「2083―ー欧州独立宣言」日本語版

グローバル極右界の「共産党宣言」、現代世界最大の奇書

ユーラビアなるEU憲法(p300~)

2012-11-08 21:53:27 | 現代欧州
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 15年後、ジスカールデスタンは、あの「畏怖なる巨冊」EU憲法の原案執筆に携わった。米国憲法なら払われている筈の均衡と抑制の欠片もないあの巨大煉瓦のような本だ。フランスとオランダでこの巨大煉瓦が否決されると、彼は

 これは正すべき誤算だ。最後にはあの文案で可決されるだろう。国民投票に訴えたのは誤りだった。全文を理解できる者などどこにもいないのだから

と述べた。官僚以外には理解できない「憲法」に何の意味があろう?スペインのフアン・アギラル法相は「欧州憲法は良きものだから下々は読む必要なし」とも述べた。
 ベルギーのジャン・リュック・デュハーン元首相は「9割の民が政治家や報道機関の論評のみを見て投票することは把握している。もし否決されたらやり直すまでのこと。答えはイエスでなければならないのだから」と述べた。
 ニドラ・ポレル記者は、フランスのEU憲法議論でEU人材たちの媚イスラム姿勢を問題視した。「欧喰対話こそ屈服の象徴。EUが欧州の伝統文化を溶解させ、ユーラビア・カクテルで我々を酔わせようとしている。対話のヒジャーブの中で屈服的媚敵が行われる中、高貴なる“憲法”を論じることに何の意味があるのか?」
 2005年、EU諸国は総額6億1215万ドルをパレスチナ自治政府に援助した(米国も行っている)。倫敦7・7テロ直後に行われたその年のサミットでは、90億ドルが「憎悪へのオルタナティブ」としてパレスチナの手に渡った。
 学校、病院、空港などパレスチナの社会基盤はほぼ全て、EUの手で建てられたものだ。2000年第二次インティファーダが勃発し、イスラエルがパレスチナへの送金を停止すると、EUは自治政府に対し予算面で月1000万ドルの支援を与えた。
 パッテンは2002年、「EUの資金が武器購入やテロルのために使われたことはない」と弁明した。しかし、事実は反対だ。パレスチナ治安部隊のフアド・シュバキー元財務局長が認めたように、アラファト議長は世界からの援助金を数百万ドル単位で「貨物船」カリンA号を含む武器の購入に充てていた。ヒズボラやイラン革命防衛隊も協力していた。
 2006年4月、アラファトの座を受け継いだファタハのマフムード・アッバス議長は、武闘部門のアル・アクサ殉教師団に欧米の経済制裁へ抗議するよう嗾けてから欧州議会での和平交渉に臨んだ。これはつまり、援助をしてもパレスチナは決して感謝せず、それどころか援助しないと殴ると脅迫することを意味する。この構造は正にEUからパレスチナへのジズヤ体制ともいえよう。欧州市民の知らぬ場所で、ジズヤが徴収されたのだ。
 このアラブ支援予算は合法的なものでさえなかった。欧州会計監査院は2004年度、1600億ドルを助成しようとした案を否決した。5億人近くの人民を代弁する欧州理事会の出す予算案はとにかく欠陥が多い。
 ムスリムは夷教徒が晩時の嘆きになるまでジハードをタキーフ戦術で推進する。ユーラビア主義者はイスラムの手の上で、官僚的新話法を駆使して隠形的に彼らの十年越しの目標に貢献する。ルクセンブルクのジャン・ユンケル首相は珍しくその戦術を白状した。

 外部に何か分からぬ用語で何かを決定したら、暫く待つ。決定の真名に異議が上がらぬのを確認したら、回帰不能点まで決定事項を漸進的に進める。

 エコノミスト誌のシャルルマーニュ氏いわく、

 ユンケルらの発言を纏めると、「欧州連邦の真名を官僚語の深淵海溝の中に埋もれさせ、無気力臣民を服従させて異議を封絶する」ということに尽きる。EU最大の主権移譲は単一市場を形成するための85年白書が結ばれた時起きた。あのサッチャーさえ条約締結の戒禁を理解できず、賛同してしまったのだ。

