Bravo! オペラ & クラシック音楽

オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

音響の良いコンサートホールで音楽を聴きたい

2009年09月24日 00時37分46秒 | 音楽に関するエッセイ
 オペラやクラシック音楽の鑑賞においては、劇場やコンサートホールの音響が重要視されることはいうまでもない。音楽鑑賞は音を聴くという行為であるから、その音の質によって聴いたときの印象がかなり異なってくるからだ。では、そこでいう音響とはそもそもいったい何だろうか。
 オペラやクラシック音楽はほとんどの場合、ナマ演奏である。つまり、拡声装置を介さない、楽器や声のナマの音を聴くということだ。したがって、基本的には音の良し悪しは演奏者の技量の問題となる。良い音が出ていれば、良い音が聞こえるはずなのだ。だから、ホールによって音が変わるということは、ホールの「残響音」が変わるということになる。
 では残響音とはどのようなものだろうか。
 音響効果を設備していない、体育館などのようにある程度広くて四角い空間で、一方の壁側で、たとえばティンパニをダンっと鳴らすと、音が対向の壁に反射して返ってくることがある。音は空気の振動する波であるから、波の物理的性質通りに、壁にぶつかると反射する。入射角と反射角は等しいから、音源の正面に平行な壁があると、音は返ってくるのだ。同時に、もうひとつの波の性質に、二つ以上の波が重なると、波が混ざって干渉をおこす、というのがある。場合によっては、反響音同士が混ざってエコーのようなワウワウワウと響いたりもする。このような音の干渉がおこる空間で音楽を演奏すると、離れたところで聴いている人にとっては、実はナマの音とは違う音を聴かされることになるのだ。
 音楽専用のコンサートホールは、このような音の干渉が起こらないように設計されていて、音源から出た音は、響きながら音質を変えずに自然にすうっと消えていく。これが残響音である。一般的には、残響音は長い方が良い響きとされていて、2秒を超えるホールもある。
 さて、ここからは私見であるが。
 たとえば、サントリーホールは音が良いとされている。2秒以上の残響音を持っている。だが、ステージから最も遠い左右の奥の方の席にいると、残響音がいっぱい残って音全体がモヤモヤしてしまう。曲の途中では、新しい音が次々と間断なく流れてくるのに、本来のナマの音と空間を漂っている一瞬前の残響音が混ざって、音が曖昧になってしまうと考えられる。これは、どこのホールでも同じ。大きいホールではその印象は必ずつきまとい、小さなホールでは感じられない。
 結局、良い音で音楽を聴きたければ、ナマの音源に近いところで聴くしかないということになる。一般的に、ステージから10列目の中央あたりがベストポジションといわれている。私はもう少し前の方が良いと感じている。演奏者の音が演奏と同時に聞こえ、残響音が後方へ広がっていくイメージだ(つまりサラウンドのよう?)。オーケストラの場合は、ひとつひとつの楽器の音色がはっきりと聞き分けられる方が、音楽の構造をとらえやすい。10列目より後方にいると、だんだんそれができなくなり、20列目を過ぎると、各楽器の音がひとかたまりになってしまう。一方、室内楽やリサイタルの場合は、できるだけ前の方、できれば1列目で聴きたい。私の好きなヴァイオリン協奏曲を聴く時も、できるだけ1列目で聴くようにしている。もうひとつのメリットとして、音響の悪いホールでも演奏者に近ければ、問題にはならないということもある。
 さて実際のコンサートホールはどうだろうか。これももちろん私見、というようは感想だが、サントリーホールが残響2秒、東京文化会館が1秒、東京オペラシティコンサートホールが間の1.5秒、NHKホールは●秒(よくわからないけど、論外かも)。オーチャードホールはあまり行かないので不明。東京芸術劇場大ホールも1秒くらいのイメージ。
 実際のコンサートを後ろの方の席で聴いて、オーケストラの音が濁って聞こえたり、ヴァイオリンのソリストの音程が狂って聞こえたことがある。なんだかすごくヘタなんじゃない? と思っていたら、そのコンサートのテレビ放送では極めてクリアな演奏で音程もしっかりしていた。それぞれの楽器の前で音を拾い、それをミキシングしているからだ。つまり前の方で聴いているのと同じことになる。残響音というのも聴く場所によってはかえって音を悪くすることもあるのではないだろうか。
 音響というのは、結局は好みの問題なのだろうが、私はとにかくナマの音をまじりっけなしに聴きたいので、ホールでは、前へ前へと席を求める。結果、値段が高くなる。ところが実際には、資金の都合もあり、理想通りにはいかないのが現実ではある。そして、後ろの方の席で聴いてまたまた後悔することになる。「次はもっと良い席で聴こう…」そんなことの繰り返しである。
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