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まあどうにかなるさ

日記やコラム、創作、写真などをほぼ週刊でアップしています。

愛と哀しみのボレロ

2025-04-19 20:21:17 | 映画

1981年のフランス映画である。

実在した芸術家、ロシアのバレエダンサーのドルフ・ヌレエフ、フランスの歌手エディット・ピアフ、ドイツの指揮者ヘルベルト・フォン・カラヤン、アメリカの音楽家グレン・ミラーら実在の人物をモデルにした4つの国の4つの家族の3代に渡る壮大なスケールの大作である。当時のフランスの恐らく総力を挙げて製作された。

監督は『男と女』のクロード・ルルーシュ、音楽は『シェルブールの雨傘』のミッシェル・ルグランと『男と女』のフランシス・レイ、振付はモーリス・ペジャール、出演はロベール・オッセン、ジョルジュ・ドン、ダニエル・オリブリフスキー、ジュランディン・チャップリン、ファニー・アルダン、エヴリーヌ・ヴィックス、ニコール・ガルシア、マーシャ・メリル、アレクサンドラ・スチュワルト、ジャン=クロードブリアリ、ジェームス・カーン、バリー・ブリマス、シャロン・ストーンなど。

この映画を最初に観たのは大学生の時、名画座で鑑賞した。アメリカ映画とは違い、カットより長回しのフォトジェニックを多用した独特のカメラワークが凄い。

僕が観た映画の中で最も好きな映画だ。
監督の「歴史は繰り返す」というテーマに沿った演出なのか、親子を同じ役者が演じたりしていて、少し混乱する。
映画は第2次世界大戦を皮切りに。1960年代、そして1980年代を描く。
最後、4つの家族がパリに集い、ボレロを演奏するシーンは圧巻である。

何度観ても目頭が熱くなるシーンや感動するシーンは多い。

まさに20世紀を代表する映画と言えると思う。


砂の器

2024-11-16 20:18:52 | 映画

松竹映画『砂の器』が公開されてから今年で50年。
この作品を最初に観たのは中学生の時、テレビで放送されていた。
社会人になりDVDプレーヤーを初めて買ったとき、最初に買ったソフトでもある。
それから、繰り返し観ている。僕が観た邦画の中では間違いなくベスト3に入る。
原作者の松本清張をして「原作を超えた」と言わしめた名作中の名作である。

蒲田の操車場で起きた殺人事件をめぐる捜査から始まるミステリー。
島根県奥出雲町の地名「亀嵩」の出雲弁なまり「カメダ」という言葉が事件の鍵となる。
ハンセン病が犯行の動機の重要な鍵を握る社会派のドラマでもある。
映画のラスト数十分は圧巻である。
事件の経緯を説明する丹波達郎演じる刑事。
コンサート会場で加藤剛演じる音楽家が演奏する美しい曲。
その音楽家がまだ幼い時に経験したハンセン病の父親との悲しくて過酷な長い旅。
この3つの場面が同時進行する。
加藤剛が演奏する劇中曲は芥川也寸志作曲である。
父子が歩く美しい日本海の風景はいっそう残酷さを際立たせる。
原作では数行のこのシーンを脚本家の橋本忍は数十分の長い名シーンへと膨らませた。
野村芳太郎の曲と場面の巧みな演出も凄い。

何度観ても目頭が熱くなるシーンである。


映画『追憶』

2024-07-07 18:58:50 | 映画
街を歩いていると、ふと、映画『追憶』のテーマソングを耳にした。ネスカフェのCMにも使われている名曲だ。
この映画は僕の最も好きな映画の一つだ。
高校を卒業してすぐの頃、リバイバル上映で観た。1973年の米国映画で、監督はシドニー・ポラック、主演はロバート・レッドフォードとバーブラ・ストライサンド。
原題は『The Way We Were』直訳すると『私たちが歩んできた道』。それを『追憶』と訳したセンスもなかなかだと思う。
それまで、僕が観た恋愛映画で、二人が結ばれない理由は必ず外部にあった。病気だったり、戦争だったり・・・でも、この映画は、結ばれない理由が二人の内部にある。お互い愛し合ってるのに、どうしても許せない部分がある…
その頃の僕にとって新鮮だった。でも、現実の男女が結ばれない理由のほとんどは二人の内部にあることが多い。
僕は、気に入った映画は何度も観る。この映画もDVDを買って繰り返し観ている。何度観ても飽きのこない傑作だ。バーブラ・ストライサンドがあまり好きではないという人が結構いるが、ひたむきな主人公の役には、よく合っていると思う。
二人が再会して、回想シーンにオーバーラップする場面で、バーブラの歌う主題歌のハミングが流れるシーンには、今も目頭が熱くなる。
 
 

ミッシング

2024-06-08 22:18:03 | 映画
石原さとみ主演の映画『ミッシング』を観てきた。
幼い娘が失踪する母親、沙織里役を演じる石原さとみ。
8歳の娘が失踪してから3か月。街に立ってビラを配り情報提供を求める毎日。青木崇高演じる沙織里の夫・豊との温度差にいら立ちを隠せない。心の拠り所は失踪した娘を取材する中村倫也演じる地方局の記者、砂田だけである。
娘が失踪した日、沙織里は弟の圭吾に娘を預けアイドルのコンサートを観ていた。だが、弟は沙織里の娘を公園から家まで送り届けず、一人で帰宅させたため、その間に娘が失踪してしまう。彼女はそのことでSNSで酷いバッシングを受ける。
弟役の圭吾を演じる森優作もとてもいい味を出す。歯がゆいくらいの不器用さが観客のいら立ちを増幅させる。
出口の見えない絶望の中、夫婦と沙織里の弟は日常を生きる。
監督は「空白」の吉田恵輔。石原さとみが最初に監督に「出させてほしい」と直談判したが、監督は石原さとみは華がすごいので自身が描く下町や郊外が舞台の映画に似合わないと考え、最初は出演を断ったと明かしている。
だが、監督もギャンブルに出た。彼女の妊娠、出産を待ち、一度断った3年後に『脚本を書きました』と連絡をする。
石原さとみは全編ほぼ、すっぴんである。髪はシャンプーではなくボディソープで洗いバサつき感を出したそうである。
感情の起伏を怖いくらいのリアリズムで迫真の演技を見せる。石原さとみってこんなすごい演技ができる女優だったのですね。

『PERFECT DAYS』

2024-02-10 16:38:28 | 映画
ドイツのヴィム・ベンダーズ監督、役所広司主演の日・独合作映画『PERFECT DAYS』を観た。
浅草に住むトイレ清掃員の日々の生活を淡々と描いた作品。
一人暮らしの中年男性の主人公は早朝から彼の住むアパートから軽自動車に乗って公園などのトイレ清掃に向かう。後輩から丁寧すぎると言われるほど完璧に仕事をこなし、帰りに地下の大衆酒場でチューハイを飲むのが日課だ。神社の境内で見つけた木々の芽を自宅でいくつも大切に育てている。古いカセットテープとラジカセを愛し、フィルムカメラで木漏れ日などのモノクロ写真を仕事の合間に撮影する。週に一度古本の文庫本を買い、行きつけのスナックへ足を運ぶ。
退屈そうな毎日だけど、時々見せる笑顔は実に幸福そうだ。
久しぶりに会った金持ちの家に嫁いだ妹から「本当にトイレ掃除してるんだ」と言われるが、その経緯は描かれない。
ストーリーはほとんどないに等しい。ドラマティックな展開もSFチックな仕掛けもないが、124分を短いとは感じない映画である。
第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品されている。