早いものでもうすぐ11か月。
その成長ぶりにびっくりさせられます。
テーブルの上では醤油さしをひっくり返し、床に移動してはゴミ箱をひっくり返し。かばんの中から財布を見つけてカードやお札をばらまき、雑誌を破いてページをむしゃむしゃ。スマートフォンをしゃぶってよだれだらけにしたかと思えば、ノートPCのキーボードをはがしてALTキーをむしって口の中へ。
次から次へと事件(?)を起こします。
夜のお休みタイムでまだ眠くないときは、私に寄りかかって甘えたり、お腹が満腹になったらにっこりとわらったり。そんなときは愛しくて愛しくてたまらなくなります。寝かしつけは、手のかかる一大仕事。でも、こんな素晴らしい時間を持てるのは、母親の特権です。
一つ、気になることがあります。
それは、私がこのように娘を愛しく思い、ゆっくりと向き合えるのは、実家にいるからではないかということです。母が家事を一手に引き受けてくれて、私は体力・気力ともにほとんどを娘に向けることができます。つまり、「愛しく思い、ゆっくりと向き合える」のではなく、「ゆっくりと向き合えるからこそ、愛しく思える」のではないかということです。
ものすごく印象的な話があります。『凍りついた瞳』という児童虐待を題材とした漫画に載っている話です。ある病院に、虐待を受けた女の子が運び込まれます。瀕死の状態だったために入院措置が取られました。虐待をしたのは彼女の母親です。医師は女の子を守るために、回復しているにも関わらず入院期間を延ばします。初めは冷たかった母親も、段々と女の子に対する態度を柔らかくしていきます。そして母親は医師に言います。
「先生、私優しくなったでしょう」
と。でも医師は気づいていました。子供が入院している間は、彼女は気が乗った時に見舞いに来て、適当に相手をすればいいだけなのです。母親がストレスを感じることは何もない状態なので、優しくするのは簡単なのです。果たして医師の懸念通り、退院後にはまた虐待が始ります。
私は、この話をよく思い出します。
渡英すれば、私を助けてくれる母はいません。慣れないイギリス生活をスタートさせながらなの育児。夫の援助はどこまで見込めるかわかりません。変わらず、娘に愛情を注ぐことができますように。
凍りついた瞳 (YOU漫画文庫) | |
ささや ななえ | |
集英社 |