
そう、お岩さんのね。
でもね、実在したお岩さんは怪談のイメージとはだいぶ違うのです。
お岩さんは徳川家の御家人の娘で江戸時代の初期に四谷で暮らし、
信心深く、夫とも仲がよい素敵な夫婦だったようです。

ところが収入は決して多くはなかったため、
夫婦で商家に奉公に出ました。ともばたらきさね。
でもお岩さん、自分ちの庭にある屋敷社を信仰していたおかげで、
やがて貯金も増え(笑)幸せに暮らしたと伝わっています。

人々は、この屋敷社を「お岩稲荷」と呼んで大切にしたといわれ、
江戸時代には大人気になったのです。(今もあるんよ)
怖いどころか、ほのぼのでしょ?

じゃあ、なんで怪談になっちゃったのかというと
江戸時代後期、この人気ぶりから歌舞伎(ドラマ)作家の鶴屋南北が、
名前を借りちゃったわけだ。
お岩さんが怒らなかったのか?と思ったら、
歌舞伎が書かれたときには、亡くなってから200年もたっていた。
だってこれ、いかにもフィクションなのだ。
このお話、『東海道四谷怪談』ってタイトルなんだけどさ、
四谷に来てみればわかるけど、
ねえぞ、東海道!
四谷は「甲州街道筋」なのだ。

実在のお岩さんにしてみれば、女性に向かって失礼な話だ。
夫も奥さんに「毒を飲ませたり」してないど。
やさしいダンナだったんだぞ。
今なら「メディアの被害者」って言えるかも。
お岩さん縁の寺社は多いけど
新宿通り沿いのスーパーの前には
ひっそりと「お岩観音」さまが。

そのお顔は穏やかで「美人」
実在のお岩さんもこうだったのかもね。
お年寄りだけでなく、
ビジネスマンや、
外国人のかたまで
水をかけているのを見かけます。
ビジネスマンなんかはちょっと照れながら。
それぞれの小さな希望や願いを託しているのでしょう
まもなく、お世話になっている文化放送が
四谷から移転します。
水掛けお岩さんも、僕の好きなこの街の風景でした。
移転しても、四谷には遊びに来たいな。
僕の夢を応援してくれた大切な街だから。