 クリストファー・ブッカーはこの「EU欺瞞文化」について、「世界史に残る憲法革命」と評した。主権保持の幻想に憑依された領導者の誰もこの戒禁に気付かなかったのだ。
 僕はEUの作法を「新封建主義」と呼ぶ。EU人材は「欧州の悪の根源はポピュリズム」とのたまうが、これは民主主義だ。EU人材は新貴族として、EUを民主主義以前の時代へ回帰させようとしている。カール・ジンスマイスターいわく、

 EUは密室主義的で非民主的組織だ。EU官僚の前線がどんどん人民の側に降りてくる。米国人は理解しがたいだろうが、「選良」を自負するEU人材は欧州人民の農奴精神を鼻先であしらっている。

 欧州憲法の起草に携わったジスラ・スチュワート女史(英国)は、「委員皆が欧州レベルの民生(キャリア)を築くことを夢み、国境的概念を障害とみなしていた。欧州人民を自分たちが代弁していないのではと懐疑したことはなかった」と述べた。
 2005年、英国主要政党の領袖たちはブリュッセルでEUの「中世的」な密室政治を止めるよう請願した。英国の3分の2に当たる法を策定するEU閣僚級理事会の秘密性は「北朝鮮やキューバ並」と述べたのだ。保守党のダニエル・ハンナン議員は、「EU創設者は、加盟国の民心を聞いていたら永久に欧州単一政策など生まれぬことを知悉していたので、民心とは無縁の官僚機関を整備した。EUは本質的に反民主的だ」と述べた。
 EUをローマ帝国に準えるのは、EUの軍事力をみれば不適切だ。しかし、この史話は参考になる。カエサルは皇帝になろうとして殺された。「僭主」を殺して元老院の共和政治が成立した歴史を無視した故に。カエサルの後継者オクタヴィアヌスはよく初代ローマ皇帝と称されるが、彼自身は「プリンケプス」(一等公民)と呼ばれることを好み、対外向けにも共和国の名称を維持した。民心の大きな動揺を防ぐため、実質的な君主でも君主と自称することはなかった。
 EUにこの事例をみるのは容易だ。4分の3の法律がEU起源の現在、国家単位の選挙に何の意味があろうか?オクタヴィアヌスの時世と同じく、実権は空洞化し、旧秩序は民心を動揺させないための「民の無花果」に過ぎない。EUの隠形立法により、これまでの議会はどんどん装飾品と化していく。滑稽なのは、EU人材が反EU論者を嫌外人流、民族主義者、反民主主義者と呼ぶことだ。EUこそ民主主義を破壊する非選挙の組織だというのに。
 新機構をつくるために、EU人材は非西洋の移民受け入れを推進して、国民国家の構造変態を進め、「多文化社会」を作ろうとする。欧州人民が欧州人意識よりフランス人などの民族意識を優越させるなら、欧州単位の新たな敵も創り出す。史上の例を挙げると、プロイセンのビスマルクは1870年普仏戦争を勝ち抜くためにドイツ諸州の統一的民族意識を煽った。ユーラビア主義の場合、米国とイスラエルをマスゴミ経由で悪魔化し、アラブ諸国と提携する道が模索される。
 しかし、ビスマルクのドイツは言語面で統一されていた。共有の身份も言語も民俗意識もないEUが統一意識となる「新たなる我ら」を形成するのには何世紀もかかるだろう。EU人材は「共通の身份なき烏合の衆なら統治も楽勝」と思っているのだろうか?より問題なのは国民国家が悪の根源とされていることだ。しかし、民族主義と愛郷(愛国)主義は異なる。ジョージ・オーウェルいわく、

 民族主義と愛郷主義は異なる。後者は、特定の場所や生活様式を世界一の様式と信じるが、それを他者に強制することはしない文武両面で防衛的な機制だ。一方前者は権力志向と不可分の関係にある。

 全体主義勢力は民族的であると同時に、民族的忠心を壊光しようとしたソ連のように至上主義的にもなる。
なぜユーラビア計画は進行しているのか?答えはその規模の大きさにあった。アレクサンドロス大王に捕えられた海賊は、大王にこう言った。「うちの海賊船は一隻だけだから奸賊に過ぎませぬが、大王さまが大水軍を率いて同じことをすれば、セカイを征服する皇帝と呼ばれましょうって」この発言を敷衍すると、

