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離散フーリエ変換 (1)

2012-12-12 00:36:02 | 暮らし
sys.pdf
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                       計算例

金沢工大での武部先生のゼミを契機に,図で考えるための式表現 --- 孤立波形とくし型関数の組合せ --- の資料「CCA%: 孤立波形のスペクトル」を作り sys-s.pdf に追加しました.これに関連して初心者の諸君に離散フーリエ変換の考え方について説明します.

フーリエ変換と逆変換は類似しています.信号のスペクトルの変化の緩やかな成分は現在付近の波形,変化の激しい成分は遠い過去・未来に対応しています.離散フーリエ変換は現在付近の低い周波数成分の計算です.離散フーリエ変換の対象となる標本値を sinc 関数で補間して得られる連続波形の標本点では,変換区間外の(遠い過去・未来の)標本値の影響を受けません.
※ 式を簡単にするため,角周波数でなく周波数でのフーリエ変換を用いました.v(x),(F1v)(μ)は「BAV%:2次元の信号」で使用した記号です.

問: 800 個の標本点で表された離散信号の末尾に 224 個の 0 を付加して 1024 点の高速フーリエ変換をしたとき,どのようなスペクトルが得られるでしょうか.

参考: 以下標本化周期を 1 として,sys-s.pdf の記号を用いて述べます.v は標本化前のアナログ信号で N 点の離散フーリエ変換では -N/2 ≦ k < N/2 である v(k) で考えます.したがって「末尾に 224 個の 0 を付加」 は 「先頭に112個の 0,末尾にも112個の 0 」 に修正します.α,βは適当な定数です.

(1) v が 800 点の離散フーリエ変換であれば各標本値を M1/800 sinc で補間した連続なスペクトルの (1/800) 刻みの値が離散フーリエ変換で得られます.この値は,周期信号 v * M800 comb の(デルタ関数列で表された)離散的なスペクトル α(F1v)・M1/800 comb の各デルタ関数の係数 --- この周期信号の複素フーリエ係数ですが,このように考えると逆変換との対応が分かり易い --- と見ることもできます.

(2) v が 224 個の 0 を付加した信号の場合は周期信号 (v・M800 rect * M1024 comb のスペクトルは

    F1{ (v・M800 rect * M1024 comb } = β(F1v * M1/800 sinc)・M1/1024 comb

であり,M1/1024 comb で“サンプリング”される位置が M1/800 sinc が 0 になる点とずれます.複雑な波形では考え難いので(F1v)(μ) = δ(-1/800) + δ(1/800) である正弦波を考えると

    (F1v * M1/800sinc)(μ) = M1/800 sinc)(μ - 1/800) + M1/800 sinc)(μ + 1/800)

となり,M1/1024 comb との積には多くの周波数成分が現れます.これには窓が M1024 rect でも現れる高調波と方形窓 M800 rect によるものがあります.

(3) v が帯域制限された信号であれば,ナイキスト周波数より高い周波数で標本化して sinc 関数で補間すれば,標本化周波数に関係なく同じ信号を復元できます.しかし v が帯域制限されているということは帯域内でのスペクトルの変化が緩やかであるということを意味しません.上記の例から分かるように,v が正弦波であれば

    F1{ v・M800 rect } = (F1v) * M1/800 sinc

は急峻に変化し,周期波形 (v・M800 rect) * MN comb のスペクトルは周期 N によって大きく変わります.v が複雑な波形のときは解析が難しいのですが,適当に 0 を付加して高速フーリエ変換を行う場合には注意が必要です.

(4) 周期 800 の正弦波の断片を周期 1024 の基本波とその高調波の線形結合で表現すればどのような窓関数を用いても多くの成分が現れることは避けられません.ただし,方形窓に比べてスペクトルのサイドローブが急速に減衰する窓関数を用いることにより“紛らわしい”成分の混入を軽減できます.例えば G(x) = exp(-πx2) を用いて v・M800 rect の代わりに v・M800 G を用いると

    F1{ v・M800 G } = α(F1v) * M1/800 G

ですから,N 点の離散フーリエ変換における高調波の現れ方が“素直に”なります.(F1v)(μ) = δ(-1/800) + δ(1/800) の場合は

    ((F1v) * M1/800 G)(μ) = M1/800 G)(μ - 1/800) + M1/800 G)(μ + 1/800)

であり,N を大きくすると M1/800 G)(μ ± 1/800) は μ = ±1/800 近傍に比較的大きい多くの標本値が現れ,1/800 の高調波付近の標本値は 0 に近づいていくはずです --- 1/800 ≒ 5/4096 ですから,4096 点の離散フーリエ変換では μ = 5/4096 にエネルギーの大部分が集中します(1/800 ≒ 41/32768).



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