命のカウントダウン2(健康余命891日)

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痛くない注射を目指しています

2023-11-14 23:33:24 | 医療
(この記事は2019年11月27日の記事の焼き直した2022年10月15日の記事の再焼き直しです!)新型コロナのワクチン接種に加えて、インフルエンザのワクチン接種が増えてきました。このシーズン、毎日50人程度の方に各種ワクチンを接種し続けております。


私は、インフルエンザを始めとする全ての予防接種で可能な限り痛みを少なくしたい、可能であればゼロにしたいと思っています。可能であればすべての医療行為から不快感を取り去りいと願っております


注射は痛いですよね。痛いことが目的ではなくて、薬液を体内に入れたり採血したりする事が目的なのに・・・蚊は、痛みなく採血して去っていきます。ただ、痒みは残していきますが・・・・


注射の痛みは、注射の部位(場所)、注射の角度、注入する注射液の内容、注射液の注入速度、注射針の太さ、注射針の切れの良さ、注射される方の痛さに対する感受性や精神状態、性格や年齢、体調などが複雑に関係します。


注射針は、細いほうが痛みは少ないのは勿論です。蚊の嘴程に細くすれば、刺されたかどうか分からないのは、皆さん自分自身の人体実験で検証済みですよね。でも、細すぎるとうまく目的の部位に注射液の注入することや、採血が難しかったりします。そして蚊の嘴ほど細いと、刺すときに折れ曲がる心配すらありますし、何より製造するのも非常に困難です。金属で作るのも難しい細さなのに、蚊の嘴はタンパク質なんですよねぇ。そのうえ、驚いたことに、蚊の嘴:口吻って6本の針の束なのですって!!それでいて、髪の毛よりも細い!!!自然って何と偉大でしょうか!!驚嘆しますね!!!


蚊の嘴を模して(あんなに複雑ではありませんが)、痛くない注射針をテルモが作りました。34Gというゲージです。特殊な針で、糖尿病にしか使用できません。
https://www.terumo.co.jp/newsrelease/detail/20190225/482
https://www.terumo.co.jp/medical/equipment/me104.html
特殊な技術を使っていますので、高価です。しかし、世界一痛くない注射針ナノパスニードルは日本製(テルモ)だという事を知って下さい。


それほどではなくとも、これまで当院(奈良県田原本町の坂根医院)では、予防接種にはなるべく細い針(通常は27G)を使用してきました。ツベルクリンなどの皮内接種に使う注射針ですが、インフルエンザワクチンなどの皮下接種にも十分使えると私は思っています。私の友人に30Gというか細い針を使っておられる方がいます。私も試してみたのですが、高価で、その割に患者さんの評価に変化がすくなかったので採用を見合わせました。しかし、来年、インフルエンザの予防接種を値上げして、その代わりに30Gの針を使うことを検討しています。現在の値段(1回目:¥3,000 2回目:¥2,500)のままだと、普段来られていない 見知らぬ接種希望者が多すぎて、普段通りの診療体制が保てないからです。多分、来年そうすると思います。


当院では、予防接種の薬液をシリンジに吸う時は別の針(23G)を使っています。
下の写真、上の青い針(23G)は薬液をシリンジに吸い上げ専用で、
下のピンクのキャップの針(27G)に付け替えて接種します

こんな面倒な事をするのは、同じ針で薬液を吸うと、注射する針を薬液の入った瓶のゴムに刺した後で患者さんの皮膚に刺すことになって、針の切れ味が落ちて、痛みが増すからです。
薬液を吸う針と注射する針を別にするなんて面倒な作業をしているのは少数派だと思います。同じ針で吸って注射しても注射する側は何の問題もありませんから。でも、される側は違うのですよ。ちょっとした手間暇を掛けるか掛けないかが不快な感覚を下げてくれるのです。料理などにも共通したことがありますよね。


注射の痛みに鈍感な医療機関は多くて、予防接種に23G(青色)を使っているところも多数あります。もちろん、同じ針で薬液吸って接種もされるのでしょう。それが多数派で標準なのでしょう。もっと太いものを使っているところもあるらしくて、何を考えておられるのか?とは思いますが、経済性もあるのかもしれません。細い針ほど値段が高い傾向にありますから。


