【3】石平氏講演/中国の現状と今後
共産党が、そういう政策転換をやった原点は、どう考えてもやっぱり天安門
(事件)を隠したい、天安門というキーワードを人々の記憶から消したいという
ことです。それはかなり成功したんですよ。
今,中国国内は、大半の収入あるエリートとかは、天安門の事はもう何かという
事は忘れたという人が形作っている。まだ忘れてないのは一部の変わった者達、
まあ僕みたいな変わり者が忘れてない。
大体利口な奴はみんな忘れてしまっている。一生懸命市場経済の中で波に乗って
頑張っている。それが中国がこの20年間、共産党の安定に繋がった要素だと
私は思います。
天安門事件以来20年間、中国で起きた変化の意味がそこにあると思います。
そしてその結果、何がもたらされたかというと、1つは皆さんご存知のように、
反日的(な感情)。2005年の反日デモを頂点とした、「とにかく日本は悪い、
何もかも日本が悪い、とにかく日本は憎たらしい」そういうような20年間の
それ(教育)
実はこの20年間、日本は中国に対して何も悪い事していない、にも関わらず
とにかく日本が悪いという事で、結果的に2005年の、私から言えば理由無き
反日運動が(起こった)
2005年に日本は中国に対して何も悪い事やってないですよ。日本は国連の
常任理事国に入るかどうかの問題でデモがおきたでしょう。別に日本が常任
理事国に入るのは中国にとって悪い事は何も無い。
2005年の反日デモは、この20年間の、いわゆる江沢民政権の天安門隠しの
マジックにある流れが1つの頂点に達したということ。
しかし大体ね、頂点のなかの時に裏目にも出たんです。2005年の反日デモを
注意深く見てますと、あれさらにね、1ヶ月やっていれば、見事に反政府デモに
転換してしまう。そういう胡 錦濤から見れば危険性、私から見れば希望に満ちた
可能性が(あった)そういう可能性があったんです。
それで胡 錦濤達も、何が分かったかというと、要するに反日、愛国主義という
火をみだらに点(つ)けるという事は、彼達自身にとっても危ないということ。
場合によっては、この火が自分達のお尻の下に延焼してくるかも知れない。
ただあれ以来ね、中国共産党がちょっと反日とか、今でも反日やってるんです
けどちょっおとなしくなったんですよ。皆さん今振り返ってみれば分かるで
しょう。あれ以来、日本に対してそれほど言わなくなった。
勿論そういう効果を挙げたもう1人功労者がいたと思いますが、小泉さんです。
とにかくあの5年間、靖国に参拝したという事が、何を中国共産党に分からせた
かというと、要するに日本の総理大臣は「お前達の話を聞かなくてもいい」って
こと。
それで彼等に分からせた事は、今の中国共産党は反日もやりますし、愛国運動も
やってるけれども、この愛国教育1つで政権をまとめるというマジックは限界が
あるという事。それが1つ。
もう1つ、ここが一番大事だと思いますのが、さっき申し上げたように、南巡講話
以来中国共産党は、愛国主義教育と同時にもう一方の政権維持の(為の)国策で、
結果的に市場経済を発展(させてきたこと)みんなに儲けさせる、その代わりに誰
も中国共産党政権に反対を言わなくさせた。
その政策も1つ大きな限界があるんです。かなりこの政策とった20年間成功して
きたんです。何が限界かいうと…
要するに20年間経済の繁栄と成長をもって中国共産党の政権の正しさを証明する
でしょう。毎年6月4日、要するに天安門事件の記念日の日、北京の外務省の記者
会見やってる場で、必ずどこかの外国の記者が「今日は6月4日、天安門事件に
対して中国政府はどう評価するか」という質問をぶつける。
そうすると、中国政府の答は決まっている、常に決まっている。どういう答かと
いうと、「今の我々中国は、経済成長で繁栄している。この経済の繁栄がまさに
天安門事件に対して我々が取った鎮圧が正しかった事の証明です。天安門事件を
鎮圧したからこそ、今の繁栄がある」という言い方。
おそらく中国国民の多くもこの言い方には納得する。ほら、あれで鎮圧したから、
今我々が繁栄しているんじゃないか。そこが中国共産党の老獪(ろうかい)さ、
凄い上手です。
しかしね、ここにも必ず落とし穴がある。この落とし穴が何かと言うと、20年間
そういう事をやってきて、じゃあ何が起きたかというと、中国共産党が(その)
政権を守れるかどうかは経済の成長に依存してしまうという構造になってしまった。
要するに経済が成長すれば中国共産党は正しい。もし経済がダメになったら、この
天安門事件の鎮圧が正しかったという論理が通じなくなる。どういう事かというと
中国共産党がこの20年間やってきた中で、自分達の運命を経済成長に託してしま
ったという事。
しかし、歴史的、長期的な視点からすれば、それは彼達にとっても大変危険な話。
というのは経済が永遠に成長する国はどこにも無いから。経済というのは成長する
時もあれば、また落ちる時もある。経済が決して胡 錦濤の話を全部聞くわけが
ないでしょ。
別に経済に対して秘密警察を使って胡 錦濤の話を聞かせることは出来ないから。
経済には経済自身の法則があるでしょ。上がる時もあれば落ちる時もある。
中国共産党が天安門事件以来(とってきた)、経済の繁栄をもって天安門での鎮圧
の正しさを表明するという論理はいずれ必ず裏目に出る。その時、要するに経済が
落ちた時はどうするか、という事です。
そういう意味で、皆さんもご存知かもしれません、僕も産経新聞にも書いているん
ですけれど、最近中国で、巷間でよく使う言葉「保八:ほうはち」保八とは何か。
八は成長率の話、要するに経済の成長率8%。保は保つ、死守する。要はどんな
事をやっても8%の成長率を保たなければならない。
どうしてそんな事を言うのか。要するにこの成長率から下がると半年、1年間なら
いいですけど、2、3年間8%以下の成長率やってると中国共産党政権が持たない
という事。
それがさっきの話と繋がっているんです。要するに彼達は、結果的に共産党政権の
運命を、具体的に言えば8%の経済成長率に託してしまっている。ここから問題が
生じていく、あるいは可能性のあるドラマが生じていく。
彼達が果たして永遠に8%を保つ事が出来るかどうか、そこから私の楽しみも生じ
てきます。これからは、この問題で行きます。