また、一部の店舗にテーブル付きのエクササイズバイクを設置し、客がペダルをこいで携帯電話をワイヤレス充電しながら食事をとれるようにした。

 マクドナルドは昨年11月、中国は現在、同社にとって最も急成長している市場であると発表した。店舗数では2位で、5500店を超えているという。マクドナルドのイアン・ボーデンCFO(最高財務責任者)は2月の決算説明会で、昨年の中国での新規出店数は1000店を超え、自社記録を更新したと述べた。

 マクドナルドの展開について、タスティンはコメント要請に応じなかった。

 世界の2大経済大国間の地政学的緊張が高まる中、米国の食品・飲料企業の中国での業績は、他の消費者向け企業に比べて良好だ。

 米アップルや米電気自動車(EV)大手テスラの中国での販売は最近落ち込んでおり、米化粧品大手エスティローダーは、価格に敏感な消費者に合わせた商品展開をする競合他社からの圧力に直面している。中国では若年層の失業率が2桁で推移し、景気回復は一様でないため、個人消費が低迷している。

 マクドナルドのもう一つの競合相手である中国のファストフードチェーン運営大手ヤム・チャイナ・ホールディングスは、同国で「KFC」、「ピザハット」、「タコベル」の店舗を1万4000店余り運営している。米ケンタッキー州ルイビルに本社を置くヤム・ブランズは2016年に中国部門を分離し、独立企業として上場させた。競争激化と食品の安全性への懸念が業績に響いたためだ。ヤム・ブランズはヤム・チャイナの売上高の一定割合を徴収している。

 米スターバックスも、多少苦戦しているとはいえ、中国で大きな計画を持っている。同社は2022年、中国でさらに数千店の新規出店を予定していると発表した。中国企業のラッキンコーヒー(瑞幸珈琲)は最近、世界最大のコーヒーチェーンであるスターバックスを上回り、売上高と店舗数で中国最大となった。ラッキンコーヒーは現在、スターバックスの2倍以上の約7000店舗を中国で展開している。

 市場調査会社ユーロモニター・インターナショナルのアナリスト、エミール・ファジラ氏によると、中国はハンバーガー・ファストフード店の売上高で世界第5位の市場であり、年間およそ6%の成長を遂げている。これは米国、カナダ、フランス、ドイツを上回るペースだ。ハンバーガー・ファストフード店は中国のファストフード市場全体の5%に過ぎないため、成長余地は大きいとファジラ氏は言う。

 マクドナルドはハンバーガー市場で圧倒的なシェアを占める。ビーフバーガーを提供する中国のファストフード店におけるマクドナルドの市場シェアは2023年に74.6%となり、18年の71.5%から上昇した(ユーロモニター・インターナショナル調べ)。

 中国のマクドナルドは、ダブルチーズバーガーとチキンナゲットといった二つの商品を1.92ドルで購入できるメニューが人気だ。

 マクドナルドは2017年、中国・香港・マカオ事業の株式80%を、中国国営複合企業の中国中信集団(CITIC)や米投資会社カーライル・グループなどで構成するグループに21億ドルで売却。その結果、同事業の株式保有比率はCITICが52%、カーライルが28%となり、マクドナルドは20%に低下した。

 現在、マクドナルドはカーライルが保有する株式28%を買い戻し、中国事業への出資比率を48%に高めようとしている。マクドナルドは昨年11月、この買い戻しは「慣例的な規制当局の承認」を得ることが条件となると述べた。ボーデン氏は2月、同社は「市場の長期的な可能性からさらに利益を得る」ことができるとの見方を示した。

 マクドナルドとカーライルはコメントを控えた。

 マクドナルドが中国へのエクスポージャーを高めることを決めたのは、巨大な人口を抱え、同社が成長する余地があるからだろう。金融サービス会社スティーブンスのマネジングディレクターで、外食産業を専門とするアナリストも務めるジョシュア・ロング氏はそう語る。

 ロング氏は「地政学的な緊張状態にもかかわらず、マクドナルドはこれを機に投資を拡大しようとしている」とし、同社の一貫性と利便性というイメージに顧客は魅力を感じていると述べた。「確かに競争はあるが、いくつかのブランドが好業績を上げる余地も大きい」

 マクドナルドは中国での売上高を定期的に公表しているわけではない。同社は昨年11月、2022年の中国および香港での売上高が世界売上高の5%近くを占めたと明らかにした。

 今年2月には、フランチャイズをライセンス供与している国際セグメント(中国含む)の売上高が昨年9.4%増加したと報告した。

(The Wall Street Journal/Newley Purnell)

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