「小集団で民主主義を無視して、法律を一国の大衆に押し付けるのはクーデターだが、欧州全域で同じことをするとEUとなる」

 ヒトラーは『我が闘争』で「厖嘘」のプロパガンダ作法を解説した。大きすぎる嘘こそ大衆に信じてもらえるという宣伝戦術で、ゲッペルスにより体系的に整備された。この作法をEUも用いている。事例を挙げると、

・多様性は常に正しい
・EU統合による多文化主義は不可避だ
・反対者は歴史の潮流に反するDQNな人種主義者だ
・無数の富が流出しても、ムスリム移民は経済と福祉のためには利益だ

 ユーラビア圏の創出は西欧文明史に残る大逆行為だ。しかし、欧州・アラブ対話に参加する者すべてが悪の徒かというとそれは異なる。対話の成果は批判的な勢力にも齎されたし、純粋な良心から対話に参加している者もいる。
 2005年の映画『セレニティー』では、米中の超大国が「同盟」を結成し、ミランダという謎の惑星にパックス(泰和)というガスを撒く設定がある。ミランダ星人たちはあらゆる侵略行為を止めたが、同時に生殖活動や生存本能まで無くしてしまった。そして、ガスを受けなかった少数の民が獄壌劫火の風景を創り出し、何千万ものミランダ星人が殺光される。
 ジョス・ウェドン監督は、米中の「同盟」を原罪なき最上のセカイを目指す「善意の帝国」として描いている。しかし、監督いわく「桃源郷を顕現させようとすると必ず、背後で醜きモノが動き出す」
 ジハーディと戦った欧州の先人たちは宗教や文化、国家を護るために戦ったのだが、ユーラビア主義者たちは侵略意識なき「新人民」を生み出すために、すべての国家意識を真名的に性悪視し、防衛機制としての愛郷心まで抑圧した。そして、ユーラビア主義者たちはその虚無心を探知した血に飢えるジハーディの前で、文字通りに武装解除するというハラキリ行為に走っている。
 共産党員も最初の内は純粋にイデオロギーを信じていたのだろう。だが、強圧なき新セカイを創る冒険において数千万人を無益に紅世への道連れにしてしまった。獄炎への道は善意で敷き詰められている。
 恐らく、東欧とソ連での紅世なる惨禍を真名から総括できなかったことがEU構想が破綻していない根柢の要因なのだろう。新人民を創る構想は今も継続中なのだ。「統合の父」ジャン・モネは、欧州統合のための組織を「欧州人」創生のための「実験室」と呼んだ。だが、モネの理念を受け継ぐ「新欧州人民」は、ソ連の「新ソビエト人民」構想と同じく必ず破綻するだろう。
 EUの自浄作用は期待できない。EUの官僚たちは自分の利益のためだけにこれまで通りの欺瞞計を繰り返し、改革を求める民心を無視し続けるだろう。EU憲法が仏蘭で否決された時、超ユーラビア主義者プロディの閣僚だったジュリアーノ・アマート内相は、憲法を「条約」に呼び変えるよう提案し、「偽装工作と口実」で以て欧州統合を進めようとした。この憲法「改訂」作法にこそEUの真名が顕現している。EU人材はこれだけ人民を欺いておいて、自分たちを信用しろというのだ。もう十分欺かれたよ、いい加減。
 ブコフスキーは言う。「EUはソ連と同じく非民主的なので、やがて崩壊するだろう。そうなれば大災厄だ。EU公認の下、大量の移民が第三世界からやってきた。EU経済が崩壊すれば、必ず旧ソ連を眞心から震撼させた民族騒擾が必ず起きるだろう」。リチャード・ノースとクリストファー・ブッカーも、非民主性という観点から同様の結論を導き出す。
 この結論には僕も概ね同意するが、EU崩壊に伴う問題は「不安定性」の水準に留めねばならない。その時欧州は「痛みを伴う数年間」を経験するに終わるか、欧州が西欧文明の身份を失うかの選択を迫られるだろう。
 EUのプラスの面にも目を向けろという意見もあるだろう。しかし、EUとは風呂そのものであり、その中に浸かっている赤子などいない。
 多文化主義は、国民を「部族」レベルに分断する。これは闇黒なる中世と同じだ。異文化を「尊重」して批判するなというのも啓蒙時代以前へ回帰する思想だ。多文化主義は中世のイデオロギーであり、中世的成果しか生み出さない。
 EUは汎欧州的な身份の形成に失敗したが、既存の国民国家を弱めるのには成功した。西欧全域でムスリム移民が大都市に押し寄せ、先住民は田園部へ退却している。国家への防衛意識なき「部族主義」への後退だ。
 数世紀間、西欧人は部族よりも国民意識を優先させることで、直系の食口や親友仲間以外への同胞意識を形成してきた。この「高信頼社会」こそが、資本主義経済や民主主義成功の根源にあったのだ。そこに部族以外に頼れる守護者のない「低信頼社会」のアフリカやイスラム世界から移民がやってきたらどうなるだろう?エルネスト・バートは悲観的だ。

