constructive monologue

エゴイストの言説遊戯

モーゲンソーへの突破口

2013年06月25日 | nazor
書店にて『思想』1071号の巻末掲載の「8月刊行予定の本」で、数日前から噂が耳に入っていたハンス・J・モーゲンソー『国際政治――権力と平和(上)』が、原彬久の監訳で岩波文庫に入ることを確認する(おそらく上中下の3巻構成になると予想される)。今世紀に入ってから、モーゲンソーを含めた国際政治学の父祖たちの思想形成に注目する研究が次々と生まれ、それに伴い国際政治学の学説史自体も再検討に付されている(邦語では、西村邦行『国際政治学の誕生――E.H.カーと近代の隘路』昭和堂, 2012年、および宮下豊『ハンス・J・モーゲンソーの国際政治思想』大学教育出版, 2012年)。これらの研究においては、未刊行の草稿や書簡の発掘が進められるとともに、「古典」の地位を獲得したテクストの再読作業が中心的な位置を占めている。それゆえに『危機の二十年』や『国際政治』が比較的容易に入手できる環境が整備されることは喜ばしい。

モーゲンソー『国際政治』の場合、国際政治学の基本文献だと喧伝されながらも、福村出版本が2段組600頁の分量という重量感は、初学者にとって心理的なハードルとして立ちはだかり、通読する強い意志と(知的)体力が求められる。その意味で文庫化を契機に「はじめの一歩」を踏み出す条件が緩和されることは疑いないだろう。またそれは、通読することで顕現してくるモーゲンソーの国際政治(思想)の深みについての理解へと導く。たしかに「政治的リアリズムの6原則」や「力によって定義される利益」などリアリズムないし権力政治観の代名詞とも言うべき語句は、強烈な印象を読者に植え付け、それだけでモーゲンソーのリアリズムの真髄を理解したかのような錯覚を覚えさせる。それゆえに国際政治学の概説書の多くも第3部までの内容に沿った記述を基本としており、たとえばテスト勉強/単位取得といった学生の実際的な需要に従えば、わざわざ通読せずともモーゲンソーのリアリズム理解に支障とはならないし、効率的だともいえる。

したがって国家権力の制限や世界平和の実現可能性について考察を加えた第4部以降の諸章は、バランス・オブ・パワーの章を除けば、リアリズムの妥当性を証明する傍証が延々と続く印象を抱かせ、精読するまでの必要性は乏しいものとなる。しかしながら、国際法学者として学究生活を開始したモーゲンソーの思想遍歴の中に『国際政治』を位置づけて読み直すならば、これらの諸章に「アメリカの社会科学」として制度化された現在の国際政治学よりも射程の長く、豊かな思想的鉱脈が見出されるだろう。今回の文庫化がこうしたモーゲンソー理解への突破口となることを期待したいところである。
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list47

2013年06月17日 | hudbeni
睡蓮 / ひたひた
甲斐バンド / らいむらいと
YES / RELAYER
ends / FIRE WORKS
PINK FLOYD / MEDDLE
FENCE OF DEFENSE / パンゲア
TM NETWORK / RAINBOW RAINBOW
KING CRIMSON / ISLANDS
BOOM BOOM SATELLITES / PHOTON
CREAM / FRESH CREAM

スリー・ピース・バンドの元祖ともいえるクリームのデビュー盤をはじめ、スペースコロニーのジャケットに目を奪われたブンブンサテライツのアルバムなど新顔を加えてみる。

CREAM / I'm So Glad



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