Biting Angle

アニメ・マンガ・ホビーのゆるい話題と、SFとか美術のすこしマジメな感想など。

【イベントレポート】特別ゲストも登場!「この世界の片隅に(このセカ)探検隊」

2013年11月24日 | この世界の片隅に
こうの史代先生が原作マンガを描き、片渕須直監督がアニメ化を進めている『この世界の片隅に』。
その舞台となる呉の街と周辺部を、ロケハンで既に何度も足を運んでいる片渕監督の話を伺いながら
実際に見て回ろうという企画が、「このセカ探検隊」です。

既に防府で実績をあげている「マイマイ探検隊」の手法にならったものですが、呉では初の試み。
防府とは地理条件等も違うので、実現にあたってスタッフがかなり苦労されたんじゃないかというのは
実際に回ってみて感じたところです。詳細についてはあとで触れますが、本当にお疲れさまでした。

さて、当日朝は大和ミュージアムの駐車場に集合です。

片渕監督の背後にそびえるのは、大和も使用していた九一式徹甲弾のダミー。
そういえば防府の国衙跡にも、日露戦争の砲弾(こっちは本物)があったなぁ・・・。
ちなみに監督の影になってる方は呉市の観光課長さんだそうで、後ほど丁寧な御挨拶もいただきました。

まずは呉の港について、昔の写真を見ながらの説明。

ちょうどこの方向から見ると、大和の建造ドックが見えたはず。

その後は観光バス2台に分乗して、灰ヶ峰の展望台を目指します。

こちらは海上自衛隊呉教育隊の正門前。潜水艦実習なども行われます。


上に見える煉瓦づくりの建物が、旧海軍の呉鎮守府庁舎。

現在は海上自衛隊呉地方総監部第一庁舎として使用され、毎週日曜日に一般公開されています。
ここと道路を挟んで斜め向かいには、周作さんが勤めていた軍法会議(軍事裁判所)がありました。

歩道橋の向こうに見える緑色の外壁は、呉の名物「メロンパン」の本社だそうです。

しかしこの「メロンパン」、呉に行くたびにいつも売り切れで、実物は見たことないんですよ・・・。
こっちで言うメロンパンとは見た目も味も全然違うそうなので、いちど食べてみたいんですが。

市街地を抜けて、いよいよ灰ヶ峰を登っていきます。


こちらは灰ヶ峰にある、大正時代に造られた平原浄水場の低区配水池です。

市民の飲み水を供給するために作られた施設なので、すずさんたちもここからの水を飲んでいたはず。
等間隔に出ている突起物は換気塔で、地下が配水池になっているそうです。
地下の様子が気になる方は、こちらに写真がアップされています。

ちなみにここは煉瓦づくりの大きな排気塔が有名ですが、アングルが悪くてほとんど見えませんでした。
上の写真では、木の陰にちらっとそれらしきものが写ってます(^^;。

こっちは緩速ろ過池ですが、平原浄水場が今年3月に廃止されたため、水は抜かれていました。

これもまた、歴史の移り変わりを感じさせるひとコマです。

さらに山道をぐんぐんと登っていくと・・・。


呉の市街を一望できる高台に到着しました!


灰ヶ峰の山頂展望台から見た、呉市の全景。

原作マンガの新装版後編48ページに描かれたものと同じ風景が、目の前に広がっていました。

「見い 九つの嶺に守られとろう ほいで九嶺(くれ)いうんで」
「ほいで真ん中のんが灰ヶ峰 あのすそがわしらの家じゃ」

そう、ここは原作の最後で、周作さんがすずさんと共に見上げた山。
時代こそ違うものの、その山のてっぺんから、私たちは九嶺の街を見下ろしているのです。

なお、山頂と市街地の位置関係を示すと、こんな感じになります。

さすがに遠い・・・車を使わないと、来るのも容易じゃありません。

展望台から右手を見ると、その先には広島市が見えます。

なお、広島市への原爆投下で発生したキノコ雲の高さは、およそ18,000mと見積もられていますが
広島市から灰ヶ峰までの距離はおよそ19km。
なので、すずさんたちが広島市のキノコ雲を見た時は、ほぼ頭上を見上げる形になったのでは・・・
というのが、片渕監督による推論でした。

野球場と陸上競技場が見える一帯は、すずさんたちが花見をした二河公園です。

すずさんとリンさんが登った桜の木は、あの陸上競技場あたりに生えてたのでしょうか。

さて、いったん灰ヶ峰から市街地へ下りてから、今度はすずさんたちの家があったとされる住宅地付近へ。
直行ルートを使わないのは、すずさんが乗ってきたバスの経路を想定して走るためらしい・・・こ、濃いなぁ。

そしてすずさんが下車した辰川に到着すると、ここで特別ゲストが登場しました!

こうの史代先生、キター!
このセカ探検隊の初回ということで、今回は特別参加していただけるそうです!

そんなわけで、ここからは片渕監督とこうの先生によるダブル解説つきの探検隊となりました。

なんというぜいたくなイベント!参加者も大興奮!