 多文化主義の末期の夢の中に私達はいる。やがて、夢は惨禍となって終わり、欧州は西洋文明圏ではなくなるだろう。子孫達から、どうして多くの人が欧州の歴史と良識に反するイデオロギーを安易に是認したのかと問われるに違いない。

 平凡な欧州人民がムスリムの暴力に怯えているのに、EU人材は欧州が平和になったと宴会を開く。EUは戦争も民族紛争もない「素晴らしき新セカイ」を公約する。人民を「新しき中世」へ連れていくのだろうか?よくある桃源郷思想のように。

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紅世化するEU(p297~)

2012-11-08 21:24:40 | 現代欧州
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 ソ連で12年間拘留されたヴラジーミル・ブコフスキー(英国在住 反プーチン運動にも参与)は、EUをソ連の後継組織と呼び、2002年BBCの強制放送契約加盟制導入に反対するデモに参加した。彼は「英国人は言論の自由を抑圧する組織に金を払わされることになる。BBCのEUや中東に関する報道は偏向し過ぎている」と語る。
 英保守党のマイケル・ゴーヴ議員や評論家のマーク・ドゥーリーも同意見だ。2002年PLOのアラファト議長が亡くなった時も、2004年ハマスの「松葉の野望」ことシェイク・アフマド・ヤシン議長が暗殺された時も、BBCは彼らを敬虔なる英雄扱いするばかりで、彼らの腐敗や夷教徒への討滅活動を語ることはなかった。
 ポーランドのニーナ・ヴィトズジェク女史(現ノルウェー在住)も、西欧での出来事が共産主義体制下の東欧での出来事と重なって見えると語る。

 親イスラエルすぎないか、反フェミ的でないか、反イスラムでないか(アッラーよ、お許し下さい笑)、十分「進歩的」か…等と皆が自己検閲している。「対話」「多元主義」「和解」「平等」のマントラが抑圧的に繰り返される。これが今のノルウェーですが、良識あるノルウェー人はやがてこの去勢された妄想民主主義に時間を無駄使いしなくなるでしょう。自由より大切なのは安全です。

 そして、全体主義イデオロギーの魅惑を語ったノーベル文学賞作家チェスワフ・ミウォシュの『囚われの魂』(邦訳は共同通信社)を引用する。
 ミウォシュの作品の中に「キットマン」というものがある。「白優の騎士」アルテュール・ド・ゴビノー(1816~82)の『中央アジアの宗教と哲学』に触発された作品だ。ここでは迫害されたイランのシーア派が歴史的に内部をも騙す欺瞞の知恵をどのように発達させ、やがてはスンニ派の正統派までを呑みこんできたかが語られる。
 共産主義諸国でも同様のキットマン的戦術が採られた。そこでは、本音を公然と語った者は嘲笑され、共産主義的な欺瞞を語った者が優秀とされた。こうした欺瞞的手法が全体主義的体制の中で横行し、ついには自覚的な芸術表現となって顕現した。
 現在のEU政策について、旧共産圏の作家からこうした発言が出るのには驚愕する。我々が共産主義と同じ手法でPC主義や多文化主義の戒禁に洗脳されているという観察は残念だが正しい。EUの官僚たちはムスリムの暴力と脅威に屈し、検閲を行っている。東欧における鉄のカーテンの崩壊は、即ち西欧全域への「鐵のヒジャーブ」の幕開けに過ぎなかったのだろうか?
 欧州先住民も非イスラムの移民も欧州の地を少しずつ離れつつある。我々は難民輸出圏になったのだろうか?欧州が元首お墨付きのバルバロイに蹂躙されるのを黙視するしかないのだろうか?西欧は自由世界でなくなってしまうのだろうか?東欧はもう一つの「惡の帝國」になってしまうのか?欧州ソビエト共和国が復活するのだろうか?
 チェコの保守主義者ヴァクラフ・クラウス大統領は、「ソ連時代の規制を取り除くのは、いつでも欧州委員会の指令を受けてのことだった」と回想した。しかし、2006年ブコフスキーは今やEUがソ連化してきていると述べる。ブコフスキーはEUが無敵の全体主義的「厖獣」になる前に、EUを解体するよう訴えた。いわく、

