まあどうにかなるさ

日記やコラム、創作、写真などをほぼ週刊でアップしています。

日本の半導体産業が衰退した訳

2013-05-25 15:54:48 | 社会問題

先日、NHKスペシャル『メイドインジャパン逆襲のシナリオ』で日本の半導体産業が衰退した理由を解説していた。
80年代、日本の半導体は世界を席巻していた。
だが、その後米国や韓国に逆転を許してしまう。
理由はいくつかあるだろうが、番組ではその大きな理由の一つが日米構造協議にあるとしている。
冷戦が終結し、米国のソ連への姿勢に変化が見られたことも大きいが、当時の米国の貿易赤字の4割を日本が占めていた。危機感を募らせた米国は、日本の対米輸出を減らす様々な難題を日本に求めてくる。
やり玉に上がったのが車と半導体。
それまで、日本では半導体は産業のコメと言われ、政府による手厚いバックアップ体制があった。
政府はこれを改め、内需拡大へと舵を切る。
日本の半導体業界の成長はストップし、その間隙をぬって韓国、台湾が台頭する。
やがて米国の半導体産業も競争力を取り戻し、現在に至る。
日本の半導体産業は韓国や台湾に負けたのではなく、米国政府に敗れたのである。
前に、東芝の社長が雑誌のインタビューで、半導体の投資に銀行が金を貸してくれなくなったと当時のことを振り返っていた。装置産業である半導体産業で、銀行の投資が受けられなければ、かなり厳しい状況であったことは容易に想像がつく。
輸出を減らすために、米国での生産に踏み切った自動車業界とは明暗を分ける結果となったのである。


番組では、メイドインジャパンの復活には政府の協力が不可欠だとしている。
大切なのはターゲットと環境整備。3Dプリンターや介護ロボットなど、新たな成長分野に集中投資するべきであると。

例えそれらがうまくいったとして、日本は半導体産業の二の舞を防げるのだろうか?
日米構造協議で、日本が米国の要求を受け入れた背景には、日本製品の主な売り先が米国であるという弱みがあった。
スーパー301条に代表される極端な保護主義政策をとられると、日本経済は成り立たない。

では、どうすればいいのか?
中国をうまく利用すべきである。
米国と対立したときは中国と接近するように見せかけ、中国と対立したときは米国とタッグを組む。そんな、高度な外交を含む舵取りが要求されるのではないだろうか?


楢山節考

2013-05-19 15:39:11 | 映画

映画『藁の楯』を観た。
前半はそれなりに楽しめる映画だったが、後半は重く、気持ちが離れてしまう映画だった。
カンヌ映画祭に出品するという。
それなりに面白い映画だけど映画祭で高評価を得るにはどうだろう?


今から30年前、カンヌ映画祭でグランプリを受賞したのが今村昌平監督の『楢山節考』
姥捨て山を描いた底抜けに暗い作品である。
この作品を、僕は大学のときに観た。もう30年前なのに、衝撃的な作品だったので、いまだによく覚えている。
主演は坂本スミ子、実年齢の30歳近い上の69歳のおりんの役をこなしている。緒方拳が息子の辰平役。
坂本スミ子はこの映画のために前歯を全て抜いて役作りをしている。
舞台は江戸時代と思われる信州の小さな貧しい村。
食い扶持を増やさないために、結婚して子供を作れるのは長男のみ。次男は一生独身を強いられ、飼い殺しにされる。辰平の弟を左とん平が演じている。
そして、70歳になるとお山参りと呼ばれる、7つ向こうの山に捨てられる運命が待ち受ける。
長野は山が多く、稲作に向く平地が少ない。
貧しいがゆえに、一人が生まれれば、一人死ななければならない。
映画では衝撃的なシーンがいくつも出てくる。
妊娠しても、子供は間引きされ、途中で下されることが多い。
胎児を田んぼに捨てるようなことが平然と行われる。
村には盗みを厳しく禁じる掟がある。盗みは、盗まれる側にも生きる上で切実な問題となるため、絶対に許されない。
盗みを働いた者は女房子供といっしょに生き埋めにされる。


