goo blog サービス終了のお知らせ 

うちらのひとりごと。

酒と映画をこよなく愛する、多趣味な男(ことら)ときまぐれ女(こじか)のブログです。

ディパーテッド

2007-01-21 02:10:24 | 映画
※当ブログは基本的にネタバレありで書いてるので注意してください。
 特に今回はネタバレが多いので要注意!



名作「インファナル・アフェア」のハリウッドリメイク作品「ディパーテッド」です。
「インファナル・アフェア」オタクのうちらとしては、リメイクが決まった時から、非常に気になる映画でした。
オリジナルをよく知ってるので、「どんな映画なんだろう?」という期待感よりも「どんな焼き直しをしたんだろう?」という興味本位だった訳ですが…

「ディパーテッド」って言葉は、劇中では「死者」と訳されてました。
「インファナル・アフェア」は「無間地獄」。
「ディパーテッド」の内容は「無間地獄」ではなかったので、「ディパーテッド」というタイトルは納得できるかも…。
結果的にこれが2作品の深みの差になった気はするけどね。

この作品R-15指定なんです。
うちらはダブルスコア以上なんで、何の問題もないですが。
「暴力シーンが多いからだろなぁ」と思ったら、まさにその通り。
エロはそんなにありません。
まぁ、血飛沫が飛ぶ飛ぶ。
人によっては気分悪くなるかもしれません。
そのおかげかどうか分からないけど、初日にしてはガラガラでした。
今回行ったのは、いつもと違ってMOVIX八尾。
ショッピングモールと併設してるんで、MOVIX堺よりは大分人が多いんだけど、それでもこの映画はガラガラ。
スロースタートなんかな??

そのR-15が絡んでるかどうかは分からないけど、全編にわたってセリフが下品です。下ネタの嵐。
アメリカの人達の一般的な会話ってのはこうなんでしょうか?
そんなことはないかもしれないけど、ちょっと鼻につく感じでした。

ネガティブな話から入ったけど…作品としてはかなりおもしろかったです。
完全に予想を裏切られましたね~。
「オリジナルは超えられまい。」って頭で観に行ったんだけど、それをガツンっとやられた感じ。
脚本も構成もすごくよく練られてました。
こりゃ脚本賞取るわって感じ。
観るまでは「リメイクの映画で脚本賞はアカンやろ~」とやいやい言ってたんだけどね。
故にラストの方の力尽き感が惜しいんだけど、それは後述…。

オープニングがすごくカッコイイんです!
コステロ(ジャック・ニコルソン)の語りから始まるんだけど、この辺りの渋さは「インファナル・アフェア」には無かった部分。
これで完全に引き込まれて、しばらくはリメイクだって事を忘れてしまったのでした。
そこでもちょっと語られてるんだけど、この作品の根底には「人種による性格の差」(かな?)みたいなのがずっと流れてます。北部と南部の差とか、アイルランド系の人達が抱えてるものとか。
「白人と黒人」という分かりやすいものじゃなく、もっと根深い何かです。
この辺のことに全く疎いので、いまいちよく分からなかったんだけど、詳しく知っていれば、もっと深く映画に入り込めたかもしれません。
前述の下品なセリフとか、この差別意識とか、この辺りはアメリカテイストですね。
凄くよく盛り込んだな~と思います。
下ネタは「いい加減にしてくれ」だったけども。。。

「インファナル・アフェア」ではヤン(トニー・レオン)・ラウ(アンディ・ラウ)・サム(エリック・ツァン)・ウォン(アンソニー・ウォン)の4人が主役だったと言えると思うんです。
このバランスは絶妙だった。
「ディパーテッド」ではもうちょっと焦点が絞り込まれてて、ビリー(レオナルド・ディカプリオ)とコステロ(ジャック・ニコルソン)の2人が主役だったな…と思います。
マット・デイモンはこの2人に喰われちゃって、ちょっと存在感が薄かったなぁと。
これは彼の問題じゃなく、演出する側の見せ方の問題だと思うんですよね。
ラウの役柄にすごくはまってましたよ。マットは。
彼以外に誰がこの役出来るんだ?ってくらい。
でも、アンディ・ラウほどのはまりっぷりではなかった。
見せ方の問題もあって、ちょっと割喰っちゃいましたね。
故に賞にもノミネートどころか候補にすら挙がってないし…可哀想じゃないか。
正直「居なくてよかったんじゃ?」と思うマーク・ウォールバーグですら候補に挙がってるってのにねぇ。

そのマーク・ウォールバーグがウォン警視に当たる役なのかと思ったら、全く違うんですよ。
ただの悪態つきで、最後にコリン(マット・デイモン)を撃つという、それだけの役。
しかも、そんなに出てこない。
なんか無理矢理配役したなぁ…って感じで。
この人、顔が善人顔だから、悪態つくのが合わないんですよね。
ミニミニ大作戦」での良きリーダーってイメージが強いせいかもしれないけども。。
ちょっとイヤーンな感じでした。