 ソ連の究極なる使命は、全セカイを覆う新たな歴史の主体となることだった。EUが「新欧州人」という新主体を形成しようとしているのもこれと酷似している。ソ連式共産主義の教義によれば、ソ連を含め国民国家という概念はやがて消滅していく筈だったが、実態を見るとソ連という国民国家は途轍もない強圧国家となり、民族感情を圧迫した。しかし、ソ連崩壊が近づくと、消滅したはずの民族感情が復興して、国を壊光した。戦慄の事態だった。

 ティモシー・ガートン・アッシュは国家への愛国心を軽視し、欧州主義を称賛する領導者階級の一員だ。彼は「欧州諸機関への感情的身份」を高め、「炮火の飛び交った欧州野蛮主義の暗黒の過去に回帰しないために」、旗や欧州歌などで「欧州愛族主義」を形成しようと訴える。そして、民主性はスルーして「アラブ連合の形成」を主張し、マラケシュからヴラジオストクまで広がる「合夥結盟」を訴える。
 EU誕生に繋がる欧州経済共同体条約(ローマ条約)の締結50年を祝して、2007年大規模な締結紀念パーティーが計画された。この時、ポーランド等の旧共産諸国は、人民が強圧的に翼賛させられた「スターリン時代」の過去を思い出すと嫌悪感を示した。そのため規模は縮小されたが、それでも30万ユーロかけて50人の「市民大使」が「欧州の顔」にされ、彼らの「日常」が語られた。ドイツはEUの27国に向けて54種類のケーキを焼いてもらおうとした。
 欧州委員会のマルゴット・ワールストリョム委員長(スウェーデン)は2005年、国家主権を保持しようとするのはナチに回帰する動きだと論じた。女史の仲間たちはEU憲法に賛成して第2次大戦の死者を悼もうとも述べた。欧州委員会は自らのみを冷戦終焉の立役者とみなす声明も出した。
 EUは戦争終結の道具になりうるのか?2006年10月、フランスのミシェル・トゥーミス「行動する警官労組」事務総長はフランスでムスリム移民との内乱が生じる可能性を警告した。

 我らはイスラム過激派との内戦を戦っている。これは都市暴力ではなく、石や火炎瓶が飛び交うインティファーダだ。今や町ぐるみで、「戰友」たちを匿う闘争が行われている。

 ムスリム移民は「EU人材」たちの手引きでやってきた。西欧社会はイスラムの強圧により解体の一途を辿っているが、EU人材たちはそれでも更なる移民推進を行い、「大陸に泰和を齎した」と自賛する。何が泰和なのだろう?
 1648年のウェストファリア条約で近代国民国家の地位が確立する以前、欧州は絶え間なく生じる国境なき宗教内乱に悩まされていた。今日、国境なきジハーディがその役割を果たしているのだろうか?EUが独仏などの国民国家間の大戦を防いだことは確かだ。しかし、EU人材たちの政策により、文化間の緊張が高まり、危険な意味での疎外感がEU人材と市民との間に生まれている。戦争は近代国家の誕生前から何千年間も続いてきた。近代の主権国家が弱まると、同時にその伴侶たる民主主義体制も崩れていく可能性の方が高い。
 EU加盟や欧州市民の民意の反映振りを構成民族に尋ねれば、答えは必ずノーだろう。ブコフスキーいわく、「デンマークはマーストリヒト条約を2度否決し、アイルランドはニース条約を拒絶した。恐喝的圧力をかけられたことへの反動だ。否決されるやいなやEUは投票手続きを止めた。つまり、EUとは一種の虐待的「ご奉仕結婚」なのだ。
 ソ連の機密資料に基づくブコフスキーの『モスクワでの審判』によると、1989年1月フランスのジスカールデスタン元大統領(当時)は、ゴルバチョフやキッシンジャー、中曽根康弘を前に「欧州はやがて連邦国家になるから君達は準備しておきたまえ」と言ったとされる。

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