命のカウントダウン2(健康余命811日)

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ワークライフバランス微妙です。

2023-09-21 22:55:15 | 在宅医療

佐渡旅行、本日21日の夜に帰着する予定だったのですが、2日早めて一昨日夜に帰ってきました。

昨日は、留守番をしてくれていた息子を交え、家族3人で3人麻雀をしました。

これまで、したいねぇと言ってはいたのですが、実際に卓を囲んだのは初めてのことでした。

ゲームソフト上でしか麻雀を知らない息子や配偶者が実際に打てるのかどうか危惧していたのですが、その点問題なかったです。勝負は、トータルでは勿論、雀歴半世紀以上の私の勝ちでしたが、圧勝というわけでもなかったのが意外でした。配偶者は、その生き方と同様にとても手堅かったですし、息子は結構挑戦的で、振り込みは多かったけれど、清一色やリーチ三暗トイトイなどでっかい手も上がって大喜びしていました。私は、相手がでかい手を狙ってそうな時は安い手でやり過ごしたりする、イヤーな奴でございました。性格出ますねぇ!!家族三人で時を忘れて遊べて、楽しかったです。(私は!)

昨日は水曜日だったので、麻雀を打っている間にも、患者さんからの電話がしょっちゅう掛かってきました。

「すみません、今日は臨時休診なんです。ごめんなさい。」と、謝り続けました。麻雀なんてやってていいのだろうかとは思いましたが・・・・二か月前から休診と言ってきたのに、今更開けるわけにもいかないしねぇ。スタッフもいないし。なんだかんだ言い訳しながら麻雀を続けました。

「坂根医院、すごく人気あるんや」と、息子が言ってくれました。

少しうれしくなりました。

「継いでくれたらいいのに。」

「それは、無理」

「そうかぁ、残念やなぁ」

そんな会話が出来たのが嬉しかったです。

本日21日も3人共通の時間はあったのですが、息子が乗り気ではありませんでした。

昨日、少しいじめすぎたのかもしれません。もう少し負けてやったほうがよかったのか?

まあ、そんなことが出来る私ではないので、仕方ないですね。

 

昨日、麻雀前に、気になる患者さん2名の訪問診療に行ったのですが・・・・

今日、そのうちのおひとりが亡くなった様だとの電話がありました。

昨日、訪問診療時、全くそんな気配がなかったので、びっくりしました。

午前中の訪問看護師の訪問時にも全くお変わりがなくて、午後早くにヘルパーの訪問時間帯に急に呼吸停止したとの事でした。1時37分にヘルパーが急変に気付き、呼吸停止した事をヘルパーとご家族が確認したのですが、頸動脈の拍動はあったとの事でした。1時47分訪問看護師が到着したときは心肺停止、瞳孔も散大し始めていたそうです。私が到着したのは2時3分。総合的に亡くなっていることを確認させていただきました。もちろん、まだ暖かくて、死後硬直もほとんどなく、顔色は蒼白でしたが、穏やかな表情でおられました。

今年に入って9人目の在宅看取りでした。多いときは、年間40人以上在宅で看取っていました。しかし、最近では20人を切るようになりました。在宅看取りの要望は多いのですが、体がもたないのと、遊びに行きたいので、何とかお断りするようにしています。どうにも済みません。

在宅看取りというと、亡くなるときに医師や看護師がそばについて最後の時を迎えると思われるかもしれませんが、そんなことは殆どなくて、看取るのは多くの場合ご家族です。医師は、連絡を受けて確認に行くだけです。

在宅医療、訪問看護師や、ヘルパー、薬剤師、ケアマネージャーなど、多くの職種の方がチームになって在宅医療に取り組みます。それぞれがプロとして在宅医療チームを作り上げていくのですが、ご家族に相当な負担をおかけするのも確かなことです。もちろん、独居の方の在宅看取りも可能ではあります。しかし、それには、ご本人の相応の覚悟が必要です。