ディカプリオとジャック・ニコルソンは、これはもう文句の付け所がないくらい良かったです。
ディカプリオは、警官になるべくがんばってる時と、潜入捜査官となってマフィアに居る時の表情の演じ分けが完璧で、ホントに鬼気迫ってました。
冒頭、ディグナム(マーク・ウォールバーグ)に生い立ちをなじられるシーンがあるんだけど、その時にだんだん表情が、新人警官からスラムのゴロツキに変わっていくんですよ。
これは「デスノート」の藤原竜也の善ライト悪ライトの演じ分けを観た時と同じくらい衝撃的でしたね。
いつ自分の正体がバレて命を狙われるか分からない…という追い詰められ感・必死さ・焦り等々も十二分に醸し出していて、これに関してはトニー・レオンよりも良かったんじゃないか?と。
あちらの人達はアジア圏の人よりも表情が豊かだからかもしれないけど…。

ジャック・ニコルソンは、もう、ただただ圧倒的。
ニコニコしてても、全身から殺気を放ってるんです。
これには共演陣も参ったんじゃないかと。
「俺ホントに殺される?」って思ったんじゃないか?
サムの役所なんだけど、サムはここまで圧倒的な存在感は出してなかったよね。
でもニコルソンの圧倒的さがいいスパイスになって、「インファナル・アフェア」との差別化が図れたんじゃないかと。
出演者達のすばらしい演技はジャック・ニコルソンが引き出したと言っても過言じゃないかも。

「おっ」と思わされたのは、ビリーとコリンが、同じ女性を愛したってこと。
「インファナル・アフェア」ではそれぞれ別々の女性を愛したからね。
でも「おぉ。これはすごい展開になりそうだ。」と思わせておいて、実はこのエピソードはあっさり終わっちゃう…。
なーんか詰めが甘いぞぉ。
ラストの対決辺りでこのこと絡ませれば、もっと深い人間ドラマになっただろうに~。残念。

もうひとつ驚いたのは、コステロがFBIに通じてたってこと。
これはオリジナルには無かった設定。
マフィアのボスがFBIと通じてて、お互い美味しい汁吸ってるっていうのは、かなり衝撃的でした。

実はオリジナルを知ってると、かなりツッコミどころが多いんです。
しかも「このエピソードは重要なんじゃ?」というところが結構省略されてたりする。
個人的に一番残念だったのは、コリンが「警官になろうとしなかった」ってこと。
ラウは警官を装うっているうちに、だんだん本当の意味での警官に目覚めていき、そうなろうとしてサムを撃つんだけど、コリンはそうじゃなかった。
最後の最後まで「警察に潜入したマフィア」でした。
コステロ撃つのも「警官になろうとして」じゃなく「FBIに俺を売ったのか?」って理由だし…。
「インファナル・アフェア」はラウが「警官になりたい自分」と「マフィアである自分」に悩み苦しむ姿が延々と描かれてるんです。だから「無間地獄」「インファナル・アフェア」。
これが制作者が一番描きたかったところなんだろうけど、リメイクではそこがあっさりすっ飛ばされてる。
コリンはそんな悩み無く、最後はあっさりと撃たれる。
これはかなり残念。

ビリーがマドリンに封筒渡すエピソードも、オリジナル知らない人には意味不明だろうなぁ…。
そのあとのフォローも全く無いし。
いや、オリジナルにもあんなシーン自体は無いんだけども。モノローグで語られるだけで。
この辺りから、だんだん駆け足になってきて、内容が薄くなってくるんです。
それまでがかなり濃密で、観る者をものすごく引き付けてたのに。
ビリーを撃つもう一人の”ネズミ”は唐突に出てくるし、コリンを撃つディグナムも、何の脈絡もなく突然出てくる。
せめてマドリンとディグナムを接触させて、受け取った封筒から真実を知って~ということにすれば、ラストの薄さもマシになっただろうに。
さらに言うなら、コリンに「警官になりたい」って言わせておけば、最後にディグナムとやり取りも出来ただろうし、そうすればもっと深みが出たのになぁ…なんて考えたり。

まぁ、これらのツッコミはオリジナルを知ってるが故に出てくるもので、知らなければ、この作品は近年まれに見る、面白いハリウッド作品ではないかと。
あとから気付いて興味深かったのは、「インファナル・アフェア」は102分しかないのに、3時間くらいの映画を観たような満足感と疲労感があったんです。
いい意味ですごく長かった。(実際は短いんだが)
「ディパーテッド」は152分。
長いとは思わなかったです。2時間くらいの感覚だった。
かたや102分を3時間と思い。
かたや152分を2時間と思い。
この差はなんなんだ?

ともあれ、想像してたよりもかなり面白かったです。
全く期待せずに観れば、十分に楽しめる作品ではないかと。
うちら的にはお勧め!


…それでも、ラストシーンに出てくるリアルネズミだけは許せん。
アレで一気に興醒めしちゃったぞ。
あんなアメリカンジョークは要らん。
せっかくいい作品なのに…。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