そして、主人公の辰平は70歳になった自分の母親を背負い、お山参りへと出発する。
険しい山をいくつも越え、やがて二人は目的地にたどり着く。
白骨がそこら中に横たわる場所に、母親を置き、雪のちらつく中、息子は村へと帰ってくる。
自分の母親を背負って捨てに行く息子の気持ちはどんなものだっただろう。
辰平は孝行息子として描かれている。おりんは自分が捨てられる運命をきちんと受け入れていたが、実際はそうでなかった事も多かったはずである。
老人を生かせておけば、全員が飢えるかもしれない、極限状態の中で生まれてきた悲しい風習である。


当時、農業の生産性が低く貧しかった長野県は、今では日本一の長寿県である。
貧しくて天寿を全うできずにお山参りに行った人たちは天国でどう思っているだろう…


カフェで何も注文しない客

2013-05-12 18:09:36 | 社会問題
学生時代、大きな喫茶店でウェイターのバイトをしたことがある。
その時、先輩ウェイターに言われたこと。
何も注文しない客には、場所代だからと言って、何か注文をもらうようにと。
その時は、喫茶店に入って何も注文しない客がいるのだろうかと思った。
だが、実際に仕事をしてみると、複数人で来店する客の中の一人に「私は何もいらない」と平然と言う客が意外に多いことに驚いた。
大概は中年女性のグループの中の一人。
とても僕には言えない。
社会人になって、仕事でカフェを使うことは多い。
後輩の新人社員の女性とセルフサービスのカフェを利用したことがある。
先に座席を確保して、彼女に何を飲むかと尋ねた。
「何もいらない」
彼女はそう答える。
セルフの店では、何も頼まないで座席に座っていることは可能だと思う。
でも、それはどうなんだろう…
おごりだからと言って、二人分をカウンターで注文して座席まで持って行ったけれど、案外セルフの店で何もたのまない客は多いのかもしれない。
先日、カフェで休憩していると、二人組の中年男性が僕の隣の席を確保していた。
一人が、注文をするために、もう一人に、何を頼むかを訊いていた。
一人は、「俺は何も要らない」と答えていた。
何も頼まない男性客は初めて見た。
最近、セルフのカフェでも、先に座席を取ることを客にさせない店が増えている。
もしかしたら、何も注文しない客の対策なのかもしれない。


西武ドームでの事件

2013-05-06 19:39:32 | 野球

5月5日こどもの日
西武ドームに友人と4人で野球観戦に出かけた。
球場は立ち見客も大勢出るほどの超満員。
友人のうち2人は日ハムファン、僕ともう一人が西武ファン
座席はビジターの1塁側の指定席で、この年初めての野球観戦だ。
始球式は所沢出身で西武ファンのオードリー春日。
天気もよく、暖かいので、冷たいビールが美味い。
西武先発は菊池雄星、対する日ハムは武田勝、緊迫した投手戦となる。
2回に坂田のソロと相手のエラーで2点を取り、それが決勝点となる。


事件は4回裏の西武の攻撃の時に起こった。
ふと見ると西武ドームの天井近くでカラスが飛び回っている。
西武ドームの外周通路側は密閉されておらず、ドーム球場だが、外気が入り込む構造となっている。
当然、カラスなどがドーム内に入り込むことは十分ありうる。
カラスは、同じくドーム内に紛れ込んだ鳩を追い回していたのだ。
すばしっこく逃げ回る鳩を執拗に追い回すカラス。
やがて、カラスは鳩に追いつき、攻撃する。
何と鳩は、真っ逆さまに落ちて行き、内野の人工芝に叩き付けられる。
試合は中断
球場職員によって遺骸は処理される。
カラスは、転落している鳩には見向きもしないで、ドームの外に飛び去って行った。
恐らく、鳩を食べるためではなく面白半分に狩りをしたのではないかと思われる。
そのあと、すぐに同じことがあり、都合2回、カラスのために試合は中断し、2羽の鳩が犠牲となった。
3万5千人ほどの観客や両チームの選手、そして球場職員をあざ笑うかのように、カラスは何処へともなく去って行ってしまった。
たった一羽のカラスのせいで、2羽の鳩の命が奪われ、ゲームが中断した。
天井近くの高所なので、人間はどうすることもできず、事態を見守るしかなかった。
西武は試合には勝ったけど、3万5千人もの人間が一羽のカラスにバカにされたような出来事だった。