川上徹也著『1行バカ売れ』
その中に書かれていた『落ちないリンゴ』といくつかの話が面白かったのでまとめておく。
今から24年前。1991年9月28日朝、台風が青森県を直撃した。
観測史上最大瞬間風速53.9メートルを記録。特に津軽地方には甚大な被害をもたらした。
ちょうどまさにこれから収穫を迎えるという時期のリンゴが強風の影響で枝から落ちてしまったのだ。
落ちたリンゴはもちろん商品にはならず、被害はリンゴ畑の90パーセントにも及ぶ。
ほとんどの農家はこのままリンゴ栽培を続けられるかどうか途方に暮れていたが、ある町の生産者がひとつのアイデアを出す。
「この落下しなかったリンゴに別の名前をつけ付加価値にして売れないだろうか」
そうして残ったリンゴにつけられた名前が
『落ちなかったリンゴ』
落ちないことを喜ぶのは、そう、受験生。
化粧箱に入れ「合格」という朱印を押し、協力してくた全国の神社でご祈祷してもらい、1個1000円で販売した。通常価格の約10倍である。
このリンゴはバカ売れし、受験生やその親に大人気で用意したリンゴは完売し、結果としてその町のリンゴ出荷量は大きく減ったものの販売額ではそれほど落ちこまなかったそうである。
もちろん、これには苦境におちいったリンゴ農家への力になりたいという部分はあっただろうが、リンゴの価値を大きく変えたのは『1行の言葉』だった。
その他、この『1行バカ売れ』には面白い例が紹介されている。
博多名物のめんたいこをニューヨークの博多料理店で売り出したとき、最初メニューには「たらのたまご」として載せていた。客から気持ち悪いと言われ、全く売れなかった。困った店主が、メニューの名前を変えただけでバカ売れするようになった。
その名前は『博多スパイシーキャビア』
ネーミングひとつでアメリカ人の頭の中にあった価値観を変えたのである。
かつて早慶戦として戦前から盛り上がりを見せていたカードも大学野球の人気低迷のより、最近は空席が目立つようになっていた。
それがわずか5万円のポスターが早慶戦を連日満員にした。
双方のチアリーダーがにらみ合うように対峙している写真に次のようなコピー
ハンカチ以来パッとしないわね、早稲田さん
ビリギャルって言葉がお似合いよ、慶應さん
「ハンカチ」はかつて早稲田大学野球部に所属し、ハンカチ王子として大人気だった斉藤祐樹を、「ビリギャル」は当時ヒットしていた映画のタイトルをそれぞれ連想させる。
たった1行が想像以上の効果を生むことがある。
本書は例を挙げながら、そのメカニズムを探っていてとても興味深い。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます