しばらく農事のことを書くのを欠いていましたが、百姓の仕事を放棄したわけではなく、今でも楽しんでいます。ただ、冬の期間は秋に播いたホウレン草と小松菜の収穫くらいで、それが終わるともう畑は雑草が生え残るだけで何もすることが無く、3月になって久しぶりに耕起作業をしてジャガイモを植え付けるという作業をしたばかりです。
今年の畑は、ジャガイモの他にトマトを植えるつもりでいるのですが、なにしろたった20㎡しかないので、ジャガイモ収穫の後地にトマト苗を植えるのは時期的に難しいだろうと、その分を空けてジャガイモの植え付をしましたので、たった2本畝ほどしかありません。ジャガイモ大好き人間の自分としては、かなり不満足なのですが、新ジャガを2、3度食べられればそれで良いとすることにして、あとはトマト好きの家内などのためのスペースを残すことにした次第です。
ジャガイモは少し早いかなと思いながら、3月の8日に植え付けをしました。この頃は気侯の変動のせいなのか、商売本位なのか、気の早いDIY店では、2月の半ばごろからジャガイモの種イモを店に並べています。幾らなんでもと思いながら見過ごしている内に、あっという間に3月となってしまいました。大急ぎで畑を耕し、苦土石灰や鶏糞などを撒いて、少し時間をおいての植え付けでした。
この分だとかなり早めに芽を出すかなと思っていたら、たちまち寒さがぶり返してやって来て、まさに三寒四温通りの季節の流れとなり、なかなか芽を出してはくれませんでした。それでも畑には2日に1度は様子を見に行き、さて今日はどうなっているかが楽しみなのです。毎日何の気配もない畝を見ながら、この土の中でジャガイモ君は本当に芽を出す気になっているのかな、と心配な毎回でした。とうとう3月中に芽を見ることはできなかったのですが、それでも28日くらいになると畝の一部が地割れして来ているのが見えて、いよいよだなと胸を弾ませていたのでした。
それが、4月に入った今日の朝行って見ると、ついに地を割って緑の葉を見せてくれていたのです。昨日は行かなかったので、もしかしたら早いのは昨日既に芽を出していたのかもしれません。一日気づくのが遅れてもそのようなことは問題ではありません。大地を割って生命の証が生まれ出てくるのを見るのは、百姓業の最大の喜びです。たとえインチキの百姓であっても、感動と喜びは本物なのです。
大地を割って芽を出したジャガイモ君。植物たちの生命の力のすごさを実感する時でもある。このまますくすくと育ってほしい。
それにしても植物たちの生命というのは、動物とは違う凄さがあるように思います。動き回らない分だけ時間の使い方が丁寧な感じがするのです。少しずつ少しずつ、じっくりと時間をかけて、生きていることを主張しているのが解るのです。とても人間には真似のできないことです。土中のジャガイモ君たちは、いつどのようにして大地を割るのか、その瞬間を見て見たいものですが、カメラを仕掛けて見たのでは、なかなか彼らの本意は分からない感じがします。
理屈はともかく、今日は彼らの芽生えの逞しさをしっかりと見届けたのでした。桜の花が終わる頃からは、ぐんぐんと生長して若葉も数を増し、葉の色も次第に逞しくなってゆくことでしょう。収穫は6月末の頃となるのでしょうが、今からその時が来るのが楽しみです。農事の喜びを味わった瞬間でした