「2083―ー欧州独立宣言」日本語版

グローバル極右界の「共産党宣言」、現代世界最大の奇書

2.12 父なき文明 (p359~)

2012-11-19 22:07:52 | フェミニズム批判
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フョードマン同志


 出典

 萬の大国自殺せし。此れ歴史の検死結果なり――トインビー

 米国のダイアナ・ウェスト女史は著書『成人の死』(2007)の中で、西洋文明衰退の真因を2世代に亘る青年叛逆に求めている。1960~70年代以降、欧米では脱植民地化と非西洋移民の多文化主義や急進フェミニズムの昂揚、ユーラビアの誕生といった大洪水が起きた。
 皮肉なことに、これら反西洋思想の骨格は、西洋の特権的利益を享受しながら形成された。大富豪だったエンゲルスの助けを借りたマルクスのように。それ以来、西洋文明は自文明のみに永遠に反対する戒禁に特権機関までが囚われている。
 ウェストによると、「この半世紀間、文化の権威が大人から思春期青年へと一貫して移転していき、西欧文明は未曽有の危機に瀕した」。大人の成熟文化ではなく、思春期的流行音楽で悠久の若さを無身份的、無倫理的に宣言する風潮が蔓延し、永遠の17歳となった西洋人は慢性的な危機感に囚われた。成熟という概念が吹き飛び、あらゆる権威が嘲笑されたからだ。
 この祖形は1950年代にもあった。エルヴィス・プレスリーやジェームス・ディーンなどによるロックの誕生だ。60年代のビートルズは麻薬と反権威に奔り、その潮流がやがて全文化に浸透した。
 僕の大好きな映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で、主人公マーティは1985年から1955年に転移するのだが、そこでマーティは「進歩」という言葉が全く別の意味で使われているのを発見する。脚本のロバート・ゼメキスとボブ・ゲイルはこの年に中二春化(ティーン・カルチャー)が生まれたと判断した。以降、この中二春化が西洋社会を支配している。
 ウェストのいうように、

 第二次大戦後の経済発展で思春期の欲望方向が変わり、青年の力が増した。稼いだお金を家計のためでなく、思春期的な新文化の方へ投じたのだ。子供が付添い無しで贅沢旅行に出て、無断で飲酒に走るのを見た親は中二春化の欲望に膝を屈し、自信を喪失した。
 婦人性も「成人の死」によって大きく動揺した。結婚という成熟への儀礼を通過しても、婦人は結局若乙女たちの流行に追随するようになった。

 我々は成熟を拒否するピーター・パン文明の一員になってしまったのだろうか?過去のすべてを時代遅れと呼んで廃棄したことで。ニーチェを好む電評士[ブロガー]「保守なる瑞典」はこれを奴隷精神と呼ぶが、僕は「子供精神」に罹患しているのではといいたくなってくる。
 社会幼児化の根源は福祉国家体制だ。この体制は若者文化と共に中二的無責任精神も涵養する。これは親だけでなく国家、文明自体に対し永久に反旗するからだ。
 テオドール・ダルリンプルは西洋文明の自壊現象の根源を退屈凌ぎに求める。「人生の目的を持たず、知的にも宗教的にも文化伝統に貢献する意志も持てない人間は、人生設計において虚無心に囚われる。そして世上は、欲望万華鏡の光に合わせて感情を満たしつつ、肥大化した国家に守ってもらおうという幻想に包まれた。そして、ゴモラ的官僚機関の下、ソドム的頽廃に浸るのだ」
 福祉国家は男の身份たる労働への自尊心と他者への提供心を剥奪し、女より男を深く傷つける。そうなると父権制は終わり、男らしさは生物的概念に堕してしまう。正にこうした状況を生み出す政府こそ最悪の児童虐待者だ。ダルリンプルいわく

 片親主義は子供の命運を無視する思想だ。インド移民の子供のための病院で働いたことがあるが、両親を知らぬ子がほぼ100%だった。父親のことを訊いてみたら、「今のお父さんのことを訊いているの?」と返された。実際、育ての父を何度も代えているからだ。
 これは女が「自分の選択」によってのみ出産するようになったからだ。男は恒常的に幼児化され、賃金はただ自分用の小遣いと化した。以降、父親は国の児童と化すことだろう。
 
 スウェーデンのぺル・ビュルンドがいうように、「大部分の国民は親というより国家機関、つまり産児院や学校、公務員、労組、教育機関などに育てて貰っている。国家が汎在しているのだ」
 英国でも事態は似通っている。メラニー・フィリップいわく、

