constructive monologue

エゴイストの言説遊戯

速度体制下の野球中継

2007年12月04日 | hrat
台湾で行われたアジア野球選手権を3連勝で乗り切り、見事北京五輪の出場権を勝ち取った星野ジャパン。初戦のフィリピン戦を別として、韓国戦および台湾戦(の7回まで)は1点を争う緊迫した試合展開だったこともあって、韓国戦平均23.7%、台湾戦27.4%(関東地区)とテレビ中継の視聴率も景気のいい数字を叩き出した。

ナイター中継の視聴率が低空飛行状態にある近年の傾向と対比する形で、一部では「まだ野球人気は衰えていない証左だ」といった(希望的観測に近い)声も聞かれるが、一発勝負のトーナメント的な意味合いの強い試合形式と、140試合近くを争う長丁場のペナントレースを同列に論じることは無理がある。いわば五輪(予選)やWBCなどは、その短期性ゆえに野球ファン以外の視聴者を取り込める可能性が大きいが、他方でペナントレースの時間的な冗長さは、ライフスタイルの変化を筆頭とした時間観念の変容および加速と相容れないため、根っからの野球ファンを除いては、それこそ地元球団が優勝争いに絡んでいるときぐらいしか注目することはないイベント事のひとつと認識される。速度体制の下で野球を視聴する行為は瞬間的なものと解され、継続した定型行動ではもはやなくなってしまったといえよう。

あるいはこれまでのナイター中継は巨人戦偏重で、その巨人の人気が全国的なものであること、つまり一種の(擬似)国民球団に近い存在であったことを考えると、五輪やWBCといったナショナリズムを醸成しやすいイベントが一般化していくのにしたがって、対象が巨人から日本代表へと移行していっただけにすぎないと解釈することもできるだろう。球界の盟主を自負する巨人が全国的な人気に拘り、それに沿う形でナイター中継が巨人戦を軸に組まれる限り、一時的な興奮を味あわせてくれるような緊張感を持続することが困難なペナントレースの視聴率向上は期待できない。
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