鬼神の秘密

'05~'06オセロ世界チャンピオン 為則英司のブログです。

3手目に勝負手を打った試合(その1)

2006-05-13 10:39:25 | WOC2005
2005年の世界選手権・準決勝でフランス代表のTakuji Kashiwabara選手と対戦しましたが、第一局は白(Takuji)に誘導されるままDraw lineの進行で引き分けとなりました。第二局は白(私)が2手目で斜め取りの勝負手を放ち、この作戦が功を奏して必勝形になるのですが、48手目で痛恨の大悪手を打ってしまいTakujiに好局を破られたのでした。そして、私にとっては第三局に4石差以上の差をつけて勝たないと決勝に進めないという、後が無い状態で第三局を迎えたのでした。

まず、第三局の石の色を選択する権利はTakujiが持っていましたが、どちらの色を選択するかは試合の直前までに決めればよいことになっていますので、第二局が終わった後の休憩時間中には分かりませんでした。しかし、私は99%の確率でTakujiは白を選択すると思っていました。第二局を終わってTakujiは1勝1分なので、引き分けでも、2石負けしても決勝に進出できるため、当然、第一局(Takujiが白)と同じ進行で引き分けを狙いにくると思ったからです。

さて、第三局で黒を持ったとして何の定石を選択するか?私にとって非常に悩ましい問題でした。もちろん、第一局の進行(虎から13手目d8)は引き分けにされる可能性が高いので避けなければなりません。13d8の代わりに考えたのが、13f8の進行です。私はネットでの練習試合で13f8も多用していたので、ある程度の自信がありました。しかし、この進行を採用しなかったのは、Takujiは13f8に対しては、14f7、15g5の後、16でh6ではなくg4と打つからです。準決勝前夜と当日の朝、メグリオ氏がつくったOthBase(データベースソフト)を使いTakujiの試合を研究したのですが、OthBaseにはTakujiが16でg4に打った試合が数十局収録されていました。しかも、そのほとんどがTakujiが勝った試合でした。従い、16g4に対しては私は経験値でTakujiにかなわないと判断せざるを得ませんでした。

F5D6C3D3C4F4F6F3E6E7D7G6F8F7G5G4
/ A B C D E F G H
1++++++++
2++++++++
3++●○+○++
4++●●○○◇+
5+++●●●○+
6+++●●●○+
7+++●●○++
8+++++●++

次に虎から7手目でf6ではなくc5に打つことも考えましたが、この進行はTakujiが黒を持ったときに多用している進行のため、白の応手も相当詳しいと思われるので7c5も避けました。

まさに「打つ手に窮した状態」に陥ったのでした。しかし、ここで思いついたのが、兎→ローズオープニングの進行です。この進行を選択した場合、序盤、中盤で黒が不利になる場合が多いので苦戦を覚悟しなければなりませんが、なぜか、有利な白にとって難しい終盤になることが多いため、Takujiのミスを期待できると考えました。こうして、第三局では3手目で勝負手(c5)を打ったのでした。

相手のミスを期待して、兎→ローズオープニングを選んだのは私にとって大きな賭けでした。しかも、試合前の予想通り、第三局では序盤~中盤まで大苦戦するハメになるのでした。
(続く)


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