 3世代間家族解体が進んだ結果、人類文明の基礎が動揺している。子供の情操教育に貢献してきた熱心な父親が姿を消し、片親主義は恥辱でなく、女性の不可分の権利となった。国家は女性ばかりを優遇して女性だけの片親家族をつくり出し、そこから出た娘は出産すると最も残虐な児童虐待犯になる。この自壊過程は正に文化のハラキリだ。

 現代西洋は正に「父なき文明」だ。家族を導く父の伝統的営為はファッショ的な「父ネ申」などと揶揄され、父は母の手で容易に交換可能な存在に馴致される。母もまた、育児の本分を学校や電視台に任せ、娘の流行や生活様式に追随する。
 福祉国家に関する点は重要だ。西欧の福祉国家制度は長らく「保母国家」と呼ばれてきたが、同時に国家的な「主人国家」だったともいえる。伝統社会の男の役割は女を物財両面で扶助することだった。しかし、近代に入るとその役割が国家に「外注」された。今日の女性は高税率になっても福祉制度の存続することを望んでいる。文化人類学者リオネル・タイガーによると、核家族的な単婚制に換えて「僚婚制」が発達しつつある。父が官僚に代替され、官僚機関が育児や介護をして核家族、拡大家族を呑みこもうとしている。
 ノルウェーの子女教育に責任を持つオイステイン・ジュペダル(社会主義左翼党)は、「育児の最善の担い手は親だというが、それは誤りだ。ヒラリーのいうような村としての幼稚園が最善なのだ」と述べた。流石に後で、育児に最大の責任を持つのは親だと自制したが。
 カリータ・ベッケメレム性衡相[坂東真理子との共著あり]は2007年、140社に対して国策通りに取締役会で4割を女性にしないと強制解散もありうると警告した。その業種が石油採掘、船舶、金融など伝統的に男性支配の業界だったことを無視して。自分がつくった歴史的なる「配席法」(クォータ)制を執行しようとしたのだ。何に代わってなのか、「母権国家」ノルウェーが企業の重役席に座る悪餓鬼どものお仕置きに乗り出した訳だ。ベッケメレムの計画が進めば、世上は氷菓と言論規制で縛られた真なる幼稚園に変貌するだろう。
 ブログ読者のティムWの考えでは「女は集団になると男より利己的で自分と子供のことにしか注意を払わない。女の問題はすぐ社会化するのに、男はならない。候補者が男にも女と同程度の問題があると言ってもまず排除される。もし男の方が5年8か月も長生きしていると言ったとしたら、フェミ娘と女政治家たちは5年8か月という釦の着いた服を着て、街中を行進することだろう」
 フロントページ誌でジョン・ロット博士は「女の方が危機回避的で、政府に保険機能を求める性向が強い。女性に参政権を認めたことが、政府支出を3分の1引き上げた大きな要因となった。これは米国だけでなく普遍的傾向だ。離婚率の上昇も大きな問題だ」とした。中絶解禁により、単身家族の数は更に増えた。
 ダイアナ・ウェストは対抗文化運動により文化の平等化が進んだことが、後の多文化主義に道を拓いたと指摘するが、保母国家にも矛先を向ける。

 成人の死や保母国家のことを考えている内に、トクヴィルの理論を想起した。米国の発展要因を考察した彼は「対等なる国民の魂胆を湧出させる凡庸なる歓喜心」と、国家の「包光力」の2つを発見した。この二つは今日非常に重要だ。強国の発展過程では、「父権的権威が男の行路を決定していたが、一方では国民を周縁的チルドレンに留め置こうともしてきた」。今日の米国は保守も進歩も父権的な模範像を示すのをやめ、周縁的チルドレンの状態に国民を留め置いているようだ。
 
 米国の傘に長年置かれ、福祉体制がより発展してしまった欧州の状況はより深刻だ。中二的行動が米国よりも蔓延している。トクヴィルの『米国の民主主義』の議論に従うと、普通選挙制が誰の意見も同じくらい正当とするなら、やがては文化相対主義に帰結するのだろうか?トクヴィルの時代に婦人参政権はなかったが、婦人参政権のせいで、男の財産が女に侵蝕され、父権が弱まり、強力な国家規制が生まれたのだろうか?
 答えはまだできてないが、今の体制は確かに持続不能だ。男の自虐精神は外敵を招く根源である。福祉国家を後退させてでも、健全な分だけ男根回復薬を飲む必要がある。その過程で暴走する西洋フェミニズムと衝突しようとも…

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