こちらの家は煉瓦塀と軒下のべんがら塗りから見て、戦前からの建物と思われます。


べんがらには防虫・防腐効果があるため、昔から木材保護用として使用されてきた歴史があります。

なお、原作マンガでも描かれてますが、このへんはせまい坂道が続く市街地です。
ぶっちゃけ、あまり大人数でぞろぞろ歩くところではないんですよね・・・。

さて、今回最大の難所とささやかれていたのが、こちらの階段です。

すでにかなりの坂道を歩き続けた後に、これはちょっとツライところ。
しかしここを越えないことには、遅い昼ご飯にすらありつけません。これが探検隊の掟。

百数十段を黙々と登る参加者。なお、片渕監督とこうの先生は登っている最中にも談笑していたとか!


階段を登った後は、すずさんが周作さんと大和を見た場所のモデルになった場所へ。


港には自衛艦の姿が。たぶん、すずさんもこんな感じで利根や日向をスケッチしたのでしょう。

当時と違って、こうして写真を撮っても憲兵に引っ張られることはありません。
願わくば、これからもそういう時代がずっと続きますように・・・。

原作でもひんぱんに登場する、長ノ木町の旧澤原家住宅にある三ツ蔵です。


持参した新装版前編の158ページを開いてみると、まさにこのとおりの構図が!


こちらでも、こうの先生と片渕監督によるダブル解説を聞かせていただきました。


既に午後二時くらいになってたと思いますが、ここでようやくお昼ご飯。
おやつには呉名物、福住の「フライケーキ」も出ました。

こうの先生とはここでお別れ。探検隊は最後のひと踏ん張りです。

新装版前編の177ページに出てくる火の見櫓は、ここから見たものだとのこと。


なお、この火の見櫓は後編127ページにも登場しています。
ちなみに前日の懇親会で披露されたラフスケッチでは、こんな感じに描かれてました。

当時の呉市街におけるシンボル的な建物として、アニメでも頻繁に登場するのではないでしょうか。

ゴールの大和ミュージアムには「このセカ探検隊first! おつかれさまでした!」の文字が。

片渕監督もスタッフの皆さんも、ホントにお疲れさまでした!

さて、今回の探検隊を体験して感じたこと。
冒頭でも書きましたが、やはり防府と比べると探検隊には厳しい地理だなーと思います。
防府は比較的平坦で道幅もあり、住宅も道からちょっと離れて建ててある感じでした。
それに比べて、呉のコースは坂が圧倒的に多く、しかも道幅が狭くて住宅が密集しています。
行程がきついだけでなく、あそこを大勢で話しながら歩くのは、やはり地元にご迷惑ではないかなーと・・・。

また、住宅周辺がほぼ全て坂道なので、地元の方は車やスクーターを多用されているようです。
そのせいか、路地での交通量は防府よりも全然多いと感じました。
しかも曲がりくねった坂道なので、見通しもよろしくないんですよ。
防府のルートは車が来ても避けるのに十分な余裕がありましたが、呉の一部ではかなりギリギリでした。
今回事故が起きなかったのは、スタッフの配慮と参加者の声かけのおかげだったと思ってます。

次に探検隊をやるなら、現地調整はさらにしっかりと済ませておく必要があるかもしれません。
何かトラブルが起きて、地元でのイメージが悪くなったら元も子もないですからね・・・。
今回の探検隊がとてもよかったぶん、今後もイベントを続けていって欲しいという気持ちから
あえて気になる点を書いてみました。

まあ何はともあれ、防府から呉までの強行軍も無事に終了。
旧知の仲から当日初めての方まで、参加者の皆さんに励まされ元気づけられた3日間でした。

これからもマイマイとこのセカを通じて、もっとたくさんの人と交流したい。
そのためにも、一日でも早く『この世界の片隅に』を劇場で見られる日が来るよう願ってます。
出来上がった作品が、きっと新たな出会いを運んできてくれるはずだから。
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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
リンクをTwitterに上げさせて頂きました。 (墨石亜乱)
2016-11-29 09:49:37
初めまして。
映画「この世界の片隅に」をたどってBlog記事を拝見しました。
ツアーが丁寧にわかり易くまとめられていて、
自分も参加した気持ちになれました。

映画に感動したファンの人に紹介したくなり、
リンクをTwitterに投稿させて頂きました。
もし、ご迷惑であれば、投稿を削除いたします。
返信する
ご紹介ありがとうございます! (青の零号)
2016-12-01 23:37:49
墨石亜乱さん、お読みいただきありがとうございます!
リンク先掲載は問題ありません。ご丁寧にお知らせいただき恐縮です。
しかしこの記事を書いたときは「これだけ調べて映画が完成しなかったら・・・・・・」という不安があったのも事実。
それが今は完成した映画を繰り返し観られて、しかも墨石さんはじめ多くの方と感動を分かち合えるのが夢のようです。
関係者に伺ったところ、今は旅行業法が変わって同じような探検隊はできなくなったとの話。
でも三ツ蔵や大和ミュージアム、呉市立美術館のあたりは今も普通に観光できますので、
現地でこれらを回って当時に思いを馳せるのもよいですね。
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