Bravo! オペラ & クラシック音楽

オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

5/31(火) MET来日公演2011でアンナ・ネトレプコ降板のニュースの衝撃

2011年06月01日 01時38分05秒 | 劇場でオペラ鑑賞
 2011年5月31日、15:30に「JAPAN ARTSぴあ」からメールが届き、今回のメトロポリタン歌劇場の日本公演ツアーに出演予定だったアンナ・ネトレプコさんの降板が発表された。仕事中に届いたメールに、一瞬目の前が真っ白……。あわててJAPAN ARTSのサイトを見ると、メールと同じ内容の「出演者変更のお知らせ」がすでに掲載されていた。
 ネトレプコさんは、歌劇『ラ・ボエーム』の公演4回と、「メトロポリタン歌劇場管弦楽団特別コンサート」に出演することになっていた。降板の理由は、「かつてロシア国内でチェルノブイリ原発事故の悲劇を身近に経験していることなどから、不安を払拭することができず、このような精神状態では最高の演技を披露することはできないということ」である。大震災はともかく原発事故を理由に出されると、現在進行中の出来事だけに、何ともいいようがない寂しさを感じてしまう。東京で毎日働いている私たちにとっては日常生活に影響はほとんどないとはいっても、ニュースを見ればその話ばっかり。これでは海外に正確な情報など伝わるはずもなかろう。マスコミの無秩序な情報の垂れ流しと政府の無策ぶりは、音楽界にも大きな影響を及ぼしているのである。

 それはともかく、『ラ・ボエーム』でネトレプコさんが歌うミミの代役は、今回のMETのツアーに『ドン・カルロ』に出演するために同行しているバルバラ・フリットリさんに急遽決まったようだ。そのため、フリットリさんは『ドン・カルロ』には出演しないことになり、エリザベッタ役はマリーナ・ポプラフスカヤさんが代役となる。今回のMETのツアーは6月4日・5日の名古屋公演から始まる。既に劇場スタッフは総勢400名で来日しているとのこと。そんな状況の中、まさにドタキャンとなれば、出演者のヤリクリも大変なことになるだろう。何しろ、S席64,000円のオペラ公演で、中途半端な代役は立てられない(昨年2010年のロイヤル・オペラでは中途半端な代役を立ててさらにトラブルを大きくしてしまったのはご存じの通り)。もうひとり、テノールのジョセフ・カレーヤさんも来日しないことになり、彼の場合は『ラ・ボエーム』のロドルフォ役と『ランメルモールのルチア』のエドガルド役に出演することになっていたから、もう大変。前者はマルセロ・アルバレスさん、後者はロランド・ヴィラゾンさん、アレクセイ・ドルゴフさんが、それぞれの代役に立つ。急遽呼び寄せることになったようだ。こちらは完全に同クラスかそれ以上なので、カレーヤさんのファンの人以外は、まあ文句なしというところだろう。ただし、『ラ・ボエーム』は日によっては、フリットリ/アルバレス組となり、昨年の「トリノ王立歌劇場」の来日公演と同じ顔ぶれになってしまう。少々、新鮮味に欠けるようだ。

 もうひとつ問題なのは、「メトロポリタン歌劇場管弦楽団特別コンサート」だ。これは事実上、MET管弦楽団をバックにネトレプコさんのリサイタルのようなもの。歌う曲は少ないものの、世界的にも貴重なコンサートの企画で、発売後すぐに完売になった(こちらはS席25,000円)。主役のいないリサイタル(?)なんて…、と思ったら、さすがはMET、代替プランがものすごい。現時点では曲目が未定だが、ソリストに、ディアナ・ダムラウさん、バルバラ・フリットリさん、ピョートル・ベチャワさん、マリウシュ・クヴィエチェンさん(この人だけ予定通り)の4名にむかえ、こちらはあたかもMETのガラ・コンサートのようになりそう。ネトレプコさんのコンサート・ソロはぜひとも聴きたかったが、この4名に出ていただけるのなら、それはそれでBravo!かもしれない。

