小学生の高学年の頃、クラスの男の子が放課後、スカートをはいているのを見かけたことがある。道を平然と歩いていて、普通に挨拶をしてきた。もちろん学校には毎日男の子の服装で通っている。
その時はとても驚いた。
その子は、背は高いけど華奢な体つきで、仕草は女性ぽく、言葉遣いも男の子がよく使う粗っぽさはなく、どちらかというと上品な感じだった。
その後、クラスでも何人かが彼のスカート姿を目撃し、時々クラスで話題になることはあった。「あの子とは遊んじゃダメよ」と母親に言われた生徒もいたらしい。
彼とは低学年の頃は一緒によく遊んだこともある。でも、高学年になるとあまり遊ばなくなっていた。男の子同士の遊びのグループに彼が入ってこなかったからである。
今で言うLGBTQなのだが、当時はほとんど理解されなかったと思う。
単に女装趣味なのか、それとも女性になりたかったのか、ちゃんと話したことはなかったけど、クラスでは普通に会話はしていた。
中学に入ると別の学校に通うことになったので、彼とは小学校の卒業以来会うこともなかった。
10年以上前、小学校のクラス会があったが、彼は若い時に病気で亡くなっていたと聞かされる。
クラス会の次の日、友だちと彼の墓参りに出かけて手を合わせた。
クラス会のあった頃もまだ、LGBTQという言葉はなかったと思う。日本で理解が進んだのはここ何年かの間である。
そんな日本を見ることもなく、彼はこの世を去ってしまった。
天国から今の日本を見て、少しはホッとしていてくれているだろうか。