constructive monologue

エゴイストの言説遊戯

二つの既視感

2009年10月23日 | hrat
パリーグCS第2ステージで2連敗を喫し、後がなくなった楽天。第1戦は、リリーフ陣のドミノ的崩壊現象、第2戦は日本ハムを上回る10安打を放ちながらもセギノールのソロHRによる得点のみという拙攻というように、楽天の持病が決定的な時期に発症してしまっては、さすがに勝てそうにない。

ところで昨日の試合で野村監督が敗因に挙げたのが三塁線を空けたままにした7回の守備であったが、マウンドにいたのが岩隈という状況は、否応なくWBC東京ラウンドのA組一位通過をかけた韓国戦4回表の場面、すなわち4番金泰均に三塁線を破られる二塁打を打たれ、結局0-1で敗れた、あの場面を思い出させてしまう。ちょうどテレビ中継のゲスト解説を務めていた古田が「三塁線を詰めるべきだ」と発言し、予測的中となったわけであるが、昨日の試合では古田の師匠である野村監督が現場にいながら、この点を指摘できなかったことは、高齢を理由に退任を促す球団フロントの主張に正当性を与えるのが明らかだろう。

他方、セリーグのCSをめぐっても、既視感を覚えさせる出来事が生じている。中日・吉見のドーピング疑惑である。重要な決戦を前にして、場外で若干陰謀めいた情報が暴露される光景は、1994年の日本シリーズ第6戦を前に読売新聞社が西武森監督の辞任を報じたそれを想起させずにはおかない。しかし、今回の場合、元ネタが『中日スポーツ』掲載のコラムである点で、巨人・読売グループによる陰謀説は成立しない。そのコラムを読む限り、コラムを執筆した記者自身も事の重大さに十分気づいていたわけではないように思われるが、仮に陰謀説めいた邪推を展開するならば、このところマスコミとの冷戦状態が続いている落合監督に対する身内からのしっぺ返しというのが妥当な線だろうか。
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黒船の置き土産

2009年10月18日 | hudbeni
楽天のCS第2ステージ進出という喜ばしいニュースの一方で伝えられた加藤和彦の訃報は、同じく今年逝ってしまった忌野清志郎のそれよりも衝撃が大きい。もともとフェンス・オブ・ディフェンスのサードアルバムに感化されて、コンセプト・アルバムと評されると、触手が延びてしまう傾向にあるが、サディスティック・ミカ・バンドの「黒船」もその流れで聞くようになった。とくに「墨絵の国へ」、「何かが海をやってくる」、「タイムマシンにおねがい」、「黒船((嘉永6年6月2日・3日・4日)」という、いわゆるA面の構成においては、ときに「タイミマシンにおねがい」のようなポップな曲が場違いな印象を与えがちになることなく、むしろ(歌詞の世界を含めた)アルバム全体のコンセプトに照らし合わせたとき、必要不可欠なものであることを認識させてくれる。そして「黒船」を介して、FODのサードを聴いたとき、当初幾分の違和感を覚えた「セイラ」の印象が大きく変わったという副産物をもたらしてくれた。

タイムマシンにおねがい(サディスティック・ミカエラ・バンド)
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第一次五カ年計画の成果

2009年10月10日 | hrat
ノムさん2位!「日本シリーズ最後まで」(『日刊スポーツ』)
楽天が本拠地CS!ノムさん「仙台は熱いぞ」(『サンケイスポーツ』)
楽天2位確定!ノムさん仙台でCS(『デイリースポーツ』)
楽天逆転2位確定!地元CS「仙台は熱いぞ」(『スポーツニッポン』)
ノムさん、怒りの2位確定!「裏でコソコソ…けったくそ悪い」(『スポーツ報知』)

今季カモにしているオリックスに対する19勝目でリーグ2位が確定し、クライマックスシリーズの本拠地仙台での開催が決定した楽天。シーズン前の下馬評の低さを覆す躍進は、チームの戦力が充実してきたという内的要因とともに、他球団の動向という外的要因が組み合わさった結果であることは間違いないだろう。

内的要因としては、もともと岩隈と田中という二枚看板を有していた先発陣において、勝利を確実に計算できる第三の先発投手として永井が成長したことが何よりも大きい。また岩隈と田中も故障を抱え一年間フルで活躍できたわけではなかったが、田中が開幕から7連勝、岩隈も後半戦に入ってから6連勝というように、本来の力を発揮したことで、先発3人で22の貯金を作ることができた。同じく打撃陣についても、ホームランと打点を量産した山崎の前後を、前半戦は草野、後半戦では鉄平という好打者が固めることによって、打線に厚みが増していったと同時に、確実性も向上したといえるだろう。

加えて、福盛、リンデン、藤原など途中加入および一軍昇格組が期待に応える活躍を見せたことも見逃せない。とりわけ持病ともいえるリリーフ陣の不安定さが、福盛の加入で曲がりなりにも解消され、終盤の接戦で勝ちを拾えるようになり、後半以降になって急失速してしまった昨季の再演を回避することができた点も重要だろう(もちろん途中介入組の活躍は、裏を返せば、中村紀、リックといった戦力として計算に入っていた選手の不調という誤算があったということでもある)。

他方、外的要因という変数に目を向ければ、たしかに昨年のAクラスの西武・オリックス・日本ハムと、もともと実力のあるソフトバンクがペナントレースの軸となり、バレンタイン監督問題という御家騒動を開幕前から抱えていたロッテとともに、楽天に対する評価が低かったことはある程度想定できるものであった。そうした評価が覆ってしまった最大の要因として指摘できるのが、リリーフ陣の出来であろう。日本ハムは武田久を中心に、ソフトバンクは摂津・ファルケンボーグ・馬原(SBM)、そして楽天は先述したように福盛の加入というように、CS進出チームはそれぞれ安定したリリーフ陣を有していた。その一方で、昨年日本一の西武は胴上げ投手のグラマンの故障、オリックスは加藤の不調が響き、ロッテはポストYFKの後継問題に悩み続けたように、最後まで信頼に足るだけのリリーフ陣を整備できなかったことがチーム順位に反映されたといってよいだろう。

さて楽天は、CSそして日本シリーズに向けた準備に取り掛かるとともに、野村監督の去就という悩ましい問題をいかに解決するかという課題が待ち構えている。すでにスポーツ紙などで東尾、中畑、荒木、古田、与田、ブラウン、さらに星野といった名前が報じられているが、予想外の2位という成績、そして田尾解任をめぐるトラウマがフロントの決断力を鈍らせているように思われる。たしかに野村監督に引導を渡し、ファンを納得させるだけの材料が現時点で欠けており、また勝負事の世界において「成績如何にかかわらず」という理由は些か説得力に乏しく、きわめて脆弱な根拠である。その意味でフロント陣は監督人事の時機を誤ったと言ってよいだろう。むしろより長期的な観点から見れば、5位から2位への躍進に比べて、今年の2位以上の成績を残すことはかなり難しい条件であり、「成績如何にかかわらず」ではなく「2009年以上の成績でなければ」を条件とした続投という判断のほうが、戦力が均衡しているパリーグの現状に照らしてみたとき、結果的にフロントが(一年遅れとはいえ)望む状況をもたらすのではないだろうか。
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