予防接種に使うのは、細めの針の方が良いですが、静脈注射や採血では、話が変わってきます。適材適所なのです。


27G、30Gなどという細い針では採血は出来ません。採血したら血球が壊れてしまいます。血球が壊れると、検査データがめちゃくちゃになってしまいます。蚊の口吻は細いですが、血球壊れても問題ありません。蚊が欲しいのは血液の栄養なのですから。
当院では、採血、静脈注射には、22Gを使用しています。これはまあ一般的だと思います。献血など、大量に採血する時は、18Gを使うようです。適材適所であります。

当院では、輸血には18G、採血や静脈注射、点滴には21~22G、筋肉注射には23Gそして皮下注射に27Gを使用しています。これは太さだけの話で、同じ太さでも用途によっていろいろな針の種類が存在します。長さ、針の角度、翼状針、通常針、プラスチック製の留置針という特長時間の点滴に使用する特殊なものもあります。


先日、所さんの目が点 で紹介していた。注射部位を事前にツネって刺激しておくとか、注射されているときに注射されていないほうの手で、他の場所をツネって注射の痛みを誤魔化すなどの方法も意外に有効らしいです。

あと、注射する部位に局所麻酔剤のテープを貼ったり、局所麻酔クリームを塗っておくという手もあるのですが、これは1時間以上経たないと有効ではないのです。当院では水いぼの除去の際にこの手を使いますが、注射では面倒なので使うのをやめました。


今後も、「痛くない予防接種」「不快感のない医療」を目指して学びを続けるつもりです。
患者さんをリラックスさせることもとても重要
注射の意義を理解していただくことも有意義なのだそうです。だから大人は痛みを我慢しやすいのでしょう。

今後も多角的に「痛くない予防接種」「痛くない注射・採血」「不快感のない医療」の情報を集め続け、それを実践したいと思っています。実りある学習は楽しいです。長々お付き合いありがとうございました!



ゾフルーザが効かない?

2023-11-14 13:41:58 | インフルエンザ
今朝、「昨日、他医でインフルエンザA型と診断され、薬を飲んだけれど効かない。解熱剤を服用しても熱が下がらず39℃でぐったりしている。何とかしてください」と電話がありました。患者さんは男子高校生で、普段は元気なのだと思われますが、本当にぐったりと後部座席で横になっていました。
聞くと、抗インフルエンザ薬はゾフルーザを処方され、昨夜と今朝、1錠ずつ服用したと言われます。あれ???ゾフルーザって一回だけの服用では無かったかな?確かめてみるとやはりそうで、昨夜2錠一回で服用するように薬袋に書いてありました。
1度に2錠飲むべきところを2回に分けてしまったので血中濃度が上がらずに効かなかったのかもしれませんね とは言いましたが、それにしても効きが悪いですよね。

それで、調べてみたら、何だか怖い現実?が見えてきました。現在流行しているのはA型、その中でもA(H3N2)亜型(いわゆる香港型)が主流です。2018年から売り出されたゾフルーザですが、2019年には
「ゾフルーザ」を投与されたA香港型のインフルエンザ患者30人を調べたところ、70%余りに当たる22人から、この薬が効きにくい耐性ウイルスが検出されたことが国立感染症研究所の調査で分かりました。
というレポートが出ています。耐性菌を作りやすい薬なのですよ。
一回の服用で治療が終了する便利な薬で体重10㎏以上の子供に使える素晴らしい薬なのですが、便利なので使われ過ぎました。使われ過ぎた結果、耐性ウィルスが多く存在するようになってしまいました。今回、「全く効かなかった」のは服用方法が間違ったせいもあるでしょうが、耐性ウィルスだった可能性が高いと私は思っています。
私個人としては、小児には使うべきではないと思っていますし、日本小児科学会、日本感染症学会もともに12歳以下には使用を勧めないと言っています。私は2019年以降全く使っていません。
今回の症例は15歳でしたが・・・同じ高校の生徒が薬が効かないと言っているらしいです。耐性菌が流行っているのに、ゾフルーザが処方され続けているのかもしれませんね。
抗インフルエンザ薬、一長一短はあります。そしてどの薬でも耐性ウィルスは存在する事が分かっています。とはいえ・・・現況でのゾフルーザ使用は、お勧めしかねます。だって、一番高価なのに、全く効かない可能性が高いのですから!!!