母や姉からの遺品ならいっぱいある。アクセサリーや着る物、和服、スカーフも何枚もある。おしゃれして外出できなくなって10年以上。でも、捨てられない。タンスの肥やし、場所ふさぎ。
エンジの帽子は、娘時代に父に買ってもらったもの。
母が買ってくれるのは、ブリムが大きかったり、チュールの飾りが付いていて、当時から、そんな帽子を被る人は少なかった。
天候がよく、痛みも少ない日には外へ出る。今やすっぴんで、髪も自分でカットしているから、それこそ髪かくしで帽子を被る。この帽子がちょうどいい。紡織科出身の父が言うにはベロアという生地らしい。もう半世紀以上も前のもの。薬局の人にも「いつもお帽子かぶって」と言われる。
もう一つは、ブラウス。これは亡夫の襦袢である。たぶん義母が仕立てであろうウールの着物に、この襦袢がついていた。
ウールのほうは処分したけれど、襦袢の模様がなんとも日本的な柄でとっておきたくなった。当時はまだ元気で、編み物もしていたから、シャツブラウスに仕立て直した。
立て襟もつけ、袖もきちんと作った。自分の原型から、型紙を取ったのでぴったり。モスリンで軽くて着心地もよい。
しかし、大問題があった。まったく似合わないのだ。松方弘樹?あたりが着流しにすれば似合う色。かよわく、いじらしいアタクシには全然!
上に黒木綿の上着を着たら、なんとかなった。みんなシャツは誉めてくれるけれど、似合うとは言ってくれない。渋好みというか、いつもシックなスタイルをしている友人だけが、「その服、素敵ねぇ」と言ってくれた。
この生地でロングスカートも作った。ナイショだけど、細くしすぎて、作った当初から、きつくて入らなかった。メリーウイドウやっているうちに、5キロも太っていた。