 結局、私の場合、『ラ・ボエーム』『ドン・カルロ』『ランメルモールのルチア』「特別コンサート」すべてに行く予定でいたので、もうメチャクチャである。もとより大震災が原因なので、この時期に、METのオペラが観られるだけでも幸せ過ぎるくらいかもしれない。愚痴は言わないようにしよう…。でも。
 しかし考えてみれば、今回のMETの来日公演は、当初よりかなり変わってしまった。指揮もジェイムズ・レヴァインさんからファビオ・ルイジさんに代わったし(そういえば5年前もレヴァインさんは骨折して来なかった)、『ドン・カルロ』のタイトル・ロール、ヨナス・カウフマンさんも来ない、オルガ・ポロディナさんも来ない、というゴタゴタの次が、ネトレプコさんと、カレーヤさんだ。代役もそうそうたるメンバーを出してきているのはMETの威信とJAPAN ARTSの努力の成果とみるべきだろう。ニューヨークのMETの普通の公演では今回の代役の人たちも完全に主役級だし、それがこれだけまとめて出演するのだから、内容としては元からそうだったと思えば別に文句を付けるほどではない(ただしネトレプコさんだけは別格なのでキャンセルは痛い)。昨年のロイヤル・オペラでは、ゲオルギューさんのキャンセルに始まった大トラブルを最後に助けてくれたのがネトレプコさんだった。今回はそのネトレプコさんが最後にドタキャンしてしまったので、大騒ぎになりそう。
 あくまで個人的な見解だが、結果的に一番貧乏くじを引いたのは、『ドン・カルロ』のチケットを持っている人だろうか。ロイヤル・オペラの時もそうだったが、お目当ての人が出演しないというようなトラブルの時は、高額チケットをもっている人の方が精神的ショックは大きい。もちろん、半年前に売り出された時に、東日本大震災などを予測していた人など一人もいないだろうからやむを得ない話ではあるが、高額チケットを持っている人(私もその一人)には何らかの救済があっても良いのではないかと思う。払い戻しをしないのなら、別公演のクーポン券で埋め合わせるとか、プログラムをタダでくれるとか…。JAPAN ARTSさんにもう一踏ん張りしてほしてところだ。

 今回のMETの日本公演は当初から大幅にメンバー変更があったので、何が何だかよくわからなくなってしまった。そこで、5月31日現在の公演日程と出演者の一覧をJAPAN ARTSのホームページから転載しておくことにします。

*   *   *   *   *   *

【公演日程と出演者】(5月31日現在)

『ラ・ボエーム』
指揮:ジェイムズ・レヴァイン ⇒ ファビオ・ルイジへ変更
6月04日(土) 15:00 愛知県芸術劇場
6月08日(水) 19:00 NHKホール
6月11日(土) 15:00 NHKホール
6月17日(金) 19:00 NHKホール
6月19日(日) 19:00 NHKホール
ミミ: アンナ・ネトレプコ  ⇒ バルバラ・フリットリへ変更
ムゼッタ:スザンナ・フィリップス
ロドルフォ: ピョートル・ベチャワ(6/4, 8, 11)
ジョセフ・カレーヤ(6/17,19)⇒マルセロ・アルバレスへ変更
マルチェッロ: マリウシュ・クヴィエチェン
ショナール: エドワード・パークス
コッリーネ: ジョン・レリエ
ベノワ/アルチンドロ: ポール・プリシュカ

『ドン・カルロ』
指揮:ジェイムズ・レヴァイン ⇒ ファビオ・ルイジへ変更
6月05日(日) 15:00 愛知県芸術劇場
6月10日(金) 18:00 NHKホール
6月15日(水) 18:00 NHKホール
6月18日(土) 15:00 NHKホール
エリザベッタ: バルバラ・フリットリ ⇒ マリーナ・ポプラフスカヤへ変更
ドン・カルロ: ヨナス・カウフマン ⇒ ヨンフン・リーへ変更
ロドリーゴ: ディミトリ・ホロストフスキー
エボリ公女: オルガ・ボロディナ ⇒ エカテリーナ・グバノヴァへ変更
フィリッポ2世: ルネ・パーペ
宗教裁判長: ステファン・コーツァン

『ランメルモールのルチア』
指揮: ジャナンドレア・ノセダ
6月9日(木) 18:30 東京文化会館
6月12日(日) 15:00 東京文化会館
6月16日(木) 18:30 東京文化会館
6月19日(日) 12:00 東京文化会館
ルチア: ディアナ・ダムラウ
エドガルド: ジョセフ・カレーヤ(6/9) ⇒ロランド・ヴィラゾンへ変更
ジョセフ・カレーヤ(6/12)⇒ アレクセイ・ドルゴフへ変更
ピョートル・ベチャワ(6/16, 19)
エンリーコ: ジェリコ・ルチッチ
ライモンド: イルダール・アブドラザコフ

≪メトロポリタン管弦楽団特別コンサート≫
6月14日(火)19:00 サントリーホール
指揮: ジェイムズ・レヴァイン ⇒ ファビオ・ルイジへ変更
ソリスト:ディアナ・ダムラウ、バルバラ・フリットリ、ピョートル・ベチャワ、マリウシュ・クヴィエチェン
※ネトレプコ降板により、出演者・曲目が変更になっております。曲目はホームページでお知らせいたします。

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2 コメント

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メッセージ (アリエッタ)
2011-06-01 14:33:13
こんにちは♪
ネトレプコさん、本当に残念です。この件で、メッセージも合わせて送らせていただきました。私のブログは→http://ameblo.jp/evgenykissin1010/どうぞよろしくお願い申し上げます♪
返信する
RE:ネトレプコさんは本当に残念です (ぶらあぼ)
2011-06-01 14:51:33
アリエッタ様

コメントありがとうございます。
ネトレプコさんは本当に残念ですね。
ブログ拝見しました。同好の方ですね。こちらこそよろしくお願いします。
どこかのコンサートホールでお会いできるかもしれませんね。
返信する

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