今回お看取りさせていた老婦人Aさん。2か月前までは、慢性呼吸不全、慢性心不全を抱え、在宅で酸素吸入しながら、認知症の老夫Bさんとの二人暮らしを支えてこられました。しかし、本年7月末にAさんが新型コロナに罹患。慢性呼吸不全、慢性心不全があること、罹患していないBさんと隔離する必要もあって、一か月弱入院されました。お盆過ぎに退院されてきたのですが、食欲低下、全身状態悪化が回復せず、大阪在住の娘さんが週の半分ほど泊まり込みで介護、生活援助に来てくれていました。今月に入って、その娘さんが音を上げ始めました。

良性疾患の患者さんが状態悪化した場合。何処まで医療行為をするのか、何処で看取るのか、とても難しいのです。今回のAさんも、ご本人は「入院はもう絶対に嫌。自宅で死にたい。」と明確な意思表示をされていました。ご家族も可能な限りそれに沿いたいと思っておられました。しかし、ご家族にも生活があります。母親であるAさんの希望をかなえるために、娘さんは自分の生活を犠牲にしなければなりませんでした。

がんなどの悪性疾患の場合は、「先が見える」のです。具体的には、悪性疾患で自分でトイレに行けなくなったら、3週間くらいで最後の時が来ます。そして、それまでの期間、自分で何とかトイレに行ける期間は、ご家族に大きな負担は掛かりません。

しかし、良性疾患の場合、先が読めません。生命予後の先が読めないうえに、負担の大きい期間がいつまで続くかもわからないのです。今回のAさんの場合、食欲不振で食べられないという生命予後を限定する要素はあったのですが、水は飲めました。そうすると、少なくとも2,3週間は手のかかる状態が続くわけです。喜ばしいことではありますが、少しでも状態が改善し、少しでも食べられるようになったら、手のかかる状態は伸びるわけです。脳梗塞後遺症などの場合、とても手のかかる状態が10年以上続くのもよくあることです。

私は、旅行前に旅行中だけでも安定した状態でいていただきたいと、身勝手もあって、24時間の持続点滴を提案、ご本人の同意も得て一日施行し、翌日には元気になってご機嫌もよかったのですが、2日目になってご本人もご家族も「やっぱりこんなの要らない」と言われて持続点滴を抜去してから旅行に出ました。

訪問看護師から毎日状態報告はもらっていて、安定していると安心していたのですが、予定を早めて帰宅して真っ先に行ったのはやはりAさん宅でした。昨日のAさん、血圧や呼吸状態などのバイタルサインも安定していて、ご機嫌も良く、「帰ってきてくれてありがとう」と、言っておられたのですが・・・・

今日、突然亡くなったことには驚きました。でも、苦しまれることなくご希望通りご家族に看取られてご自宅で最後の時を過ごすことが出来てよかったと思っています。ご家族も満足しておられました。

在宅医療、最後の時を住み慣れた自宅で過ごしたいと思われる多くの方にとって不可欠な医療だと思っています。しかし、在宅医療に取り組む医師は少数派です。それは、多分、自分の時間が持てないからだと思います。私はもうすぐ70歳になる引退寸前の老医師です。住み慣れた自宅で、日常を取り戻して生活される患者さんのサポートをすることに喜び感じています。だから、在宅医療に未だに携わっています。

政府、厚生労働省は、金銭面で在宅医療をサポートしようとしています。私が在宅医療を始めた30数年前、深夜に往診したときの報酬は¥8,000でした。現在は¥32,000くらいでしょう。でもね、違うのですよ。多くの医師は、報酬よりもワークライフバランスの維持を求めています。具体的には、現在在宅医療に携わっている医師は、24時間の出動態勢が求められています。それを、普通の勤務医や在宅患者を持たない開業医の様に限られた時間の勤務にして欲しいのです。より具体的には、医師会などで体制を整えて、輪番で時間外の患者を診る体制を作り上げるなどして、訪問診療をしている医師の時間外労働のブラックさ加減を軽減する方向に持っていくよう努力してほしいと思っています。そうでないと、いくら訪問診療の点数を上げても、一方で点数の高い医療機関を「個別指導」という名指しで苛めているのですから、訪問診療に行くのは、相当変わった変な(人の良い?ある意味頭の悪い)医者だけになっている現状を変えることはできないと思います。