7/10まで開催されていた塩田雅紀氏の個展を見るため、再び青山まで行ってきました。
(ちなみに個展名はシンプルに「塩田雅紀展」。サブタイトルは特についていません。)
塩田氏は一流作家の装画も数多く手がけた、いま注目される描き手の一人。
音楽方面ではスキマスイッチや平井堅とのコラボレーションなど、組んだ相手の持ち味を
存分に引き出しつつ、独自の個性も感じさせるという優れた画風をお持ちの方です。
(経歴等について、詳しくはご本人のホームページをご覧ください。)
今回の個展はそんなコラボ系の仕事を集めた内容に、今回のための新作を加えたもの。
期間は7/5~7/10と短かったのですが、塩田氏が表紙を手がけた「廃園の天使」シリーズの
飛浩隆先生によるTwitter告知のおかげで、なんとか見逃さずにすみました。
こじんまりとした会場の中には、見慣れた作品の装画がズラリ。
カズオ・イシグロ「夜想曲集」、ル・グィン「なつかしく謎めいて」、そして飛先生の
「グラン・ヴァカンス-廃園の天使〈1〉」などが展示されてました。
そして書店で見慣れた表紙絵たちも、実物を見ると感動の度合いが全然違います。
書籍の装画として収まっている時に比べ、実物の絵はずっと強い生気を放っていて、
見る者をひきつけて離さない力がありました。
描かれている人物の躍動を一瞬に切り取る手際、立体的に描かれた造型のおもしろさ、
色の微妙なグラデーションなど、実物を仔細に見ることで気づく点も多かったです。
そして特に興味深かったのが、画面に見える掻き落としのような刷毛目模様。
実物の絵を見ると、これが作品に適度な凹凸を与えており、画面に油絵のような
厚みと陰影、そして表現の面白さを加えているのがわかります。
会場で塩田氏ご本人に伺ったところ、これは下地処理に自作の特殊な刷毛を使い、
このような模様が出るように工夫しているとの事でした。
一方、今回の個展向けに描かれたという二点の新作には、その刷毛目がありません。
やはり塩田氏のお話によれば、これまでの装画のイメージと違うものを目指そうとして、
こちらではあえて刷毛目を使わずに描いたとのこと。
錆びの浮いた観覧車に乗っているパンダらしきキャラクターを描いた作品からは、
なんだか石田徹也の絵を連想しました。
アオリで見る頭上には灰色の空、そしてぼんやりと爆撃機のような機影が浮かびます。
唯一派手な色で光るホイール部のネオンも、むしろ絵の不吉さを高めています。
もう一つの新作に描かれたのは、オレンジ色のケーキみたいな山を登るスーツ姿の男。
彼が押している自転車の荷台には、テレビのカラーチャートを写した紙芝居が載っています。
私には幻想的な表現の中に、現実への諷刺が巧みに織り込まれていると見えました。
優しさや懐かしさの裏に見え隠れする痛みや喪失感、そして得体の知れない不安。
一枚の絵にブレンドされたこれらの要素が、見る者の気持ちを強く揺さぶり、あるいは
静かな昂揚感を感じさせてくれるように思います。
今後は装画に加えて、一般絵画の発表も増えてきそうな塩田氏。
そちらの仕事にも注目しつつ、引き続き「廃園の天使」シリーズの装画も
描き続けて欲しいと願っております。
まあそのためにも、飛先生のシリーズ新作が待たれるのですが・・・(笑)。
以下は個展で購入したおみやげたちです。

上段は「天の光はすべて星」の複製画を額装したもの。
紙箱にも塩田氏のオリジナルラベルが貼ってあります。
限定5部ということで、右下には作者の自筆サイン入り!
下段はこれまでの作品を紹介したミニパンフレットと、複製画のしおりです。
(ちなみに個展名はシンプルに「塩田雅紀展」。サブタイトルは特についていません。)
塩田氏は一流作家の装画も数多く手がけた、いま注目される描き手の一人。
音楽方面ではスキマスイッチや平井堅とのコラボレーションなど、組んだ相手の持ち味を
存分に引き出しつつ、独自の個性も感じさせるという優れた画風をお持ちの方です。
(経歴等について、詳しくはご本人のホームページをご覧ください。)
今回の個展はそんなコラボ系の仕事を集めた内容に、今回のための新作を加えたもの。
期間は7/5~7/10と短かったのですが、塩田氏が表紙を手がけた「廃園の天使」シリーズの
飛浩隆先生によるTwitter告知のおかげで、なんとか見逃さずにすみました。
こじんまりとした会場の中には、見慣れた作品の装画がズラリ。
カズオ・イシグロ「夜想曲集」、ル・グィン「なつかしく謎めいて」、そして飛先生の
「グラン・ヴァカンス-廃園の天使〈1〉」などが展示されてました。
そして書店で見慣れた表紙絵たちも、実物を見ると感動の度合いが全然違います。
書籍の装画として収まっている時に比べ、実物の絵はずっと強い生気を放っていて、
見る者をひきつけて離さない力がありました。
描かれている人物の躍動を一瞬に切り取る手際、立体的に描かれた造型のおもしろさ、
色の微妙なグラデーションなど、実物を仔細に見ることで気づく点も多かったです。
そして特に興味深かったのが、画面に見える掻き落としのような刷毛目模様。
実物の絵を見ると、これが作品に適度な凹凸を与えており、画面に油絵のような
厚みと陰影、そして表現の面白さを加えているのがわかります。
会場で塩田氏ご本人に伺ったところ、これは下地処理に自作の特殊な刷毛を使い、
このような模様が出るように工夫しているとの事でした。
一方、今回の個展向けに描かれたという二点の新作には、その刷毛目がありません。
やはり塩田氏のお話によれば、これまでの装画のイメージと違うものを目指そうとして、
こちらではあえて刷毛目を使わずに描いたとのこと。
錆びの浮いた観覧車に乗っているパンダらしきキャラクターを描いた作品からは、
なんだか石田徹也の絵を連想しました。
アオリで見る頭上には灰色の空、そしてぼんやりと爆撃機のような機影が浮かびます。
唯一派手な色で光るホイール部のネオンも、むしろ絵の不吉さを高めています。
もう一つの新作に描かれたのは、オレンジ色のケーキみたいな山を登るスーツ姿の男。
彼が押している自転車の荷台には、テレビのカラーチャートを写した紙芝居が載っています。
私には幻想的な表現の中に、現実への諷刺が巧みに織り込まれていると見えました。
優しさや懐かしさの裏に見え隠れする痛みや喪失感、そして得体の知れない不安。
一枚の絵にブレンドされたこれらの要素が、見る者の気持ちを強く揺さぶり、あるいは
静かな昂揚感を感じさせてくれるように思います。
今後は装画に加えて、一般絵画の発表も増えてきそうな塩田氏。
そちらの仕事にも注目しつつ、引き続き「廃園の天使」シリーズの装画も
描き続けて欲しいと願っております。
まあそのためにも、飛先生のシリーズ新作が待たれるのですが・・・(笑)。
以下は個展で購入したおみやげたちです。

上段は「天の光はすべて星」の複製画を額装したもの。
紙箱にも塩田氏のオリジナルラベルが貼ってあります。
限定5部ということで、右下には作者の自筆サイン入り!
下段はこれまでの作品を紹介したミニパンフレットと、複製画のしおりです。
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